大きな方向転換から傑作が生まれた!
2015年4月8日に、プレイステーション Vita/プレイステーション4/プレイステーション3でリリースされた『ローグ・レガシー』。元々は海外のPC用インディーズゲームである本作だが、今回日本でのリリースを記念して開発者が来日。そこでインタビューを敢行、ゲームの開発秘話をいろいろ尋ねてみた。
今回インタビューに答えてくれたのは、開発元であるCellar Door GamesのTeddy Lee(テディ・リー)氏とKenny Lee(ケニー・リー)氏。また本作のローカライズを担当したハチノヨン(8-4)の源紘子氏、John Ricciardi(ジョン・リカーディ)氏もインタビューに同席、通訳およびローカライズ関連の質問に回答してくれた。
Cellar Door Games
Teddy Lee(テディ・リー)氏(右)
Kenny Lee(ケニー・リー)氏(左)
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※先祖の無念は子孫が晴らす! 新機軸アクション『ローグ・レガシー』インプレッション
――本日はよろしくお願いいたします。Cellar Door Gamesのおふたりは、以前はどこかのゲームメーカーに所属されていたのですか?
テディ はい。私はコーエーテクモのカナダ支社や、『覆面闘士 マスクド・ウォリアーズ』(原題:Guacamelee!)を開発したDrinkBox Studios、子ども向けゲームを開発しているメーカーなどに所属していました。
ケニー 私はカプコンのモバイル部門に所属していました。兄弟ふたりとも、ずっとゲーム業界で働いてきたんです。
――好きなゲームを作るために、おふたりで会社を立ち上げたのですか?
ケニー はい。ふたりともゲームを作るのがすごく好きなんですが、当時のトロントではゲームを作るチャンスがなかなかなくて。最初のころは、ふたりで週末に作れるような、小規模のフラッシュゲームを作っていましたね。たとえば、いちばん最初に作ったのは、『Don’t Shit Your Pants』(ウンチ漏らしちゃダメよ!)というゲームでした。おふざけでいくつかゲームを作っていくうちに、「あれ、ふたりでもちゃんとしたゲームを作れるんじゃない?」と思って、インディーズになったのです。
――では、『ローグ・レガシー』を開発したきっかけを教えてください。
ケニー じつは、小規模のゲームを作っているうちにお金がなくなったので、お金が稼げる、大きめのゲームを作る必要に迫られたのです。またふたりとも『Demon's Souls(デモンズソウル)』や『DARK SOULS(ダークソウル)』シリーズが大好きだったので、そのようなゲームを作りたい、というモチベーションもありました。
テディ ちょうど『DARK SOULS(ダークソウル)』がリリースされたころでしたね。死ぬとソウルを失う“死”というコンセプトに魅了されまして、そのコンセプトをモチーフに、いわば2D版の『DARK SOULS(ダークソウル)』を作ろうと思って、開発をスタートしたのです。ただ、開発を進めていくうちに、ちょっと大作になりすぎてしまったんです。そこで方向転換し、コンセプトを“ローグライク”へ移して、開発を続けたのです。ローグライクなゲームは、ワンプレイの時間が30分ぐらいになりますよね。でも我々はワンプレイの時間を5分ぐらいにしたかったので、どんな要素が必要かを考えました。そこで、子孫へと引き継いだり、キャラクターに特性をつけるシステムができあがったのです。このように、我々はまずゲームのメカニックを考えてから、ストーリーを付け加えていく手法で開発しています。
――なるほど。生のはかなさや、一族が継続する種の尊さが出発点というわけではないのですね。
ケニー もちろん、ストーリーを重視していないわけではありません。家族が代々つながっていくこと、生まれた時点で自分が背負っているものなどを強く表現したかったから、このようなストーリーを採用しました。どちらかと問われると、ゲームメカニックのほうを先に決めたということです。
――本作は操作性がとてもいいことが印象的でした。気をつけて開発されたポイントなどはありますか?
テディ そう言っていただけるとうれしいですね! アクション、コントロールの部分はすごく重要で、開発に時間を費やした部分です。たとえば攻撃をするとき、移動キーと攻撃キーを同時に押した場合では、どちらが先に認識されて、どのような攻撃をくり出すのか。細部にいたるまでじっくりと考えています。
ケニー ジャンプに関しても、重力を何度も何度も調整しました。どんなタイミングでキャラクターがジャンプするのか、落ちてくるタイミングはどこか。試行錯誤のすえ、心地いいタイミングを編み出しました。
テディ 我々は『悪魔城ドラキュラ』シリーズも大好きでして。本作は基本的に『悪魔城ドラキュラ』の攻撃システムを参考にしているんですよ。
ケニー たとえばキャラクターの動きは、シリーズのなかでも新しいもの、ニンテンドーDSでリリースされた『悪魔城ドラキュラ 蒼月の十字架』、『悪魔城ドラキュラ ギャラリー オブ ラビリンス』を参考にしています。あと、ファミコンでリリースされた初代『悪魔城ドラキュラ』は、アタックウィンドウが狭いからこそ楽しめるバトルシステムになっていて、そのあたりにも影響を受けています。
――ドット絵のグラフィックも可愛らしいですね。
ケニー 私たちはドット絵が大好きで、昔からファミコンやスーパーファミコンのゲームを作りたいと思っていました。ただ技術の進化で、ゲーム業界自体は3Dへ移行してしまい、ちょっと寂しい気持ちを感じていたんです。自分たちのゲームは好きなスタイルで作りたかったので、ドット絵を採用したんですよ。本作のアーティストはブラジル人なのですが、彼も『ロックマンX』をはじめとする日本のゲームが大好きなんです。なので、本作のグラフィックは彼の好み、テイストがいちばん反映されていると思います。ただ、若い世代には、こういうドット絵が受け入れられない人もいて。
――ああ、日本でも若い世代だと「ドット絵は手抜き」と感じることがあるようです。海外でも同じなんですね。
ケニー ええ、海外でもそういうイメージがあって、ドット絵は安上がりとか手抜きとか思う人もいます。我々は安上がりだからという理由ではなく、ドット絵で表現したいから採用したんです。じつは次回作も開発がスタートしていて、そちらもドット絵の作品になりますよ。