『アサシン クリード オリジンズ』というゲームをご存知でしょうか。激動の古代エジプトを舞台に、歴史の裏で活躍した主人公の生き様を描く大作です。
本作を遊んでの感想は人それぞれでしょう。“シリーズ最高傑作”との評価が散見する一方で、システム面での路線変更に戸惑ったファンもいるかもしれません。
ただし、多くのプレイヤーがまず間違いなく抱いたであろう感情がひとつだけ存在します。それは……
オープンワールドゲームではフィールドの広さがたびたび話題になりますが、本作で描かれるエジプトもまた、思わず笑っちゃうほど広大。エジプトの国土面積って、日本のおよそ3倍ですからね。物語がスタートするシワの村から、最初の目的地であるアレクサンドリアまでの道のりを調べたら、ちょうど東京⇔大阪間くらい離れてました。600kmって、暇な大学生が夏休み半分使ってヒッチハイクする距離ですよ。“自分探しの旅”に丁度いい距離。それをプロローグだけで消費しちゃうスケール感は『アサシン クリード オリジンズ』の魅力のひとつといえるでしょう。
当然、クリアまでにはその何倍もの道程を移動することになります。“自分探し”どころか、もうひとりのボク、2人目、3人目のボクまで見つけられそうな果てしない旅路。もはや無限1UP。
そして、そんな旅のお供として大活躍してくれる動物が
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ラクダです。
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ラクダ上で弓を構えているのが主人公のバエク。ゲーム史上最も屈強な“CV:福山潤”。
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移動のみならず、戦闘や逃走、狩りなど、様々なシチュエーションで主人公を助けてくれるラクダは、もはや相棒と呼んで差支えない存在。口笛ぴゅーい吹いたら一瞬で駆け寄ってきますからね。かわいいやつめ、そんなにぼくのことが好きか!
……あれ、好きだよね? 不安になってきた。もしかして、この感情は片想いなのでは?
もしもぼくが女子高生ならば、ラクダがつけるLINEの既読に右往左往し、「ラクダ君、アタシなんかに振り向いてくれないよね……」と心にそっと鍵をかけるのでしょうが、アタシ成人男性なので。小娘とは違いますので。
気になったら行動あるのみ! というわけで、ラクダライドが楽しめる“よこはま動物園ズーラシア”にやってきました。
ここで、ラクダのプロである飼育員さんに「もっとラクダに好かれるためにはどうすればいいのか」をお聞きします。「振り向いてくれないよね」なんて日和るんじゃねえ。己の力で振り向かせてみせろ。
ラクダに好かれる秘訣とは†
今回お話をうかがったラクダ担当飼育員の鈴木義明さん(右)、高橋亨祐さん(左)。そして中央はラクダのピノちゃん。たぷたぷの唇がかわいすぎます。
今日はラクダに好かれるためにやってきました。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
さっそくですが、ラクダと仲良くなる秘訣を教えていただけますか。
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ありません。
残念、ありませんでした……。帰ります……。
待ってください。我々が言いたいのは、動物に好かれる近道はないということなんです。
なるほど、そうだったんですね。早合点しちゃいました。すみません。
諦めが良すぎてびっくりしました。
マメにブラッシングしてあげたり、がんばってくれたら褒めてあげたり、地道なコミュニケーションの積み重ねが大切でして……。近道のようなものは存在しないかもしれませんね。人間関係と一緒ですよ。ラクダが求めていることを常に察して動く。
勉強になります。対人関係でのコミュ力が、動物相手にも応用できるんですね。
あとは、食べ物でしょうか。普段は牧草をあげているんですが、やっぱり美味しいペレット(固形餌)のほうが喜んで食べますよ。
どうしよう。ペレット、古代エジプトに存在しない可能性が高いです。
果物や野菜も大好きですよ。あげすぎは禁物ですが。
ご褒美感覚で与えるのがいいでしょうね。我々も、ラクダライドや訓練のあとにだけ食べさせるようにしてます。
そうそうラクダライド! 日本でラクダに乗れる場所というと鳥取砂丘が有名ですが、関東でもズーラシアさんで騎乗体験ができるんですよね。
乗ってみますか?
ぜひ。
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満5歳以上、体重80kg以下、身長100cm以上の方なら大人も子供も体験できます
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ラクダのコブはキスするときの鼻だった†
ここズーラシアでは、ラクダに乗って展示場をひと回りする“ラクダライド”を開催しています。5歳以上、体重80kg以下、身長100cm以上の方なら大人も子供も体験可能(1回500円)。休日は定員が即埋まってしまうこともあるほどの人気イベントで、ズーラシアの目玉のひとつです。
なるほど、こうやってコブの前に座るんですね。
ぱっと見じゃまになりそうですが、全然気にならないでしょう?
キスするときの鼻といっしょですね。
せっかくですから、ぜひコブを触ってみてください。
お、けっこう硬いんですね。あれ、でも、さっき遠目で見たときはブルンブルン揺れていたような……。
硬い皮の中に、柔らかい脂肪が詰まってるんです。不思議な挙動ですよね。
唇もおもしろいですよ。
こんどはめっっっっちゃ柔らかい! ぷにぷにしてますね。かわいい!
乗り心地はどうですか?
乗り心地は、えっと、そうですね。センセーショナルというか、エキサイティングというか……。
まあ、ぶっちゃけよくはないですよね。
ぶっちゃけると、そうですね。
ラクダの歩き方は“側対歩(そくたいほ)”といいまして、右前足と右後脚、左前脚と左後脚が同時に出るんです。この動き、前後左右にけっこう揺れます。
ですので、手綱をしっかり握って、内股気味にがっちり太ももを固定して乗ってみてください。
ああ~、いいですね~。むしろ、揺れのリズムが心地よくなってきました。目線も高くて気持ちいいです!
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休憩中のソフィーちゃん
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「コブの前に座るアサシンは素人」ラクダ飼育員はこう戦う†
あたりまえですが、本物のラクダは生命力が違いますね。『アサシン クリード』では、ラクダといっしょに敵と戦うシーンも出てくるんですが、つくづく味方でよかったと思いました。矮小な人間如きがラクダに歯向かおうなどと考えてはならぬ。
ズーラシアのラクダは人工哺育なのでおとなしいものですが、野生のラクダの戦い方は凄まじいものがありますね。
ほほう、たとえばどんな。
まずはネッキングですね。長い首を振り回し、遠心力で大ダメージを与えます。
めちゃめちゃ強い。
あとは、敵の顔面にツバを吐きつけて威嚇したりとか。
毒霧! プロレスの悪役みたいでクールですね!!
海外の動画で観たのですが、人間を咥えて投げ飛ばすなんてこともあるらしいです!
うおお! かっこよすぎる!!
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そうです! ラクダはかっこいいんですよ!!
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あの、うちのラクダは絶対にそんなことしませんからね。
鈴木さんがラクダと一緒に戦うとしたらどうされますか?
私ですか? そうですね、コブの後ろに座ると思います。前ではなく。
なぜでしょうか。
ラクダって、本気を出すと時速60kmくらい出るんですよ。後ろのほうが安定感があるので、前に座るより吹っ飛ばされにくいんじゃないかと。
なるほど、ラクダのプロは後ろで戦うんですね。
鈴木さん見てください! バエクの野郎、素人ですよ!
ゲームが正しいんじゃないでしょうか。べつに私は戦闘のプロじゃないので。
そりゃそうだ。
バードショーがとにかくすごい†
あれ? なんだか音楽が聞こえてきましたよ。
バードショーのBGMですね。ちょっと観に行きましょうか。
ああ……セヌ! 生きていたのか!!
ここズーラシアでは、タカやフクロウ、色とりどりのインコたちによるバードショーも開催されています。目の前すれすれを鳥たちが飛び交う様は迫力満点! 頑張って飛ぶ鳥たちはもちろんですが、飼育員さんのトークも笑っちゃうくらいおもしろいので、ズーラシアを訪れたときは絶対に観ましょう。オススメです。
でも、セヌ(主人公のバエクが使役する鳥)ってタカじゃなくてワシですよね。
細けえことはいいんですよ。
サバンナゾーンを訪れたら、ぜひ草原エリアも見て帰ってほしいですね。本物のサバンナのように、キリン・シマウマ・チーター・エランドが同じスペースで生活しています。
シマウマとチーター? いっしょにして大丈夫なんですか?
チーターは自分より大きい動物を襲わないんです。
あ、本当だ。
シマウマのやつ、完全にチーターを舐めきってますね。
煽るだけ煽って去って行った。
こちらの草原エリアのように、ズーラシアでは、できるだけ動物たちの生息環境を再現したロケーション作りに励んでいます。
各ゾーン内の草木や建造物も地域色を考えて設置してるんですよ。アマゾンの密林ゾーンなら“熱帯植物”、日本の山里エリアなら“紅葉”という感じですね。
なるほど……! 世界各地のロケーションを再現して、お客様の没入感を高めようと工夫しているんですね。それって『アサシン クリード』シリーズと同じじゃないですか!
無理やり絡めましたね。
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肉食動物と草食動物の4種混合展示はズーラシアが日本初なのだそう。
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飼育員という仕事のやりがいと魅力†
今日は本当にありがとうございました。ますます楽しくゲームを遊べそうです。
お役にたてたなら何よりです。
あたりまえのことなのかもしれませんが、鈴木さんも高橋さんも、本当にラクダに懐かれていらっしゃるんですね。
環境を整えたり、餌を工夫したり、動物たちのために一生懸命になった結果として、こうして懐いてくれるのはやっぱりうれしいかな。
ズーラシアのラクダは、接客スタッフの一員でもあります。お客様を乗せられるようになるまでには、長い期間をかけてトレーニングしなければなりません。そのぶん、こうしてラクダライドで活躍している様子を見るとやりがいを感じますね。
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こちらはもう一頭のラクダ、ソフィーちゃんのトレーニング風景。ソフィーちゃんはまだ修業中の身。カメラ目線の練習や、重りをつけての筋トレなどをこなしながら、お客さんを乗せられるように頑張っています。
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さて、“ラクダに好かれる秘訣”などという安易なものは存在しませんでした。動物への深い愛情と敬意が、自然と信頼関係を作り出すのでしょう。鈴木さんと高橋さんの立ち居振る舞いからは、そう感じざるを得ない優しさがにじみ出ていました。
ラクダといっしょに戦うならどうするか? と質問したときも、鈴木さんは
ラクダにも防具を装備させたほうがいいんじゃないかな。刺されたら痛そうだし。
と心配していらっしゃいました。ド正論。
今回ご紹介したよこはま動物園ズーラシアは、本当に素敵な場所でした。サバンナゾーン以外にも、しましまの下半身を持つオカピなど、珍しい動物がたくさん暮らしています。ご家族でも、カップルでも、ご友人同士でも、きっと楽しめるはず! ぜひ、遊びにいってみてください。その際はラクダライドにチャレンジするのをお忘れなく!
よこはま動物園ズーラシア公式サイト
アクセス
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ワイヤーを噛むオカピ
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ちなみに†
お住まいが遠くて気軽に行ける距離ではないという方は、『アサシン クリード オリジンズ』がオススメです。
2018年2月20日には、戦闘やストーリーを取り除いた“ディスカバリーモード”が無料追加され、古代エジプトの美しい世界を自由に巡ることができるようになります。ピラミッドや古代都市で記念写真を撮影しながら、心行くまでラクダとの2人旅を楽しみましょう。ディスカバリーモードには、歴史学者やエジプト学者と共同製作した音声ツアーガイドも収録。サービスが手厚すぎる……。
2018年1月以降の追加コンテンツ情報
チョコボにも乗れます。
(取材・執筆/戸部マミヤ)