2023年7月28日~31日のあいだ開催されていた、中国最大級のゲームイベントChinaJoy 2023。真夏の中国が熱気で包まれる同イベントにおいて、ひときわ大きな注目度を集めていたのがバトロワ剣戟アクションゲーム『NARAKA: BLADEPOINT』(以下、『NARAKA』)。会場では、同作をパブリッシングするNetEase Gamesブースの真向かいに、『NARAKA』のみの単独ブースを展開。力の入れぶりをうかがわせた。

 7月14日から、プレイステーション5版の配信および基本プレイ無料化されるなど、大きな変化があった『NARAKA』だけに、さらなる訴求のために大々的に訴求するのも、当然のことと言えるだろう。

 そんな『NARAKA』は、8月に入ってさらなる大きな施策が展開される。そう、既報の通りスクウェア・エニックスの『NieR:Automata』、『NieR Replicant』とコラボするのだ。

 いったいどんなコラボになるのだろう……と、気になっていたところに、NetEase Gamesより、「『ニーア』とのコラボに関連して、『NARAKA』開発者のインタビューいかがですか?」とのうれしいご提案が。もちろん、お願いいしたいですとも! と、この好機を逃すまじと記者が向かったのは、ChinaJoyが行われた上海からクルマで2時間30分程度のところにある、『NARAKA』の開発拠点がある杭州。

 南のほうにある広州に本社をかまえるNetEase Gamesだが、中国全土に開発拠点は複数あるようで、杭州もそのひとつ。『NARAKA』やほかのタイトルの開発部隊が入る敷地内は、複数のビルが立ち並び、まさにスタッフの皆さんが呼称するように“キャンパス”といった趣き(当然、お店なども入っていたりする)。「恵まれた開発環境だよね……」と口をあんぐりとすることしきり。

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まさにキャンパスといった趣きのNetEase Gamesの杭州オフィス。こんなビルが複数立ち並んでいる。
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敷地内には『NARAKA』の巨大な武器がどどーんと鎮座。
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オフィス内には『NARAKA』が全世界でどれだけ遊ばれいるかがリアルタイムで表示されている。全世界2000万人のユーザーを誇るだけにスケールが大きい。

 さて、そんなわけで『NARAKA』と『ニーア』のコラボに関するインタビューだが、当日は台湾とタイのゲームメディアとの3社合同で行われた。インタビューを実施したのは、『NARAKA』の開発を統括するという、おそらくディレクターの立ち位置にあると思われる飞虹(ヒコウ)さんと、キャラクターを担当するというLensi(レンシ)さん&シーン担当だという(美術担当)奕艾(エキガイ)さんのふた組3名。

 インタビュー自体は、『NARAKA』と『ニーア』コラボに対する注目度の高さゆえか、各国メディアが気になる質問をそれぞれぶつけて、開発者の方がそれに適宜お答えして、複数言語が飛び交い……という、ちょっぴりカオスな状況だったのだが、ここは記事上の便宜から、3人とのやりとりという形で少し整理してお届けさせていただく。何はともあれ、『NARAKA』の開発者に直接お話をうかがうことができるというのは、極めて貴重な機会だ。

 まずはお伝えしておくと、今回の『NARAKA』と『ニーア』とのコラボで実装されるのは、『ニーア』キャラクターのスキンと武器。キャラクターはそれぞれ以下の通りで、武器はそれぞれ6種類となる。

  • コラボスキン:6
  • コラボスキンに対応する武者:5人(紅夜に2セットあり)
  • コラボ武器スキン:6

【8月10日実装】
2B
9S
2P

【8月24日実装】
2A
ニーア
カイネ

【武器】
大剣、太刀、 斬馬刀、槍、剣、双刀

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飞虹(ヒコウ)

『NARAKA』ディレクター(写真上)

Lensi(レンシ)

『NARAKA』キャラクター担当(写真下・右)

奕艾(エキガイ)

『NARAKA』美術担当(写真下・左)

『NARAKA: BLADEPOINT』公式サイト

2Bと紅夜の共通点からコラボに発展

――そもそも、『ニーア』とコラボすることになったきっかけを教えてください。

ヒコウユーザーさんからのご要望が大きな後押しになっています。『NARAKA』には、紅夜というキャラがいるのですが、2Bと同じく目を隠しているキャラで、多くのユーザーさんが2B&紅夜のコラボイラストなどを、SNSなどに投稿してくださったんですね。二次創作も多かったです。「『ニーア』とコラボしてほしい」というご意見もありまして、だったら……ということになりました。

 『NARAKA』は2021年からサービスを開始しているのですが、開発の段階から紅夜と2Bは似ているねという話しはしていましたね。

 あとは、世界観的にも『NARAKA』と『ニーア』はけっこう共通点があるように思います。“宿命”や“運命”といった……。そんな自然な流れでコラボすることになりました。

――ある意味で、運命的なコラボだったと言えそうですね。

ヒコウそうですね。

2b
Viper のコピー

――どのようにして、『ニーア』と『NARAKA』の世界観を融合したのですか?

レンシ『ニーア』シリーズのキャラクターを『NARAKA』の世界観に融合するにあたっては、とにかく原作を忠実に再現することを心掛けました。両作のファンの方に喜んでいただけるように、ふたつの世界観を融合して、違和感なくコラボすることです。

 キャラクターのスキンの実装にあたっては、『NARAKA』に登場するキャラクターの中から、『ニーア』のキャラクターと似たような性格や外見などを持つキャラクターを選んで、実装することにしました。

 ファンの方からご要望が高かった2Bと紅夜はすんなりと決まりました。ふたりともクールで無口で戦いに強いという印象もありますし。

――『ニーア』と『NARAKA』のコラボの発端になったキャラクターどうしでもありますし。

レンシ9Sは、無塵という武者のスキンですね。無塵は『NARAKA』の世界では100歳くらいの年齢なのですが、見た目は少年っぽくて、若い感じがするんです。そんなわけで、9Sと相性がいいのではないかと思い選びました。

9S
Wuchen のコピー

――8月24日から実装される、2A、ニーア、カイネに関してはいかがですか?

レンシA2は顧清寒、ニーアは岳山、カイネは新キャラクターの玉玲瓏ですね。それぞれのキャラクターをどの武者に組み合わせるかということに関しては、さきほどお話したとおり、外見と性格が合致することを基準にしました。ただ、きっちり合致することは難しかったので、この3キャラクターに関しては、外見と性格のバランスを取って、似たようなキャラクターを選んでいます。まあ、性格よりは外見重視でしょうか。

A2
Justina のコピー
ニーア
Yueshan のコピー
カイネ
F0bHQcPacAInzOi

――とくに苦労したキャラクターはいますか?

レンシとくにこれというキャラクターはいないのですが、たとえば、足の長さなどに違いがあると、その調整はひと苦労でした。どう工夫して違和感なく世界観に溶け込めさせるか……というのは難しかったです。

 あとは、技術の問題ですね。『ニーア』と『NARAKA』は異なるゲームエンジンを使っているので、似たようなビジュアルのテイストにするのはひと苦労でした。

 解決作としては、スクウェア・エニックスさんと何度もコミュニケーションを取って、問題点を少しずつ解決していきました。

――綿密にやり取りをしたのですね。

レンシ実際のところ、2Bと紅夜とでは、少し印象が異なるのですが、いざ実装された2Bはゲームの中でぜんぜん違和感がなくて、開発チームでも、自分たちの予想を超える体験になっています。ファンの方には、ぜひ体験してみてもらいたいです。

異なる世界観を融合させるのにひと苦労した

――美術面からはいかがでしょうか?

エキガイ『ニーア』と『NARAKA』は、けっこう異なる時代設定です。『ニーア』は未来を舞台にした世界観とスタイルですが、『NARAKA』では中国の歴史ある東洋スタイルのデザインになります。これをどう融合するか……というのは、ひとつの課題でした。

 今回は、『ニーア』の世界をそのまま『NARAKA』に移すのではなくて、“月の涙”といった、『ニーア』の代表的な要素を取り出して、それを『NARAKA』の世界に移し替えることにしました。

月の涙

エキガイ色遣いにも気を配りました。『ニーア』のカラーは白という印象があるのですが、『NARAKA』の世界は、同作の代表的な花である彼岸花に象徴されるように赤です。このふたつの要素を組み合わせたら、「化学反応を起こして思わぬ効果があるかも」と思ったのですが、期待以上の効果でした。

 『ニーア』の未来感のあるモチーフを盛り込んだのは、フィールドではなくて、この7月から実装した3Dロビーですね。3Dロビーではより一層コラボ感を味わっていただけるかと思います。

3Dロビー

――コラボするにあたって、フィールド上での苦労したポイントはありますか?

エキガイ『NARAKA』独自の世界観をまず優先して、そこにコラボの要素を入れるという方針でいました。とはいえ、『ニーア』の未来感のある世界観を盛り込むのは、大きなチャレンジでした。今回、ほかの作品で未来を舞台にしたゲームを開発した経験のあるスタッフに、開発に参加してもらっています。

――このコラボのために、優秀な人材にも集まってもらったのですね。ちなみに、フィールドでとくに注目したほしいところは?

エキガイ『NARAKA』コラボとは直接の関係はないのですが、今回のコラボ開始に合わせて、3つ目のマップのチラ見せをしています。フィールドのどこかで入ることができるホワイトマップの世界です。このようなホワイトのデザインは、いままでの『NARAKA』の世界になかったスタイルになります。ユーザーの皆さんに、「見てみたい」と興味を持っていただけたらうれしいですね。

NARAKA  BLADEPOINT 2023.08.08 - 15.04.00.15.DVR.00_01_56_07.Still003
NARAKA  BLADEPOINT 2023.08.08 - 15.04.00.15.DVR.00_02_09_29.Still004
NARAKA  BLADEPOINT 2023.08.08 - 15.04.00.15.DVR.00_02_43_18.Still006
ホワイトマップ

――武器に関しては、どのようにデザインしたのですか?

ヒコウ『ニーア』の武器に関しては、外見を完全に再現するようにしています。エフェクトもすごく工夫して、再現性を高めています。

 『NARAKA』はPvPなので、バトルのバランスがあります。武器の大きさについては、大きすぎるとバランスが崩れてしまうので、大きさに関しては『NARAKA』に合わせています。たとえば、太刀の大きさは『NARAKA』準拠ですね。武器のアクションに関しても、PvP体験をなるべく崩さないようにバランスを考えて工夫しています。

――そのへんは『ニーア』ファンも違和感を抱かないようになっているのですね。

ヒコウそうですね。『ニーア』のアクションを完全に再現したというわけではないのですが、そもそも『NARAKA』と『ニーア』は攻撃の感じが似ているので、そんなに違和感なく実装できました。100%再現できているわけではないのですが、できるだけリズム感を重視しながらデザインしています。

――武器の再現度も、けっこう難易度は高かったのですか?

ヒコウそうですね。『NARAKA』もゲーム内では武器が多いので、『ニーア』の武器といちばん合う武器を選びました。そのうえで、『ニーア』の武器をできるだけ再現するようにしています。

月光と闇
三式

――今回のコラボで、さらに注目してほしいポイントはありますか?

ヒコウ今回のコラボにあたって重視したのは、ひとつひとつのパートはもちろんですが、全体をとおして、ユーザーさんに没入感のあるコラボ体験を味わっていただくことでした。そのための一助として、登場するキャラクターにまつわる、ちょっとしたストーリーも作っています。『ニーア』のキャラクターは、なぜ『NARAKA』の世界に行くことになったのか、2Bと紅夜との関わりは、というふたりが交差するストーリーですね。

――コラボの世界観を補完するショートストーリーということですね。ちなみにですが、『NARAKA』の開発者の皆さんの中には、『ニーア』ファンが多いのですか?

ヒコウもちろんです! 中国にも『ニーア』のファンは多いです。開発は昨年12月にスタートして、6ヵ月以上取り組んでいるのですが、みんな楽しみながら開発させていただいていますよ。

 今回のコラボは、スキンや武器、3Dロビーなど、いろいろと工夫しています。『ニーア』の数あるコラボの中でも、我々『NARAKA』のコラボが、いちばん充実しているものであるに違いないという自信はあります!

――おお、それだけ気合が入っているということですね。

エキガイ『NARAKA』の中に“Glory is yous”というトロフィーにまつわるフレーズがあるのですが、今回のコラボに合わせて、“Glory is ours”と変えていたりします。ちょっとした細かいところも変えているので、そういった点にもぜひ注目していただきたいです。

――遊び心も溢れていますね(笑)。せっかくの機会なので、おうかがいしたいのですが、『NARAKA』が世界中で人気を博している理由は、どのへんにあると自己分析されていますか?

ヒコウ『NARAKA』は、2周年を迎えた7月の段階で全世界でのプレイヤー数が2000万人を超えています。Steamの同時接続者数が26万人という外部のデータもあります。

 『NARAKA』は、10年以上アクションゲームの開発をしているスタッフがいたりするのですが、ユーザーさんに評価していただけているとしたら、アクションに対する熱意の賜物とは言えるかもしれないです。アクション自体のゲームデザインや操作感、PvPの体験など……。

 一方で、東洋風のアートスタイルは、アジアのみならず、欧米でも人気があります。そういった独自のスタイルも、人気がある理由ではないかと思っています。

――気の早い話ですが、将来また『ニーア』とコラボしてみたいですか?

ヒコウ今回とにかくたくさんのコンテンツを作って、やりたことは全部やりきった感があります。思い残すことは一切ないですね。とはいえ、機会がありましたら……。

――最後に、ファンに向けてのメッセージをお願いします。

ヒコウ今回のコラボでは、たくさんのコンテンツを工夫して作りました。皆さんの期待を裏切らないように、『ニーア』の雰囲気を伝えるべく、最大限に注力しています。『ニーア』で『NARAKA』に興味を持ってくださった方には、バトロワ剣戟である『NARAKA』の遊びを味わっていただきたいです。『ニーア』がお好きな方なら気に入っていただけると思います。

 『NARAKA』にとって、『ニーア』は最大規模のコラボのひとつとなっています。ぜひ楽しんでください。

レンシ『NARAKA』に遊びにきてください!

エキガイこのコラボをきっかけにして、『NARAKA』を体験してもらえるとすごくうれしいです。ぜひ、プレイしてみてください。