ファミ通.comの編集者&ライターが年末年始のおすすめゲームを語る連載企画。今回紹介するゲームは、人型兵器を駆って敵の大群を迎え撃つタワーオフェンスゲーム『VOIDCRISIS』です。

【こういう人におすすめ】

  • ロボを操作するアクションゲームが好き
  • “先行量産型”や“指揮官型”などの単語にときめく
  • MOBAやタワーディフェンスも好き

カイゼルちくわのおすすめゲーム

『VOIDCRISIS』

  • プラットフォーム:PC(Steam)
  • 発売日:2022年10月27日
  • 開発元:ヘキサドライブ
  • 発売元:ヘキサドライブ
  • 価格:2980円[税込]

『VOIDCRISIS』ローンチトレーラー

『VOIDCRISIS』ストアページ(Steam)

あらゆる単語が男の子のハートに刺さりまくる

 本作はAD2221、2度の“銀河大戦”を経てもなお人類が争う架空の未来世界を舞台としたタイトルです。

 各勢力が代表戦“局所戦争”を開幕しようとしたそのとき、衛星カリストに謎の光子存在“ノンカーバイド”が出現。その地点に発生した“タイムクラック”を中心に“時間停止圏”の拡大が始まり、事態を重く見た太陽圏管理委員会(HMC)は各勢力の精鋭を集め、事態に対処しようとします。

『VOIDCRISIS』ロボゲー成分不足には人型兵器を駆るタワーオフェンスを。ノンカーバイドや戦闘生体機官、不変自律体などSF世界観がたまらない【おすすめゲームレビュー】
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 ノンカーバイドは“なぜか”HMCが運用する機体に酷似した機動兵器群“ファントム”の姿で出現します。

 これを撃滅するべく出撃するのは、巨大人型兵器である戦闘生体機官“バイタルアーマー(VA)”。プレイヤーはVAパイロット“ストリンガー”となり、機体固有の不変自律体“IA”のサポートを受けつつ、タイムクラックから侵攻してくるファントムを撃滅していきます。

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VAはパーツ同士を重力の紐でつなぐという画期的な技術により、機体設計の多様化や整備性の向上、可動域の拡大などさまざまな軍事的ボトルネックを解消した巨大有人兵器です。

 さて、ここまでの長文でもう伝わっている人には伝わっているかと思いますが、本作はとにかくSFロボットものが好きな人の心をくすぐる単語に満ちています。

 さらに機体にも“実戦配備仕様”とか“ロールアウト型”などの派生があったりと、いちロボット作品ファンとしては「スタッフよくわかってるなぁ」と感心せざるを得ません。

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本作にはロボットプラモデルのCGボックスアートのエッセンスをゲーム上で再現する技法が使われています。その名も“ダイナミックメカニカルアートシェーダー”。ツヤや質感はロボ好きにはたまりません。

 VAだけでなく、世界設定に関しても膨大な資料が用意されており、その設定のぶ厚さは圧巻です。後述しますが、機体が敵を倒してExE(経験値のようなもの)を得てグレードアップする点など、細かな部分に至るまでしっかりと世界観設定がされています。

 ちなみに、作中では詳細は明言されていませんが、開発スタッフによると「シリーズが継続すると徐々に判明していく要素や設定があります」とのこと。たまらん。

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この世界の年表をざっと見るだけでも、設定への熱量が伝わってくるかと。
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なぜ敵を倒すと機体が強化されるのか、そんな細かな点までしっかりフォローされています。

 また、プレイヤーをサポートしてくれる人工知能のような存在“IA”も秀逸。4系統ある機体ごとに歴戦の軍人、エースパイロット、幼い姉弟、怪しいピエロと、個性的な面々が揃っています。

 戦闘中にはこちらからアドバイスを求めることもできるので、セリフを聞ける機会が多いのもおもしろいところ。

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戦闘中、さまざまなリアクションを見せてくれるIAたち。シグナルボタンで称賛されると、僚機のIAが褒めてくれることも。

 これらの世界観に関する資料は、ゲーム内のさまざまな条件を満たしていくことで収集できます。新たなVAや機体の強化手段の解禁を目指してゲームを進めていけば、併行して世界観に関するピースを集める楽しさも味わえるかと思います。

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ゲームをプレイしていくと“プレイヤーレベル”が上がり、要素が解禁されていきます。このほかにも特定の難易度や機体で一定の業績を達成するなど、さまざまな解禁条件が隠されています。

立体的なMOBAの戦場をロボで駆け抜ける

 ゲームの内容については、MOBA(Multiplayer online battle arena)に近いタワーオフェンス形式となっています。

 既定のルート(ゾーン)を進行してくる敵を迎撃し、経験値を獲得することで機体をグレードアップ。そのくり返しで戦線を押し上げていくことで、最奥部にいるボスに到達したらこれを倒す。

 このように、基本ルールは難しくありません。本作の特徴的な点は、このルートが立体的な位置関係にあることです。

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本作の視点は360度すべての方向に向けることができます。スタート地点から見て左上、左下、右上、右下の4ヵ所に、レーンの入口が配置されています。

 レーンの形状はつねに直線状なのですが、そこに“ファントムタレット”などのオブジェクトが毎プレイごとに、ある程度ランダムに配置されます。

 このタレットをすべて壊さないと、レーンの向こう側の終点に待ち構えるボスの耐久値が自然回復してしまいます。

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タレットをすべて破壊してからボスに突貫するのが、本作の基本となります。

 タレット以外にも、一定時間ごとに発生する“ウェーブ”には大量の小型敵機や、なぜかVAとまったく同じ姿を有する“ファントムVA”など、さまざまな敵が各レーンから押し寄せてきます。

 これらを効率よく倒してグレードアップしつつ、スタート地点にある自陣の中核“グローバルコア”を破壊されて敗北とならないように、防衛も意識しないといけません。

 立体的な構造のステージに、こちらも立体機動を活用して最短ルートを高速の“ブーストダッシュ”で駆け抜けたりと、平面ではありえない攻略法でチャレンジできるのが本作の最大の特徴と言えるでしょう。

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敵を倒すとExE(経験値)のほかに、青白く光る立方体“エンタングルキューブ”が出現。これを集めてスタート地点に戻ると、時間経過で自然と溜まっていく資源“メタマテリアル”の獲得量増加と、コアの回復が可能です。
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メタマテリアルを溜めると、機体の速度や攻撃力、防御力などを強化しつつ、さまざまな特殊機能を追加できる“マトリクス”を選んで購入できます。

すべての要素がロボ好きの心をくすぐる

 ロボ好きといってもさまざまなタイプの人がいるかと思いますが、本作のロボ要素はそのほぼすべてを網羅しています(個人の感想です)。

 たとえばグレードアップによって解放される必殺兵器“シンギュラデバイス”による一撃のロマンや、「エネルギー30%に低下!」などといった戦況ナビゲーションのセリフなどなど、枚挙にいとまがありません。

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4系統のVAはそれぞれ大きく異なる特性を持っており、それらの派生機体もまた別もののような性能を持っています。気に入る機体がきっとあるはず。
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敵機体もまた、超巨大人型兵器などのロマンの塊ばかりが出てきます。

 また、それらのロマンをさらにかき立ててくれるのが、性能のカスタマイズ要素です。先述した“マトリクス”だけでなく、ステージクリア時に得られる“TP”で攻撃、防御、移動速度、エネルギー効率という4つの要素を自由に強化することができます。

 ゲームスタート時は攻撃力やスピードが低い状態ですが、ステージをクリアして強化を重ねていくことで圧倒的なパワーアップを感じられます。

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超高機動のロボットアクションが楽しみたい人も、敵の攻撃をものともしない重機動兵器が好きな人も、この強化とマトリクスを併用すれば自分好みのロボを生み出せるのです。
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筆者の好みは攻撃特化の機体。攻撃を強化するとある程度移動速度も上昇するので、超火力による戦場全域の蹂躙が楽しめます。

 また、本作では敵味方含めて、耐久値にエネルギー兵器に対応した“バリア”(白色のゲージ)と物理兵器に対応した“アーマー”(味方は青、敵は赤のゲージ)があるため、どちらを削るのに特化するか機体ごとに考えてみたりするのもおもしろいかと思います。

 最大4人同時のマルチプレイではもちろんのこと、ひとり用のモードでもCPUが操作する僚機を3機まで連れていけるので、いろいろな編成を試してみたくなること請け合いです。

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バリアを無視してひたすら巨大鈍器でアーマーを削りにいく“グリムヒルデ”など、各機体の特性がかなり尖っているのも本作の特徴。
『VOIDCRISIS』ロボゲー成分不足には人型兵器を駆るタワーオフェンスを。ノンカーバイドや戦闘生体機官、不変自律体などSF世界観がたまらない【おすすめゲームレビュー】
ステージクリア時にランダムで獲得できる強化要素“アジャストエフェクト”に合わせて編成や強化方針を変えるプレイもやり応えあり。

 MOBA要素の特徴としては、全自動で進軍して敵を攻撃してくれる、いわゆるミニオンにあたる“支援ゴーレム”が一定時間ごとに召喚できる点も挙げておきたいところ。つねに出せるわけではない分、敵に妨害されないタイミングを読んでボスまで到達できれば、プレイヤー機と並ぶほどの火力を発揮してくれます。

 他プレイヤーのマルチプレイにファントムVAとして乱入する対人戦モードもありますので、多対一の圧倒的不利を覆すような戦いに燃えるという人にもおすすめできます。

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支援ゴーレムと僚機による包囲一斉射撃で、ボスの耐久値を一気に削るときの気持ちよさ。MOBAやストラテジーゲームが好きな人には、こういった戦略性も極めてみてほしいです。
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ファントムVAの性能は通常のVAと同じく、通常モードのステージクリア時に得られる“スキル”をIAに搭載していくことで格段にアップします。自分が育てた機体で、攻略勢のステージに乱入してやりましょう。

 立体的に動き回れるステージで、自分だけの特化を施したロボを気持ちよく操作しつつリアルタイムストラテジーのような戦略も楽しめて、ディープな世界観への没入もまた同時に楽しめる本作。ロボットものが好きという人にはもちろん、世になかなか出てこないロボットアクションゲームへの渇きをいますぐ満たしたい、もう待ちきれないという人には、とくにオススメしたいタイトルです。