『龍が如く8』、終わらねぇ……。
メインストーリーをクリアーしたいまでも思う。こんなに誘惑の多いゲームはそうそうない。
※この記事は『龍が如く8』の提供でお送りします。
ダブル主人公でくり広げられる物語、プレイスポットやサブストーリーの数々、広大な新マップ“ハワイ・ホノルルシティ”など、シリーズ最大級のボリュームを誇る『龍が如く8』。
正直に言うと、プレイ開始当初は「メインストーリーの話も気になるし、サブ要素はちょっと拾うくらいでいいかな~」ぐらいの気持ちだったのだが、今回はあまりにもメイン部分以外の誘惑が多すぎた。メインストーリークリアーまで約65時間かかり、そのうちの25時間くらいは寄り道していたと思う。
『龍が如く8』(PS5)の購入はこちら (Amazon.co.jp) 『龍が如く8』(PS4)の購入はこちら (Amazon.co.jp) 『龍が如く8 DXパック』の購入はこちら (セガストア)春日一番たちのバカバカしいまでのテンションを満喫したかと思いきや、桐生一馬の切ない物語で目に涙を溜め、物語の山場では「そうくるかぁ~!!」と熱い展開に心を躍らせる。ストーリー優先で進める人も今回はぜひじっくり遊んでほしい、そう思える作品だった。
スジモン蔓延るハワイの街。とんでもないところに来てしまったのかもしれない
ハワイに来て束の間、『龍が如く7 光と闇の行方』ではただの敵キャラだった“スジモン”に出会った。
街中に蔓延る危険人物、その筋の者。通称、スジモン。「ハワイはスジモンのメッカと言われている場所」と事前にスジモン博士から聞いていたが、そこらにふつうにいるのか。
さらに、今作ではスジモン同士でバトルできるようになっている。こんなアホみたいな競技があるかーっ! と心の中で叫んだが、ハワイでは賑わっているらしい。ひと筋縄では行かない世界である(スジモンだけに)。リアルでハワイに行くときは気を付けたい。
スジモンバトルをもとの姿にもどすため、大会の陰に潜む黒幕に立ち向かう……というのがおもな流れなのだが、こういうめちゃくちゃなきっかけでも春日は全力で協力してくれる。
困っている人を放っておけない。一見すると冗談のようで、でも彼の真っ直ぐでやさしい性格がよく表れている導入だと思う。
スジモンはファンタジーゲームに出てくる化物ではなく、あくまで人間だ。仲間にするために必要なのは何よりも真心。拳でわかり合ったら、そのつぎはお歳暮で気持ちを伝える。いつだって人間はわかり合える。世界平和のオマージュだったらいいなと考えながら、気付けばいろんなスジモンを捕まえに街を散策していた。
衝撃的なビジュアルのスジモンが多いので、いつしかスタメンは不審者まみれに。最初は面食らったけど、こうも勢いある演出で押し通されるとさすがに笑ってしまう。こういうくだらなさも『龍が如く』シリーズのいいところなんだよな。
スジモン集めを楽しんでいると、今度はとある出来事をきっかけに“ドンドコ島”と呼ばれる小島へ向かう春日。
ドンドコ島では悪徳ゴミ処理業者の嫌がらせでゴミだらけになった島を復興するために、春日と島のオーナーたちが奮闘するのだが、そもそも春日は母親を探すためにハワイに来ていたはず……。このままでいいのだろうか。いや、きっといい。春日は困っている人を見捨てておけない男。だから筆者は彼に惚れたのだ。
本筋のストーリーが気になるなら、ドンドコ島のチュートリアルを終えたらすぐにハワイに帰ってもいい(初見プレイ時は普通に帰った)。でも、メインストーリーを進めていると、どうしても他の要素に目移りしてしまう。スジモンバトル、ドンドコ島、プレイスポット、仲間との交流、誘惑が盛りだくさんである。
あまりにも気になってしまい、途中からうちの春日はハワイとドンドコ島を往復するようになっていた。今回の彼はやることが多すぎる。
かつて春日も“ドン底”を経験した男。クサいとか暑苦しいとか思われるかもしれないが、まっすぐな男は大好きだ。春日だったら断らねぇ、アイツはそういう男だ。ある種の脇道だったとしても、彼の魅力がよく描かれているのがいいんだ。
島での生活は、とくにツッコミもなく穏やかに進んでいく。春日の母親探しはどうなった。仲間からしたら春日が突然失踪して、ある日ふらっと帰ってきたように見えるのではないか。
いろいろと気になる点はあるが、そのままハワイに戻っても時間の影響はない。たぶん時空が歪んでいるんだろう。時空の歪みも受け入れよう。だって春日一番だから。
バカバカしさ全開と思いきや、意外な場面でほろりと泣く
ギャグのような展開をひたすら味わっているときに、途中で予想外の変化球に遭遇した。
赤ちゃんプレイを極めたヤクザ“権田原組長”との再会である。
何気なく進めていたサブストーリーでまさかの登場。思わず「お前が出るんかい!」とツッコミを入れてしまった。
詳細は伏せるが、話の途中からオムツを履いたおっさんがずっと映っているという強烈な絵面を見せ続けられる。僕は前世でどんな罪を犯したのだろう。人間性というか忍耐力というか、とにかくいろいろなものを試される時間だ。
なのに、話のオチでつい涙腺が緩んでしまった。情緒をめちゃくちゃにされるというのはこういうことなんだと思う。本作でいちばん好きなサブストーリーだ。
そもそも、作中ではヤクザにかなり厳しい時代に変わってきているのに、10数年~20年くらい赤ちゃんプレイを続けられるってことは、いろんな意味ですごい極道なのか……?
権田原組長はいろいろな意味で心に残る存在だが、それ以上に心に残ったものを挙げるなら桐生一馬のエンディングノートだろうか。人生でやり残したことを拾いつつ、彼の生き様を振り返る。桐生が過去作で出会った人たちの近況も気になるものの、桐生一馬という男が歩んできた道を受け止められるのが何よりもうれしい。
彼は自分自身の問題を後回しにしがちな印象があった。器が大きくて、やさしくて、自己犠牲の精神があって。ここに来てようやくプレイヤーに心を開いてくれたような気がする。
一貫して言えるのは「桐生のやってきたことは無駄じゃなかった」ということ。グッときたシーンがどれもこれもネタバレにつながるので、ここで語れないのが残念だ。みなさんには自分の手で遊び、そして自分の目で桐生の人生を追ってほしい。早く誰かと語り合いたい。
人と人との関係は些細なものかもしれない。それで何かが劇的に変わるとは限らない。でも、みんな前を向いて、いまを生きている。桐生と関わって変わった人間はこれだけいるんだと、エンディングノートを進めるほど彼の生きた証がじわじわと心に響く。何気ないシーンでちょっと泣きそうになる。いままでの人生を振り返ることによって、過去を懐かしむ桐生とプレイしている自分がいつのまにかシンクロしていることに気づく。
理屈ではなく熱情に従う春日と、自身の残された時間を使って現在(いま)を生きる桐生。彼らの魅力はサブコンテンツも使って余すことなく描かれる。シリーズを通した歩みが重みとなって効いてくることはどんなゲームでもあるものだ。筆者はそれなりに多くのゲームを遊んできたが、『龍が如く』の「ガツン」は芯に響くような心地よさがあった。褒めすぎると興ざめするかもしれないが、たしかに響いたのだから仕方ない。
最新作でのふたりの生き様は決して期待を裏切るものではなく、ストーリーをクリアーしたときは「『8』、終わっちまったなぁ」と、充実した気持ちとちょっとした喪失感を味わってしまった。
ひとまずのクリアーを迎えたいまだからこそ思う。ポスターにあった「それでも人生は、続く」というキャッチコピー以上に、本作にふさわしい言葉はない。