世界で800万本以上のセールスを記録する超大型RPGシリーズ最新作

 スパイク・チュンソフトから2015年5月21日に発売されるオープンワールドアクションRPG『ウィッチャー3 ワイルドハント』(プレイステーション4/Xbox One)。本作は日本でこそ知名度は少ないシリーズだが、過去2作は全世界で総計800万本以上のセールスを記録している、超大型RPGシリーズ。ポーランドの人気小説が原作とあって、同国の開発会社CD PROJEKT REDが手掛けている(開発スタッフインタビュー第1回第2回もご覧いただきたい)。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』プレイインプレッション――自由と没頭感を両立させた最高水準のオープンワールドRPG_01

 本作の特徴を言い表すならば、現行機では初となる本格派ダークファンタジー+オープンワールドによるアクションRPGということ。前世代機の時代(すなわちプレイステーション3、Xbox 360がメインプラットフォームだった時代)で、一気に普及したこの分野。とくにダークファンタジー世界の舞台となると『エルダースクロールズ』シリーズを想起する読者も多いだろう。

 じつは筆者自身もそのひとり。さらに、あらかじめ記しておくと、プレイを始めた直後にも確かに同一の、“あのプレイ感覚”と重なり、すんなり溶け込めたのだが、まったく同一なのか? というと、さにあらず。詳しくは後に譲るが、“オープンワールド系ゲーム”だからこそぶつかりがちな壁、起こりがちなストレス……つまりマイナス面を鮮やかに解決させている、といった印象。“遊びやすさ”に驚かされるのだ。

 システム関連や美麗なグラフィック描写といった本作の魅力の根幹部分は本特集のリポートや紹介記事を通じてすでに詳しく紹介しているので、本稿では実際にプレイをしてみて感じた、進化したオープンワールド系ゲームの遊びどころをピックアップしていきたい。

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自由な世界を謳歌するための配慮が光る

 怪物退治の請負人を生業にする“ウィッチャー”。本作の主役はその中でも、伝説級のモンスタースレイヤーと言われる男、ゲラルト。ウィッチャーは、魔法の力と人工的な変異によって超常的な力を身に備えている。怪物の脅威から人間を守る存在でありながら、人間の歴史において彼らはつねに疎んじられる存在。ゆえに、絶えぬ諸国勢力の抗争からは距離を置き、中立な立場を貫いている。いかにも、RPGにはふさわしい立場ではないか。“無頼漢“、“孤独な狼”というイメージは、あながち間違いではない。

 物語は、かつて愛した魔女、イェネファーの謎の失踪から始まる。ゲラルトは師のヴェセミルとともにイェネファーの足跡を追う旅路をきっかけに、やがて諸国がせめぎ合う戦乱に関わることになる。

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 ゲーム進行の仕組みは、つねに発生しているメインの出来事、すなわちメインクエストの目的をこなすことで、クエストが更新され、物語がどんどん進行していく。それと並行して世界に住む人々からの依頼や、突発的な事件の解決を図るサイドクエストも発生する。こちらは受託するか否かを任意に選択でき、純粋にメインの物語を追うだけならば、メインクエストだけこなしていけばいいのだが、サイドクエストは経験値やアイテムの大量獲得が望める契機。そしてこれこそが重要なのだが、戦禍や異形に翻弄される人々の人生が垣間見えることからこの世界がいっそう深く理解できるようになる。

 本作では、メイン、サイドともに目的をクリアーするたびに経験値が一挙に獲得できる。フィールドをアテなくうろついて野戦をこなすよりも、クエストをどんどん進めていったほうが結果的に早い成長をもたらすというメリットがあるのだ。

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 オープンワールド系ゲームは、ハイスペック時代のゲーム機がようやく獲得した“現実らしい自由”。でも、その自由がゲームの楽しみとしてアダになる面も顕在化している。「好きなときに好きなことができるぜ、ヤッホー!」と思いきや、現実はメイン、サイド含めてクエストを成り行きに従うまま受託をしまくるあまり、「物語がじっくり追えない。いま何やっているんだっけ?」、「言われたタスク(任務)をこなすことで大忙し。なんかお使いをひたすらこなしている感じ」という展開になりがちだ。

 本作では、着手するクエストの切り替えがプレイ中に任意のタイミングで行えるので、増えすぎてしまった目標におぼれてしまうといったことが起こりにくい。「いま現在進めているクエスト」だけに集中することができ、行動の目標(内容や場所)も明確になるのだ。

 また、クエストごとに、“推奨レベル”が表示され、現在のプレイヤーのレベルにマッチしているかどうかを知らせてくれるので、レベル差があるのにうっかり進めてしまい「これ、難しくてクリアできない」といった事態を未然に防いでくれる。これはかなりありがたい。

 自由がもたらすメリットとデメリットは移動についても同様だ。いつでもどこでも自由に移動できるということは、ときには面倒も伴う。ゲラルトが移動するおもな術は、馬。城砦、集落、廃村などは街道で結ばれているのだが、馬での移動の際は走るボタン(PS4版ならば、Xボタン)を押しっぱなしにすれば、自動的に路面をトレースしながら移動してくれる。ちょっとした機能だが、じつは遊ぶ上でかなり重要なポイントを押さえた仕様だと思う。

 いずれも、プレイを進めていくうちに「なるほど便利」と思えてくるもの。地味といえば地味な部分なのだが、オープンワールド系ゲームを途中で諦めてしまうケースのほとんどがこれらの“足かせのない自由”があるからゆえに起こるもの。そう考えるとこれらの施策は前述の高い没入感を生むため(ゲーム世界から心を離さないため)の大事な“気遣い”ともいえるのではないだろうか。

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