1989年12月に誕生し、2024年12月には記念すべき35周年を迎えるスクウェア・エニックスのRPG『サガ』シリーズ。
同シリーズの舞台化作品『SaGa THE STAGE~再生の絆~』の東京公演が、2024年2月25日に千秋楽を迎えた。大阪公演は、2024年2月29日~3月3日にサンケイホールブリーゼで開催予定となっている。
『SaGa THE STAGE~再生の絆~』は、『サガ』の舞台化作品としては3作目となる。1作目の『ロマンシング サガ THE STAGE~ロアーヌが燃える日~』は2017年に、2作目の『SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~』は2018年に上演された。そして、2020年には『SaGa THE STAGE ~約束のマルディアス~』が上演される予定になっていたのだが、コロナ禍の影響で、残念ながら公演中止となってしまった。
『約束のマルディアス』に関わっていた人々の無念さは計り知れないものがある。その苦難を乗り越え、“サガステ”としては5年半ぶりに上演される『SaGa THE STAGE~再生の絆~』(以下、『再生の絆』)は、キャスト数も物語のボリュームも過去最大規模となっており、非常に気合を感じる内容になっていた。
『再生の絆』は、昨年末に5周年を迎えたスマートフォン向けRPG『ロマンシング サガ リ・ユニバース』(以下、『ロマサガRS』)の物語のうち、“ポルカ編”をフィーチャーしたものになっている。ゲームの中で、ポルカ編はひとつの結末を迎えたが、主人公ポルカ・リン・ウッドとその家族に関しては、完全な安寧が訪れたとは言えない状態になっていた。今回の舞台では、家族たちのその後が描かれるということで、とくに『ロマサガRS』ファンにとっては興味深いストーリーになっている。
ここからは、本舞台の見どころをリポートしていく。ネタバレには配慮しているが、“ポルカ編のその後を描く”というストーリーのため、どうしてもポルカ編の内容には触れざるを得ない。そこはご了承いただきつつ、もし本記事を通じて『再生の絆』に興味を持ったという方は、ぜひ大阪公演、もしくは配信チケットにて本舞台をご覧いただけると幸いだ。
見どころ1……とにかく殺陣、殺陣、殺陣! アクションがカッコいい
RPGが原作ということもあって、とりわけ殺陣が多いのが『再生の絆』の登場。『ロマサガRS』に登場する技を交えつつ、バトルシーンが展開されていく。
本作のアクション監督を務めるのは、ゼノン/ワグナス役でもある中村誠治郎さん。“サガステ”には1作目から出演しており、かつ『ロマサガRS』の熱心なプレイヤーでもある中村さんが演出する“『サガ』ファンのツボを押さえたアクション”が、これでもか、これでもかというくらいに披露される。
とくに注目してほしいのは、物語のキーパーソンであるジョーを演じる、七瀬恋彩さん。俳優であるとともにブレイクダンサーでもある七瀬さんのアクロバティックな動きに惹きつけられる。赤色と青色のタイツという、特徴的なジョーの衣装もそのアクションを際立たせている。
また、第2幕におけるジョーは、とある事情から、人の枠を超えてしまった存在“リアルクィーン・ジョー”になってしまうのだが、その際の動きは第1幕とは打って変わって“人ならざる者”感が際立っており、ジョーがどのような状態に置かれているのかが、アクションからも伝わってくるものになっていた。
見どころ2……ひとりでふた役を演じるキャスト陣の巧みさ
今回の舞台は、第1幕にて、『ロマサガRS』ポルカ編のストーリーが展開。第2幕にて、ポルカ編のその後にあたる、完全新規の物語が描かれていく。
第1幕の最後で、恐るべき敵イゴマールに打ち勝つため、とある決断をしたジョーは、その決断の結果、別の世界へと飛ばされてしまう。ジョーの家族であるポルカ、リズ、バートランドは、いなくなったジョーを探すため、異世界へ渡る覚悟をする。そしてジョーが飛ばされた世界には、『ロマンシング サガ2』のボスであった七英雄たちも飛ばされてきていて、彼らは思わぬ邂逅をすることに……というのが第2部のあらすじだ。
ということで、第1幕と第2幕では、舞台となる世界が異なる。登場するキャラクターもガラリと変わるので、第1幕と第2幕で演じる役が変わるキャストが多数存在するのだ。
たとえば、第1幕で道化師イゴマールを怪演(まさに怪演、という言葉がふさわしい)している平山佳延さんは、第2幕では七英雄のひとり、スービエを演じる。不気味なイゴマールと粗野なスービエは印象がまったく異なるキャラクターなので、同一人物が演じていることに気づかない人もいるのではないだろうか。
土屋アンナさんは、第1幕では魔女イーヴリンを、第2幕ではリアルクィーン・ラプタスを演じている。イーヴリンからは、長い時を生きてきたことを感じさせる深みを、リアルクィーンからは圧倒的な力を持つ統治者の恐ろしさを感じるだろう。
ほかにもふた役を演じているキャストは多い。第2幕を見ながら「えっ、この人もふた役なの!?」と驚かされ、その演技の巧みさに感嘆させられることだろう。
見どころ3……舞台ならではの、シリアスとコメディの緩急
『ロマサガRS』の物語を再現する第1幕は、非常に多くのエピソードが詰め込まれているため、終始シリアスな展開が続くのだが、第2幕に入ると、コメディシーンがいい塩梅で挿入される。ときには客もいっしょに声を出して楽しむシーンもあるのは、舞台ならでは。
サガステ経験者にはおなじみの「アリだー!」や、『サガ』シリーズではおなじみの“閃き”(バトル中に、新たに技を思いついて習得すること)を再現したヘルメットを用いた演出も健在。命がけの戦いを固唾をのんで見守る我々にひと息つかせてくれる、清涼剤のようなシーンになっている。
また、『ロマサガRS』プレイヤーとしては、ゲーム本編ではずっとシリアス担当だったバートランドが、コメディシーンに関わっているのを見られるのがうれしかった。バートランドの新たな魅力が引き出されていたのではないだろうか。
見どころ4……“再生の絆”という言葉にさまざまな意味を感じる物語
いろいろと見どころを紹介してはきたが、やはりいちばん楽しんでほしいのは、キャラクターたちの生き様だ。第2幕では、ジョーを探すポルカたちの物語と並行して、七英雄たちの物語も展開していく。第2幕の舞台となる世界に、自分たちの因縁の相手がいることを知った七英雄は、悲願を果たすために行動するのだが……。
約3時間にわたる公演の中で、ポルカたち家族と七英雄たちはそれぞれ絆を確かめ合っていく。そしてこの物語の主人公はやはり、ポルカだ。主人公の宿命なのか、第1幕でも第2幕でも辛い出来事が彼を襲うのだが、それらを経てのクライマックスシーンの、松田凌さん演じるポルカの姿を見て、「ああ、ポルカの物語をここまで追ってこられてよかったなあ」としみじみと思った。
“再生の絆”という言葉はもともと『ロマサガRS』のテーマ曲の名前として知られていたが、『ロマサガRS』の5年間の運営の中で、この言葉にいろいろな意味が込められていき、この舞台にいたったのだと思うと感慨深い。
本舞台はもちろん、ゲームをプレイしていなくても楽しめるものになっているが、『サガ』シリーズや『ロマサガRS』、サガステの歴史を知っていると味わいが増す。『ロマサガRS』ポルカ編の物語は、ゲーム内の“ファーゴ”メニューから“シネマ”を選ぶことで一気に見られるので、観劇前、もしくは観劇後に見るのも一興だ。
2/29(木)〜3/3(日)は大阪公演チケット販売中です!サガステの世界を生で体感してください
https://t.co/JowYzMoevE
劇場でお待ちしております!!
そして、配信チケットの東京公演&2公演通しマルチアングルの販売は2/29(木)21:00までです
#サガステ #ロマサガRS https://t.co/zdPKroEVCy
— SaGa THE STAGE (@SaGa_THE_STAGE)
2024-02-26 16:45:49
公演概要
公演期間/会場
東京公演:2024年2月22日(木)~2月25日(日)/サンシャイン劇場
大阪公演:2024年2月29日(木)~3月3日(日)/サンケイホールブリーゼ
出演者
ポルカ・リン・ウッド 松田 凌
リズ・リン・ウッド 高槻かなこ
ジョセフィン・リン・ウッド 七瀬恋彩
バートランド・リン・ウッド 岸本勇太
新田健太
原武昭彦
伊澤彩織
石橋直也
御寺ゆき
大平峻也
イーヴリン/リアルクィーン 土屋アンナ
バルテルミー 三浦涼介
ワグナス/ゼノン・アウスバッハ 中村誠治郎
スービエ 平山佳延
ダンターグ 阿見 201
ボクオーン 川田 祐
クジンシー 和合真一
ロックブーケ 宮崎あみさ
ノエル 佐藤アツヒロ
及川崇治/湯田昌次/片田ミチル/岡本麻海/松野咲紀/松藤拓也/久保田浩介/望月祐治
スタッフ
世界観監修・脚本原案:河津秋敏 (株式会社スクウェア・エニックス)
脚本・演出:とちぼり木 (株式会社スクウェア・エニックス)
音楽:伊藤賢治
主催:SaGa THE STAGE製作委員会(株式会社ビーエスフジ/株式会社スクウェア・エニックス/株式会社アカツキ)
企画:株式会社スクウェア・エニックス