既報の通り、2023年7月14日~16日に京都で開催された日本最大級のインディーゲームの祭典“BitSummit Let's Go!! / ビットサミットレッツゴー!!”にて、『パタポン』の精神的続編となるタイトル『RATATAN』(ラタタン)が発表された。
『パタポン』シリーズなどを開発した小谷浩之氏がゲームデザインを手掛ける本作だが、8月1日からキックスターターが開始されるのに合わせて、同作の詳細が判明。最新動画も公開された。そんな『ラタタン』の進捗を受けて、ここではTVTゲームデザイナー 小谷浩之氏、ディレクター 保井俊之氏、プロデューサー 坂尻一人氏の3名へのインタビューをお届けしよう。
発売元であるRatata Artsからのプレスリリースは、インタビューのあとに転載させていただくが、現時点で判明している『ラタタン』の概要は以下の通り。
- 『パタポン』の精神的続編で、ジャンルはリズムローグライクアクション。
- 100体以上のかわいいキャラクターが画面を縦横無尽にかけまわる超バトルが楽しめる。
- 最大4人までのマルチプレイに対応。
- 小谷浩之氏がゲームデザインを担当。主要な開発陣としては、メインアーティスト Nelnal氏、コンポーザー 足立賢明氏、ディレクター 中舎健永氏などが参加。
- 8月1日 01:00(日本時間)からキックスターターを開始。
小谷浩之氏(写真中央)
TVT ゲームデザイナー
保井俊之氏(写真右)
TVT ゲームディレクター
坂尻一人氏(写真左)
TVT プロデューサー
Nelnal氏がメインアーティストを担当することになって、「この方だったらいける」と思った
――ついに『ラタタン』が発表されました。
小谷ひさびさにゲームを作っています。かなりたいへんとは思いつつも、非常に楽しくもたいへんな思いをしています。いっしょに作ってくれているスタッフがとてもモチベーションが高いので、いまとても楽しい制作です。ぜひ、皆さん楽しみにしていてください。
――『ラタタン』が生まれた経緯は?
坂尻僕が保井さんのところに、「何かゲームを作ろう」という話をもちかけたのが、そもそものきっかけです。保井さんのところにいったら、「小谷というおもしろい男がいるから」と居酒屋に呼び出されて、3人で話したのがスタート地点です。僕自身も、小谷さんとはソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)に同僚だったので、知っていたのですが。
保井そもそも小谷さんのクリエイティブを、どうにか活かしてしていきたいと思っていたんです。ある意味で、(仲間となる)「3人目が出てきた」と。これならば、プロジェクトがけっこう進められるかもと思いました。
そもそもの話として、私は“ゲームやろうぜ!”のプロジェクトで小谷さんとごいっしょさせていただいてから、長い付き合いになります。当時は、小谷さんがディレクターをしていて、私がゲームプランナーだったんです。いってみれば、もともとは私の師匠ですね。いま私は開発スタジオを構えているのですが、つねづね、彼のクリエイティブを世に出したいと強く思っていました。
――小谷さんのどのような点を評価されているのですか?
保井そうですね。実際のところ、当時はディレクターだったのに、あまりディレクションする感じではないんですよね……。
「そこは譲れない」といったアツい芯があって、そこを大事にされる方ですね。つまり少しセンスレイヤーが強い方です。私はどちらかというとロジックレイヤーで、理詰めでゲームを作るタイプです。いわば真逆なんですね。真逆だからすごく引かれるところがあって、そういうコンビネーションでゲームが作られているということはあります。
――『ラタタン』の企画はすんなりとスタートしたのですか?
保井ゲームのイメージとしては、聞かされたものはぜんぜんコミットできるものだったのですが、私が強く、「ここだけは担保してほしい」と思ったポイントは、絵です。絵を見て、「一撃で、これはいける!」というものを提示してくれと言ったんです。
――最初にですか?
保井いろいろと紆余曲折があったのですが、最終的にTVTがコミットするのだったら、「ちゃんと絵を完成させるくらいにしっかりとしたイメージで」、というのはありました。端的に言うと、乗れるか乗れないか、絵のイメージがないと、そのまま進める自信が持てなかったという。そのときに、Nelnalさんがメインアーティストを担当することになって、「この方だったらいける」と思ったのが、開発にゴーサインを出す、きっかけでした。
小谷自分でも落書きはするんですよ。僕自身は、“パレードして、ちょっと物悲しいような楽しいような感じで世界を巡るという話をやりたい”というのはずっと前から言っていて、それを、ああでもないこうでもないと、いろいろと考えていたのですが、どうも自分の中では、これだとハマるものがなかったんです。
実際のところは、企画を練る前から僕はNelnalさんの絵に惚れ込んでいて、もっと早くからNelnalさんに声をかけていればいいものを、しばらくそれができずにいたんですね。まわりに「そんなにやりたいのなら、話をしてみれば?」と背中を押される形で、ようやく今回実現しました。
坂尻『パタポン』は絵の完成度が非常に高いんです。「それを超えるにはどうしたらいいか」からのスタートだったので、けっこう試行錯誤が多かったです。当時、「オリジナリティーを出さないといけないし、『パタポン』を超えないといけないし、どうしたら超えられるのか」というのを、すごく悩んでいたのですが、そのアプローチだとなかなかゴールにたどり着けなかったんですね。
で、当初のNelnalさんの絵に惚れ込んでいて、着想していったという、この企画のスタート地点に戻ろうということで、Nelnalさんに話しかけたところ、イメージに合うビジュアルをいただいて、そこからゲームの絵が固まっていった感じです。その流れからやっと、「これだったらしっかりと作り込む推進力がある」という自信が持てました。
――開発はいま粛々と進んでいるかと思いますが、リリースはいつくらいを予定しているのですか?
坂尻2025年の前半くらいをめどに開発を進めています。いま“遊び”の状態ができるのを作り込んでいる状態です。遊び感としては、従来の『パタポン』のファンに満足してもらえることを第一優先にしています。いま、新しい体験を小谷が考えています。
――新しい体験というのは、どのようなものになるのでしょうか。
小谷公開された映像を見ると、初めて見たキャラクターがどんどん出ていると思うのですが、それにマルチプレイヤーのキャラクターがいて、みんなが声を揃えて楽しいハッピーな場を作るというのが目標です。ちなみに船のキャラクターはとくにこだわっているのですが、声を担当してくれているのは杉田智和さんです。
本作には、いろいろな遊びを盛り込むとは思うのですが、詳しくはお話できません。いずれにせよ、楽しくてずっといたくなるような空間を作りたいです。
現状お話できることはあまりないのですが、映像などを見ながら、みなさん「ああじゃないか?」、「こうではないか?」ということを考えていただけると楽しいのではないかと思います。
マルチプレイに特化した自社エンジンTheory Engineが開発を後押し
――保井さん的には、そんな小谷さんを受けて、ゲームとしてはこうしていきたいというのはありますか?
保井今回クリエイティブはおもに(小谷氏に)見ていただいているので、我々としてはいかに開発を順当に進めていくかに注力しています。
開発にあたって、今回力を発揮してくれているのが、Theory Engineというリアルタイムマルチプレイヤーアクション用のエンジンです。弊社の立ち上げメンバーがおもに、バンダイナムコエンターテインメントさんの『ゴッドイーター』をいっしょに作ったスタッフなのですが、彼らが新しく作った、P2P(ピアツーピア)に特化した、エンジンがあるんです。
そのエンジンは、リアルタイム性が高く、応答性が高いマルチプレイアクションに向いていて、ネットワークゲームを作るためのエンジンです。『ラタタン』になくてはならない存在になっていますね。
――そういうエンジンを得て、小谷さんは水を得た魚のようにアイデアをポンポンと?
保井だと僕は思います!
小谷そもそも、ネットワークゲームをリズムゲームでやるということ自体が、信頼のおけるエンジンがないとできない話なので。みんなでいろいろと話をすれば、スタッフが問題を解決してくれるでしょうし、そういうバックボーンがある。マルチプレイで、リアルタイムのリズムアクションみたいなことを、そもそも「やれるの?」という世界だったわけです。マルチプレイは前提かなと最初から思ってはいたのですが、二の足を踏んでいたんですね。正直言うと、「そもそも無理なんじゃないかな」と思っていました。それを可能にしたのが、Theory Engineだったわけです。
『パタポン3』はマルチプレイではあったのですが、プレイヤーキャラクター以外は画面に登場するのは3体だったんです。「そこだけが残念だ」と全『パタポン』ファンが言うくらいで。新しい企画では、とにかくワラワラ感がほしかった。そこだけはとにく譲れない。それが「マルチプレイでリズムアクションをできるの?」というところにまずは確信が得られなかったんです。ところがどっこい動けてしまうということで……。3人で飲みながら、Theory Engineの話を聞いて、その気になったというのはあります。
保井“ゲームやろうぜ!”という(笑)。
小谷保井は技術的に難しいタイトルを手掛けているので、奴が言うことだったら信頼できるかなと。
――100体のキャラクターがワラワラするわけですね。
小谷わかりやすいから100と言っていますが、たぶん100を超えると思います。『パタポン』のファンが聞いたときに、「『パタポン』より多いんだ」ということはわかっていただけるとうれしいかなと。
――ちなみに『ラタタン』に、マルチプレイはどのような楽しみをもたらしますか?
小谷まだ完全にはできていないのですが、基本的には一体感だと思っています。そのために、コアになるキャラクターがいるというのがひとつあります。ひとりひとりが、「俺が強い」ではできない一体感ですね。キャラクターが相互に連携したり、統率して守ったりすることによって得られるというのが、大きいところだと思います。
キックスターターの期間を楽しんでほしい
――今回キックスターターが始まりますね。
坂尻はい。ゲームを作る能力を持ったベテランクリエイターが、いま日本ではけっこういると思っています。ですが、ゲームを作るクリエイティビティーを持っている人たちだけでは、いまゲームを形にすることがけっこう難しかったりします。今回、我々ももうちょっと簡単にできるだろうと思って、準備していたところがあったのですが、座組を組み立てるところまででけっこうな時間と労力がかかってしまいました。このさきもっとスムーズに開発が進められるようになればうれしいです。
ファンの方にキックスターターで応援していただくことによって、作品性やおもしろさをさらに向上させるとともに、ビジネスとしての組み立てもできる。“ゲームを最後まで作り切っていいものを届ける”という軸があって、キックスターターをすることにしました。
ゲームにアツい思いをもっているおじさんたちなので、応援していただければ本当にいいものを皆さんにお届けすることができる自信はあります。皆さんに応援していただきたいですね。
小谷キックスターターの期間を楽しんでほしいというのがまず1点。楽しんでもらえるようなことをいろいろと考えています。その期間にいろいろなコミュニケーションの結果、我々がプレイヤーの方々にコミットすることが、いろいろとでてくると思います。
非公開で制作していると、経営判断でこれはオミットしてしまおうということもあるかもしれないのですが、今回はそれは成立しないと思っています。ですので、今回はいつも以上に責任感と張り合いをもって、制作に取り組むことになるんだなという、いま覚悟を決めているところです。
保井むしろ私は逆に、「これ軽率にやってみよう」ということで、取り組んでいる部分があるかもしれません。本来ならば、経営者であるべきなので、ちゃんと細かくギャーギャー言わないといけないところをやってないという反省点がある一方で、そもそもさきほどお伝えした通り、“ゲームやろうぜ!”というのが発端だったりもします。
『ラタタン』は、あのころの気持ちで、もう1回“ゲームやろうぜ!”という気持ちでいます。そういう気持ちでやっているので、キックスターターの皆さんには応援していただけるとありがたいなと思います。
――最後に、『ラタタン』開発にあたっての抱負をお願いします。
坂尻これまでの世にないものができていますし、かつ、従来からのファンが納得できるものになっています。『パタポン』ファンの方も楽しめるし、新しい方にも喜んでいただけると思うので、ぜひ期待していていただけるとうれしいです。
小谷“ずっとそこにいたい”と思えるようなゲーム世界を作っていきます。ぜひ、いらしてください。お待ちしております。
保井今回のゲームはある意味みんなで進むパレードのようなゲームになっているところもあるので、ぜひ皆さんもこのパレードに加わっていただいて、みんなでいっしょに踊ってくれるとうれしいです。
以下、リリースを引用
7月29日 東京 - Ratata Arts株式会社は、新作リズムローグライクアクション『ラタタン』(RATATAN)のUXムービーを公開しました。
なお、キックスターターキャンペーンは、2023年8月1日 01:00(日本時間)より開始します。
本作は『パタポン』シリーズを手掛けたクリエイター小谷浩之が新たな傑作を作り出すべく、株式会社TVTとタッグを組んで開発を行います。
主要な開発陣として、Nelnal(メインアーティスト)、足立賢明(コンポーザー)、『.hack』シリーズの中舎健永(ディレクター)などベテラン開発者たちが集結しました。
『ラタタン』(RATATAN)とは
プレイヤーはラタタンと呼ばれる指揮者となり、手にした楽器が奏でる4つのフレーズを組み合わせることで発動する「リズムコマンド」を駆使してカワイイ軍団を操作するリズムアクションゲームです。
本作では、4拍子の攻撃と防御のリズムコマンドに加え、操作キャラクターが自由に移動できるアクション性とユニークな楽器とスキルを持つキャラクターが新たに登場し、本作のテーマである音楽性もより楽しい遊びへと進化しています。
UXムービーで登場するフォートランとラタタンたち
フォートラン(杉田 智和)
ハリギッタン(月城 日花)
ニャンドラー(結月 春菜)
ミミズッキュン(阿座上 洋平)
ケロロンパ(福西 勝也)
キャスティング協力:株式会社AGRS
ゲームシステム
ラタタンはメダマの力により命を与えられた音楽好きのヒーローで、かつてレドと呼ばれる惑星に住んでいた動物のような見た目をしています。
ラタタンたちは個別の楽器とスキルや能力を持っており、歌や楽器を演奏することでリズムバトルを有利に進めることができます。
例えば、サポートタイプのキャラクターであるケロロンパはメガホンを使い自軍の士気を高め、敵をあおって戦場を扇動します。また、防御タイプのキャラクター、ハリギッタンは痺れるようなギターのリフで仲間を守る砦を建築します。
Kickstarterキャンペーン
Kickstarterキャンペーンでは、新たなシステム、ミニゲームの追加など、ゲームコンテンツを拡張するための様々なストレッチゴールを計画しています。
資金の目標が達成できた場合には、PC版と最新の家庭用ゲーム機での本作のリリースに加え、TVTが持つ技術「Theory Engine」を利用して、安定した拡張性のあるマルチプレイを実現します。
TVTについて
TVT(Tokyo Virtual Theory)はコンシューマーゲームを手掛けてきたスタッフによるクリエイター集団でゲームのIP創出や原作開発をはじめ、世界観シナリオのライティング、企画開発チームの組成といったゲーム開発に必要な工程を全てデザインしています。「みんなで、もっと、遊ぼう。」を理念とし、オープンプラットフォームのネットワークエンジンを特徴としたミドルウェア技術、「Theory Engine」を自社開発しており、大規模なネットワークゲームのハイクオリティでリアルタイムなパフォーマンスを可能にしている。
■スタッフ募集について
現在、株式会社TVTでは各プロジェクトを共に推進してくれるスタッフを募集しています。主な募集はプログラマー、グラフィッカー、モーションデザイナーなど。詳細は下記リクルーティングサイトよりご確認ください。