Virtuosの日本人クリエイターが語る、『新生FFXIV』開発3年間の苦闘の日々

中国屈指の開発会社であるVirtuos社。ここでは、訪問取材の最後として、『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』のアセット制作に関わっている橋口浩之氏へのインタビューをお届けしよう。

●多くのファンに愛されている『新生FFXIV』のアセットを作るのは、それこそ命懸け

 中国屈指の開発会社であるVirtuos社。ここでは、訪問取材の最後として、『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』(以下、『新生FFXIV』)のアセット制作に関わっている橋口浩之氏へのインタビューをお届けしよう。橋口氏は、Virtuosにおける『新生FFXIV』アセット制作チームの責任者だ。

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――まずは、『新生FFXIV』で担当しているお仕事からお教えください。
橋口 私が担当させていただいているのは、『新生FFXIV』で使われる一部キャラクターのアセット(素材)制作のプロジェクト管理です。モンスターだったり、武器だったり、装備だったり、アクセサリーだったり。あとはアニメーション(動き)のほうも手掛けています。『新生FFXIV』の仕事を始めたのは2011年6月くらいなので、まる3年になります。ちょうど『新生FFXIV』が始まって最初のころに声をかけていただいて、最初はテストから始まって、いまに至る感じです。

――最初はテストがあったのですか?
橋口 テストというか、“お試し”みたいなものでしょうか。日本でプロジェクトを担当するカイオスの記野さん経由でお話をいただいて、仕事をさせていただけるようになった感じです。最初にやらせていただくことになったのは、『ファイナルファンタジー』を遊んでいる方だったら、誰でもご存じの伝統的なモンスターでして……。

――どんなモンスターだったか、気になりますね。
橋口 ベヒーモスです。僕らにも「ベヒーモスはすごく重要なモンスター」という認識があったので、提供されたアートを元に、制作チームでも気合を入れてモデルを作ったんですね。ところが、途中の段階で提出したところ、「これはぜんぜん違う」「『ファイナルファンタジー』と言えるレベルには達していない」と言われてしまって……。

――それはきびしいですね……。
橋口 そうなんです。凹みました。ちょっと受け止め切れない感じでした。で、スクウェア・エニックスの方から「重要なモンスターではなくて、もうちょっと小さなものにしましょうか?」と提案をいただいたんです。そこで、制作ディレクターと話をして、できれば、もう1回トライしたいということになりまして。

――さすがに、このまま引き下がるのも……というところだったんですね?
橋口 はい。で、「もう1回チャンスをください」とスクウェア・エニックスさんにお願いをしたんです。そこから改めて“ベヒーモスとは何か?”というのを考え直して、歴代のデザインを研究して、私たちのできうる限りのベヒーモスを作り上げていったんです。そこでスクウェア・エニックスさんに提出したところ、「『ファイナルファンタジーXIV』にふさわしい出来に達しています」と言っていただきまして。

――おお! 合格したんですね。
橋口 最初に提出したものは、明らかに迫力が足りていなかったんです。最初に迫力が出せなかったのは、明らかに僕たちの経験不足だったのですが、2回目はアーティストががんばってくれました。

――そこからは『新生FFXIV』の仕事を続々とこなしつつ?
橋口 とんでもない! 仕事で信頼を勝ち取るのは難しいです。ベヒーモスのモデル作成で「ある程度はできるかな」くらいの手応えを感じたのですが、それとほぼ同時に手掛けていた武器のアセットがうまくいかなくて(笑)。いただいた原画をポリゴンに落とし込む作業だったのですが、何回もリテイクがあったので、担当していた統括ディレクターも「どうすればいいんだろう?」と相当悩んでいましたね。最初に想定していたよりも、かなり時間がかかってしまいました。最終的には、東京ゲームショウのタイミングで日本に行く機会があったので、スクウェア・エニックスさんで実際に打ち合わせをしたのですが、いろいろとご指摘をいただいて、いい刺激になりました。

――なかなかにきびしいですね。
橋口 当社の統括ディレクターが本当にびっくりするくらい目標は高かったです。「これが、『ファイナルファンタジー』クオリティーか!」という感じでした。


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▲Virtuosがアセットの制作に関わったベヒーモス(左)とティターン(右)。
※すべてのアセットは最終的にスクウェア・エニックス内製の手が加えられています。

――そこから3年いっしょに仕事をされてきて、どのへんで「いける!」という手応えが?
橋口 自信は、いまもないです(笑)。『新生FFXIV』のお仕事に関しては、ずっと一部のモンスターと武器のカテゴリーを担当させていただいていますが、いまでもスクウェア・エニックスさんからのフィードバックがゼロになることはなくて……。どんなにがんばっても何かしらご指摘をいただくということで、スクウェア・エニックスさんの望まれるレベルまで達しているかどうかは、まったくもって自信がないです。

――け、謙虚ですね……。とはいえ、3年間仕事を継続しているということが、スクウェア・エニックスさんから信頼感が厚いことを物語っているのでは?
橋口 だといいのですが(笑)。ちなみに、私どもでは、スタッフのモチベーションアップにもつながるということで、提出したアセット素材に対して、スクウェア・エニックスさんから点数をつけていただいているんですよ。

――おもしろいですね。なんか、学校みたい(笑)。
橋口 スクウェア・エニックスのご担当の方が、どれだけ満足されているかも知りたくて、気がついたら始まっていました(笑)。最近はちょくちょく100点をつけてもらうこともあって、そういうときはやっぱりとてもうれしいですね。スタッフみんなで喜んでいます。

――満点といったら、すごいじゃないですか!
橋口 とはいえ、まだまだです! スクウェア・エニックスさんのクオリティーに対するこだわりは群を抜いています。たとえば、スクウェア・エニックスさんに手直ししていただいた当社で制作したデータに接する機会もあるのですが、そんなときは、私たちの作ったデータとのクオリティーの違いにびっくりします。私たちが制作したときは、スクウェア・エニックスのご担当の方からお褒めの言葉もいただいていて、けっこう手応えを感じていたりしたんです。それが、いざ手直しされたものを見ると、明らかにクオリティーに違いがある。そんなときは、「まだまだだ」と思いますし、逆に励みになる部分でもあります。

――せっかくの機会なので、『新生FFXIV』で、「これは見てほしい」というアセットを教えてください。
橋口 モンスターだと、クリスタルタワーに登場する“イエロードラゴン”や“不壊のガーディアン”のモデルを制作させてもらっています。これは、たくさんのアセットに共通することなのですが、最初にいただく原画はすごく繊細に描かれていて、色合いはけっこうシンプルだったりするんです。それを3D化するにあたって、そこからいかにディテールを付け加えていくかとか、どう色をつけていくかというのがものすごく重要です。そこは、フィギュアを観察したり、モンスターに近い質感の動物を参考にしてみたりもしますが、最終的に問われるのは“センス”です。そこは全員が全員持てるわけでもないのですが、いちばん追求してみたい領域でもあります。

――たしかに、センスは教えてもどうにもならない領域かもしれませんね。
橋口 そうですね。あまり言葉でも伝わらないですし、劇的に変化するわけでもないので、難しいところです。基本的には、全員が意識して力をつけていかないといけないかなと。

――この夏から、中国でも『新生FFXIV』のベータテストがスタートしますし、プレイ人口はさらに広がりそうですね。
橋口 世界中の多くの方にプレイしていただいているゲームの一端に関わらせていただいている……という意味で、とても誇りに思います。子どものころは、男3人兄弟でよくゲームを遊んでいたのですが、『ファイナルファンタジー』シリーズは、燦然と輝くタイトルです。まさに日本のゲームを代表するタイトルですし、『新生FFXIV』のお話をいただいたときは、びっくりしました。ゲームの配信が開始されて、自分たちが作ったアセットも世界中の人たちに触れられているのを見ると “運がよすぎ”といいますか(笑)、この上ない幸せを感じます。

――今後とも、『新生FFXIV』のお仕事は継続していく?
橋口 もちろんです! 私は、『ファイナルファンタジー』は世界一のゲームだと思っています。「ゲームといったら、『ファイナルファンタジー』というユーザーは、世界中にいっぱいいますし、皆さんの思いに足るだけのアセットを作るために、命懸けでやりたいという思いでいます。

――アツいですね。では、最後に今後「『新生FFXIV』で、こんな仕事をしたい!」といった希望がありましたら、教えてください。
橋口 最近モンスターのモーションをテストさせていただいたんですよ。近日中に実装させていただけるのかな……と。

――“希望”というよりは、ほとんど現実になっているじゃないですか(笑)。“夢”みたいなものを……。
橋口 では、企画です!

――それはいきなり大きく出ましたね(笑)。
橋口 もっともっとお仕事をいただいて、いずれはやらせていただけたら……と思っています。

 CEOのジル・ランゴリ氏がインタビューで言及している通り、Virtuosは日本メーカーへのアプローチを積極的に展開(⇒記事はこちら)、日本人の担当者がふたり在籍している。「日本メーカーとの数多くのプロジェクトを、すべてふたりでこなしているんです。ただ、“日本人だから……”ということではなくて、日本人であることを抜きにして、このふたりはコミュニケーション能力やスキルがとても高いんです。本当に優秀なふたりです」とは、日本でVirtuosの窓口を務めるカイオスの記野直子氏の言葉。

 異国の地で、同じ日本人ががんばっているのを見るのは、やはり誇らしい。今後の活躍を期待したいところだ。


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▲インタビューに答えてくれた橋口浩之氏(左)と、Virtuosのもうひとりの日本人クリエイター中川亮氏(右)。