PS Vitaの機能を多数活用しているという部分では存在感が出せた『塊魂 ノ・ビ～タ』
SCE（ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン）の新ハードPlayStation Vita（以下PS Vita）が、2011年12月17日、ついに発売された。ファミ通.comでは、このPS Vitaとそのロンチタイトルの魅力に迫るインタビュー企画を連載中だ。今回は、バンダイナムコゲームスの『塊魂 ノ・ビ～タ』のディレクターを務める鈴木史洋氏に話を聞いた。
――ロンチタイトルというのは、通常のソフト発売を迎えるのと心境的にやはり違いはありますか？
鈴木 そうですね。ハード自体の売れ行きも気になりますし、ハードを買った人がどれだけ『塊魂 ノ・ビ～タ』を購入してくれるのかドキドキしますね。新ハードで新しい機能が多いと、こちらの想定しない使われかたをされることもあるので、ロンチタイトルというのは、やはり緊張しますね（笑）。
――ロンチタイトルとして発売した意図というのは？
鈴木 プレイステーション2から展開してきた『塊魂』シリーズですが、もっといろいろな人に知ってほしいという思いがあり、ソフトの存在感を示せるのはロンチタイトルだろうということで、本体と同時発売を目指しました。ただ、ロンチタイトルが20タイトル以上になるとは思いませんでしたね（笑）。ただ、『塊魂 ノ・ビ～タ』は、前面タッチパネルや背面タッチパッド、さらに“near”とも連動していますし、多彩なPS Vitaの機能を多数活用しているという部分では存在感が出せていると思います。また、自体はロングスパンで展開できる作品だと思いますので、今後、PlayStation Vitaを購入される方に、購入するソフトの選択肢に入れていただければとありがたいですね。PS Vitaの広がりに比例して、『塊魂 ノ・ビ～タ』もじわじわ販売本数を伸ばしていけたらいいなと思っています。
――その『塊魂 ノ・ビ～タ』のPS Vitaならではの特徴というか、ウリを教えていただけますか？
鈴木 手の中で塊を転がしている感覚が伝わる作品にしかったのですが、PS Vitaの特徴のひとつである背面タッチパッドの操作で、塊を横に伸ばしたり、縦に伸ばしたりする操作で、それが実現できたのかな、と思います。背面タッチパッドを使って、柔らかいものを変形している感じを楽しんでいただければ。
――PS Vitaで開発するに当たって、もっとも苦労したところはどこでしょう？
鈴木 その塊の変形がいちばん苦労したところです（笑）。開発当初はプレイステーション3版のソースコードをPS Vitaで動かす、つまりPS Vitaに移植するといったイメージで開発を始めたのですが、塊を変形させると思うように巻き込めなかったんです。それをいかに気持ちよく巻き込めるようにするか、という部分にけっこうな時間を費やしました。背面タッチパッドをゲームのおもしろさにいかに絡めるかというところでは成功したかなと思います。ただ、中指を背面タッチパッドに掛かるように持つ人、そうでない人など、人によってPS Vitaの持ちかたが違うので、どう解決するかというところは悩みました。背面に触れているつもりがないのに無意識に触れているとか。なので動かしたときのアソビの部分はけっこう入念に調整しました。『塊魂 ノ・ビ～タ』では、前面タッチパネルでも塊の変形ができますので、お好みの操作でプレイしていただければと思います。
――開発前と開発後とで、PS Vitaの印象は変化しましたか？
鈴木 開発前の第一印象は、有機ELディスプレイが本当にキレイだなというところでした。あと、ふたつのアナログスティックの操作感がものすごく快適に感じました。PS Vitaはアナログスティックがふたつあるということを最初に聞いたときは、『塊魂』にピッタリだなと感じてはいましたが、そのアナログスティックが予想以上に触り心地がよく、快適だったので『塊魂 ノ・ビ～タ』を作ってよかったなと思いましたね（笑）。
――PS Vitaでいちばん優れていると感じた部分は？
鈴木 多彩な機能がひとつにまとまって手元にある。しかも、個々の機能のレベルが高い。総合してバランスが取れたプロダクトという点ですね。聞いたときに「触ってみたい」と思いましたし。画面もキレイで持っていたい、と思いました。
――今後、PS Vitaで開発するうえで活用してみたい機能は？
鈴木 最近、ソーシャルゲームの台頭が著しいですが、ソーシャルゲームは極力複雑な要素を削り取っていってシンプルな形にしていますよね？ でも、やがてそのシンプルなおもしろさをキレイなグラフィックで、より直感的な操作で楽しみたい、という欲求が出てくると思うんです。PS Vitaなら、ゲームメーカーがそういったゲームを提供できるプラットフォームになり得るのではないか、と期待しています。
――『塊魂 ノ・ビ～タ』以外で注目している作品は？
鈴木 実際では味わえない世界ですけど、リアルに感じさせるところが魅力的に感じる『GRAVITY DAZE（グラヴィティ デイズ）/ 重力的眩暈：層への帰還、彼女の内宇宙に生じた摂動』です。
――最後に読者へメッセージをいただけますか？
鈴木 いままでの『塊魂』を知っている人には、より原点に近く、より濃くなった世界を楽しんでもらいたいです。ふたつのスティックを使った従来の操作もできますし、しかもさらに快適に感じてもらえるよう調整しています。もちろん、初めてプレイする人にも楽しんでもらえる作品になっていると思います。ダウンロードコンテンツ（DLC）も充実していて、お金で購入したり、ゲーム内でがんばると無料で手に入れることもできるんです。時間のない人はお金で解決していただいて（笑）、やり込み派の人は自力でDLCを無料で手に入れてください。
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