世界最高の16人が集結

 2014年12月13日(現地時間)、アメリカ・サンフランシスコのダウンタウンにある劇場ウォーフィールドにて、『ウルトラストリートファイターIV』の世界大会“カプコンカップ ファイナルズ 2014”が開催された。大会では、“スペシャルアナウンスメントとして、先日発表されたばかりの 『ストリートファイターV』にナッシュの参戦が発表されたり、さらには、『ストリートファイターV』の世界初プレイアブルデモが披露されたりと、極めて見どころの多いイベントとなったわけだが、ここでは、その模様をリポートしていこう。

『ウルトラストリートファイターIV』世界一を目指す長く熱い1日 日本のももち選手が優勝した“カプコンカップ ファイナルズ 2014”詳細リポート_03
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▲会場となったウォーフィールドは由緒正しい劇場のよう(左)。会場では春麗さんもお出迎え。

 “カプコンカップ ファイナルズ 2014”は、『ウルトラストリートファイターIV』の名だたる16選手により、ナンバーワン競う大会。16人の選考基準は、カプコンが2014年に実施した“カプコンプロトーナメント”の認定された10大会のいずれかに優勝するか、その大会の上位に入賞すると与えられるポイントの獲得者上位6名に入ると権利を得られるというもの。まあ、平たく言えば、真のチャンピオンを決める戦いと思っておけば間違いないだろう。優勝賞金の高さも大会を嫌が上にも盛り上げており、総額は50000ドル(約593万円)、うち優勝者に与えられるのは30000ドル(約359万円)という高額を誇る。

 今回注目したいのは、やはり日本人選手。本大会にはニシキン選手ももち選手ぼんちゃん選手ふ~ど選手ウメハラ選手の5名(出場番順)が参加し、トップを目指して戦った。ここでは、彼らのプレイぶりを中心にトーナメントの結果を追いかけてみよう。

 と、その前に駆け足で本大会のルールを説明しておこう。本大会は、3ラウンドの試合を3戦行うというトーナメント方式を採用。さらに、一度敗れてもルーザー側のトーナメントに以降して戦えるという、“ダブルイルミネーション”となっている。つまり、1回は負けても優勝は狙えるというわけだ。

■1回戦 日本人選手5人の結果は……?

 さて、1回戦はニシキン選手とフランスのルフィ選手のバトルからスタート。このルフィ選手、世界最大級の格闘ゲームイベント“EVO 2014”を制した実力者。切れ味鋭いローズ使いだ。しかもこのルフィ選手、参加選手の中では珍しくコントローラを使用(しかも、なぜか初代プレイステーション)。多くの選手がプロ仕様のアーケードスティックを持ち込む本大会にあって、少し異彩を放っていた。とはいえ、その戦いぶりは冷静そのもので、ニシキン選手のブランカを寄せ付けず、2対1(2-0、0-2、2-0)でルフィ選手の勝利となった。その後ルフィ選手は2回戦、3回戦と危なげなくストレートで勝ち上がっていくことを思うと、ニシキン選手はぎりぎりまでルフィ選手を追い詰めたと言えるだろう。

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▲スポーツ中継のように、映像で対決を盛り上げる。個人的には、自分専用のアーケードスティックを持ち込んで、精神を集中して対戦相手と戦う雰囲気がテニスとかに近いのかな……と思ったり。

 1回戦の第3試合に登場したももち選手の対戦相手は、“EVO 2014”ベスト4の実力を誇るアメリカのスネークアイズ選手。アメリカ屈指のザンギエフ使いということで、その戦いぶりに注目が集まったが、ももち選手が駆使するケンが一蹴。2対0(2-1、2-1)と戦いを制し、まずは順調なスタートを切った。

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▲ふ~ど選手(左)とぼんちゃん選手(右)という、1回戦から日本人対決に。ちなみに参加者の内訳は、日本人とアメリカ人が5人、フランス人がふたり、あとはイギリス、韓国、シンガポール、ブラジルがひとりずつ。

 1回戦第5試合は、ぼんちゃん選手ふ~ど選手との日本人対決に。かたや“カプコンプロトーナメント”ポイントラインキング2位、かたや“EVO 2014”3位の実力差どうしの戦いということで、接戦が予想されたが、結果はふ~ど選手(フェイロン)が、ぼんちゃん選手(サガット)を押し切り、2対0(2-0、2-0)という一方的な試合に。ふ~ど選手の切れ味鋭いフェイロンぶりが際立つ結果となった。ふ~ど選手が去り際に見せた小さなガッツポーズが、自身にとって会心の試合だったことをうかがわせた。

 期待のウメハラ選手が登場したのは、1回戦最後の第8試合。対戦相手はジャスティン・ウォン選手ウメハラ選手との激闘で、日本のゲームファンのあいだでもおなじみのアメリカを代表するゲーマー、“レッツゴー! ジャスティン”のジャスティン・ウォン選手だ(※過去にファミ通.comでの過去のインタビュー記事をご紹介)。激戦再びか……? と思われたが、結果はあっさり2対0(2-0、2-0)とウメハラ選手の殺意の波動に目覚めたリュウが、ジャスティン選手/ルーファスを破った。『ウルトラストリートファイターIV』から、殺意の波動に目覚めたリュウに使用キャラクターを変更し、好調ぶりを持続しているウメハラ選手だが、1回戦はその好調さを見せつける結果となった。とくにジャスティン選手相手の怒涛のラッシュは、このまま“ウィナーズファイナル”まで行くのではないかと思わせる凄みを感じさせた。

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▲ジャスティン・ウォン選手との因縁(?)の戦いを制したウメハラ選手。このまま優勝まで突っ走るのではないかと思われたが……。ちなみに、ウメハラ選手は海外では“Daigo”と呼ばれているようです。

■ルーザーズトーナメント1回戦 ニシキン選手とぼんちゃん選手は?

 さて、フランス・ルフィ選手に敗れたことで、ルーザーズトーナメントに回ったニシキン選手(ブランカ)の相手は、1回戦第2試合で参加中唯一の女性プレイヤー、リッキー・オルティス選手(ルーファス)に敗れた、アメリカのバイソン使い、PRバルログ選手。このRPバルログ選手のラッシュたるやすさまじく、動きの素早いニシキン選手のブランカにしっかりと対応。2対0(2-1、2-1)でニシキン選手を倒すという結果に。これで、2回負けたニシキン選手は、早くも大会を去るという苦い結果となった。

 一方、ふ~ど選手に敗れてルーザーズトーナメントとなったぼんちゃん選手は、1回戦第6試合で韓国のインフィルトレーション選手に屈した、ブラジルのプレイヤーChuChu選手。サガットvsヴァイパーとなったこの戦いは、ぼんちゃん選手が危なげなく2対0(2-0、2-1)でChuChu選手を撃破。ルーザーズトーナメントの1回戦を勝ち上がった。

■2回戦 日本人選手がつぎつぎと……

 2回戦第2試合、ももち選手の相手は、イギリスのベテランゲーマー、ライアン・ハート選手。日本人より日本語が堪能で、度々来日も果たしているところから(たとえばこちらの記事をご参照のこと)、おなじみのゲームファンも多いことと思われるが、今回はリュウで参戦。リュウ(ライアン・ハート選手)対ケン(ももち選手)という、何ともアツいバトルが実現することに。1試合目はハート選手に押し切られたももち選手だったが、2試合目は的確な攻撃で対応し、勝利。そのまますんなり勝利するかと思われたのだが、3試合目はハート選手の巧みさにしてやられて0-2に。結果2対1(2-1、1-2、2-0)で敗れるという結果になってしまった。

 引き続き、2回戦第3試合に登場したのは、ふ~ど選手。対戦相手は、韓国のインフィルトレーション選手だ。1回戦では春麗を駆使していたインフィルトレーション選手だが、この2回戦ではふ~ど選手/フェイロンとの相性を考えたのか、エレナにチェンジ。この変更が功を奏したのか、変幻自在な動きでふ~ど選手/フェイロンを幻惑。1試合目は2-0のストレートで勝利するという結果に。まさに、1回戦目の勢いを止められてしまった形になったふ~ど選手に対し、「これはちょっと対応がきびしいかな……」と思われたが、そこはふ~ど選手。2試合目は見事に修正し、インフィルトレーション選手/エレナの動きにきっちり対応。逆に2-0で勝利することに。となると、「このまま、ふ~ど選手が押しきれるか?」と期待されたものの、そこは、韓国最強のプレイヤーとも目されるインフィルトレーション選手のこと。3試合目は一進一退の攻防に。まさに間合い地獄といったていで、見ているこちら側までじりじりとした緊張感が伝わるほどの好試合に。最終的には、インフィルトレーション選手が紙一重の戦いで間合い戦を制し、2対1(2-0、0-2、2-0)でふ~ど選手に勝利した。

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▲緊張感のある間合い戦は、本大会の好勝負のひとつではないかと。

 2回戦に入って、日本人スター選手がふたり続けて敗戦ということで、日本人にとっては嫌な流れのなかで、第4試合に登場したのが、ウメハラ選手。対戦相手はシンガポールの新鋭で、“EVO 2013”のチャンピオンでもあるシエン選手だ。元やポイズンの使い手として知られるシエン選手が、この大一番で選んだキャラクターは、ダルシム。トリッキーな動きで相手を惑わそうとするシエン選手/ダルシムに対し、ウメハラ選手/殺意の波動に目覚めたリュウが正面から応酬。まさにぎりぎりの戦いとなったが、最後はシエン選手ウメハラ選手を振り切り、2対1(2-0、1-2、2-1)で勝利。シエン選手が見せた大きなガッツポーズが、勝利のうれしさを物語っていた。

 というわけで、2回戦を終えて、日本人選手はすべてルーザーズトーナメントに回るという意外な結果になった。

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▲ウメハラ選手を倒しガッツポーズを見せるシエン選手。やはりどの選手にとっても、ウメハラ選手を倒すことはひとつの目標のようです。

■ルーザーズトーナメント2回戦 ウメハラ選手の命運は……

 ルーザーズトーナメント2回戦の1試合目は、ぼんちゃん選手(サガット)vsももち選手(ケン)という日本人対決となった。結果は安定した戦いぶりを見せたももち選手が2対1(1-2、2-0、2-1)で逆転勝利。ルーザーズトーナメント3回戦にコマを進めた。一方のぼんちゃん選手の“カプコンカップ ファイナルズ 2014”は、ここで幕を閉じた。

 ルーザーズトーナメント2回戦の2試合目に登場したのは、ふ~ど選手。対戦相手はアメリカのナックルデュー選手。1回戦でライアン・ハート選手に屈しながらも、ルーザーズトーナメント1回戦でスネークアイズ選手を破って勝ち残ってきた選手だ。ガイルを駆使する大会最年少の18歳の新鋭となるナックルデュー選手だが、さすがにふ~ど選手相手は少し荷が重かったのか、2対0(0-2、0-2)という一方的な結果となった。一方のふ~ど選手は、1回戦に続いての完勝で、ここで勢いを取り戻したか……と思わせた。

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▲ウメハラ選手に勝利して、感に堪えない感じのPRバイソン選手(中央)。スポーツに番狂わせはつきものだが、それにしても、ウメハラ選手が敗退してしまうとは。

 さて、ルーザーズトーナメント2回戦の3試合目で大きな番狂わせが! ウメハラ選手(殺意の波動に目覚めたリュウ)が、PRバルログ選手(バイソン)に敗れてしまったのだ。1試合目はウメハラ選手が圧倒的な実力を見せてストレートで勝利、2試合目もラウンド1を取り、「このまま行きそうだなあ」と思わせたのもつかの間、そこからのPRバルログ選手のラッシュがすごかった。まさに、バイソンと同化したかのような怒涛のラッシュを見せ、2試合目のラウンド2から4本連続でウメハラ選手に勝利するという、恐るべき勢いを見せたのだ。当初、3試合勝負にしたのは、勢い任せでは勝てないことにするためかな……と思ったのだが、このくらいのレベルになると、勢いでけっこうなところまで行けるのかも……と感じさせた。それにしても、スポーツ全般に言えることだが、勢いというのは恐ろしいものだ。ちなみに、今回“カプコンカップ ファイナルズ 2014”には5人のアメリカ人選手が参加しているのだが、この段階で優勝の可能性があったのは、このPRバルログ選手のみ。PRバルログ選手ウメハラ選手に勝利したときの、「USA! USA! USA!」の大合唱は、本当にうれしそうだった。いずれにせよ、ウメハラ選手の敗退が、これで決まった。

■ルーザーズトーナメント3回戦、4回戦、5回戦 バイソンの勢い止まらず!?

 本当に勢いとは恐ろしいもので、ルーザーズトーナメント3回戦に入っても、PRバルログ選手(バイソン)の勢いは衰えない。対戦相手は……日本のふ~ど選手(フェイロン)。1試合目はスピード感のある動きで、PRバルログ選手を抑え、「これは、さすがにフェイロンには通用しないのでは……」と思わせたのもつかのま、怒涛のラッシュ再び……とばかりに猛攻撃を見せ、4本連続で奪取。2対1(0-2、2-0、2-0)でふ~ど選手を一蹴してしまったのだ。「USA! USA! USA!」の大合唱再びとなった。ここでまた、日本人選手がひとり脱落してしまった。

 なお、その勢いから、「このまま優勝まで行くんじゃね?」と思った来場者も多かったかもしれないPRバルログ選手だが、つぎのルーザーズトーナメント4回戦で、インフィルトレーション選手にあっさりと敗れている。ふ~ど選手のときはエレナを使用したインフィルトレーション選手は、対PRバルログ選手戦では得意の豪鬼を選択し、2対0(2-0、2-0)で1本も許さずに完勝。来場者を大いに悲しませた。とはいえ、ニシキン選手ウメハラ選手ふ~ど選手を倒し、まさに“日本人選手キラー”となったPRバルログ選手は、本大会でもっとも印象に残った選手のひとりといって差し支えないだろう。

 少し先走り過ぎてしまったが、ルーザーズトーナメント3回戦に話を戻すと、第2試合目に登場したのがももち選手。対戦相手はフランスのヴァルマスター選手だ。“ヨーロッパ最強の春麗使い”とも言われるヴァルマスター選手だが、ももち選手(ケン)はこの実力派を物ともせず、2対0(2-0、2-0)で圧勝した。

 そんなももち選手の前に再び立ちはだかったのが、フランスのルフィ選手に敗れてルーザーズトーナメントに回ってきたイギリスのライアン・ハート選手。2回戦の再戦となる。対戦キャラクターは前回と同じくケン(ももち選手)vsリュウ(ハート選手)となった。まさに、一進一退となったこの試合は、ももち選手から見て、×○○ ○×× ○×○というシーソーゲームに。ぎりぎりの戦いを見せて、ももち選手が雪辱を果たした。

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▲ももち選手の逆転勝利に大盛り上がりの会場。皆さん総じて、逆転劇を好む傾向があるようです。やはり、劇的な戦いが好きなようで……。

 ももち選手の勢いはそのまま止まらずに、ルーザーズトーナメント5回戦では、韓国の実力者インフィルトレーション選手を2対0(2-1、2-0)とあっさりと撃破。ふ~ど選手や、本大会でもっとも勢いのあったPRバルログ選手を破るなど、その実力を遺憾なく見せつけたインフィルトレーション選手だが、ももち選手の前にあえなく屈することとなった。それにしてもルーザーズトーナメントに移ってからの、ももち選手の研ぎ澄まされた勝負感覚が光る試合となった。

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▲戦いの合間には、バンドによる演奏も。彼らはThe Megas。その名前から想像ができるとおり、『ロックマン』を中心にゲーム音楽のカバーをしているようです。