Xbox Series X|S/Xbox OneおよびPCで配信開始されたアクションアドベンチャーゲーム『Somerville』を紹介しましょう。なお本作はGame Passにも対応します。

  • いい所
    • ミステリアスでスタイリッシュな画作り
    • 言葉によらずに体験していくストーリーテリング
    • 戦闘要素がない、一般市民のサバイバルに特化した内容
    • 光を使った軟化/硬化を使うパズルのアイデア
    • 後半の大胆な展開
    • 3時間+に詰まったタイトで飽きない構成
  • 微妙な所
    • 仕掛けに気づくか気づかないかでほぼ決まってしまうパズル
    • 終盤の出来事と真相は雰囲気で理解するか考察/解釈が必要

ミステリアスな地球侵略モノのSFスリラー

 意味深なティザー動画が複数公開されてきたのみで謎が多い本作ですが、ジャンル的には地球侵略モノのSFスリラーになります。

 舞台となるのは、地球に突如飛来した“巨大な杭のような何か”によって壊滅状態におちいった世界。その混乱の中でたったひとり取り残されてしまった男が、妻や子供と再会すべくサバイバルします。

Somerville
クルマが多数クラッシュした高速道路の彼方に浮かぶ巨大な杭のような何か。

セリフや説明はなし! ひたすら不穏でスタイリッシュな演出から感じろ

 しかし本作、セリフやテキストでの説明は一切なく、キャラクターのモーションや背景美術などの画面上の演出だけで語るスタイリッシュな構成が特徴です。

 なのに、謎解きになっている部分や終盤のぶっ飛んだ展開を除けば大体のことは伝わるようになっているのがうまいところ。とくに、一家でテレビを見ながら寝落ちしていた平和な光景が次第に不穏な空気に包まれていくオープニングシーンは素晴らしい。

Somerville
一家が寝落ちしているなか、テレビから漏れる光が赤くなり、警報か何かを伝えているらしいことがわかる。

 これは本作のディレクターであるクリス・オルセン氏がもともとアニメーション畑の出身で、中でもプレビズ(これから作るのがどんなシーンなのかを示すために作られる仮映像)を得意としていることもあるでしょう。

Somerville
何かを探すように森の中を動いていく紫の光。まぁなんかヤバそうなのだけはわかる。

『Limbo』や『Inside』との関係性

 言葉でいちいち説明せずに画面だけでスタイリッシュに物語っていくという本作のスタイルは『Limbo』や『Inside』などのPlaydead作品の構成に近いのですが、実はPlaydeadは本作の成り立ちとも間接的に繋がっています。

 そのカギとなるのが、Playdeadの共同創設者だったディノ・パティ氏です。オルセン氏が作り上げたプロトタイプを目にしたパティ氏が意気投合し、開発スタジオとしてJumpshipを共同設立した後に完成したのが本作となります。

ルート開拓系の謎解きに特化したパズルアドベンチャー

 ゲームの作りも『Limbo』などと似ていて、奥行き方向への移動があまりない、ほぼ横視点の2.5Dパズルアドベンチャーゲームです。戦闘要素はなく、基本的に先のエリアに進むために謎解きをして障害物を取り除いたり、敵の目をかいくぐって進む方法を見つけ出すといった感じです。全体の構成はほぼ完全に一本道になっています。

Somerville
犬っぽい敵兵器の視野(赤で照らされる)に入らないようにしながら進む。

 謎解きの中で大きな役割を担うのが、最序盤で入手することになる謎の機器。この機器の能力をさまざまな光(電灯や発炎筒など)と組み合わせることで襲来した“杭”の組成が崩れる(※)らしく、これによって残骸が道を塞いでいたりしても除去できるというわけです。(※後に水に溶けた成分を硬化させるバージョンも出てくる)

 この“光で軟化/硬化させるパズル”はアイデアもそこそこ豊富で、正解に気がつくとともに思わず「それをそう使うのか!」とアガる場面も多くてなかなかいい出来です。

Somerville
光と能力を組み合わせることで、障害物がもりもり溶けていく。

 ただしこの手のゲームにはよくあることですが、あまり複雑に要素が絡み合うようなパズルはなく、利用可能な画面内の仕掛けに気がつくか気がつかないかで大体決まってしまうのは微妙な部分と言えるかもしれません。

 先に触れたようにテキストでの説明などは皆無なゲームなので、現在の目的がなんなのかや、どこが謎解きになっているのかは自分で察するしかありません。「実はここは一回戻るのでは?」などと深く考えて詰まった挙げ句、実は登れる場所の反応が悪いだけだった……なんてこともありました。

Somerville
上の障害を溶かせばよさそうなのだが、使えそうな光源があるのは1階部分。さてどうやって照らすか……。

謎が謎を呼ぶ怒涛の展開も

 ゲームは公称4~6時間とされていますが、実際のプレイでは3時間チョイぐらいといったところ。この手のゲームとして短すぎることも長すぎてダレることもなく、チャプターごとに印象的なシーンがきっちり詰まっています。

 終盤の展開もいろいろとひねっていて、オープニングの映画『宇宙戦争』的な展開でとどまることなく「え、そっちの方向の話だったの!?」という転換と、陰鬱とした流れを吹き飛ばすようなカッコいいシーンがいくつか用意されていて飽きさせません。

Somerville
無人のロックフェス会場で光のパズルって言ったら『アランウェイク』を思い出す。

 しかしかなり大胆な展開をする割にやっぱり説明がないので、雰囲気で何となく受け止めるのでなければ解釈/考察が必要です(筆者は前者)。「これ結局どういうこと?」と置いてけぼりになる人が出てしまう部分も『Inside』などと共通してしまっています。

 ちなみに本作は一応マルチエンディングになっているので、メジャーなチェックポイントごとに戻れるチャプター機能であれこれ試してみるといいんじゃないでしょうか。

 というわけで難点はいくつかありつつも、ベースのクオリティは高いゲームなので、この手のゲームがそもそも苦手だったり「はっきり説明してくれないと困る」という人でもなければ基本的におすすめできるんじゃないかと思います。特にGame Passで試せる人は次の週末にでもサクッとプレイするといいでしょう。