昨年の日本ゲーム大賞 2014“年間作品部門”にて、大賞を受賞したカプコン『モンスターハンター4』の辻本良三プロデューサーと藤岡要ディレクターに話を聞いた。

●賞は心に“腑に落ちるもの”を残してくれる

 優れたコンピューターエンターテインメントソフトウェア作品を選考し、表彰することを目的に設立された日本ゲーム大賞。今年も、“年間作品部門”の一般投票が受付中だ。ゲーム業界でも、ことに大きな存在感を放つ日本ゲーム大賞の意義とは? ここでは、昨年の日本ゲーム大賞 2014“年間作品部門”にて、大賞を受賞したカプコン『モンスターハンター4』の辻本良三プロデューサーと藤岡要ディレクターに話を聞いた。

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カプコン
プロデューサー
辻本良三氏(左)

ディレクター
藤岡要氏(右)

――日本ゲーム大賞を受賞しての率直なご感想をお教えください。
辻本 率直なところで言うと、うれしいなあという気持ちがありますね。もちろん僕たちは賞を取るためにゲームを作っているわけではないのですが、投票の結果として皆様にゲームを評価していただけたということに対して、うれしい思いはあります。何よりもゲームを開発するのにはすごく多くの人数が関わっているので、賞をいただけるとテンションが上がりますし、「ゲームを作っていてよかったなあ」と、ひとりひとりが思えるような賞だと思います。

――開発者どうしで喜びを分かち合える?

辻本 そうですね。大賞を受賞したときは、投票時にファンの方から寄せていただいたコメントとかもCESAさんからいただけるのですが、それもチームでシェアしていますし、トロフィーとかもしばらくチームのいるところに置いて、喜びをわかちあっていましたね。

――投票者の方からのコメントは励みになるのですか?
辻本 なります。生の声って、なかなか接する機会がないので、まとめてもらえるとやっぱりうれしいです。

――藤岡さんはいかがですか?
藤岡 辻本と同じですが、素直にうれしくて。僕は『モンスターハンター』には初代からずっと関わっているのですが、僕がディレクションを担当しているタイトルでは、初代『モンスターハンター』以降は『モンスターハンター4』が初めてなんです。2004年の初代のときは、わーっとブームが広がりだしたときにいただけて、自分たちでも“ひとつ大きなものを生み出せた”という実感に対する後押しが与えられたことは非常に多かったのですが、シリーズを重ねていって、今回もう一度日本ゲーム大賞をいただくというのは、ひとつの大きな目標だったんですね。といいますのも、『モンスターハンター4』では、“つぎの世代に向けて動かしていく”ということをすごく意識していたので。そんなタイトルでまた大賞をいただけたというのは、僕としてはとてもうれしかったです。

辻本 『モンスターハンター4』は、“ここから『モンスターハンター』としての再スタートだ”という気持ちを持っていたタイトルです。かなりチャレンジャブルなタイトルだったので、そこでこの大賞をいただけたというのは、すごく大きな意味を持っていると思います。

――『モンスターハンター4』は、どのような点が評価されての受賞だと思っていますか?

辻本 いちばん大きいのはアクション部分だと思います。『モンスターハンター4』に関しては、アクション部分に新たな要素を入れて進化させたのですが、「よりダイナミックになりました」とか、「よりスムーズになりました」といった評価をいただけて、すごくうれしかったですね。あとは、コミュニケーション。年配の方から「孫とのコミュニケーションツールとして使っています」とか、親御さんから「親子の会話が増えました」という声をいただけてうれしかったです。

藤岡 『モンスターハンター4』では、シリーズの核となる大事な部分は損なわずに、新しい要素を盛り込んでいこうと決めていたんですね。アクションやコミュニケーションはもちろんですが、『モンスターハンター』というタイトルは世界観の広がりを気にしながら作っていたタイトルだったので、ストーリーに厚みを持たせたり、シングルプレイの遊び心地をしっかり作ったつもりです。「今回ストーリーがすごくよかったです」という評価をいろいろな世代からいただけたので、そこも大きく評価していただけたのかなと思っています。

――これだけの支持を受けている『モンスターハンター』シリーズですが、今後ユーザーに訴求されるために、どのような展開を考えていますか?

辻本 ご存じかと思いますが、カプコンでは2014年に『モンスターハンター4G』をリリースしまして、『モンスターハンター4』を遊んでいただいた方に、「もうちょっとここを遊んでもらえたら」ということで、さらに世界観やシステムをさらに手を入れた作品になっています。じつは海外では『モンスターハンター4』はリリースしていなくて、『モンスターハンター4G』(海外タイトル『Monster Hunter 4 Ultimate』)からの展開になっていまして、ありがたいことにとても高い評価をいただいていますね。

藤岡 いま辻本の話にもありましたが、『モンスターハンター4G』は、『モンスターハンター4』を遊んでくれたファンが、さらにディープに楽しんでもらえるタイトルになっています。“より遊びやすく”、“より深く”を意識しながら作りました。海外においても『Monster Hunter 4 Ultimate』がすごくいい評価をいただいているので、非常に手応えを感じています。個人的には、『モンスターハンター』というシリーズが、日本だけに留まらないタイトルになってほしいと思っているので、海外にも積極的に仕掛けていって、少しずつ裾野を広げていきたいですね。

――『Monster Hunter 4 Ultimate』は、シリーズ初の欧米100万本出荷を達成しましたしね。

藤岡 後は、『モンスターハンター』というシリーズが、ひとつのゲームとしての形に固定されないようにしたいなあと思っています。

――ゲームとしての形が固定されないとは?

藤岡 やはり“こういうゲームが『モンスターハンター』です”という感じで、シリーズを重ねるごとに固定観念がつきやすいんですね。シリーズとして同じ形をとっていかないと、ユーザーさんに支持されるかどうかわからないという不安があるわけですが、『モンスターハンター4』では、そこを少し冒険しても変わらずに評価されました。響く形に変化していけば、ちゃんとシリーズとして変わらずに支持していただけるという手応えは感じられたので、そういった部分をもっと広げつつ、ユーザーの方に響く形で『モンスターハンター』というものをちゃんと作っていけたらと思います。

辻本 シリーズを作っているからと言って、立ち止まりたくはないんです。いままでのシリーズのほうは、アクションとコミュニケーションというところを徹底的に追い続けていきますが、それ以外でも積極的に展開していきたいと思っています。たとえば、マーベラスさんと展開するアーケード向けカードゲームの『モンスターハンター スピリッツ』は、シリーズ10年を境に仕掛けていこうと思ったタイトルですし、『モンスターハンター ストーリーズ』は、シリーズ初のRPGというジャンルで作っています。先日、『モンスターハンター クロス』も発表しましたしね。あとはゲームだけではなく、いろいろな展開もして、今後『モンスターハンター』というシリーズが、もっといろいろな形で、ユーザーさんの手に届くようには展開していきたいですね。

――改めての質問になりますが、日本ゲーム大賞の意義を教えてください。

辻本 ゲーム業界に身を置いている者からしたら、すごく大きな賞であり、そこで選ばれるというのはすごく名誉なことですよね。正直ゲーム作りはものすごくしんどい作業なので、賞をもらえると「またつぎにがんばろう」という気持ちになれますね。モノ作りの活力にはなると思います。

藤岡 ゲームって作るだけではぜんぜん意味がなくて、作りたいものを作るだけだったら、時間と人がいればできるんです。手にとってくれる方を想定して、自分たちが何かを作らないといけない。結果的にたくさん売れたりとか、こういう賞をいただくというのは、見えないものに対して勝負をし続けていたところに、ひとつの結果を与えていただけたということで、やはり意義のあることだと思います。

――ちょっと言い過ぎになってしまうかもしれませんが、ゲームができあがって、たくさんの人に遊んでもらって、さらに賞をもらうことで、ようやく『モンスターハンター4』が“完成した”と言えるのかもしれませんね。

辻本 これは個人的な意見ですが、自分たちの中に、瞬間的に、腑に落ちるものを残してくれるというのは、あるかもしれませんね。もちろん、たくさん売れることも、高い評価を得ることも“腑に落ちる”ことのひとつではあるわけですが。だから、大賞に選ばれなければ、やっぱり悔しいですし、大賞をもらったゲームはどこが評価されて、自分たちは何が足りなかったのか……とか、いろいろと考えてしまうと思います。もちろん、先程も延べました通り、賞をもらうためにゲームの開発をしているわけではないのですが……。

――“腑に落ちる”とは素晴らしい表現ですね。ゲーム大賞の意義が、なんとなく腑に落ちた気がします。では、そんな日本ゲーム大賞に対して要望などありましたらお願いします。

辻本 個人的な希望を言うと、日本ゲーム大賞そのものを、もっと一般の方にも広めていただけたらうれしいというところはあります。“ゲーム”というカルチャーを広げるためにも有意義ですし。

藤岡 年に1回のお祭り感がもっと出るといいなあと思います。たとえばアカデミー賞なんかだと、ずいぶん前からすごく話題になるじゃないですか。発表自体もすごくメディアが取り上げて、そんなに映画に対して興味がない人でも、受賞作が気になってしまう空気があると思うのですが、日本ゲーム大賞は、日本を代表するゲームの大きな賞であることは間違いないので、大きな広がりが出てくれるとうれしいなあと思います。

辻本 クリエイターはもちろん、将来クリエイターを目指す人にとっても、目標になってほしいですね。

藤岡 そうですよね。よく他社のクリエイターさんとも「業界をもっと盛り上げたいですよね」という話はさせてもらっているんです。一時から、ゲーム業界の盛り上がりがあまり伸びていない感覚が自分たちにもあって、ゲーム業界自体がもっと活気のあるものになっていけたらという思いがあります。日本ゲーム大賞は、一般の方にゲームというものにすごく興味を持ってもらえる瞬間でもあると思うので。

――いま、日本ゲーム大賞 2015の一般投票が受付中ですが、投票を考えているユーザーにひと言お願いします。

藤岡 ひとりでも多くの方に投票していただいて、ゲームの盛り上がりの手助けをしていただければと思います。

辻本 ゲーム業界の盛り上がりのためにも、まずは気軽に投票してほしいです。あとは、投票といっしょにコメントも書いていただくとうれしいですね。

藤岡 クリエイターは、なかなか遊んでいる方と直接コミュニケーションが取りにくいので、「楽しかった」のひと言でもうれしいです。皆さんが思っているご感想が、ダイレクトにクリエイターに届くチャンスでもあるので、コメントをお待ちしております。


【受賞作はこちら!】
『モンスターハンター4』
発売日:2013年9月14日
メーカー:カプコン
ハード:ニンテンドー3DS

 シリーズ過去作からアクションを大幅にパワーアップ。崖や段差を利用した立体的なハンティングが可能に。本作から新しい武器として、“操虫棍”と“チャージアックス”が追加された。2014年には『モンスターハンター4G』が発売されている。