ローグライクアクションゲーム『Dead Cells』では、2023年3月7日よりKONAMIの『悪魔城ドラキュラ』シリーズとのコラボDLC(ダウンロードコンテンツ)”Return to Castlevania”を配信する。今回ひと足先にレビュー版をプレイしたので、その内容をご紹介しよう。

『Dead Cells』の世界に悪魔城が出現

 さて本DLCでは、『Dead Cells』本編の世界に悪魔城が出現し、リヒターとアルカードに助力を求められた主人公はドラキュラを食い止めるために新たな領域に足を踏み入れることとなる。

 ゲームとしては『Dead Cells』の従来のDLCと同じように、本編世界の一部としてDLCエリアが追加されるという形。『悪魔城ドラキュラ』由来の敵クリーチャーが『Dead Cells』のアートスタイルで登場するだけでなく、BGMも原作のアレンジ楽曲などが収録されていて、これがめちゃくちゃカッコいい。

『Dead Cells』DLC“Return to Castlevania”
『Dead Cells』スタイルに描き直されたおなじみの敵を倒しながらドラキュラを目指す。曲が超燃える。
『Dead Cells』DLC“Return to Castlevania”
中ボスとして出てくる死神の技がカッケェ。

 そしてウィップソードやアルカードシールド、そして跳鉱石やクロス(十字架)など、『悪魔城ドラキュラ』のコラボ装備(合計10種類)やスキル(3種類)なども登場する。2スロット使用の変形武器であるウィップソードやうまく反射させるとスピードが上昇していく跳鉱石は使い方を試していくのも楽しい。

『Dead Cells』DLC“Return to Castlevania”
ウィップソードは2スロット使う変形武器。しなる斬撃がカッコいい。
『Dead Cells』DLC“Return to Castlevania”
アルカードシールドはパリィ後にクリティカルが確定するので変異などでパリィ後ボーナスをさらに乗っけてみたいところ。

スピンオフ等ではなく、あくまで『Dead Cells』のコラボDLCとして楽しむもの

 ここでお伝えしておきたいのが、本DLCはあくまで『Dead Cells』内の拡張コンテンツであって「『Dead Cells』の開発による悪魔城ドラキュラのスピンオフ」とか「悪魔城関連の部分だけでも集中して遊べる独立したDLC」といった性質のものではないということだ。徹頭徹尾、メインは『Dead Cells』なのである。

 既存プレイヤーには「それは当たり前じゃない?」と思う人も少なくないと思うが、(特にコラボで本作に興味を抱いた人にとって)ここが最大の誤解ポイントであり、また本DLCを貫く本質の部分でもあるので、少し細かく説明させて欲しい。

『Dead Cells』DLC“Return to Castlevania”
『Dead Cells』のアートスタイルやサウンドで表現される『悪魔城ドラキュラ』が超カッコいいんですが、『悪魔城ドラキュラ』そのものを求めちゃあいけません。あくまでメインは『Dead Cells』。
『Dead Cells』DLC“Return to Castlevania”

 本DLCのプレイには『Dead Cells』本編が必要だし、先に書いたように悪魔城ステージなどの新エリアも『Dead Cells』全体のエリア進行の枠組みの中にそれらの場所が選択肢として増えるという形になっている。

 だからたとえばドラキュラにやられて「よしもう一回挑戦しよう」と思っても、実際そこにたどり着くためにはまず『Dead Cells』に元からあるステージをいくつか踏破しないといけない。

『Dead Cells』DLC“Return to Castlevania”
本編での能力アップグレードが足りてないと通れない所が普通にあったりする(能力アンロックが進んでいればココの床をぶち破れる)。

 しかし『Dead Cells』本編をある程度進めていない場合(※)、コレがなかなかキツい。本作は何度もやられながら機能のアップグレードをじわじわと行ってアクションの選択肢を増やし、クリアーへの可能性を広げていくゲームなので、完全に新規で始めている場合は回復薬などのアップグレードが揃っていないため「悪魔城にまた行きたいだけなのに、さっぱりたどり着けずに本編エリアでリスタートを繰り返す」というハメになりかねない。

(※完全新規のデータから本DLCの内容にたどり着くだけなら、数回死んで最序盤のチュートリアル的展開を完了すればアクセス自体は可能)

『Dead Cells』DLC“Return to Castlevania”
敵を倒して得た”セル”をステージクリアー後のエリアで納品していくことで追加能力や武器がアンロックされていく。これは跳鉱石などのコラボ装備も同様。

 またこのDLCに「悪魔城ドラキュラそのもの」を期待してしまうとあまり幸福な出会いにならないだろう。おまけモード的にリヒターで遊べる“リヒターモード”もあるとはいえ、そもそも『Dead Cells』と悪魔城ドラキュラシリーズは同じ2Dアクションゲームとは言っても操作もスピード感もシステム体系もストーリーのノリもかなり異なっている。

 というわけで“Return to Castlevania”は、このDLCのために本編部分を無理に“こなす”のではなく、どっちも楽しめる人向けだ。幸い『Dead Cells』本編自体が高い評価を誇る優れたアクションゲームなので、この点を理解した上で遊びたい人が本編との同梱バンドルなどを買って『Dead Cells』をスタートするというのは超アリだと思う。

『Dead Cells』DLC“Return to Castlevania”
いろいろ旧作をやってるファンじゃないと伝わりにくい小ネタも(多分元ネタは『悪魔城ドラキュラX 血の輪廻』冒頭の死神戦)。こういうライトなノリの匂わせネタにイラッと来る人にはあまり向いてないです。

価格に見合ったコンテンツ量かどうかは人次第

 ここらでDLCの内容に話を戻すとして、難点を挙げるとすれば、さすがにラスボスのドラキュラは手強いものの全体の難度自体はやや緩めに感じられた部分だろうか。

 特に雑魚敵のバリエーションが限られていて(10種類)それぞれの挙動もかなり素直な作りなので、悪魔城入城からドラキュラ戦までの道中よりそこに至るまでの道のりの方が危ないぐらいだ。悪魔城にたどり着けずにリセットを食らうこともしょっちゅうある記者ですらそう感じるのだから、本編を高難度モードで何周もしているプレイヤーはなおさらだろう。

 DLCで可能な開発量とか、原作を尊重したギミックにしなければいけないといった事情があるのかもしれないが、もうちょっと敵キャラの種類を増やしたり、凶悪なギミックをつけたりしても良かったのではと思う次第だ。いや、基本的にめちゃくちゃ楽しく遊んでいるんですけどね。

『Dead Cells』DLC“Return to Castlevania”
背景からニュッと出てくるアックスアーマー。斧を投げてくるのだが、『Dead Cells』の主人公は超高機動なので対処自体は簡単。

 一方で、小ネタが結構いろいろ仕込まれていて楽しいのも事実(悪魔城を進むプレイヤーを妨害するドラキュラのギミックもナイス)。追加コスチュームも20種類あり、ついお目当てのコスにソウルを費やしてしまう。まぁ「追加コスの数をちょっと減らして敵増やせませんでしたかね」と思ってしまったりもするが……。

 1200円(Switch版)という値段に見合った内容かどうかは、そのあたりのサブの部分も含めて楽しみ尽くせるかで変わってくるんじゃないかと思う。繰り返しになりますがとにかく曲はめちゃくちゃいいです。

『Dead Cells』DLC“Return to Castlevania”
コラボ衣装のひとつ、アルカード(左が自キャラ)。シモンやリヒター、マリアのものなど全20種類もある。
『Dead Cells』DLC“Return to Castlevania”
差し込む光に照らされて亡霊の2人が踊りだす。