七英雄に新たな解釈を与える『ロマサガ2』の舞台『SaGa THE STAGE』をリポート。観劇後、まず移動湖に行きたくなる

『ロマンシング サガ2』を原作とする舞台、『SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~』の東京公演をリポート。七英雄の知られざる過去を描く本作の魅力を紹介。

 ……七英雄の伝説……
 数多くの悪しき魔物を倒し 世界を救い、その後 いずこかへ消えた……
 クジンシー、スービエ、ダンターグ、ノエル、ボクオーン、ロックブーケ、ワグナス
 いつの日か、彼らは戻ってきて 再び世界を救うのだという……

 世の中が乱れる度に、人々は伝説を語り、救いを願った。
 しかし、平和が訪れると……伝説は忘れられた……

 人の世の興亡はくり返す。
 安定した国々による平和な時代が終わり、分裂と闘争の時代が始まった。

 七英雄の名はふたたび語られ始めた
 そして、彼らは来た ……だが

 ……以上が、スクウェア・エニックスの『サガ』シリーズの中でも高い人気を誇る『ロマンシング サガ2』(以下、『ロマサガ2』)のオープニングで流れる文章だ。ゲーム内で最大の敵となる七英雄の過去、そして現在を、簡潔な文章で示している。

 しかし、オリジナル版『ロマサガ2』発売当時(1993年)、ゲームに夢中になっていた子どもたちは、このオープニングで語られる内容を含め、七英雄がどういった存在であるか、理解しながら遊んでいただろうか。少なくとも私はしていなかった。「めちゃくちゃ強いボスが7人いる」というくらいの認識で、彼らが時間経過で強くなる前に倒さねば、と息巻いていた(放置したダンターグで詰んだ。イベント“子供と子ムー”はトラウマ)。

 そんな私のように、あのころ、七英雄の背景を把握していなかった『ロマサガ2』プレイヤーにオススメしたいのが(もちろん、把握している人にもオススメしたいが)、舞台『SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~』だ。同作では、彼らがなぜ英雄と呼ばれるようになり、そしてなぜ人間の敵となったのかを知ることができる。

 この舞台は2018月9月21日に、埼玉・戸田市文化会館にて初演を迎え、10月2日より、東京・シアター1010にて公演中(10月8日まで)。10月17日~21日には、大阪・サンケイホールブリーゼにて公演予定となっている。本記事では、東京公演2日目(昼)の写真とともに、舞台の見どころを紹介していこう。
※ここからは、若干のネタバレを含むので、閲覧にはご注意ください。

※この写真のみ、埼玉・戸田公演の写真です。

 この舞台の主人公はノエルで、佐藤アツヒロが主演と演出を務めている。そのほかの七英雄メンバーも豪華俳優陣が演じており、彼らがカッコいい音楽とともにカッコいいポーズを舞台上で披露しているだけで、『サガ』ファンとしては胸が熱くなってしまう。

楽曲「プロローグ -七英雄の伝説-」をBGMに集合する七英雄。このシーンでちょっと泣いた。

 第1幕では、古の時代を舞台に、民を救わんとする七英雄が力を得た後、世界から一度いなくなるまでが、シリアスに描かれる。コミカルなシーンはほとんどなく(クジンシーだけは別)、ワグナスやノエルの奮闘が続く。

迫力満点の殺陣が随所で見られるのも、本舞台の特徴。

 ……さて、ゲームをプレイしていた人は思い出してみてほしい。ゲームの中の七英雄は、なぜモンスターのような姿をしていたのか?

 それは、彼らが“吸収の法”なる秘術を使い、モンスターと同化し、その力を取り込んだから(ゲームにて、時間経過で彼らが強くなっていくのは、そのあいだに新たにモンスターの力を吸収したからなのである)。舞台では、国を襲う“ターム”を倒すために、ノエルらが人間であることを捨てる決意をするさまが、丁寧に描写されていく。

 そう、かつての七英雄の敵は、“アリ”でおなじみのターム族。そういえば、ゲーム内でリアルクィーンが、自分のことを「七英雄さえ恐れさせた」とか言っていたなあ。

人を襲うターム族の巣に乗り込み、七英雄は戦うが……

 ターム族との戦いで消耗する中、それでも平和を目指して戦う七英雄の姿はカッコよく、自然と感情移入してしまう(クジンシーだけは別)。しかし力を持ちすぎた彼らはやがて、彼らが守らんとした人間から拒絶され、次元移動装置によって、いずこかへと飛ばされてしまうのであった……。第1幕ラストのノエルとスービエの決意、そしてワグナスの悲痛な叫びは、第1幕の見どころのひとつだ。

中村誠治郎演じるワグナスの髪型と衣装は、おそらく、イラストレーター小林智美氏がかつて描いたワグナスの姿をイメージしている。黒髪と白い衣装は理知的なワグナスにピッタリ。

 また、七英雄以外のキャラクターでは、ノエルにとって大切な存在であるオアイーブ、ノエルの友人サグザーにも注目したい。オアイーブは、後に皇帝レオンに伝承法を授ける女性で、ゲームではミステリアスな雰囲気のキャラクターだが、舞台第1幕での姿は“おきゃんな女の子”。身分を鼻にかけない快活な女性だが、第1幕の最後には悲痛な覚悟を決めることに。

 サグザーは、『ロマサガ2』をプレイした人でも「誰だっけ?」と思うかもしれない。彼は『ロマサガ2』では移動湖にいる、ノエルの古い友人。第1幕では、サグザーとノエルが、民を守るという志のもと、熱い友情を築いていたことがわかる。彼もまた、オアイーブとは別の形で、覚悟を決める。

原作では深掘りされなかったサグザー(野村知広)とオアイーブ(谷口あかり)が、物語のキーパーソンに。

 という感じで、第1幕は終始シリアスに進行し、これだけでも十分お腹いっぱいなのだが、第2幕になると、いよいよ我々が『ロマサガ2』で体験した、皇帝と七英雄の戦いがスタート。1000年にわたる戦いが、ぎゅっぎゅっと凝縮された形で展開していく。

 第2幕はシリアスなシーンとコミカルなシーンの移り変わりが激しく、テンションの差に風邪をひきそうになるが、その感情のジェットコースターっぷりが醍醐味。レオンからジェラールへ、そしてジェラールから……の皇帝継承シーンは泣かせるし、と思ったらサラマンダーが笑いを誘うし、ソウジは相変わらずLPが1で、「伝説は始まる」は最高の演奏だ。

『サガ』舞台第1弾“ロマンシング サガ THE STAGE ~ロアーヌが燃える日~”でブラックを好演した平山佳延が、本作で演じるのはスービエ(右)。第2幕では、このスービエに泣かされる。

山田菜々演じるロックブーケは、妖艶というよりは小悪魔的で、とってもキュート。原作のバトルシーンを再現したような手の動きがすごくいい!

 戻ってきた七英雄は、かつて民のために戦ったころの七英雄ではなく、意識も目的もバラバラ。それこそ、私たちがゲームでよく見た七英雄の姿だが、第1幕で彼らが経験したことを思うと、見かたが変わる。ゲームにて、ノエルはなぜ移動湖にいたのか、ロックブーケはなぜ塔を調査していたのか、スービエはなぜ海の主の娘と同化したのか。「あのとき、彼らはこんなことを思っていたのかも」と、25年前のゲームプレイに思いを馳せてしまう。

 そして舞台では、ラストバトルとエピローグまで描かれるが、見終えた後、七英雄に対する印象は、ゲーム『ロマサガ2』をクリアーしたときとは、少し変わると思う。

 なお、私としては、本舞台は“『ロマサガ2』の解釈のひとつ”だと思っている。今回のシナリオは、以前『エンペラーズ サガ』にて展開されたイベント“ロマンシング サガ2 ZERO”をベースにしてはいるが、それとまったく同じ内容ではない。『エンペラーズ サガ』では『エンペラーズ サガ』なりの七英雄の解釈があって、『SaGa THE STAGE』には『SaGa THE STAGE』なりの解釈があるのではないだろうか。

 どれかひとつだけが正解というわけではなくて、『SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~』のような過去があったかもしれないし、“ロマンシング サガ2 ZERO”のような過去があったかもしれない……そんなことを思いながら『ロマサガ2』をプレイすると、ゲーム体験がより楽しくなると思う(『ロマサガ2』リマスター版は全8プラットフォームで配信中)。とりあえず、私は移動湖に行って、サグザーに会いたい。