興奮冷めやらぬ会場で直撃
既報の通り、2014年12月13日(現地時間)、アメリカ・サンフランシスコのダウンタウンにある劇場ウォーフィールドにて、『ウルトラストリートファイターIV』の世界大会“カプコンカップ ファイナルズ 2014”が開催された。結果はご存じの通り、日本のももち選手の劇的な勝利で幕を閉じたわけだが、興奮も冷めやらぬ会場で、カプコン・小野義徳氏と優勝したももち選手にお話を伺うことができたので、その模様をお届けしよう。
[関連記事]
『ウルトラストリートファイターIV』世界一を目指す長く熱い1日 日本のももち選手が優勝した“カプコンカップ ファイナルズ 2014”詳細リポート
■カプコン・小野義徳氏
「『ストリートファイターV』は歴代シリーズのプレイヤーが “全員集合”できるタイトルに!」
――今回の“カプコンカップファイナルズ 2014”を開催してみての手応えはいかがですか?
小野 カプコンカップという名前で始めて、今年で3~4回目くらいになるのですが、その前からいくつかサンフランシスコで大会をやってきていて、最初の“無印”のときは、『ストリートファイターII』と同じような景色のサンフランシスコの波止場でやっていました。とても寒かったのですが(笑)。そのときから1000人単位のお客さんが来てくれていたので、今日も2000人くらいが来てくれていると思うのですが、非常にいままでの7年間培ったものがあって、皆さんが定期的に集まってくれるようになったなあというのが、幸せでもあり、達成感もあります。
――だんだん定着してきたという実感がある?
小野 そうですね。この6年、7年のあいだに、いままで小さく存在していた“ファイティングコミュニティー”というものが、みんなで連結し始めて、「じゃあ、夏はラスベガスのEVOに行こう」、「冬はカプコンカップに行こう」という流れができてきてくれたのが、非常にうれしいですね。
――なるほど。カプコンカップは、プロゲーマーの方の活躍を見に来るということと同時に、コミュニティーの交流の場として、楽しみに来ているのですね?
小野 そうですね。『ストリートファイター』シリーズってありがたくて、そんなにうまくなくても、見ていれば楽しくなるというところがあります。ルールがわからなくても、勝ち負けはわかる。ある意味で、いちばんいいスポーツだと思うんですね。柔道とかだと、わかりづらいから、けっこうもめたりするじゅないですか。1本取れたり、取れなかったり。それが、『ストリートファイター』だと、明らかに見ればわかる。そのなかではっきりとわかる体制のものが、“見て楽しい”、“遊んで楽しい”となる。で、家に帰ってから、「じゃあ、俺もやってみようかな」という気持ちになれるようなサイクルが、昔よりはもっとできてきたのかな……というのが、こういうイベントを開くと実感しますね。
――皆さん技が決まると、すごい盛り上がったりするのを見ると、「楽しんでいるなあ」と思いますね。
小野 そうですね。スポーツで言うと、野球で、「あいつから、あの球を打ったか!?」というときに、「うわーっ」というのと同じで、決まったときの難しさは、見ている人たちもわかっているし、やっているプレイヤーたちも、「ここで、こういうのを決めてやろう」というのが、ばちっとハマったときは、一気に流れができて、試合を決めてしまうこともあるし、そこがお客さんとプレイヤーの一体感が、だいぶきちんとできてきたのかなとは思っています。
――選手もアスリートみたいな感じですよね。
小野 そうですね。エンターティナーでもあり、最近はeスポーツとよく言われていますけれど、そういう意味ではアスリートに近いかもしれませんね。“勝つためにどうしなければいけないのか?”とかをつねに考えている。あとは、“勝ちかたをどうしないといけないのか?“も、よく考えていると思うんですね。おもしろくない勝ちかたをしようと思ったらできるんですよ。僕らはよく“置きにいく”というのですが、手堅い勝ちかたをするプレイヤーは、よくは勝っていくんだけど、大会では人気がなかったりとかします。置きにいくからこそ、ミラクルな逆転劇も起きない。なので、若干、その人たちは、最後は勝ち残れなかったりするわけです。ある程度冒してはいけないところを一歩前に出て、やってくれるほうが、お客さんも喜ぶし、じつはそのほうが最後勝ち上がったりするんです。そういう奇想天外なことが起きるので、そういった部分は、『ストリートファイターIV』というシリーズが6年、7年続いたからこそ、いろいろな“窓口”がみんな見えてきて、「ああ、定番で来たということは、俺はこうしてやろう」という、引き出しが、みんなもてるようになっているので、そこがドラマが大きく生まれるようになったのかなと思っています。
――今日、『ストリートファイターV』に関する新発表がありましたね。
小野 はい! ナッシュの参戦が発表されました。ナッシュって、ガイルが探していた男なのですが、いままでプレアブルになったのは『ストリートファイターZERO』だけだったんですね。『IV』でまたくるかな?と皆さん思っていらしたようですが、出なくて。ついに、『V』 で、ナッシュが出ることになりました。
――なぜ、ナッシュが出ることになったのですか?
小野 ストーリーの関係上です! 奇想天外なストーリーを、だいぶ『IV』で直してきたのですが、まだまだ『IV』でもつじつまの合わないところが多くあったので、今回『V』はさらに綺麗に、『ストリートファイター』ユニバースを、辻褄があうようにしましょう……という中で、「これはナッシュを登場させないと、いけないな」というところがありました。あとは、この7年間、本当に「ナッシュがまだなのか?」という声が非常にファンから多かったので、じゃあ、ここで出します! と。ナッシュを出せば、皆さんも「『IV』からのアップデートではなくて、大きく『V』で変えるんだ」というのを気づいてもらえると思ったので、今日はナッシュを皆さんにお見せしようと。
――『V』では、キャラクターがけっこう追加する感じに?
小野 これ以上追加すると、44キャラ以上になってしまうので、1回リセットで戻してから、斬新だけど、いままでのプレイスタイルはなるべく変えないようにしてあげるような、キャラクター選択はしてあげようと思っています。リュウや春麗などの定番は入るだろうけれど、まわりを固めている人たちは、少し変えてみたいなと思っています。
――キャラクターに関しては、今後の楽しみでもありそうですね。
小野 そうですね。
――ずばり、『ストリートファイターV』のテーマって何ですか?
小野 僕らは、『ストリートファイター』シリーズのプレイヤーが全員再集合してほしいなと思っています。これは、プレイスタイルであったりとか、キャラクターを選ぶときもそうなのですが、『IV』では、最終的に『ウルトラ』は、研ぎ澄まれてきたので、もう1回僕らは、全員集合してもらいましょうと。『IV』のときは、『II』にかなり近かったのですが、『V』では『II』ではなくて、いままでの『ZERO』や『III』など、すべてのユーザーの皆さんに『V』は提供したいと思っています。ぜひ楽しみにしていてください!
■ももち選手
「ルーザーズにまわってからは、見ている人が楽しめる試合ができたらいいなと思っていた」
――優勝しての率直な感想をお願いします。
ももち 率直にうれしいです!
――大会前、優勝できるとおもっていらっしゃいました?
ももち ちょっと前の日本の大会で、いい成績を収められたので、この大会に向けてかなり準備はできていたので、自信はかなりありました。
――決勝戦はシアン選手がポイズンを選択してきましたが、戸惑いとかはなかったのですか?
ももち ポイズンの対策がぜんぜんできていなかったので、ずっとあのキャラクターを使われたほうが、嫌ではあったのですが、シアン選手は元のほうが強いので、最終的には元を選択されたのだと思います。
――対策ができていなかったというポイズン相手でも勝てたというのが、勝因ですかね?
ももち 内容なすごいギリギリでした。
――元になってからは、比較的ラクに?
ももち とはいえ、シアン選手も元はやり込んでいるので、粘り強く攻めてきていましたね。
――決勝戦はどんな気持ちで?
ももち ウィナーズトーナメントのときは“負けたくない”という気持ちでやっていて、「これじゃ、ダメだな」と思ったんですね。(ルーザーズトーナメントに入ってからは)どちらかというと、勝ち負けよりは、「いい試合をしよう」という思いでいて、決勝も、勝った負けたよりは、見ている人が楽しめる試合ができたたらいいな、と思っていました。それで、結果がついてきました。
――ファイナルラウンドはすごい長丁場になりましたよね。たいへんじゃなかったですか?
ももち 優勝するときは、自分はルーザーズから上がることが多いんです。ウイナーズで、さくさくいくと、ウイナーズ側で息切れして、逆転負けするということが多いんです。今回は、どちらかと言うと、チャレンジャーの気持ちで、ルーザーズから行けたので、それがよかったのだと思っています。
――今回1回負けて、逆によかった?
ももち そうですね。自分としてはネガティブな気持ちはなかったです。行くだけなので。逆に後ろにも引けなくなったので、それがよかったです。
――ちなみに、いちばんきつかった試合は?
ももち 結果的に見ると、ライアン選手ですね。1回負けてしまって、ルーザーズで勝った試合も、超ギリギリだったので。
――あの試合はしびれましたね。
ももち 逆にあそこで勝てたので、「今日は自分に流れがあるんじゃないかな?」と思えました。
――ああ! あそこで勝てたことで、行けると思った?
ももち そうですね。自分のターニングポイントになりました。
――あの試合の勝因は?
ももち あれはもう、最終ラウンドですね。最終ラウンドが、相手の攻撃がぼこぼこあたって、一気に自分の体力が7割くらいなくなったのですが、ウイナーズで負けたときは、さっきも言った「負けたくない」という気持ちで、ずっと下がっていて、ジリ貧になったので、このときは、「悔いがないように」という気持ちで前のめりでいった結果が逆転につながったかなと。
――ももち選手の優勝で、日本でもさらに『ウルトラストリートファイターIV』が盛り上がってくるかと思いますが、ファンの方にひと言お願いします。
ももち 『ウルIV』は初心者から上級者まで楽しめるゲームです。まずは動画で興味を持った方は始めてくれるとうれしいですね。
――それとともに、ももちさんは“カプコンカップ ファイナルズ”に優勝したことで、狙われる立場になるわけですが……。
ももち 「俺を倒しにこい!」と(笑)。