
スパイク・チュンソフトは2024年に行われたBitSummit Driftへ出展。同社は、国内およびアジアの他社タイトルのグローバルパブリッシング事業に取り組むことを打ち出しており、BitSummitの出展は、“未来のパートナー各社さんと顔を合わせ、お話ししたいことがいろいろとある”との思いから実現したもの。
2025年はどのような目的のもとに出展したのか。スパイク・チュンソフトのグローバルパブリッシング事業の成果や今後の展望なども交え、事業の責任者である飯塚康弘氏に聞いた。
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飯塚康弘氏(いいづか やすひろ)
スパイク・チュンソフト 執行役員 Spike Chunsoft, Inc. CEO(米国オフィス) (文中は飯塚)
継続は力なり(?)で2年連続BitSummitに出展
2年連続でブースに来てくださるデベロッパーさんもいますね。先ほどもスペインのインディーゲームさんが遊びにきてくれました。『YOUは何しに日本へ?』にも出ていた彼女たちで、開発1年を経てのいまの進捗や「いまこういうことを考えている」ということを共有させてもらって、日本のパブリッシングに対しての可能性などのお話をさせていただきました。
――昨年BitSummitに出展した反響は大きかったということですね。
それを今年も出展することによって、継続していることの安心感と言いますか「だったら、話しかけてみようか」という雰囲気が少なからずできて、今回中国とかアジア系のデベロッパーさんからもすごくお声掛けがあって、ミーティングもけっこうセッティングしています。
とはいえ、昨年グローバルパブリッシング事業を始めて、タイトルがバンバン取れて、バンバン発売できたかというと、そういうわけではないですよ(笑)。そもそも目的はそういうことではないので。
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そんな方たちに向けて、多少なりとも僕らが培ってきたノウハウをお伝えできる、きっかけの場のひとつになればいいと思っています。
――昨年のBitSummitの会場で商談したプロジェクトは、この1年でどうなっているのですか?
一方で、リリースしたタイトルも何本かあります。グッド・フィールさんの『御伽活劇 豆狸のバケル ~オラクル祭太郎の祭難!!~』のSteam版と欧米販売は、弊社で担当させていただきました。
――では、1年前におうかがいしたスパイク・チュンソフトの“日本・アジアのパートナータイトルの海外展開支援の取り組み”は、徐々に成果を上げているということでしょうか。
――そういったタイトルは、プロデュースのお手伝いをするのですか?
――なるほど。パブリッシャーとしてのビジネスは進んでいると。
一生懸命作って、本来だったらもっと売れるはずのものが売れないという状況を、微力ではありますが、お手伝いすることによって、自社だったら100本しか売れなかったものが、弊社に任せていただいたら1000本売れるということだったら、取り組んだ価値はあるのではないかという気持ちでいます。
ゆくゆくは、デベロッパーの方がもっと大きくて強くなったときに「じゃあ、スパイク・チュソフトと組みたいな」と思っていただけることを、僕は事業のゴールとして見据えています。
――長期的な取り組みになりますね。
――5年、10年先を見据えるような……。
――さらに言えば、昨年もおっしゃっていましたが、スパイク・チュンソフトの強みにマッチしたタイトルを……ということですね。
海外展開で苦しんでいるインディーゲームデベロッパーを助けたい
現状インディーゲームデベロッパーさんは苦しんでいるのではないかという認識でいます。もちろん、僕たちも苦しんでいます。とくに海外での展開は、Steamを含めてものすごい大量のソフトがある中で、僕らのソフトもすぐに埋もれてしまいますし、そこをどういう形でうまく展開していくかというのは、毎日毎日、試行錯誤していかないといけないことです。
これは僕の勝手な想像になりますが、とくにインディーゲームデベロッパーさんは少数精鋭部隊でゲームを開発するために集まっていて、いっぱい売るために集まっているわけではないと思うんです。自分たちの作りたいゲームのために集まっていて、あわよくば売れたらすごくいいことだという感覚ではないかと。
僕らパブリッシャーはビジネス側の視点も強いので「IPを作る」、「ゲームを作る」というのは「たくさん売るためにいいものを作る」というアプローチでもあるんです。BitSummitの会場にいる皆さんは逆ですよね。「いいゲームを作りたい」というスタンスで集まっている。
――ああ、なるほど。パブリッシャーだったら知っているSteam販売の“いろは”のようなものも、デベロッパーだと知らない可能性がありますからね。そういうサポートはデベロッパーにはうれしいと思います。
――宝くじみたいな感覚はありますね。
僕らも、全部が全部を目立たせることはできないかもしれませんが、ご縁があって、情報を共有させていただいて、その存在を知ったときに「このタイトルだったらうちのチャンネルに載せることによってたぶん拡販ができるな」ということもあります。
そういう意味では、洋ゲーを見る視点と変わらないですよね。スパイク・チュンソフトは海外のタイトルを取りに行きますが、すべてのタイトルを取るつもりはないです。そもそも無理ですし、その中でも「これはうちにやらせてもらったら、絶対にこれだけ売りますよ」というタイトルはあります。そういう自信があるから取りにいくわけです。自信がないのに取りにいっても、失礼な話ですよね。
ビジネス側の視点で考えると、たくさん売るのが僕らの仕事だと思っていて、たくさんタイトルを集めるのは僕らの仕事ではないです。そのタイトルを成功させるために、パブリッシャーというのは存在するのかなという認識でいます。
そのスタートとして、こういう形でいろいろとお話をさせていただく機会はあります。実際のところ、それぞれ皆さん問題や疑問を抱えていますね。
――たとえばどんなご相談があるのですか?
そんなときは「そうしてしまうと、日本のゲームになってしまうので、そうではなくて、あなたの作りたいゲームを作ったほうがいいですよ」とはお伝えしています。日本に寄せたことによって売れるかもしれないですが、ゲームを作る過程で、日本っぽさを必要としていたのかどうかということは、ちゃんと考えたほうがいいですよとは、お話しますね。
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――プレオーダーをあえてしないんですか?
――そうなんですね。
ですが、僕たちが作るようなニッチなタイトルは、コアファンに支えられているので、プレオーダーをかけた場合、その瞬間はいいのですが、その後が継続できないので、埋没してしまうんです。
Steamはランキングが重要ですから、ローンチのときに上位に載せられなくなったら、死活問題です。ですので、プレオーダーはしません。僕らのタイトルの規模では。
――ちなみに、ウィッシュリストはどうですか?
――そういったノウハウは、まさにデベロッパーは知らないかもしれませんね。
プレスリリースに関しても、僕らよりも大手のほうがもっともっとリストはあると思うのですが、スパイク・チュンソフトもそれなりにやっているので、欧米・アジアを含めた幅広いメディアに対してプレスリリースを発信できる体制を整えています。インディーゲームのデベロッパーさんが、明日ゲームの発売日だからプレスリリースを……となったときに、イチから調べるのはたいへんだと思いますし。
あとは、プラットフォーマーである任天堂さんやソニー・インタラクティブエンタテインメントさん、マイクロソフトさん、Valveさんにしても、スパイク・チュンソフトは交渉できるコンタクト先を持っています。欧米も含めて。そこにアプローチするのもひとつのチャンスではあります。でも、そこまでたどり着けないインディーゲームデベロッパーさんは多いかもしれません。
――スパイク・チュンソフトが海外パブリッシャーを担当するとなったら、そういったことも任せられる。
そういったコミュニティーコントロールもけっこう重要です。とにかくやることはたくさんあるんですね。これは別にスペシャルなスキルではなくて、僕らにとっては当たり前のことです。ですが手間がかかります。
――いま、どれくらいの数のインディーゲームデベロッパーとやり取りをしているのですか?
いまの段階でしたら、ごいっしょさせていただくところまで行っているタイトルもありますし、そうではなく紹介を受けて「つぎに新しい情報がアップデートされたら共有してください」というステージのプロジェクトもあります。
――お話が来るのも、まったく開発初期のものもあれば、もうけっこうできあがっているところもありますよね。
で、洋ゲーの買い付けとインディーゲームでの取り組みの線引きが難しくなってきたというのはありますね。いいタイトルにアプローチするというのは、同じ方向性なので……。インディーゲームのサポート事業としてスタートして、スパイク・チュンソフトとして取り組むべきライセンス事業のタイトルとして契約するというケースも、今後生じる可能性があるかもしれません。
そういう意味では、いままでだったらある程度の規模じゃないとやらないと言っていたところを、もう少し広げられたという意味でもやってよかったです。
ですので手応えはあります。楽しいです。
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“日本”にこだわっていきたい
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――Nintendo Switch 2は発売してからひと月経ちますが、手応えとしてはいかがですか?
――今後、とくに力を入れていきたい領域はありますか?
僕らは日本のテイストのゲームを作っていますよね。日本に寄り添った、日本のポップカルチャーを好む層に対してのゲームです。そういう意味では、日本での開発力も必要ですし、ちゃんと魅力のあるコンテンツが作れないといけない。そうしないと、アメリカのオフィスも立ち行かなくなってしまいますし。
――『風来のシレン』や『ダンガンロンパ』だったり、『AI:ソムニウム ファイル』といった、スパイク・チュンソフトらしい日本のタイトルを出して、それを世界でも受け入れられるようにしていくという感じでしょうか。
打越さんとコザキユースケさんがそもそもアメリカで人気なんですよ。狙っているつもりはさらさらなかったのですが。このテイストが好きなアメリカの方は超レアケースではあるものの、人口の数からも一定以上の層があって、ソフトの販売割合では非常に大きな影響力を持っています。
ということを考えると、日本のコンテンツが生き生きして、コアなアメリカのファンに刺さるものを提供できる地盤ができているのではないかとは思っています。
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――相当気が早い話ですが、2026年も?