ファミ通.comの編集者&ライターがゴールデンウィークのおすすめゲームをひたすら紹介する連載企画。ライターの“あみだ”がおすすめするタイトルは、攻城兵器をクラフトするゲーム『Besiege』(ビシージ)です。
【こういう人におすすめ】
- プラモデルなどの組み立てが好きな人
- トライ&エラーでいろいろ実験するのが楽しいという人
- ヘンテコなロボやマシンが好きな人
あみだのおすすめゲーム
『Besiege』
プラットフォーム:PC(Steam)、Xbox Series X/S、Xbox One
発売日:PC(Steam)は2020年02月18日、Xboxは2022年2月10日
開発:Spiderling Studios
価格:1520円[税込]
備考:日本語対応。STEAM DECKでもプレイ可能。
Besiege Trailer
トンデモ物理学シミュレーターでレッツ・ミサイル製作
建物って壊したくなりますよね。
いきなり失礼しました。『Besiege』ミサイル工学の研究者で、ライターもやっているあみだと申します。ゴールデンウイークももう中盤。今年もそんな季節になりましたね。
さて、私事ではありますが、自由研究って長らくやってないなと思いまして、何かやろうかな~と思っていたところでちょうどいいゲーム&題材がありました。
今年の自由研究は『Besiege』でミサイル戦車を作ることにします! そしていろいろぶっ壊します!
『Besiege』は、ブロックを組み合わせてお手製のトンデモ兵器を作り、破壊・運搬などのお題をクリアしていくゲームです。
本作には物理演算エンジンが搭載されており、重力や感性の法則など、ゲームの中でも現実さながらの物理学が働いています。“Besiege物理学”と呼ばれる独特な物理エンジンに魅せられた人たちが、歴史上の失敗兵器を魔改造して大活躍させたり、アニメのロボットを再現したりといった遊びかたをしています。
動画投稿サイトにいろいろと参考になる作品が掲載されていますので、気になった方は検索してみてください。かなり笑えるうえに、感動します。
さっそく少し早めの自由研究、ミサイル戦車の制作に入っていきましょうか。目標はメインミッションの1面最終ステージを木っ端みじんにすることとします。
今回は履帯、砲塔、ミサイルと3つのステップに分けて製作。その工程をお見せしつつ、このゲームのイカれた自由度を堪能していただければと思います。それでは見ていきましょう。
Step 1:簡単なブロックだけで素敵なミサイルを作りましょう
まずは今回の戦車の花形・ミサイルから。本当は、土台となる履帯を作り、砲塔を作り、それからミサイル制作という流れが一般的なのですが、どうしてもミサイルを作りたいんです。早く爆発を見たいので。
その前に、本作を知らない人に向けて、簡単に攻城兵器の作りかたを解説しておきます。
画面下のプルダウンメニューをクリックすると、たくさんのパーツが表示されます。固形物のブロック、デフォルトで用意されている武器、物体に引っ付くグラバーなど、機能や用途はさまざま。
細かい解説は省きますが(とっとと作り始めたいので)、目的に合わせてブロックを組み合わせるのが重要なゲームです。
ミッションの場合は指定範囲内のなかでマシンを仕上げなければならないですが、フリーで好き勝手に作るならその限りではないので、超巨大マシンも作れます。ネットの世界には、歩行型マシンを組み上げた猛者もいるようです。
それではミサイルを作っていきましょうか。基礎となる木ブロックと重さを調節できるバラストブロック、炸裂式ロケットと、物体をつかんでくれるグラバー、そして弾頭となる大型ボム。これだけで作れます。スーパーに買い出しに行かなくても全部ゲーム内に用意してあるので、リアルな自由研究より楽ですね。
大型ボムはこのゲームでいちばんの破壊力を持つ兵器アイテムですが、扱いが難しい。理由はこれです。
- 運動能力を持たない
- 何かに触れるとすぐ爆発する
- つまり、触れる者を傷つける
思春期みたいですね。
ですが、ミサイルの弾頭に搭載できれば、安定して火力をたたき出すことができます。
まずは、上の画像のようにブロックを組んでみました。ネットの動画などを参考に、わかりやすい形で組んでいます。
この組みかたのミソは、本来なら弾丸として使うべき炸裂式ロケットを、推進力として組み込んだ点。『Besiege』ミサイル工学的には正しい使い方です。
※ここで「アレ、その組み方お前……。」と気付いた有識者のあなた。大丈夫、後ほどしっかり痛い目見てます。
さらに、ミサイル部分の左右にゴムを付けてあげると、最大射程が落ちる代わりに安定性が向上。ゴムをつけておくと尾翼の代わりとして作用するのです。これを“存在判定がある”と表現したりします。『Besiege』ミサイル工学ではテストに出るところです。
と、ここでこのゲームの裏技をひとつ使います。というか使わないとまともに飛びません。武器カテゴリー内の榴散弾キャノンをどこでもいいので置き、キーマッピングでパワーを最大の4倍まで上げます。この設定をコピーし、炸裂式ロケットに張り付けると……。
本来1.5倍までしか上がらない炸裂式ロケットのパワーが4倍まで上がり、ミサイルとして十分な出力を発揮してくれます。『Besiege』工学の“キホンのキ”で、これを使ったパワー増幅テクニックがいろいろあります。水を出すウォーターキャノンを4倍にしてブースターとして利用する“4倍水流エンジン”など、使い道はさまざまです。
余談ですが、この4倍榴散弾キャノンは反動が強すぎるがゆえに、逆向きに取り付けてあげるだけで徹甲弾として機能するくらい高速で吹っ飛んでいきます。速すぎて石製の城塞も破壊可能です。ふつうに砲弾撃てよ。
これでミサイルは完成なので、さっそく試し撃ちしてみましょうか。ミサイルの飛行時間を試すには通常ステージは狭すぎるので、トップ画面右からフリーステージに移動します。
回転ツールでミサイル全体を選択し、45度ほど傾けます。これで、設定した発射キーを押せば……。
物理学×トンデモ兵器ゲーム『Besiege』学生時代ぶりの自由研究でいろいろ木っ端みじんにしよう! ミサイル戦車の作り方~爆発に無限軌道を添えて~【おすすめゲームレビュー】
<<<動画①>>>
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— ミス・ユースケ (@satoukousen)
2023-05-03 19:32:59
無事に飛びましたね。うーん。煙を空に描きながら飛んでいくさまはある種、芸術的ですね。子どものころにやったペットボトルロケットを恐ろしくバイオレンスにしたらきっとこんな感じになります。
Step 2:無限軌道で死線を超えて――素敵な履帯の作りかた。
履帯の作りかたは、筆者が動画サイトなどで勉強したものを簡単(当社比)に作れるようアレンジしたものです。
先に断っておきますが、はっきり言って履帯は作るのがたいへんなうえに、突き詰めようと思えば無限に突き詰められます。「面倒くせぇ!」とシャウトしたくなる工程がいくつもあるので、面倒な人は最初から用意されているタイヤパーツで代用してかまいません。
さて、では基礎ブロックからサスペンションを使って土台を作ります。聞きかじりですが、最大硬度に設定したサスペンションはけっこうな硬度を持っているそうで、戦車作りのパーツとして優秀だそうですよ。ある程度は走行時の衝撃も吸収してくれるのかも?
土台のつぎは転輪。無動力大型ホイールに、動力中型歯車を刺します。歯車の先にも無動力ホイールを付けてサンドイッチにする感じです。これだと、まだ無動力ホイールが動力歯車の反作用で動いてしまい、運動エネルギーが分散してしまいます(なんか物理学っぽい!)。
ですので、無動力ホイール同士をブレースという固定器具のアイテムでつないじゃいましょう。こうすれば、無動力ホイール同士が固定され、動力が分散せず本来のスピードでギアがぐるぐる回ってくれます。
このとき、履帯部分を作る前に、キーマッピングから再びスピードを1~1.5、加速度はお好みで設定しておくのを忘れないようにしましょう。
速度を最大にしない理由は、最大で作ってみたところ、歯車が速すぎて履帯を振り回す形になり、あっという間に履帯をぶち切ってどこかにカッ飛んで行ったからです。
筆者の二の舞にならないよう、スピードの加減は適度に。ぶっちゃけスピードは1でもいいくらいです。
あと、その場で回転する超信地旋回という機構を組み込むため、右キーや左キーを押したときに、それぞれ逆回転するようにしておいてください。
そうしましたら、適当なところにヒンジというブロックを置いて、それを移動ツールでギアの真上あたりまで持ってきます。けっこう適当でオッケー。
横向きにしたらそれをぐるっと転輪の周りに巻き付けるように配置。地味ですが大事な作業。このときは“ブロックを重ねて置くことを許可”にチェックを入れておきましょう。
このゲームでは物体を重ねておくと問答無用で破壊判定(1ヵ所が破壊されると連鎖的に壊れていく)になるので、歯車の当たり判定の隙間をうまい具合にヒンジブロックが通るよう、0.01ずつずらして調整します。筆者もこれやりました。
リアルに小一時間かかりましたが、このゲームはこういう微調整とか試行錯誤がたまらなく楽しいんです。あなたもぜひ……。
ヒンジをうまい具合に巻き付けられたら、接地面に装甲版を貼り付けていきます。
ヒンジだけでも動くのですが、装甲版を貼ることでより強い摩擦が生まれ、地面をしっかりつかんで速度アップにつながるわけです。また、接地面を多少なりとも平らにすることで、たゆみ防止にもなります。
そうしてでき上がった履帯がこちら。長かった(ここの作業工程だけで2時間くらいかかりました)。
正直に言うと安定性に欠けるうえ、回転が速すぎるのかちょっと浮いているし、たまにパーツがどこかにカッとんでいく不良品なのですが、まぁ今回はこれでよしとしましょう。あくまで履帯はスパイス。本命はミサイルですよ。
物理学×トンデモ兵器ゲーム『Besiege』学生時代ぶりの自由研究でいろいろ木っ端みじんにしよう! ミサイル戦車の作り方~爆発に無限軌道を添えて~【おすすめゲームレビュー】
<<<動画②>>>
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— ミス・ユースケ (@satoukousen)
2023-05-03 19:33:37
Step 3:ミサイルを支える縁の下の力持ち。砲塔作り
ここからは砲塔を作っていきます。もうすでにけっこう疲れているのですが、途中で放棄することなどロマンが許しません。
旋回砲塔を作ってもいいのですが、接続部がもろくなる関係上、今回は固定砲塔で行きます。決して手抜きではなく、あくまで強度を考えたうえでの措置です。誤解しないように。
ここで活躍するのはステアリングヒンジ。操作で角度を変更できるブロックですね。下の画像のように配置すると、上下の調節が効くようになりました。ヒンジの上にはミサイル制作でも使ったグラバーを配置します。
グラバーでミサイルを保持するわけですが、「グラバーでつかんじゃったら発射しても本体ごと引っ張っちゃうのでは?」と思われることでしょう。
ご安心ください。ミサイル発射とグラバーの接続解除を同じキーに設定しておけば、離すと同時にミサイルが飛んでいき、本体から離れているので無反動で射出できます。
ぶっちゃけ砲塔はこれで終わりなんですよね。回転しなければこんなに楽……じゃなかった。信頼性の高い作りになります。
コピー&ペーストで同じものを6本作ります。グラバーの“自動的につなぐ”設定を解除しないと、発射したミサイルを即座にグラバーがキャッチして、頭の上でミサイルが爆発することになるので注意しましょうね。筆者も一度、頭上が明るくなりました。
実践! ミサイル戦車の威力は……やりすぎたかもしれない。
と、ここまで長らく作業に徹してきましたが、これでミサイル戦車は完成! ですが、ここからが本番ですよ。
メインミッションの1面最終ステージを粉みじんにします。正直に言って、爆弾1個で壊滅できる本ステージでは明らかに過剰戦力なのですが、やっぱり研究の締めはド派手にやらねば。というわけで映像をどうぞ。
物理学×トンデモ兵器ゲーム『Besiege』学生時代ぶりの自由研究でいろいろ木っ端みじんにしよう! ミサイル戦車の作り方~爆発に無限軌道を添えて~【おすすめゲームレビュー】
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— ミス・ユースケ (@satoukousen)
2023-05-03 19:34:17
はい、明らかに過剰戦力です。建物が一瞬で建物だったものに変わりましたね。うーん、バイオレンス。
こんな感じでミサイル戦車の制作過程を通じて、このゲームの奥深すぎる自由度のほんの入り口を見てもらいましたが、まだまだ奥は深いです。というか、本作に底なんてものはおそらくありません。
Step 4:急なアクシデントにはロマンで対抗しましょう。
じつはここから後日執筆しています。というのも、このミサイル戦車を作り上げた翌日、このゲームに久々のアップデートが入りまして、“ロケットの物理演算処理が変わった”のです。
どう変わったかという細かな説明を省いて結論から言うと、今回使用していたミサイルが使えなくなりました。やはりミサイル工学的には正しくない使いかただったようです。
物理学×トンデモ兵器ゲーム『Besiege』学生時代ぶりの自由研究でいろいろ木っ端みじんにしよう! ミサイル戦車の作り方~爆発に無限軌道を添えて~【おすすめゲームレビュー】
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— ミス・ユースケ (@satoukousen)
2023-05-03 19:34:43
ご覧の通り、使いものにならなくなっています。完成後は1回も触っていないのですが。とはいえ、これでは自由研究を完成させたとは言えないでしょう。代案が必要です。
ミサイルのところでも少しお話した水流エンジンを使おうと思うのですが、あれは何といってもかさばる。おそらくいまの設計だと6本どころか下手すると2本しか登載できません。うーん、2本じゃ爆発力が足りねぇなあ……。
と、ここで筆者に天啓が舞い降ります。「いっぱい打てないなら、1発で終わらせればいいじゃない」と、神。
すごくバイオレンスな天啓ですが、意外といい案かも。しかし弾頭のボムはひとつだけですから火力を上げると言ったって……。あ、そうか。クラスター爆弾にしてしまえばいいんだ。
ということで、でき上がったものがこちらになります。作りかたを説明すると日が暮れるので細かい説明は省きますが、製作には5時間かかりました。
ノウハウがない状態からの製作だったので、初期案のミサイルと違って“開発”という工程を踏んだためですね。
木板のパーツ内には小型爆弾が16個入っており、これは大型ボムと違って任意起爆になっています。んで、本物のクラスター弾同様、根本がぱっかりと割れる仕組み。手動にはなりますが、好きなところで分離を始め、好きなところで起爆できます。
このミサイルはクッソ重いので、いまの砲塔だと若干不安。そこで、支点を増やし、角度を上げるときに分離する構造にしましょうか。この支点は発射するときに邪魔になるので発射キーを押すと同時に自壊する構造にします。
では、さっそく撃ってみましょうか。
物理学×トンデモ兵器ゲーム『Besiege』学生時代ぶりの自由研究でいろいろ木っ端みじんにしよう! ミサイル戦車の作り方~爆発に無限軌道を添えて~【おすすめゲームレビュー】
<<<動画⑤>>>
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— ミス・ユースケ (@satoukousen)
2023-05-03 19:35:26
何となくですが、クラスター弾が禁止になった理由がわかりますね。16個の小型爆弾をばらまきながらド派手に爆発してくれました。これなら爆発も足りているし、研究成果として新たなミサイルの開発に成功したので十分でしょう。見た目もちょっとカッコよくなったかな?
急なアクシデントでしたが、結果的により技術を磨く機会になったのでよしとしましょう。
今回の記事作成のためにイチから戦車を作りましたが、暇だったときは自動姿勢制御装置を組み込んだヘリコプターを作ったり、回転砲塔のミサイル戦車を作ったり(今回のアプデで使えなくなりましたが)、ホイールの反作用を使った手動誘導ミサイルを作ったり、あれ、ミサイル多いな。
どれだけ暇なんだと自分でもあきれ返る物品がデータとして眠っています。この経験がなければ、今回のアップデートには対応できなかったかも。
試行錯誤をくり返しながら、「もしかしてこうしたらこのシステムができるかも?」とトライしていくのが本当におもしろく、うまくいったときには言い表せないくらいの感動が味わえます。無限に遊べるお気に入りのゲームです。
ゴールデンウイークに「することねぇなあ」という人は、ぜひ本作を購入してトンデモ兵器を作り、友だちにちょっぴり自慢してみたら楽しいかもしれませんよ?