プレイヤーそれぞれが異なるゲーム体験を楽しめる

 スパイク・チュンソフトから2015年5月21日に発売予定のプレイステーション4、Xbox One用ソフト『ウィッチャー3 ワイルドハント』。本作を手掛けるポーランドの開発会社CD PROJEKT REDでビジネス・デベロップメント・マネージャーを務めるRafal Jaki(ラファール・ヤキ)氏、レベル・デザイナーのMiles Tost (マイルズ・トスト)氏、イングリッシュ・ライターのTravis Currit(トラビス・カリト)氏にインタビューを行った。

※実機によるプレイリポートは、こちらの記事をチェック!

『ウィッチャー3 ワイルドハント』は“ユーザーが体験できる最高の経験を提供する”作品――開発者インタビュー_01

<プロフィール> ※写真左から
スパイク・チュンソフト ローカライズプロデューサー
本間 覚氏

CD PROJEKT RED イングリッシュ・ライター
トラビス・カリト氏(文中はカリト)

CD PROJEKT RED レベル・デザイナー
マイルズ・トスト氏(文中はトスト)

CD PROJEKT RED ビジネス・デベロップメント・マネージャー
ラファール・ヤキ氏(文中はヤキ)

――まずは、『ウィッチャー3 ワイルドハント』(以下、『ウィッチャー3』)プロジェクトにおける、皆さんの役割を教えてください。

ヤキ ビジネス・デベロップメント・マネージャーではありますが、『ウィッチャー3』では、冒険中に遊べるカードゲーム“グウェント”のゲームデザインを担当しています。

トスト オープンワールドのさまざまなロケーションに関するプランニングやデザインを行っています。たとえば、ゲーム中で見かける木などのオブジェクトは、何らかの意図があって配置しています。そういった細かい配置なども含め、私が担当しています。

カリト 本作では、ポーランド語と英語の両方でシナリオ・ライティングが進行するというユニークなシステムをとっています。まず、オリジナルの物語を5人のポーランド人がポーランド語で執筆し、それを私を含めたふたりのイングリッシュ・ライターが英語にしています。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』は“ユーザーが体験できる最高の経験を提供する”作品――開発者インタビュー_03

――『ウィッチャー3』の発売がワールドワイドで延期した理由を教えてください。

ヤキ CD PROJEKT REDは大きなパブリッシャーと違い、たとえば1年間に5本もタイトルを出すということはしていません。『ウィッチャー3』に関しても、200名以上のスタッフが携わり、4年以上の歳月を費やして開発しています。我々は、“ユーザーが体験できる最高の経験を提供する”という精神に則り、妥協なく細部まで調整を行う上で、発売を延期するという決断に至りました。

――実機でのプレイ映像を見ても、細部までこだわっているのを感じました。

ヤキ 大規模なゲームでスタッフも大人数のため、さまざまなセクションに分かれて開発していますが、それをひとつの形にまとめたときに、我々が想定していたものより全体の情報量が非常に多くなっていました。そして、ある出来事の影響がつぎのシーンで反映されていないなど、ゲームがひとつになったときに生じる問題が発生しました。当初の予定通りにゲームを発売し、発売後にパッチを配信して不具合を修正することも考えましたが、やはりユーザーが受ける体験を最適化、最良化したいということで発売延期に至りました。

――現在の進捗状況を教えてください。

ヤキ ゲームは99%完成していて、ここ数週間は新しいコンテンツを追加するといったことはせず、最終調整に時間を費やしています。発売日通りに『ウィッチャー3』をユーザーの皆さんへ提供することをお約束します。

――それは、うれしい言葉ですね。楽しみにしています。『ウィッチャー』シリーズは、本作で三部作が完結するとのことですが、ゲラルドが主人公となって進行する物語は、今回が本当に最後なのでしょうか?

ヤキ ふたつお伝えしたいことがあります。ひとつは、『ウィッチャー』シリーズはたしかに三部作ではありますが、『ウィッチャー3』は過去作の知識がなくても単体で楽しむことができます。今回プレイしていただいてさまざまな場所や場面で、『ウィッチャー』の世界観を理解していただくための仕掛けがあることにお気づきいただいたかと思います。そのように、初めてプレイした人でも十分楽しめる作りになっています。もうひとつは、本作が、我々が“ゲラルトの伝説”と呼んでいる三部作の最終章であることに間違いはありません。すでに発表済みですが、『サイバーパンク』という別のプロジェクトもありますので、おそらく『ウィッチャー』が終わったら長期の休暇に入りリフレッシュしてから、多くのスタッフが『サイバーパンク』の開発に携わると思います。その後に、『ウィッチャー』新プロジェクトの可能性があることも否定できませんが、現状はそのような形です。

カリト 無料で配信予定の16種類のダウンロードコンテンツの中には、キャラクターカスタマイズ用のコンテンツなどのほかに、ストーリーに関するコンテンツも含まれる予定ですので、ソフトが発売された後も引き続き『ウィッチャー3』を楽しんでいただけると思います。さらに、CD PROJEKT REDの中には、RPGファン、中世ダークファンタジーファンがたくさんいますので、現状は『ウィッチャー3』に集中していますが、『ウィッチャー3』から開放された後は何が起こるかわかりません。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』は“ユーザーが体験できる最高の経験を提供する”作品――開発者インタビュー_04

――今後の展開も楽しみにしています。『ウィッチャー3』はグラフィックのキレイさもちろんですが、プレイヤーの行動によって物語だけではなく、フィールドなどにも影響が現れます。これほど膨大な情報量をゲームに調整するには、かなり苦労されたと思いますが。

トスト 本作では、プレイヤーの選択がまわりにいる人々の発言を変えるだけではなく、オブジェクトの配置や地形にも影響を与えます。レベル・デザイナーにとっては、選択によってマップも多様に変化する点が、非常に大きなチャレンジでした。私が作成した村が、プレイヤーの選択によって破壊されたり、村で殺戮が起きたり、火が放たれて焼け落ちてしまうというクエストがあります。すごく美しい村を作ったのですが、クエストの担当者から「村を壊してくれ」という指示があったときは驚きました。

――作ったものを壊すことになるとは……。ショックですよね。

トスト ですが、困難な体験は自分にとってプラスになりましたし、マップデザインという観念から、プレイヤーにどのような体験を与えられるかをつねに考えながらゲームを作るのが楽しかったです。

カリト ストーリー面では、大きくふたつのチャレンジがありました。ひとつは、ストーリーが分岐していき、その結果によってエンディングが変化すること。これに関しては、前作の『ウィッチャー2』ですでに経験していたので、どれくらい時間がかかる作業になるかの予想はできました。もうひとつは、初めてのオープンワールド作品ということ。メインのストーリーもありつつ、メインクエストではプレイヤーが自由に行動できます。本作では、Aを先にやったらBができるようになるというわけではなく、Bを先にやるプレイヤーもいれば、Aを先にやるプレイヤーもいるため、先に何かが発生しているという前提でシナリオを書けません。ストーリーの整合性を持たせることが、新しいチャレンジでした。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』は“ユーザーが体験できる最高の経験を提供する”作品――開発者インタビュー_05

――メインクエストだけではなく、サイドクエストも豊富に用意されていますし、シナリオをまとめるのは至難の業だったと思います。

カリト そうですね。メインクエストに比べると、サイドクエストなどのマイナークエストは短くて簡単なものですが、なるべく多くの選択肢と多くの結果が生じるようにしています。そういったマイナークエストでの選択肢は、メインクエストに影響を与えないかもしれませんが、少なくともその周辺に住む人々(NPC)の生活や地形に影響を与えたり、何かしらのフィードバックがあるというわけです。

――なるほど。

カリト ゲームプレイ次第で、一部のエリアを通らずにクリアーしてしまうこともあります。我々ゲームデザイナーとしては、プレイヤーの皆さんにすべてを見ていただきたいという気持ちではありますが、ある意味でそういった部分を犠牲にすることによって、プレイヤーそれぞれが異なるゲーム体験を楽しめると考えています。

――さきほどトストさんが、プレイヤーにどのような体験を与えられるのかをつねに考えながらゲームを作るのが楽しかったと話されていましたが、具体的に教えてください。

トスト 我々がオブジェクトを配置する上でいちばん大切にしていることは、ゲームの世界にフィットさせることです。ストーリー上ここに村が必要だからといって、ただ村を置いたりはしません。村を置く必要があるときは、必ず周囲の整合性も含めて調節しています。たとえば、“ホワイト・オーチャード”という村に関しては、川が流れているので水車が存在し、その川の流れを使って粉挽きをしている。というような自然の流れとして想像つくものは入れています。また、川が流れているということはその周辺の大地が肥沃なため、リンゴが名産品だったり、果樹園がある。ということも準備しており、ゲームの中で生きている人々のことを考えながら、周辺のオブジェクトがよりリアルになるようにデザインしています。

――名産品まで! そこまでこだわって作られているんですね。

トスト ほかにも、ノヴィグラドという巨大な街は、レンガ作りの建物が多いのですが、もし「そのレンガがどこからきているのか?」と疑問に感じたとしても、その答えがゲームの中で用意されています。ノヴィグラドの近くに粘土が採れる採掘場があり、その採掘場の粘土からレンガを焼くような工房、その工房からレンガをノヴィグラドに運ばれているといった流れもゲームの中に再現されています。

――それでは、最後に読者へメッセージをお願いします。

ヤキ ゲラルトの生き様は、白と黒という単純なものではなく、ゲラルトにもいろいろなバックグラウンドストーリーがあり、それらがすべてゲームの中で語られます。ゲラルトは、日本のゲームファンにも受け入れられるキャラクターだと感じていますので、『ウィッチャー3』を手に取って遊んでいただければと思います。

トスト フランチャイズの関係で、『ウィッチャー』シリーズがまだ浸透していない地域がありますが、『ウィッチャー3』に関しては、どの世界でも受け入れられてもらえる作品だと自信を持っています。発売をお楽しみに。

カリト 自分を含めて、たくさんのスタッフが日本語版のテストプレイを行っていました。みんながみんな日本語に精通しているわけではありませんが、演技のクオリティーが高いということでプレイするほど、非常にすばらしい仕上がりですので、ご期待ください。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』は“ユーザーが体験できる最高の経験を提供する”作品――開発者インタビュー_02

ウィッチャー3 ワイルドハント
メーカー スパイク・チュンソフト
対応機種 PS4プレイステーション4 / XOneXbox One
発売日 2015年5月21日発売予定
価格 各8200円[税抜](各8856円[税込])
ジャンル アクション・RPG
備考 ダウンロード版は各7380円[税抜](各7970円[税込]) 開発:CD PROJEKT RED