アニメ好きのライターが2022年、とくにおすすめしたいアニメをピックアップしてご紹介します。
2022年は『鬼滅の刃』、『呪術廻戦』に続く形で、『週刊少年ジャンプ』作品のアニメ化大躍進の年でした。
『SPY×FAMILY』に『チェンソーマン』、さらに往年の名作が最新技術で再映像化された『THE FIRST SLAM DUNK』。そして映画『ONE PIECE FILM RED』の『ワンピース』映画史上最高のメガヒットも記憶に新しいですよね。
だからといってジャンプ作品一強というわけではなく、テレビアニメ・配信アニメ・劇場アニメ問わず、さまざまな傑作が話題を呼んだ1年でもありました。
劇場アニメなら富野由悠季監督の劇場版『Gのレコンギスタ』5部作の完結や、新海誠監督最新作『すずめの戸締まり』も非常に大きな存在感を示していましたよね。両監督にはファミ通.comの連載でインタビューを行っており、こちらに携わったこともあって筆者個人としても思い出深い作品となりました。
(連載では『シャインポスト』や2023年放送予定『TRIGUN STAMPEDE』のスタッフインタビューも行っています。いずれも興味深い話題が盛りだくさんとなっているので、まだ読んでない人には読んでみてほしいな~!)
閑話休題、本稿では上記のような特集記事では魅力をお届けできていない作品の中から、2022年に筆者が心から夢中になったアニメをピックアップ!
定番どころが多めではありますが、だからこそ「まだ観てないならぜったい観て損ナシ!」と言える強力ラインアップとなっています。年末年始は、これらのアニメをイッキ見して過ごしてみませんか?
恋い焦がれるように惹かれ合ったふたりの運命は!?『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』
TVアニメ『BIRDIE WING ‐Golf Girls' Story‐』本PV
2022年春アニメで、もっともっと話題になってほしい作品として真っ先に挙げておきたいのが本作です。裏社会の賭けゴルフで家族の生活を支える少女・イヴと、表世界でエリートゴルファーとして脚光を浴びる少女・葵の出会いから、物語は始まりました。
これまで出会ったことのない、それでいてライバルと呼べる腕前を持つゴルファーとの出会いに、恋焦がれるように惹かれ合うイヴと葵。運命に翻弄されながらも、第2部でふたりはダブルスのペアを組み、全日本高校女子大会に出場することに。ライバルどうしの共闘って、やっぱり最高にアツい……!
イヴが「直撃のブルー・バレット!」といった決め台詞を叫びながらミラクルショットを成功させるなど、『プロゴルファー猿』的演出と言いますか、一見荒唐無稽に見える本作のゴルフ描写。けれど作中におけるリアリティーラインがキッチリと設けられているため、外連味たっぷりながらフェアで手に汗握る試合が楽しめます。
シリーズ構成を担当する黒田洋介氏の代表作になぞらえて“女子ゴルフ版『スクライド』”と評する声もありますが、本編を観ればきっと納得できるはず。それくらい、ふたりの熱情と目まぐるしい展開に、ドキドキ・ワクワクできて、たまらない気持ちにさせられるアニメです。
2023年4月からは、待望のSeason 2が放送予定! 待ちきれません。
TVアニメ『BIRDIE WING ‐Golf Girls' Story‐』Season 2 PV第1弾
- 配信サイト:Amazon Prime Video、Hulu、バンダイチャンネルほか多数の配信サイトで配信中
- アニメ『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』公式サイト
小島監督のイチオシは第3話! 『リコリス・リコイル』
TVアニメ『リコリス・リコイル』PV第3弾
2022年夏に話題を席巻したオリジナルアニメーション。『メタルギアソリッド』シリーズや『デス・ストランディング』でおなじみの小島秀夫監督がハマったり、小説版の帯コメントを書いたことでも話題になりました。
犯罪を未然に防ぐ秘密組織のエージェント・“リコリス”である千束とたきな。対照的なふたりがさまざまな任務を通してすこしずつ絆を深めていく様子が、ときにシリアスに、ときにコミカルに描かれていく物語に夢中になった人は多かったことでしょう。
その個性の違いはふたりのガン・アクションにも表れており、千束の並外れた動体視力、たきなの正確無比な射撃能力を活かした、洗練された作画による見せ場が、各エピソードを盛り上げてくれました。
一方で、少女たちが人知れず危険な任務に投入されているという残酷で歪な世界設定や、その背後にある大人たちの思惑も、本作をひと筋縄では行かない作品にしていました。賛否の議論も白熱した本作。まだ観ていない方は、ぜひ自分の目で確かめてみてください。
アニメ『リコリス・リコイル』を観る(Amazon Prime Video) アニメ『リコリス・リコイル』Blu-ray 1~6全巻セット(Amazon.co.jp)- 配信サイト:Amazon Prime Video、Hulu、Netflixほか多数の配信サイトで配信中
- アニメ『リコリス・リコイル』公式サイト
ゲームとアニメの最高の化学反応『サイバーパンク エッジランナーズ』
『サイバーパンク: エッジランナーズ』予告編(トリガー編集版)
アニメファンであり、ゲームファンでもある人にとって、本作がずば抜けておもしろく、それでいて原作ゲーム『サイバーパンク2077』に忠実なアニメ化であったことは事件だったと言ってよいでしょう。
犯罪に巻き込まれて母親を失い、人生のどん詰まりで危険なサイバーウェア、“サンデヴィスタン”を自身の身体に埋め込むことを決めたデイビッド。その力を使い、死と隣り合わせの汚れ仕事を請け負う“エッジランナー”として生きていくことになります。
『キルラキル』や『プロメア』など、これまでのトリガー作品に多く見られたハチャメチャな話運びもそれはそれで楽しいものでしたが、本作ではそれらとはひと味違った、深みのある青春物語が味わえました。
CD Projekt REDの全面協力のもと、ゲームの舞台・ナイトシティを徹底的にロケハンして描かれたという作品世界が、登場キャラクターたちにリアルな息づかいをもたらしていたのも特筆すべき点。
結末を見届けた人に「(ゲームをプレイすることで)自分の手でこの街を変えたい」と思わせてくれる点も、ゲームとの連動アニメとして見事なバランスだったのではないでしょうか。
PS4『サイバーパンク2077』(Amazon.co.jp)- 配信サイト:Netflixにて独占配信中
- アニメ『サイバーパンク エッジランナーズ』公式サイト
まったく先が読めない、まったく新しい“ガンダム”『機動戦士ガンダム 水星の魔女』
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』オープニング映像(ノンクレジット)
『少女革命ウテナ』を彷彿とさせる,第1話の婚約者を決める決闘から、ストーリーは二転三転。いまや過去の『ガンダム』シリーズのみならず、どんな作品にも似ていないまったく新しい物語を展開しているように感じられる本作。毎回、つぎの展開がまったく読めません。
当初は前日譚として放送された『機動戦士ガンダム 水星の魔女 PROLOGUE』に登場した女の子が成長した存在かと思われていた主人公のスレッタ。しかし、どうやら別人の可能性がありそうで……? どのキャラクターも魅力的でありながら、その多くにまだまだ秘密がありそうな雰囲気。
物語からは不穏さが見え隠れしつつも、スレッタの健気でかわいらしく、そして真っ直ぐな正義感も持ち合わせた人間性は共感しやすく、素直になれないミオリネとの掛け合いは微笑ましくてずっと眺めていたくなります(でも、こうした平和な時間は、きっと長くは続かないのかも……)。
2023年1月8日(日)に放送される第12話で、第1クールが完結。第2クールは4月から放送予定となっている本作。“物語”を愛するすべての人に、いまからでも追い付いて、毎週の展開で一喜一憂してもらいたい作品です。
アニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』を観る(Amazon Prime Video) アニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』Blu-ray 1巻(Amazon.co.jp)- 配信サイト:Amazon Prime Video、Netflix、ガンダムファンクラブほか多数の配信サイトで配信中
- アニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』公式サイト
2022年、もっとも“死人が出た”アニメかもしれない『アキバ冥途戦争』
TVアニメ「アキバ冥途戦争」本PV
「メイド喫茶でかわいいメイドさんたちががんばるお仕事モノ!?」と思いきや、対立する系列店のメイドどうしが血で血を洗う抗争をくり広げるなど、バチバチに“任侠モノ”のストーリーを展開する大怪作でした。
数えたわけではありませんが、作中で死んだ人間の数は『チェンソーマン』や『サイバーパンク エッジランナーズ』よりも多かったんじゃないでしょうか……?
第6話『姉妹盃に注ぐ血 赤バットの凶行』では、服役中だったライバル店の超武闘派メイド・愛美が出所。穏健にメイド喫茶を経営してきた現・代表を脅し、逆らう者を殺害してでも周囲を従わせて、秋葉原を暴力で支配しようと画策します。昨年公開された映画『孤狼の血 LEVEL2』を彷彿とさせるストーリーに息を呑みました。
“かわいいメイドさん”になることを夢見て上京してきた主人公・なごみは理想と現実のギャップ(いくらなんでも違いすぎ!)に苦悩し、大切な人を失うことによる絶望を経験しながらも、やがて自分が貫くべき“メイド道”を見つけます。
彼女が最後に見せる笑顔のかわいらしさ、美しさ、かっこよさ、気高さを見て、本作を最後まで視聴してよかったと、心の底から思えました。
アニメ『アキバ冥途戦争』を観る(Amazon Prime Video) 映画『孤狼の血 LEVEL2』を観る(Amazon Prime Video) アニメ『アキバ冥途戦争』Blu-ray 1巻(Amazon.co.jp)- 配信サイト:Amazon Prime Video、Hulu、ABEMAほか多数の配信サイトで配信中
- アニメ『アキバ冥途戦争』公式サイト
アニメ・オブ・ザ・イヤー『ぼっち・ざ・ろっく!』
【LIVE映像】結束バンド「忘れてやらない」LIVE at 秀華祭
過去にもいくつかの名作が登場してきたバンドアニメにおいて、それらを超える作品を作ろう、向こう10年~20年にわたる新たなスタンダードにしようといった制作側の気迫が伝わってくるような、凄まじいアニメでした。
CGや実写、あの手この手を尽くして描かれる主人公・ぼっちこと後藤ひとりの極端なコミュニケーション下手から来る奇行&妄想には、コメディとしてのおもしろさと同時に、テレビアニメの表現の可能性への挑戦にも感じられ、ワクワクさせられっぱなし。
そうした表現と真逆を行くように、圧倒的なリアリティを持って描かれるライブシーンの数々。とくに“まったく息が合っていない演奏”を音響面も含めて徹底して再現した場面には驚きましたし、これがその後の、起死回生の展開のカタルシスにつながっていたのも最高としか言いようがありません。
そのいずれもが、ぼっちの変化や、バンドメンバー4人の結束を描く上での重要なピースとなっていて……視聴中は笑ったり、熱くなったり、少し切なくなったりと、たくさんの感情が胸の中を駆け巡りました。
筆者にとっての2022年最高のアニメ、“アニメ・オブ・ザ・イヤー”を選ぶなら、本作を選出したいと思います。今年のテレビアニメを1作だけ人に勧めるなら、本作で決まりです!
アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』を観る(Amazon Prime Video) アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』Blu-ray 1~6全巻セット(Amazon.co.jp)- 配信サイト:Amazon Prime Video、Hulu、バンダイチャンネルほか多数の配信サイトで配信中
- アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』公式サイト
でっかいでっかいでっかいくじら~!『犬王』
劇場アニメーション『犬王』劇中歌「腕塚」歌詞付き映像
『マインド・ゲーム』や『DEVILMAN crybaby』、『映像研には手を出すな!』など、オリジナルアニメ、原作ありのアニメともに強烈な作家性を見せる湯浅政明監督の新境地!
室町時代に出会った、猿楽の一座に生まれた異形の子“犬王”と、盲目の少年琵琶法師“友魚”。ふたりは誰も見たことのないライブパフォーマンスによって平家の物語を京の都に広め、人々を熱狂させます。
劇中で何度も描かれるライブシーンは、奇妙な犬王のパフォーマンスに、楽曲のロックな旋律、そこに犬王を演じる女王蜂のボーカル・アヴちゃんによる変幻自在の歌唱が組み合わさって、思わず身体中でリズムを刻みたくなってしまうものばかり。
そうしてエンターテイナーとしての頂点を極めたふたりを待っていたものは、物悲しい結末。けれど彼らが人々へと与えた熱狂は、形を変えていまも生き続けているのかもしれない……そんな温かな余韻に背中を押されるような作品でした。
Blu-ray&DVDの販売やレンタルも始まったので、お家で、楽曲に合わせて手拍子をするなどして、劇中の観客とともにノリノリで鑑賞するのがおすすめです。
『犬王』Blu-ray 完全生産限定版(Amazon.co.jp)- 配信サイト:U-NEXTにて独占先行配信中
- 映画『犬王』公式サイト
原作ファンじゃない人にこそ、観に行ってほしい!『THE FIRST SLAM DUNK』
映画『THE FIRST SLAM DUNK』予告
原作のことは湘北高校のレギュラーメンバー5人の顔と名字が一致する程度、ネットでよく話題になるような名台詞をいくつか知っているくらいの薄い知識しかなかった筆者。しかし、本作にはオープニングで一気に心をつかまれ、上映中はずっと手に汗握りっぱなしでした。
3DCGで描かれるアニメーションはそれなりに観てきましたが、目まぐるしく状況が変化するバスケットボールの試合を、徹底的にこだわり抜いた表現で描くとこんなに斬新な映像になるのかという衝撃。
何が起きているのかがわかりやすいカット割りと、実際の試合を観ているような濃密な情報量が両立されているのが、本作をまったく新しい映像たらしめているのだと感じました。監督・脚本を原作者の井上雄彦氏みずからが行い、修正に修正を重ねて作り上げたというのですから、これを実現させるためのスタッフの労力も並大抵ではなかったのだと想像します。
原作の主人公・桜木花道ではなく、ある別のキャラクターを中心に描かれるドラマにも、“いま『スラムダンク』を語りなおす意味”が込められているのだと思いました。
筆者が“熱烈な原作ファン”ではないからこそ、複雑な想いを感じずに楽しめた面もあったかもしれません。それは裏を返せば、まだ本作を観ていない“原作ファンじゃない人たち”も、夢中になれるかもしれない映画であるということ。
未曾有の映像体験を味わいたい人は、映画館に急げ!
書籍『THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE』(Amazon.co.jp)- 『THE FIRST SLAM DUNK』:全国の映画館にて上映中
- 映画『THE FIRST SLAM DUNK』公式サイト