2023年7月14日~16日、日本最大級のインディーゲームの祭典“BitSummit Let's Go!! / ビットサミットレッツゴー!!”が、京都市勧業館みやこめっせにて開催。

 会期2日目の7月15日に行われたステージイベント“TVTの新作紹介とインディーズ系ゲームの取り組み~失われたPS初期からのインディースピリッツ~”にて、『パタポン』を開発した小谷浩之氏がゲームデザインを手掛ける、『パタポン』の精神的続編として『RATATAN(ラタタン)』が発表された。8月1日からキックスターターが開始となることが明らかにされた。開発を手掛けるのはTVTとなる。

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『RATATAN(ラタタン)』はマルチプレイ対応に? 詳細が明かされるのは7月29日

 ステージイベント“TVTの新作紹介とインディーズ系ゲームの取り組み~失われたPS初期からのインディースピリッツ~”に登壇したのは、TVTゲームデザイナー 小谷浩之氏、ディレクター 保井俊之氏、プロデューサー 坂尻一人氏の3名。ファミ通グループ代表 林克彦がMCを努め、TVTを設立した経緯や今後の取り組みなどが語られた。

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 3人を語るうえでキーワードとなるのが、“ゲームやろうぜ!”。“ゲームやろうぜ!”とは、1995年にソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE・当時)主催により行われた若手ゲームクリエイター発掘のための取り組み。当時ソニーがバンド発掘のために展開していた“バンドやろうぜ”のゲーム版で、プレイステーション用ソフト開発のための人材を発掘するプロジェクトとなる。

 保井俊之氏は、その第一期生で「うっかり取ってもらった」(保井氏)とのこと。保井氏からは、“ゲームやろうぜ!”の合格者たちが集まって合宿が開かれたときの、「セガサターンを持ち込んで『バーチャファイター』で遊んだ」という、ほのぼのとしたエピソードが語られていたが、MCの林が語ったとおり、「いまのインディーゲームシーンに近い」ような雰囲気があったのかもしれない。

 さらに言えば、“ゲームやろうぜ!”のプロジェクトは、未知の可能性にかけてインディペンド的に作られていたとのことで、制作手法的にもインディーゲームに近かったとも言えるのかもしれない。

 ゲーム業界に、“ゲームやろうぜ!”の出身者は多いようだ。

 ちなみに、小谷浩之氏はSCEで“ゲームやろうぜ!”のディレクターを担当しており、同時期に坂尻氏もSCEに在籍していた。当時の坂尻氏の小谷氏に対する印象は、「ずいぶんファンキーな人だな」というもの。

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左から、TVTゲームデザイナー 小谷浩之氏、ディレクター 保井俊之氏、プロデューサー 坂尻一人氏。

 TVT(Tokyo Virtual Theory)は、そんな“ゲームやろうぜ!”の出身者である保井氏が2019年に立ち上げた開発会社。『ゴッドイーター』のスタッフが、現在的なネットワークエンジンを作ろうということで発足した、“ゲーム開発に必要な工程をすべてデザインしている”会社だ。

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 そんな3人が相まみえることになるのは、数年くらい前のこと。そのとき別会社にいた坂尻氏が、保井氏に「いっしょに仕事をしませんか?」と働きかけたところ、薦められたのが、小谷氏だったという。3人で新橋の居酒屋で会って、「オレらゲームを作れるんじゃね?」と話したという印象的なエピソードが語られた。

 TVTでは現在ふたつのプロジェクトが進行中なのはすでに発表済み。『Project JabberWocky』と『Project Shaz』だ。

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 今回、そのうちの『Project JabberWocky』の進捗が発表。ティザーが公開され、『パタポン』の精神的続編として、『RATATAN(ラタタン)』とのタイトルで開発中であることが明らかにされた。8月1日1時からはキックスターターも開始されるという。

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 発売時期や対応プラットフォームなどは未発表で、現段階で公開された情報はあまり多くないが、トークなどで語られた『ラタタン』に関するトピックは以下の通り。

  • タイトルの由来。昔のバイクのテレビCMで、“ラッタッタ〜”という音が使われていたのが印象に残っていたという小谷氏。調べてみると、それは英語の擬音で、“叩く”ことを指すらしい。叩くことを指す“トントントン”を“ラッタッタ〜”というセンスがすごいと感じた小谷氏は、『パタポン』の“パタパタパタポン”を超えられる音ではないかということで、『ラタタン』にしたという。
  • メインアーティストを担当するのはイラストレーターのNelnal氏
  • 林より、公開されたビジュアルの「左側に大きい何かありますね」との質問には、小谷氏は、「楽しそう。楽しいゲームになります」とのこと。
  • 「キャラは多いのか?」との質問には、「なんとか比何倍みたいな?」(小谷氏)とのお答え。
  • ジャンルも未発表だったのだが、「想定したジャンルですか?」との問いかけには、坂尻氏が、「(『パタポン』は)ファンが多いタイトルなので、期待に応えられるようにしたいと思っています。裏切らないように誠心誠意開発していきたいです。ただ新しいタイトルを作るのであれば、クリエイターとして新しい要素を入れたいと思っています」とのこと。
  • 音楽は、小谷氏の親友で、『XI[sai]』で組んだ足立賢明氏が担当。「わけのわからないことを音楽にして出力してくれる人」と小谷氏も絶大な信頼を寄せる。
  • 「マルチでもプレイできるのか?」との問いには、坂尻氏より、「TVTの方針が“みんなで、もっと、遊ぼう。”がモットーなので、想像に任せる」と、マルチプレイ対応であることを示唆。

 キックスターターに関しては、「売るためにはそれなりのビジネス戦略が必要になります。プロジェクトを立ち上げたときから、(キックスターター)は織り込まれていたという坂尻氏。小谷氏は、以前ならばリリース前まで秘密で作っていたものが、キックスターターをすることで、いろいろなゲーム内容を先に決める前の段階で情報公開をし、ユーザーのフィードバックを受け止められることを歓迎しているとのこと。「楽しみにしている」と語った。

 8月1日の1時にキックスターターを開始する『ラタタン』だが、7月29日には、どのようなゲームなのか、詳細が明らかにされるという。

 なお、もうひとつのプロジェクトである『Project Shaz』に関しては、「待ってほしいです。『ラタタン』をしっかりと形にしてから進めたい」とのことだ。