2010年にニンテンドーDS向けに発売された『ゴースト トリック』が13年のときを経て蘇る。
現行ハード(Nintendo Switch、プレイステーション4、Steam)向けにリファインされ、2023年6月30日に新発売となるのだ。
本作は、死後にタマシイとなって目覚めた主人公が自分の死の謎を探るミステリーアドベンチャーだ。『逆転裁判』シリーズを生んだ巧舟氏が手掛けた作品だけあって、驚きに満ちたストーリー展開と個性的なキャラクターの掛け合いが魅力を放っている。
さらに、“死者のチカラ”を使ってモノを操り、死せる人々の運命を変えるパズルもプレイヤーを夢中にさせた。
そんな『ゴースト トリック』が高解像度化、高フレームレート化され現行ハードで再びプレイできるとあって天にも昇る気持ちになった人も少なくないのでは。今回、幸いにも新生『ゴースト トリック』の第2章までを先んじてプレイする機会を得たのでその模様をお届けしよう。
Amazon.co.jpで『ゴースト トリック』を予約注文するクネリがクネックネ! 滑らかな動きに目が離せない
『ゴースト トリック』は、とある女性が絶体絶命となっている場面から始まる。
対面する黒服の男が銃を突きつけ、彼女は両手を上げる……このわずかな時間の動きだけで、新生『ゴースト トリック』の滑らかさに魅了されてしまった。
つるりとしてクッキリ繊細。何のこっちゃと思われるだろうが、オリジナルのニンテンドーDS版を発売当時にプレイした身としてはゲーム画面が1枚ヴェールを脱ぎ捨てたようで興奮する。
オリジナル版にはドット感がありそれも味だったけれど、本作はキャラクターの輪郭がよりハッキリとして何の動作をしているのかが明瞭だ。
キャラクターが3Dモデルで動いているのは新旧同じなのだが、仕草ひとつひとつに人物像がよく表れていていまさらながら開発陣のこだわりをヒシヒシと感じる。
たとえば、先ほどの女性に銃を突きつけた殺し屋“ド近眼のジーゴ”がショットガンを落として拾うところ。地面の銃を「どこどこ?」といった風に探す動きを一瞬見せる。
そして主人公を導く謎の電気スタンド“クネリ”などは、クネりかたに感情が乗っているようにも見える。個人的にクネリファンなので、主人公に「こっちだよ」と言わんばかりに、踊りクネっている姿はずっと見ていられる。高解像度・高フレームレート化に感謝……。
何度プレイしても惹きつけられるストーリー
順番が前後してしまったが、物語にも触れていこう。
『ゴースト トリック』は「死から始まる、一夜のミステリー」というキャッチコピーの通り、ゲーム開始時点で主人公が死んでいる。
それゆえに、先ほどの殺し屋に狙われる女性・リンネを助けようとしてもままならず、彼女が撃たれる一部始終を見るよりなかった。だが、そこへ電気スタンドに取り憑いたクネリが語り掛けてきて、彼女を救うべく“死者のチカラ”の使いかたを教えてくれる。
発売当時にプレイしたときは、衝撃の幕開けや話しかけてる電気スタンドに驚かされたが、巧節が広げていく何でもアリな世界にすぐさま溶け込んでいった。
今回のデモ版をプレイしても先の読めないワクワク感がある。そうそう、先が読めないこの…… 遊んだときも感じた…… 10年(以上)前に遊んだときの記憶があるから展開はわかっているはずで……
……んん? この先、どうなるんだっけ?
確かに発売当時、クリアーしたはずなのに思い出せない。13年前ということもあるけれど、かつて「記憶をまっさらにしてもう1回遊びたい」と願ったのが叶えられたのだ、ということにしておこう。
それにしても、まさか記憶を失くした主人公と似た状況だなんて……。
タマシイだけの存在となってしまった主人公は記憶が混乱しており、自分が誰であるかも忘れてしまっている。
その場に転がっていた死体がどうやらそれらしいが、自分の素性や「なぜ殺されてしまったのか」という理由もわからないのだ。
主人公はその謎を探るため関係ありそうな冒頭の女性・リンネを追うことにする。ただし、リミットは彼のタマシイが消滅してしまうという明日の朝まで。果たして間に合うのか? タマシイ焦がす、一夜の大冒険が始まる!
うん、こういった大筋はさすがに忘れていない。部分的に覚えていることもあって、青い顔の軍人らしき人物らの豪華な部屋や、リンネ家の飼い犬である“ミサイル”がちぎれんばかりにシッポを振って吠える様、それを注意するお隣さんのマダムもいたよね……と、ゲームを進めるほどに芋づる式に記憶が蘇ってくる。
それらに連なる形で、ミサイルが巧舟氏の愛犬がモデルということや警察犬として『逆転裁判』シリーズにも登場していたこと、週刊ファミ通にもリアルミサイルが出演してくれたことも思い出された。ミサイル、ありがとうね……。
ちなみに『ゴースト トリック』の3周年を記念して、巧舟氏が作ったオリジナルソング『ボクはミサイル』はカプコンチャンネルで視聴できる。
登場人物もそれなりに多いのだが、キャラクター図鑑的な“カンケイシャ&デンワチョウ”機能もあるので安心だ。
ストーリーが進むたびに内容が更新されていくのがうれしい。人物の名前が判明したら各項目に反映されているし、キーワードからリンクで飛べるようになっているのも便利だ。
今回のデモ版では第2章の終わりまでプレイできた。それまでにも意味ありげな「これはきっと伏線!」というシーンも出てきたが、やっぱりゲームを進めないことにはハッキリせず、ずっとモヤモヤを抱えている。けれど、発売された暁には珠玉の物語をもう一度新鮮な気持ちで楽しめると思えば幸せだ。
トリツク&アヤツルを駆使する4分間
『ゴースト トリック』のパズル部分も大きな魅力で、「早く、早く解きたい!」という衝動にかられるものがある。まず、主人公は死者が絶命した4分前に時をさかのぼることができる。そこでモノに取り憑き、操ることで生者に影響を与え、死の運命を回避させるというのがおもなルールだ。
具体的には、主人公のタマシイを近くのモノにトリツかせることで画面上を移動し、そのモノが持つギミック――たとえば“開く”などの動作を行うのだ。
オリジナル版ではニンテンドーDSのタッチパネルを活用したタッチペンでの操作が行えたが、今回のデモ版はプレイステーションハードでプレイしたので、コントローラでトリツいた。
コントローラの左スティックを倒すと、にょーんと伸びる主人公のタマシイ。とくにストレスもなく操作感は非常に良好だ。トリツク際にはときが止まる“死者の世界”に入るのだが、その切り替えもボタンひとつで行える。
また、モノをアヤツる際は動かすタイミングも重要。コントローラ操作でもスムーズにアヤツることができた。
プレイしながら思い出した感覚があった。トリツクで移動するときに「ゲームをグングン進めている」と感じる、自分の中の勢いがたまらなく好きだったのだ。
その勢いを止めたくないあまり、死者の世界から抜け、生者の世界でゲーム内時間を経過させる操作すらも「念じるだけでやれればいいのに」と思っていたことも思い出す(それだけ夢中になっていたのに、なんで記憶が抜け落ちちゃったんだろう。怖……)。
パズルの記憶も、なんとなく「ココはこうして、こう」と大きな流れを思い出すこともあったのだが、おそらく意図されたであろう“引っ掛け”のようなギミックに、まんまとハマっていた。
ここでも2度楽しめているわけだ。チェックポイントに当たる“運命更新”からリトライできる機能が用意されているのもありがたい。
お楽しみ要素も昇天モノの充実度!
新生『ゴースト トリック』には新たにアレンジされたBGMとともにオリジナル版BGMも収録されていて、オプションで切り替えられる。
試しに聴き比べてみるとアレンジ版はさりげなく音数が増えていて、広がりが感じられる。よりゲームの世界が身近にあるような印象を受けた。
一方のオリジナル版を聴いてみると“ピコピコ”味はあるけれど、豊満なアレンジ版とそれほど遜色ないような。オリジナル版がスゴいのかそれに寄り添うアレンジ版の妙なのかはわからないが、どっちもイイ! ちなみに、アレンジを担当したのは『大逆転裁判』シリーズの音楽を手掛けた北川保昌氏だ。
なお、オプションでは画面の背景のデザインも好みで変えられる。左右それぞれで設定できるので組み合わせを楽しむのもよさそうだ。
今回のデモ版では体験できなかったが、貴重な設定画などのイラストやBGMを堪能できるコレクション機能も収録されているとのこと。
BGMはアレンジ版はもちろんのこと、オリジナル版の作曲者である杉森雅和氏の新曲も収録されているそうだ。さらにスマートフォン版に収録されていた『ゴースト パズル』も遊べるという。ファンとしては見逃せないしこれからプレイする人にもゲームを深く知れるうれしい要素だ。
今回、満を持して蘇った『ゴースト トリック』を味わいながらプレイしたことで、当時は気づけなかった部分が見えてきた。
あの世関係のワードをうまくモジッたキャラクターのネーミングセンスだったり、“死”というテーマを扱いながらも血生臭くない表現だったりすることが不思議とユーモアを感じる世界を作り上げていたんだな、と。
改めてほかに類を見ない、唯一無二の作品だと思えた。
「巧舟氏の作品として存在は知っていたけど、遊ぶ機会がなくて……」という人はもちろんのこと、久々にクネリたちと再会するというファンの方もぜひプレイしてほしい。
『逆転裁判』シリーズやミステリー作品を思わせる小ネタもあるので、興味が湧いたらまずは体験版からでもオスス……いややっぱり第2章で止められるはずはないので、製品版を推します!
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