ファミ通.comの編集者&ライターが年末年始のおすすめゲームを語る連載企画。今回紹介するゲームは、エレクトロニック・アーツとコーエーテクモゲームスの和風ハンティングゲーム『ワイルドハーツ』(WILD HEARTS)です。
【こういう人におすすめ】
- 巨大な敵に立ち向かうハンティングゲームが好き
- 豊かな自然が彩る和風な世界に魅かれる
- 力よりも知恵や工夫で勝つのが美しいと思う
カイゼルちくわのおすすめゲーム
『ワイルドハーツ』
- プラットフォーム:PS5、Xbox Series X|S、PC(EA app、Steam、Epic Gamesストア)
- 発売日:2023年2月17日
- 発売元:エレクトロニック・アーツ、コーエーテクモゲームス
- 価格:9700円[税込]
『ワイルドハーツ』公式発表トレーラ-
強大な獣に立ち向かうため、からくりの力を駆使せよ
筆者はいろいろなハンティングゲームやアクションゲームをプレイしていますが、そのなかでも『ワイルドハーツ』が最近ではとくに気に入っています。
その理由としては、徹底して“生けるものはすべて自然の一部”という壮大さを美しいまでに貫く世界観周りと、後述するからくりを用いた狩りでの“流れをつがんだ”感の気持ちよさという、ふたつの側面が挙げられます。まずは世界観のほうから紹介させてください。
本作の舞台は、我々が住む日本の南北朝時代や戦国時代をイメージさせる中世の“日ノ本”です。武士たちの争いから遠く離れた“あづま”の国は、豊かな自然に包まれた場所。そしてそこには、自然の力を体に宿した強大な生物“獣”が存在します。
強い獣は、周辺の環境を自らに適したものに変化させます。たとえば氷雪の力を宿す狼“ラセツ”は、そこにいるだけで周囲を凍結させ、冬の様相にしてしまうのです。当然、獣が支配する領域では人間たちは暮らしていけません。
そんな獣たちを討伐し、人の領域を守るのが“獣狩(ししがり)”と呼ばれる戦士たち。プレイヤーはあづまの地に訪れた獣狩のひとりとして、自然の中でたくましく暮らす人々の集落“湊(みなと)”を守るために戦うことになります。
獣狩はからくり刀や野太刀、槌といった近接武器をはじめ、8種類の武器を使用できます。弓や大筒などの射撃武器イメージしやすいと思いますが、中には相手にワイヤーを打ち込んで周辺を自在に飛び回りながら戦う飛燕刀、5つの武器に瞬時に変形する変形棍、敵の攻撃を華麗に受け流す傘なんて変わり種も。これらを駆使して獣を狩り、獣から得られる素材でより強力な装備を作り、さらに強力な獣に挑むわけです。
ただし、あくまでこれらの武器は人の手によるもの。自然の力を取り込んだ獣に対しては、どうしても力不足です。そこで獣狩は獣と同じく天つ糸を利用し、“からくり”という古代のテクノロジーを起動して戦います。
このからくりについて知ってもらうことが本作の魅力を語るうえでとても重要なので、ここで解説させていただきます。
獣狩は6種類の“基礎からくり”から最大4つをスロットに登録して狩場に持ち込めます。たとえば基礎からくり“匣(はこ)”は、そこに置くだけで獣の行く手を邪魔する障害物やジャンプ台として利用可能。
基礎からくりは空を飛んだり武器に炎をまとわせたりと、単体でもプレイングの幅を広げるさまざまな効果を持ちます。さらにこれらを特定の順番で出すことで、より強力な“連結からくり”も設置できます。
連結からくりの種類は多岐にわたります。獣を一定時間拘束する“鎖罠”、敵の突進を跳ね返しダウンさせる“糸張り壁”、周辺の獣狩の体力を回復する“癒やし釜”、さらには空を飛ぶ獣を撃ち落とす“線香花火”や強力な大砲“轟雷砲”などなど。
天つ糸は獣に攻撃を当てるたびに回復しますが、マップ各所にある木や岩から切り出したり、獣の破壊した部位に取り付いて“獣狩の腕”という特殊攻撃を行なったりすることで一気に補充できます。糸をうまく回収しつつ、強力な連結からくりを連発していけば、獣との戦いがかなり有利になります。
即興で使う基礎からくりと連結からくりに加えて、“龍脈からくり”も狩りに大いに役立ちます。設置には天つ糸ではなく、そのマップ自体の自然の力“龍脈”を利用します。
龍脈のポイントが許す範囲で自由に設置できる龍脈からくりには、移動用の設備や獣を探すレーダーのような実戦的なものだけではなく、食材を干して加工する施設や、湊に戻らなくても装備を製作・変更したり基礎からくりを切り替え可能な“金床”、川や海の魚を自動で採ってくれる“魚取車”など、採集もサポートするものが目白押し。獣狩がより快適に過ごせる狩場を作ってくれます。
狩りや採集で得られる素材を用いて龍脈を強化すると、使える龍脈ポイントの上限を増やせます。
匣などの一部の基礎からくりと龍脈からくりは、各プレイヤーの狩場のマップに撤去するまで残り続けるので、狩りを進めていくと自然にマップ上にからくりが増えていき、より快適に狩りができるようになっていくのです。
すべてを内包する自然、その美しい世界観に飲まれる
からくりを駆使し、いかに強大な獣に対して有利な環境を生み出して立ち向かうか。これが本作のおもしろいところ。そうしないと人側が圧倒されてしまうほどに、本作の獣たちはパワフルです。
ゲーム的な観点から言うと、獣の攻撃力は全体的に高めで、なおかつ獣狩が生身では回避しづらい広範囲攻撃を多く持っています。からくりを駆使しないと、アクションの難度はかなり高いと言えるでしょう。
慣れるまでは獣に倒されがちですが、連結からくりの置きかたに慣れてくると、スマートに獣の行動を阻害し、こちらからの攻撃を一方的に押し付ける展開すら可能になっていきます。ハンティングゲームの大きな魅力である自分のプレイスキルの成長が実感できる喜びが、わかりやすく感じられることでしょう。
冒頭でも触れた魅力のひとつ、“流れをつかんだ”感がここで味わえます。こちらのペースで狩りを進め、流れを完全につかんで敵を倒す感覚。装備のパワーでねじ伏せたり、プレイヤースキルによるキャラクターコントロールで華麗に完封したりするのとはまた違う、「弱者だからこそ絡め手で抗う」といったロールプレイができる点に、筆者は心惹かれるのです。
獣のパワーを目の当たりにすると、人間がいかに自然に対してちっぽけな存在なのか思い知らされます。ペースを相手に握られ、瞬殺されるのもよくあることです。
しかし、そんな獣の脅威に負けることなく強く生きる湊の人々との交流と、彼らと紡ぐメインストーリーを見ていると、人もまた自然の一部であり、ちっぽけなんかではないと勇気づけられること請け合いです。
また、本作の狩りの舞台となる4つのマップは春夏秋冬をそれぞれテーマにしており、その豊かな自然は絶景のひと言に尽きます。狩りのためにフィールドを駆け巡っているだけでも、この世界の美しさに飲まれ、世界観に没入できることでしょう。
ハンティングゲームとしてはかなりの歯ごたえがあり、その難度にからくりをどう活用するか、どの武器種を使うかなど、プレイヤーごとに答えを模索して立ち向かっていくのが醍醐味の本作。雄大な自然と対峙し、ぜひ自分だけの答えとなる獣狩の道を示してみてください。