●『ストライダー飛竜』シリーズの原点を振り返る

 『ストライダー飛竜』は1980年代にアーケードでリリースされ、後に『ストライダー飛竜1&2』としてプレイステーションで発売されたアクションゲームである。プレイステーション3で2月22日に発売されたシリーズ最新作『ストライダー飛竜』には、初代『ストライダー飛竜』が含まれた『ストライダー飛竜1&2』のプロダクトコードが同梱されている。
 ここでは新生『ストライダー飛竜』の発売を記念し、原点である初代『ストライダー飛竜』の魅力を、古株ライター、石井ぜんじがインプレッションする。

※PS3版『ストライダー飛竜』プレイインプレッションはこちら

▲『ロストワールド』『大魔界村』に次いで、CPシステム第3弾としてゲームセンターに登場した。プレイヤーは超人的な体術を駆使する飛竜を操り、世界の滅亡をもくろむ冥王グランドマスターの野望を打ち砕いていく。

●時代を超えてプレイヤーを惹きつける『ストライダー飛竜』の世界観

 ここで紹介する『ストライダー飛竜』は、1989年3月にアーケードゲームとして発売された作品である。それから20年以上の時が経ち、同シリーズがいまなお熱い人気を保っているのは、その世界観とキャラクターの魅力によるところが大きい。
 主人公の飛竜は、ストライダーと呼ばれる戦闘と諜報のプロ。それも特A級のストライダーである。飛竜のいでたちは忍者を思わせるところがあるが、古風な忍者そのものとは違い、現代的な衣装をまとっている。忍者が持っている凄みとカッコよさを、現代風にアレンジし、新たな姿として提示しているのだ。
 戦いの舞台となるのは、酷寒のシベリア、空中戦艦、アマゾンなど。これらのステージで、悪のカリスマ、冥王グランドマスターが率いるさまざまな敵を倒しながら進んでいく。飛竜だけでなく、賞金稼ぎのソロ、東風三姉妹(いわゆる中国娘)など、ライバルキャラクターも魅力的だ。これらのキャラクターは再解釈された最新作でも登場しており、その人気のほどがうかがえる。
 本作はもともとアーケードゲームなので、ストーリーに関してはゲーム内では深く語られない。世界感を説明するテキストは、ほとんど存在しないと言ってよい。しかしだからこそ、その世界観はプレイヤーの想像力を刺激する。舞台背景やキャラクターの一挙手一投足が、能弁にプレイヤーに対して語りかけてくるのである。設定を読むのではなく、プレイして感じる。それがアーケードゲーム特有の世界観だといえるだろう。

▲絶対悪である冥王と、それに単身で挑む暗殺者。この構図はシリーズを通して変わらない。また本作では、中国娘や賞金稼ぎのソロなど、印象に残る敵が数多く登場する。これらの敵は最新作でも登場しており、初代『ストライダー飛竜』へのリスペクトがうかがえる。

●『ストライダー飛竜』が示すアクションゲームの価値

 アーケードゲームの歴史という観点で『ストライダー飛竜』を評するとき、やはりいちばんに挙げられるのは、アクション部分の独創性である。画期的なのが、プレイヤーが接地している地面が平らではなく、斜めだったり曲面だったりするところだ。
 1980年代のアクションゲームは、真横から見た視点で地面が平らであり、ジャンプして障害物を越えていくものが多い。1985年に大ヒットしたカプコンの『魔界村』もこのタイプである。『魔界村』は縦に何層もの段差を作ることで立体感を生みだしていたが、キャラクターの接する面は、原則的に横一直線である。
 ところが『ストライダー飛竜』では、モスクの円形ドームの上を歩いたり、崖の斜面を走り降りたりする。より立体的な空間と状況を表現しており、それが飛竜のアクションにうまく利用されていた。

 また重力を自在に操っているところもポイントだ。物を投げると放物線を描いて落ちるが、これを表現するには計算が必要になる。横視点のジャンプアクションは、これが可能になったから生み出されることになった。1980年代以降、ジャンプアクションゲームは似たようなスタイルの作品が大量生産され、一世を風靡することになる。
 ところが『ストライダー飛竜』は、発想のレベルが違った。ただ重力に引かれてジャンプするのではなく、重力に逆らって自在に動く体術の華麗さを、アクションで表現したのである。斜面を駆け下りて加速したり、ツルにつかまって移動し、反動をつけてジャンプしたりできるのだ。さらに反重力装置なるものを登場させ、天井を歩いたり、異常な重力に引き寄せられたりという、奇想天外な表現をやってみせた。
 この画期的なアクション性の数々は、1980年代にアーケードゲームに親しんでいたプレイヤーには衝撃的であった。アクションゲームの新たな可能性を、提示して見せてくれたからである。

▲丸みを帯びた屋根や、崖の斜面を飛竜は走破していく。さらに重力反転で天井を歩いたり、引き寄せられたりする。これらの表現はそれまでのアクションゲームにはない発想だった。

●プレイヤーへのサービス精神が生み出すワンダーな体験

 1980年から1990年にかけてゲームは技術革新が進み、優れたクリエイターが新たな驚きをつぎつぎと与えてくれた。『ストライダー飛竜』もまさにそのような作品である。これらの画期的なアクション表現は、開発スタッフのサービス精神があってこそ生み出されたものであろう。
 そのサービス精神は、プレイヤーが“やられた”ときのシーンにも見て取れる。単に敵に倒されたり、落ちてやられたりするだけではない。カタパルトによって空中高く放り投げられてしまったり、水場に落ちてピラニアに食べられたりするのだ。
 ゲームでミスした場合、悔しかったり嫌な気分になったりするのがふつうである。しかし『ストライダー飛竜』では、やられシーンの演出が凝っており、思わず笑ってしまう。ときにはそれをも通り越して、ポカーンとしてしまったりするのである。
 このような感覚を与えてくれるゲームはなかなか存在しない。そして、それを体験したプレイヤーには、忘れがたい大きなインパクトが残る。誰にも遊びやすく、終わった後にあまり印象に残らないゲームが増えてきた中、本作はまったく違うベクトルを持った作品なのである。

 当時ゲームセンターで本作に出会った人は、懐かしさとともに、あのころの感動をよみがえらせながらプレイしよう。まだプレイしたことがないなら、ぜひその独特のアクションを体験してほしい。そして本作で挑戦しようとしたことが、後のアクションゲームにどのような影響を与えたか、考えてみるのも一興といえるだろう。

▲立体的な地形を活かし、さまざまなトラップが仕掛けられている。だが、その罠に引っ掛かっても、嫌な気分にならないのがミソ。その仕掛けの裏には、作り手のサービス精神が透けて見える。

■筆者紹介:石井ぜんじ
おもにファミ通Xbox 360誌で攻略、クロスレビューを担当してきた古株ライター。最初に書いた原稿はカプコンのアーケードゲーム『魔界村』(1985年)。それから20数年、多くのカプコンゲームの原稿を書き続けてきました。これからも、ファンが喜ぶ記事作りを目指していきたいと思っています。