Meowza Gamesの『ミネコのナイトマーケット』は、猫がたっぷり、日本文化のテイストもいっぱい、そしてエキセントリックな住人たちがめちゃくちゃチャーミングなゲームだ。

 今回、パブリッシャーのHumble Gamesが提供してくれたPC用のレビュー版をひと足先にプレイしたので、その内容をご紹介しよう。

 なお本作はNintendo Switch版が今晩午後11時、続けてPC版が深夜に配信予定。いずれも日本語に対応し、参考までにSwitch版の価格は1980円[税込]。また10月末にはプレイステーション4/5、Xbox One/Xbox Series X|S版の発売も予定されている。

猫だらけの島での、新たな友だちと新たな暮らし

 本作の主人公は、猫だらけの島にお父さんと引っ越してきた女の子“みね子”。彼女はお父さんとふたり、“ふぐ山”のふもとにあるさびれた町で新たな生活をスタートすることになる。

 町の人々はみんなミョーに癖のある、なにかしらのこだわりを持ちつつ超テキトーな人ばかり。みね子は彼らのおねだりを聞いたり、地元で信仰される猫神“日光さん”をめぐる謎を追ったりしながら、日々を過ごしていく。

ミネコのナイトマーケット
彼らは夜市の進行補佐。左のねこは“左のねこ”って名前で、右のねこは“右のねこ”って名前なんだ。関係ないけど、友達の“ボボ”の母ちゃんの本名は“ボボの母ちゃん”。

人を食ったような、テキトーで毒っ気のある世界

 さて本作、海外メディアの紹介で猫キャラ+日本テイストということで「ジブリっぽい」とか言われたり、カジュアルゲームっぽいアートスタイル(動くとちょっと『リヴリーアイランド』っぽくもある)だったりして、なんとなくまったりハートウォーミング一辺倒な世界観をイメージするかもしれないが、それは結構違う!

 まぁハートウォーミングはハートウォーミングではあるのだが、人を食ったような悪気のない(しかし割と唐突な)毒っ気がちょいちょい、腰が抜けるほどのテキトーっぷりがたっぷりとぶっこまれた、変な中毒性のある世界なのだ。

 結構単純作業の繰り返しが必要になるゲームなのに、そのあとで物語がグイッと動く時の会話のスパイス感が面白くて惹き込まれる。この点、Active Gaming Mediaによるローカライズも素晴らしい。

ミネコのナイトマーケット
なぜか娘のことを「ミミズバーガー」と呼び続けるお父ちゃん。(突然別の変な呼び方をし始めることもある)
ミネコのナイトマーケット
自己分析が無駄に細かすぎる板尾さん。

 ちなみに任天堂のIndie Worldの取材によると、こんなに猫まみれなゲームなのに、作っている本人は「猫が好きなのに猫アレルギー」で、だからこそこういうゲームにしたらしい。マジか。

一週間のトリを飾るナイトマーケットと、日々の労働

 ゲームはアドベンチャーゲームっぽい性質もありつつ、一日単位で進行する生活シミュレーションゲームの体裁がベースになっている。

 その一週間のトリを飾るのが、町のみんなが集まる土曜の夜のナイトマーケット(夜市)だ。ナイトマーケットは毎週変わる出し物が目玉だけど、みんながそれぞれ出店を出せて、手作りしたとっておきのアイテムを出品してお金を稼げるというのも大事なポイント。

ミネコのナイトマーケット
夜市では値段をふっかけることもできる。ただし、あんまりふっかけると先に行っちゃうので注意。「こんぐらいの金額ならどう?」と交渉が発生することもある。
ミネコのナイトマーケット
夜市では毎週異なる出し物も行われる。この回はねこレース。ねこに乗って走るねこもエントリーしてるんだぜ。

 なので一週間の流れは、以下のような感じに進行していく。

  1. 平日はアイテム作りのための素材収集
  2. 素材を使って家でナイトマーケットのためのアイテムを手作り
  3. 村人が欲しがってるアイテムがあればあげる(新レシピを教えてくれる)
  4. 土曜の夜はナイトマーケットで稼ぎまくり、出し物にも参加
  5. 以下ループ

 そうしてお金が貯まって新たな道具を購入すると新エリアに行けるようになり、その先で話も進行し、新たな素材で新しいアイテムも作れるようになる……といった感じだ。

 話の進行とは別に季節の進行もあり、4週が経過すると次の季節がはじまり、新しい花や魚が手に入るようになるという仕組みになっている。

ミネコのナイトマーケット
マッチョのハンク(略称は“マッチョ”)の店で道具を買うと、それを使う新たなエリアに行けるようになり、話が進むし、新たな素材が手に入って新たなアイテムを作れるようにもなる……という仕組み。
ミネコのナイトマーケット
ボボの母ちゃんの店では、素材を加工するさまざまな作業台を売ってくれる。

毎日素材を取りまくり、アイテムを作りまくれ!

 素材収集&DIYな部分は『どうぶつの森』をイメージする人も少なくないだろう。実際、要素的にはそんなに間違っていない。自分の部屋などの自由なカスタマイズ的要素がないぶん、作ったもののアウトプット先が大体ナイトマーケットの夜店にまとめられていて、一方でそれが自然と日光さんをめぐるアドベンチャーゲーム的な話の進行に関わってくるようになっている。

 本作では借金を背負ったりはしないので稼いだお金を夜店での買い食いに使っちゃったりしても別にいいのだが、先に書いたように話を進めたり品揃えを増やすには結局新しい道具を入手しなければならず、そのためにはナイトマーケットで稼がないといけない(ちょっと値段が下がってもいいなら町のお店に買い取ってもらうこともできるけど)。

 なので、ちゃんとやろうとするとなかなか大変。高く売れそうなアイテムをナイトマーケットまでにできるだけ揃えるために、平日は結構必死に素材をかき集め続けるハメになる。

ミネコのナイトマーケット
クラフト(アイテム作成)もそれぞれミニゲームがある。たとえばソーイングは、縫い目ができるだけヨレないようにスティックで生地を動かしていく。

 たとえば朝起きるやいなやバスで森に行って木を切り出し(ミニゲーム付き)、ついでに花や猫の毛玉などの素材アイテムも拾えたら拾って……とやっていくのだが、モノを拾うだけでも体力を消耗し、ゼロになったら毛玉すら拾えなくなる。

 体力は睡眠以外にも食事アイテムで回復できるが、食事アイテムを買うと出費が増えるし、そもそも食べられる回数も決まっているので、朝から直行→ひたすらアイテム採集→体力ゼロになったら即帰宅して一日終了、という“ザ・労働”な日々を過ごすこともしばしば(ちなみに学校はない)。

 こうやってぶっ通しで準備するとそれだけナイトマーケットにかかる期待が大きくなるので、欲をかいてふっかけた値段でお客が逃げちゃった時なんかはもうね……。

ミネコのナイトマーケット
素材はちょっとしたミニゲームなどを通じて入手する。猫の毛玉(織物に使う)は島じゅうで拾えるが、ねこ農場に行けば一定時間タイムアタックで拾い放題。

 じゃあこの準備フェーズがつまんないのかと言えば、それは人によると思う。記者は意外と苦もなく黙々とやれてしまった。

 でもゲームを進めていくと道具が結構高くなってきて、一回のナイトマーケットの収入ではあまり進展を得られず「来週か再来週にはあの道具を買えるはず……」とちょっと停滞感が出てしまう時期もあるっちゃある。1個が150~250ドルチョイぐらいの物を売っている時に次に買いたい道具がいきなり5000ドルだった時は思わず「は?」と声が出てしまった(一晩に訪れる客の数には制限があるので、大量に用意したら売り続けられるわけではないのだ)。

 そのあたりの価格バランスは「ちょっとなー」と思うこともあるのだが、まぁメインにしたい商品とは別のアイテムのための素材を取りに行って気分転換しながらやり過ごすといいんじゃないだろうか。品物にバリエーションもつけられるしね。

ミネコのナイトマーケット
あんま頑張りすぎるとこうなるからね。(※「明けても暮れても」が誤字ってる気がするがそれはともかく)

この素晴らしき(奇妙な)世界

 というわけで本作、一番の魅力はその世界だ。黙々と素材収集&アイテム作成しつつエキセントリックな住人と猫だらけの世界に惹き込まれていく、見た目以上に味わい深いナイスな作品となっている。

 個人的には軽妙なサウンドもいい感じだし、メイン開発者のひとりブレント・コバヤシ氏が恐らく日系なこともあって、(海外インディーにたまにあるトンチキなオリエンタルテイストではなく)“文化への理解がありつつ、あえてちょっと外したような日本風世界”なのも好みだ。

ミネコのナイトマーケット

 強いて言えば先に書いた価格バランス以外にも、「どの村人が何を欲しがっていたかのメニューがない」とか「メニューから覚えたレシピの一覧や博物館に寄付したモノを呼び出せない」とか「作成するアイテムの価格帯の目安ぐらいは教えて欲しい」とか、もうちょっとお助け機能があっても良かったんじゃないかと思う。

 プレイ時間は人によって大きく変わってくるだろう。実感としては「10時間ぐらいではまだ序盤」といった感じなのだが、一応聞いてみた公式の目安は「クリアーだけなら8時間、サブコンテンツ含めて12時間、100%なら20時間」らしい。このテイストやプレイ要素が気に入る人ならお値段以上のものはあると思うので、あまり“攻略”を焦らず、秋の夜長にじっくり腰を据えてちまちま遊ぶぐらいをオススメしたい。