2022年12月9日にスクウェア・エニックスより発売されたNintendo Switch用ソフト、『ドラゴンクエスト トレジャーズ 蒼き瞳と大空の羅針盤』。
幼い兄妹であるカミュとマヤのふたりを主人公に、モンスターたちとともに伝説のお宝探しが楽しめる“トレジャーライフRPG”として話題の「ドラゴンクエスト」シリーズ最新作だ。
『ドラゴンクエスト トレジャーズ 蒼き瞳と大空の羅針盤』の購入はこちら(Amazon.co.jp)本作は、お宝集めを主軸にしたシステム、仲間モンスターとともに戦うアクションバトル、自由に探索できる広大な異世界など、いままでにない「ドラゴンクエスト」を実現。数々の挑戦に取り組んだ意欲作だ。それでもなお、「ドラゴンクエスト」シリーズを飾る新たなスピンアウト作品として成立している。
そんな『ドラゴンクエスト トレジャーズ』をプロデュースしたのは、「ドラゴンクエストモンスターズ」シリーズでおなじみの犬塚太一氏。本作の発売を記念して、犬塚氏に完成までの道のりを直撃!
本作に込めた思いはもちろん、プレイに役立つ情報まで語っていただいたので、ぜひ参考にしてほしい。
犬塚太一(いぬづかたいち)
スクウェア・エニックス所属。「ドラゴンクエストモンスターズ」シリーズを立ち上げから手掛け、『ドラゴンクエスト トレジャーズ』でもプロデューサーを務めている。
気軽に遊べるだけでなく、やり込み甲斐のある作品に
――いよいよ発売を迎えましたが、いまの率直な心境をお聞かせください。
犬塚開発は順調に進んだので、あとは発売日を待つのみ、という状況でした。いよいよ発売されるな、という感じでしたね。
――2018年11月に配信された“ドラゴンクエストモンスターズ20周年”記念番組でカミュとマヤのイラストが公開されてから、4年が経ちました。
犬塚それなりにバタバタはしたのですが、開発にかける時間もきちんと取れたので、順調に進みました。
――タイトルは『ドラゴンクエスト トレジャーズ』となり、「ドラゴンクエストモンスターズ」の冠が付かない別作品となりました。「ドラゴンクエストモンスターズ」シリーズの新作が、なぜ完全新作となったのでしょう?
犬塚当時は「ドラゴンクエストモンスターズ」シリーズの最新作を、と発表していましたが、2017年2月に『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー3 プロフェッショナル』を発売した時点で、考えられることはすべて詰め込んだという達成感があったんです。そのため、ここでシリーズを1回リフレッシュしてみようと考えたことが、本作の開発の始まりでした。
―― そこから試行錯誤を重ねたのですね。
犬塚当時はオープンワールドのゲームにすごく興味があって、「ドラゴンクエスト」とオープンワールドを組み合わせて何かできないかなと、まずは考えたんです。この時点で鳥山明先生にカミュとマヤのイラストをお願いしました。まだ形にはなっていないけれど、主人公はこのふたりにしようと決めていたので。
――そこから“お宝探し”を主体にするという方向性に進んだのですか?
犬塚そうですね。オープンワールドの定義も自分の中ではフワっとしている状態だったのですが、カミュとマヤと言えば“お宝探し”だろうとなり、ゲームの主軸となる方向性が決まりました。この時点で“モンスターを集める”という要素はサブコンテンツになったため、タイトルも“モンスターズ”ではなく“トレジャーズ(仮)”にしました。
――本作は「ドラゴンクエストモンスターズ」の進化系ではなく、派生作品という位置付けに?
犬塚派生作品とも違いますね。「ドラゴンクエストヒーローズ」や「ドラゴンクエストビルダーズ」のような完全新規タイトルに近いかもしれません。ただ、本作を出したことで「ドラゴンクエストモンスターズ」シリーズがなくなるというわけではないので、そこは安心してください。
――本作のバトルでは、仲間のモンスターが活躍してくれて、カミュとマヤはサポート的な立ち位置で立ち回れます。個人的にはこの点に「ドラゴンクエストモンスターズ」らしさを感じました。
犬塚そもそもの話ですが、「ドラゴンクエストモンスターズ」の最新作として考えていたときは、たとえば主人公がモンスターのブリザードの能力を宿して氷属性になるように、モンスターの能力を体に宿して戦うという構想があったんです。それを堀井さん(堀井雄二氏)に提案したところ、「モンスターは連れて歩けないとダメでしょう」と言われて、「確かにそうだな」と。しかし、主人公とモンスターが同時にバトルに参加すると、プレイヤーは操作キャラクターにしか目がいかなくなる。それでも、モンスターたちも活かしてあげたい。そこで、バトルでは仲間モンスターたちに自由に戦ってもらい、主人公はフォローに回るというアイデアが浮かびました。
犬塚そこからスリングショットのシステムが加わり、バトルの仕組みがほぼ固まりました。この時点で、「ドラゴンクエストモンスターズ」とはまったく違うゲームになると確信しましたね。
――そのスリングショットですが、弾を選んでいるときは時間が止まるのは親切ですね。
犬塚シビアなバトルにすると、僕自身がついていけなくなるから(笑)。「ドラゴンクエスト」のファンは、若い方から僕と近い世代の方まで、かなり幅広いと思うんです。僕に近い世代のファンはコマンドバトルに慣れているので、いきなりアクションゲームになるととまどうかな、と。アクションであることを気にしないで遊べるアクションというものを求めました。極端に言えば、仲間モンスターが強ければ主人公が何もしなくとも仲間モンスターが敵を倒してくれます。ここは「見ているだけでも楽しければいい」と振り切りました。アクションが苦手な人にも触れてほしいし、何より気軽に遊んでほしいと思ったのです。
――バトルに参加したいプレイヤーなら、仲間モンスターをサポートすることで強い敵にも勝ちやすくなるように、プレイヤーに遊びの幅がありますよね。やり込み要素のある“お宝ダンジョン”のようなコンテンツも豊富ですし。
犬塚気軽に遊びたいライトなユーザーだけでなく、ガッツリと遊びたいコアなユーザーも満足できる内容になっています。とはいえ、あまりやり込みを重視し過ぎると、気軽に遊べる要素が削られてしまうこともあるので、そこは時間をかけてバランスを調整しました。
――ゲーム序盤からお宝探しや仲間モンスター集め、すべての浮遊島へ移動可能になるなど、自由度がかなり高いのですが、それだけにバランス調整は苦労されたと思います。
犬塚開発は「ドラゴンクエストモンスターズ」シリーズのスタッフが中心を担ったので、比較的スムーズに進みましたね。「ドラゴンクエストモンスターズ」シリーズも、通常のRPGと比べれば自由度の高いゲームなので、スタッフも慣れていたかもしれません。それでも試行錯誤を重ねた部分はあります。
犬塚たとえば、序盤からすべての浮遊島へ移動できますが、初めて降り立つところは敵が弱めになっていて、奥に進むほど強くなっていきます。過酷な環境の浮遊島にはいきなり強い敵が出ることも考えたのですが、ライトなユーザーも気軽に遊べるものにするという大前提がありました。いきなり強い敵が出て全滅したら、そこで止めてしまう人もいると思うので、なるべくそうならないように調整しています。それでも、ちょっと道から外れて茂みの中に入ると強い敵が出ることもあるので、敵の名前の表示を赤くして視覚的に強そうなことを表現したり、ミューシャやトンブーが「強そうだよ」と知らせてくれるようになっています。
――お宝探しやお宝ダンジョンは、『ドラゴンクエストX オンライン』の“お宝の写真”や“源世庫パニガルム”に通ずるものがあると感じました。本作の開発で、ほかのシリーズタイトルに影響を受けたことはありますか?
犬塚「ドラゴンクエストモンスターズ」のスタッフ以外にも『ドラゴンクエストX オンライン』のスタッフも開発に参加したので、影響がないとは言えません。ただ、それは結果論で、カミュとマヤが主人公でお宝探しをメインにするという方向性は変わっていません。同じお宝を探すという目的の中で、自然と似たのかもしれませんが。
――スピンアウト作品の中でも、かなり新しい形のゲームになっていますよね。
犬塚スピンアウト作品を作るときにいつも思っていることですが、ナンバリングの「ドラゴンクエスト」シリーズは、プレイヤーが主人公に気持ちを乗せてストーリーを楽しむものだと思っています。スピンアウトはそうではなく、別の楽しみかたができるシステムを堪能してもらいたいんです。「ドラゴンクエストビルダーズ」にはブロックを組んでモノを作る楽しさがあるし、「ドラゴンクエストヒーローズ」では多数のキャラクターたちによるワチャワチャした爽快感を楽しめる。ナンバリング作品が王道を突き進む一方で、スピンアウト作品には新しいものに挑戦する役割があると思っているので、その意味では納得のいくものができたかな、と。こうやってお互いに刺激し合えればうれしいです。
――たしかに、スピンアウト作品には尖ったシステムも多いですよね。それでも「ドラゴンクエスト」シリーズと感じられるのがすごいのですが。
犬塚そこが重要なんですよね。新しいことに挑戦しても、「ドラゴンクエスト」感を残さないと別のゲームになってしまう。ひと言で“「ドラゴンクエスト」感”と言っても、人によって捉えかたが違うので、実際にゲームをプレイしていただいて、ユーザーさんにどう思ったか、聞きたいですね。
“竜玉の迷宮”はストーリーに直結する重要なダンジョン!
――少し気になるのが、“竜玉の迷宮”という拠点の地下深くに続くダンジョンの仕組みです。フロアごとに出現する旅の扉に入るたび、戦う敵や得られるものが変わるんですよね。
犬塚まず、ゲームの基本的な流れを説明しますね。カミュ&マヤがフィールドでお宝を探して鑑定し、鑑定額が一定に達するごとに団がランクアップしていく。団がランクアップすると、施設が増えたり仲間モンスターをさまざまな場所に派遣できたりするようになる。そして、団のランクがある程度まで上がると“竜玉の迷宮”のフロアが開放されていく……という流れになっています。開放された“竜玉の迷宮”のフロアをクリアーすると、メインストーリーが進むことになります。
――ということは、“竜玉の迷宮”はストーリーと連動しているダンジョンなのですか?
犬塚まさにその通りで、メインストーリーを進めて団をランクアップすることで、少しずつ挑める範囲が広くなっていくんです。
――“竜玉の迷宮”はやり込み要素的なコンテンツなのかな、と考えていました。
犬塚メインストーリーと連動してはいますが、ストーリークリアー後はやり込み要素のコンテンツとしても機能します。
――途中で戻りたいと思ったときは、すぐに戻れたりするのですか?
犬塚はい。「そろそろ限界だな」と思ったら、すぐに戻ることができます。なので、モンスターをスカウトしたいときや、経験値をガッツリ稼ぎたいときなどに活用できます。“竜玉の迷宮”の最下層にいる敵は主人公のレベルに応じて強くなっていくほか、絶対に逃げないという習性があるので、特定のモンスターを仲間にしたい場合は最適かもしれませんね。お宝ダンジョンのように報酬にお宝はありませんが、モンスターのスカウトや育成に関してかなり役立つコンテンツになると思います。
――それはやり甲斐がありそうですね……。話を戻して、お宝探しについて、オススメのプレイスタイルや発見のコツなどがあったら教えてください。
犬塚まず、お宝は一度に多く持ち帰ったほうが評価は高くなると覚えておいてください。
―― 1個を10回持ち帰るのと、10個を1回で持ち帰るのとで評価が異なるのですか?
犬塚はい。一度に多くのお宝を持ち帰るとボーナスが加算されるので、かなりの違いが出てきます。しかし、それには危険もあり、お宝を持っている数が多いほどライバル団に襲われる確率が高くなるんです。ボーナスのために危険を覚悟でお宝を集め続けるか、安全重視でお宝はそこそこで引き返すか、そのせめぎ合いも楽しんでほしいですね。
―― ライバル団との戦いとは?
犬塚ライバル団のモンスターたちと戦うことになります。勝利すればお宝を守れますが、負けると全滅扱いになるほか、戦っているときにお宝を落としてしまうこともあります。
―― 落としたお宝はどうなるのですか?
犬塚ライバル団に奪われてしまいます。取り返すことも可能ですが、なかなかたいへんなので、基本的にはライバル団との戦いは極力回避したほうがいいかもしれません。
―― 回避できる方法は?
犬塚警告が出て、ライバル団が近づいていることを知らせてくれるので、戦いを避けたいなら急いで拠点に戻りましょう(笑)。
――ですが、拠点にもライバル団が攻めてくることもありますよね。
犬塚宝物庫にお宝を飾っている場合に、それを狙ってライバル団が現れることがあります。この戦いは避けられないので、がんばって応戦してください。ライバル団を追い返せれば、狙われたお宝の評価価格が上がります。
―― 負けた場合はどうなるのでしょうか?
犬塚負けるとお宝は奪われますが、取り戻すクエストが発生します。そのクエストをクリアーすることでお宝を取り戻せるんです。逆に、こちらがライバル団のお宝を狙って攻め込む、ということもできます。
――こちらが奪う側になれるのですか!? それにはどのような条件が必要なのでしょうか?
犬塚仲間モンスターを派遣すると、戻ってきたときに「●●に〇〇団がいたよ」という情報も持ち帰るときがあります。するとクエストが発生して、情報で知ったライバル団のお宝を奪いに行けるんです。
――なかなかシビアな世界なんですね(笑)。
スライムでもしっかり育てればストーリークリアーは可能!
――スライムのようなモンスターでも、育成すれば終盤まで活躍できるのでしょうか?
犬塚もちろん可能です。本作は敵を倒すだけでなく、お宝の発見でも経験値を獲得できます。メインがお宝探しなので、宝探しをしているだけでエンディングを迎えられるようなバランスになっています。とは言っても、ボス戦など避けられないバトルもありますが……。モンスターの強さについても、あまり差が生まれないようにはしてあります。たとえば「ドラゴンクエストモンスターズ」では、スライムとギガンテスでは強さにかなりの差がありましたが、本作ではそこまで大きな差はありません。また、スライムのような弱めのモンスターでもお宝の探索能力に長けているという特徴を持っています。バトルをガッツリ楽しみたいなら強いモンスターを、お宝探しを楽しみたいなら弱めのモンスターを選んでも活躍するというように、プレイヤーの目的に合わせていろいろなモンスターが選択できるようにしました。
――ちなみに、本編クリアーまでの総プレイ時間はどれくらいを想定していますか?
犬塚クリアーまでのプレイ時間はそこまで長くはありません。気軽にプレイできるという本作のコンセプトにもつながりますが、あまりゲームをしないライトなユーザーにもエンディングを迎えてほしいので。ただし、それはあくまでメインストーリー部分の話です。クリアー後のやり込み要素に関しては、プレイヤーの遊びかたにもよりますが、クリアーには15~20時間、クリアー後も含めると約30時間、全要素を含めると約100時間は楽しめると思います。また、お宝の種類は700以上を用意していますが、僕が物語の進行を優先してプレイしたときは200種類ほどしか集められませんでした。お宝の中でも“レジェンド”と呼ばれるものは本当に超レアなので、手に入れられたらラッキーだと思います。
――やり込みと言えば、“コイン”もそれに当たるのでしょうか?
犬塚コインこそ「ドラゴンクエストモンスターズ」の名残りと言えるかもしれません。モンスター個体のカスタマイズ要素として用意したのですが、最後の最後まで実装を悩みました。イメージとしては装備品で、各ステータスや耐性などを上昇させる効果があります。おもにバトルやお宝ダンジョンの報酬などで入手できますね。
――コインの種類や能力などは、完全にランダムなのでしょうか?
犬塚はい。お宝探しなど、遊びながら手に入れて、仲間モンスターのカスタマイズを楽しんでいただければ。たとえばHPが低いメタルスライムにHPが上がるコインを装備して耐久度を上げたり、ギガンテスの攻撃力を上げてより長所を伸ばしたりできます。装備できるコインの数は、最初は1個だけですが、団のランクが上がれば、最終的に8個まで装備できるようになるので、コインの有無でかなり強さが変わってくると思います。
――カミュとマヤが使うスリングショットの弾はどのようにして入手するのでしょうか?
犬塚フィールドで手に入りますし、拠点に弾丸屋ができれば、比較的簡単に確保できるものがほとんどです。なので、弾はもったいぶらずにどんどん使っても大丈夫です。
――少し気の早い質問かもしれませんが、発売後の展開などは考えられていますか?
犬塚本作はまったく新しい作品として完成したので、実際にプレイヤーの皆さんが遊んで、どのシステムや要素を楽しまれるのか、未知数な要素が多いんですね。もちろんある程度は想定していますが、ライトな方からコアな方まで幅広い層に遊んでもらえるよう設計しているので、ユーザー層の分布や年齢層などによって評価が変わってくると思います。そこでどういうものが求められているのかを考慮して、それらのリアクションを見てDLCなどを出すかどうか決めようと考えています。まずは新たな「ドラゴンクエスト」を思う存分楽しんでほしいですね。
『ドラゴンクエスト トレジャーズ 蒼き瞳と大空の羅針盤』の購入はこちら(Amazon.co.jp)