4周年を迎え、今後いっそうの盛り上がりが期待される『Apex Legends』。2021年には10年間運営を続ける計画が明かされているが、今後のさらなる発展のため、開発を指揮するRespawn Entertainmentのトップたちは何を見据えているのだろうか。

 サービス開始からこれまでを振り返ってもらうとともに、今後の展開や新シーズンのアップデートの狙いなどについて詳しくお話をうかがった。

スティーブ・フェレイラ

『Apex』のディレクター。最初期から開発に携わるベテラン。2021年12月からゲームディレクターに就任し、制作全体の指揮を取る。(文中はスティーブ)

エヴァン・二コリッチ

『Apex』のデザインディレクター。2021年9月からスタジオに参加。おもにゲームデザインに携わり、バランスの取れたプレイ環境を整える。(文中はエヴァン)

『Apex』4周年特設サイトはこちら
Apexコインやグッズの購入はこちら(Amazon.co.jp)

プレイヤーとともにおもしろいゲームを作る

――4周年おめでとうございます。現在の率直な感想をお聞かせください。

スティーブまるで誕生日みたいですね。数字は気にしないようにしているのですが、もう4年が経つことが信じられません。つい最近、私たちとしても原点に立ち返って、現在のゲームの状況や、プレイヤーがどのようにゲームをプレイしているかなど、これまでの歩みを振り返る機会がありました。

 プレイヤーの皆さんがこれまでやってきたことや、大切にしていることを改めて学び、そのうえで今後もシーズンごとに新鮮さと違いを感じていただけるよう、これからの戦略とビジョンを再設定したんです。これからも私たちは、プレイヤーの皆さんが築き上げた庭に種を撒き続け、『Apex Legends』のさらなる前進のために開発に取り組んでいこうと思います。

――これまでのプレイヤーの反応でとくに印象に残っていることはありますか?

スティーブ皆さんの反応にはいつも驚かされています。我々が何かを発表するときは、つねに意図した結果があるのですが、プレイヤーの皆さんはこちらの意図とはまったく違った方向で物事を進めてしまうことがよくあるのです(笑)。

 しかし、それは悪いことではなく、むしろいいことで、そうしたプレイヤーの皆さんの想定外な反応のおかげで、ゲームをよりおもしろいものにできていると思っています。

――たしかに、プレイヤーが発見した想定外の要素もゲームがよりよくなる場合は残している印象がありますね。

スティーブ逆に、我々のゴールはつねにプレイヤーの皆さんをいい意味で驚かせ続けることですね。そのためにも、将来的にサプライズのきっかけになる、皆さんが気に入っているものや大切にしていることはつねにチェックするようにしています。

 また、今後私たちがゲームに新しい要素を追加したとき、プレイヤーの皆さんが想定とは違った動きを見せることもあると思いますが、そうした反応にもこれまで通りポジティブに寄り添っていきたいですね。

【Apex】Respawnスタジオトップインタビュー。シーズン16ではよりよい今後のためにゲームを再構築

より多くの人が楽しめる『Apex』の世界を作り上げる

――日本のコミュニティーについてはどのような印象を持たれていますか?

スティーブじつは日本での人気に関しては私自身とても驚いていて、さらに深く洞察する必要があると考えています。正直なところ、私たちは誰でも楽しめるようなゲームを目指して開発していますが、特定の地域やプレイヤーをターゲットにすることはないので、日本での人気は私たちが意図していたものではありません。

 ですので、日本のコミュニティーが我々の作っているゲームに共鳴してくれたことは、大きなサプライズでした。じつは、日本のゲームタイトルとも相性のいい要素も追加しようと考えていますが、それと同時にこれからも変わらず、私たち自身がおもしろいと思う、『Apex Legends』らしいスタイルを貫いて開発を続ける必要があると考えています。

エヴァン『Apex Legends』は私が携わったゲームの中で、北米以外の地域、とくにアジアで大きな影響力を持った初めてのタイトルなんです。スティーブにも話したのですが、北米の人々がベッドに入るころにアジアでプレイ人口が増えていく状況を目の当たりにするたびにとてもうれしく思います。

 『Apex Legends』は戦略的なシューターで、キャラクターごとの独自の能力や長めのキルタイム(※)、マップの構造など、技術や知識を深める余地が残されている点は多くのプレイヤーの皆さんにとって魅力的な要素だと思っています。これからも、すべてのプレイヤーが疲れることなく楽しくプレイできるようにバランスを取りつつ、プレイヤーがゲームの中に自分自身の一部を見出せるような『Apex Legends』の世界を作り上げていきたいです。

※キルタイム:相手をキルするまでに掛かる時間。

モバイル版とオリジナル版それぞれ違った体験を

――昨年にはモバイル版がリリースされ、『Apex Legends』にはふたつのバージョンが誕生しました。 それぞれの状況をどのように考えていますか?

スティーブ『Apex Legends』はさまざまなタイプの体験を提供できる機会をたくさん持っていると思います。モバイル版とオリジナル版のサービスを並行して展開していくにあたり我々がとくに意識しているのは、“どちらも同じゲームであること”や“同じ体験にしなければならない”といったルールに縛られないことです。

 たとえば、フェードやラプソディといった、モバイル版専用のレジェンドを追加したことで、モバイル版ではオリジナル版とは違う、よりモバイルに適したゲームデザインを模索できるようになりました。これからも、そうした挑戦を続けていきたいと思います。

――現在はモバイル版とオリジナル版ではレジェンドの使用率などもかなり違い、まったく別のゲーム体験が味わえるようになっていますね。

エヴァンモバイル版とオリジナル版はそれぞれ異なるユーザー層に異なる体験を提供するものだと感じています。モバイル版のプレイヤーはプレイ時間やコンテンツへの関わりかたなどの観点から見ても、オリジナル版とは違う層のプレイヤーだと思います。

 そこに『Apex Legends』というブランドを拡張する機会があると考えているのです。もちろん、モバイル版をきっかけにオリジナル版もプレイしてもらえたら、それはとてもすばらしいことです。でも、純粋にモバイル版を楽しんでくれるなら、それだけでいいんです。

 私たちは、世界中の人々が、さまざまなデバイス、さまざまなベクトルから『Apex Legends』にアクセスできるようにしたいと考えています。『Apex Legends』のコアとなるアイデンティティーを維持しながらすべてのデバイスで多様な世界を提供することで、プレイヤーの皆さんが快適に遊べるようにしたいのです。

【Apex】Respawnスタジオトップインタビュー。シーズン16ではよりよい今後のためにゲームを再構築

すべてのレジェンドが新シーズンで生まれ変わる

――現在オリジナル版には23人のレジェンドが登場していますが、今後もこれまでのペースで新要素が追加された場合、調整もたいへんなことになりませんか?

スティーブそうですね。まさにその理由から同じペースでコンテンツを追加していくことはやめるつもりです。ただ、シーズンごとにゲームに重要な機能を追加したいと考えています。そのため、今後もシーズンごとに何か新しく、エキサイティングなものが出てくるはずです。

 『Apex Legends』は何年もかけて成長し、シーズンごとに新しい武器やレジェンドを追加していくことでバランスを保ってきました。これからは毎シーズン新しいレジェンドや武器やマップを追加するわけではありませんが、だからこそ、新しいレジェンドや武器などが登場するときは、ゲームに与える影響という点では、いままでよりも重大な意味を持つことなりますね。

 現在の『Apex Legends』では多くのコンテンツのバランスを取る必要があり、コンテンツが少なかったサービス初期と比較すると、ゲームの基盤は整っていると感じています。コンテンツ追加のペースを変えたことで、シーズン1やシーズン2で実装したコンテンツの一部を再構築して、これまでにどう変化してきたかを改めて確認する機会を得ました。そして、ゲームそのものの再構築についても、エヴァンが本当に情熱を持って取り組んでいます。

エヴァン私はよくアップデートについて話すとき、“庭の手入れ”という言葉を使っています。シアトルにも日本庭園があるのですが、木や草の量、石の配置、すべてが完璧で、それを維持するのはたいへんな作業です。庭に新しいものを植えなくても感動を与えるために、じつに多くの作業が行われています。

 先ほどスティーブも話していましたが、『Apex Legends』も庭のようなものです。私たちはつねに庭を手入れし、新しい木や植物を加え、同時に機能していない雑草を引き抜く必要があります。私たちはこれまで3年間かけてこのすばらしい『Apex Legends』という庭を作り上げました。そしていま、それを再形成するときが来ました。新シーズンではレジェンドを再分類して、すべてのレジェンドに新しいパークを追加します。

――パークはどのように機能するのですか? 現在のパッシブやアビリティなどが置き換わるのでしょうか?

エヴァン新シーズンからは“コントローラー”と“スカーミッシャー”のふたつのクラスが追加され、全部で5クラスになります。新しく追加するパークはそれぞれのクラスと紐付いていた内容になっています。

 ライフラインがいい例です。いままでは彼女だけが青いサプライボックスから追加の物資を獲得できましたが、これからはサポートクラスのすべてのレジェンドが追加物資を獲得できるようになります。その代わり、ライフラインにはバフ調整が入ります。

 オフェンスクラスにはオフェンスクラスだけが開けられる新しいサプライボックスがマップに追加され、武器のアタッチメントを獲得しやすくなります。クリプトやブラッドハウンドのようなリコンクラスは調査ビーコンを使うと別のチームが表示されるようになります。

――ウォールハックのようなイメージでしょうか? つぎのリングの場所を特定する能力はどうなるのですか? 

エヴァン相手の位置はミニマップ上に表示されます。ビーコンを使うとパルスが発生して、範囲内にいる別チームがミニマップ上に表示され、徐々に消えていく仕組みです。また、位置がバレたチームには警告が表示されます。

 リングを特定する能力はリコンからコントロールクラスのパッシブに置き換わります。コースティックやワットソンのような制圧力のあるレジェンドが、コントローラー専用の新しいオブジェクトにアクセスすることで使用できます。このように、いままでよりもレジェンドの役割が明確になったことで、オフェンス3人だけのチームや、すべての役割をカバーできるようにオフェンス、サポート、リコンのチームを組むのではなく、5つのクラスのうち3つしか選べないようにしました。

スティーブ改めてクラスを分けるうえで、強化や弱体化といった調整も加えたレジェンドもいます。

エヴァンそれから、シーズン11以降新武器の追加がありませんでしたが、“ネメシス”というエネルギーアモを使うアサルトライフルも追加します。ひとつの武器でも大きな波紋を呼ぶので、クラスの再構築に集中するために温存していました。

【Apex】Respawnスタジオトップインタビュー。シーズン16ではよりよい今後のためにゲームを再構築

魅力的な新レジェンドを生み出すための変更

――クラスの再構築はかなり前から計画されていたようですね。

スティーブ具体的に動き始めたのは2022年の1月ですが、草案自体はシーズン7(2020年11月)のころからありました。

エヴァンレジェンド開発チームから「新しいレジェンドを生み出しづらくなっている」という意見が挙がっていたんです。

 カタリストはすばらしい出来ですが、それ以降に上がってきたレジェンドのアイデアは特徴がハッキリしていなかったり、ほかのレジェンドと役割が被っていたり、独自性を追求するあまり強くなりすぎてしまったりと、不健全な状態に陥っていました。 その問題を改善するためにクラスの再構築を実施することにしたんです。

スティーブ新しいレジェンドをただ無意味に登場させたくないんです。ところが、すでにゲームに登場しているレジェンドたちはいろいろな要素を持っているので、新レジェンドが無意味な存在になりがちでした。そこで、新しいレジェンドを生み出すためのスペースを作る目的で今回の変更を加えたんです。

――今後登場するレジェンドのための変更であったということですね。

スティーブまさにその通りです。これからも新しいレジェンドは追加し続けていくつもりです。 ただ、今後は追加ペースが以前とは違ったものになります。

エヴァンいままで生み出してきたレジェンドを成長させ、よりユニークでシャープなものにすることで各レジェンドの存在意義もより明確にしたいです。

 私は『Apex Legends』のサービス開始時はまだRespawnに在籍していなかったのですが、最初期のレジェンドたちの能力は『タイタンフォール2』の“戦術(※)”と似たものばかりでした。ジブラルタルやブラッドハウンドなどはとくに多くの要素を持っているので、彼らの特徴を狭めつつ、より特化させることで、ほかのレジェンドを生み出すためのスペースを生み出したんです。

※戦術:『タイタンフォール2』のオンラインマルチプレイで使用できた特殊な装備。“グラップル”や“興奮剤”など、『Apex Legends』のアビリティに似たものも多く存在する。

――これほど大きな変更は競技シーン、とくにALGSに大きな影響を与えると思いますがその点についてはどう考えていますか?

エヴァンきっと多くのプロプレイヤーたちが新しい環境で適応するまでにストレスを感じると思います。ただこれまでも大きな調整を行うことはありましたが、多くのプレイヤーがそれぞれのペースで新しい環境になじんでいきました。

 新しい環境が成熟していくにつれて、変化によって生まれたいい点と悪い点がわかってくると思いますが、それが楽しみです。

――クラスの再構築以外に大きな変更はありますか?

スティーブ新しい環境に適応する場を設けるために、いままでは期間限定だったコントロールなどのモードを常設することにしました。

 これらのモードはバトルロイヤルよりもカジュアルなので、生まれ変わったお気に入りのレジェンドを確認したり、いままで触れてこなかったレジェンドを練習するにはとてもいいゲームモードだと思います。

――新シーズンを遊んだユーザーの反響はこれまでよりも大きなものになりそうですね。

エヴァンこの変更の準備をするためにシーズン15ではあまり大きな調整は加えませんでした。すべては新シーズンにあらゆる変更をまとめて送り出したかったからです。

スティーブコミュニティーからは賛否さまざまな声が寄せられると覚悟していますが、そうした声の数々がこれからの糧になるので、どんな反応が寄せられるかとても楽しみにしています。

【Apex】Respawnスタジオトップインタビュー。シーズン16ではよりよい今後のためにゲームを再構築

 なお、現在発売中の週刊ファミ通2023年2月23日号 (No.1784/2023年2月9日発売)では、42ページにわたる『Apex Legends』特集を掲載。4年の歴史を振り返り、開発スタジオであるRespawn Entertainmentへの訪問取材や、『Apex Legends』好き著名人からのお祝いコメントなどを掲載しているのでぜひそちらもチェックを!