バンダイナムコエンターテインメントより、2022年10月13日発売予定のNintendo Switch、プレイステーション4、Xbox One、PC(Steam)用ソフト『ドラゴンボール ザ ブレイカーズ』。
本作は、セルやフリーザといった『ドラゴンボール』の代表的なライバルたち“レイダー”と、超戦士のようなパワーを持たない非力な一般市民“サバイバー”に分かれて、1対7で対戦を行う非対称型アクションゲームだ。これまでの『ドラゴンボール』のゲームとは一風変わった本作について、バンダイナムコエンターテインメントのプロデューサー原良輔氏にインタビューする機会を得たので、以下にお届けする。
なお、『ドラゴンボール ザ ブレイカーズ』のプレイの所感に関しては、先日行われた同作のクローズドネットワークテスト(CNT)のリポート記事をご参考にされたし。
原良輔氏
バンダイナムコエンターテインメント
『ドラゴンボール ザ ブレイカーズ』プロデューサー
圧倒的な戦力差を演出するために1体7という形に
――さっそくですが、本作の開発に至った経緯を教えてください。
原これまでにバンダイナムコエンターテインメントから数々の『ドラゴンボール』のゲームをリリースさせていただきましたが、わかりやすい魅力であるバトルのカッコよさや原作の追体験がメインとなっています。
ただ、『ドラゴンボール』の魅力はそれだけではなく、本作に登場するブルマやウーロンのような超パワーを持たない個性的なキャラクターも多数存在し、彼らの魅力をフィーチャーすることで、あまり気づかれてはいなかった、さらなる『ドラゴンボール』の可能性を引き出せるのではないか……との思いがありました。
そういう、いわば一般人に近い視点から『ドラゴンボール』の世界を見たらおもしろいのではないかと思っていたところに、ちょうどそのときにゲーム業界に浸透していた非対称対戦と組み合わせるというアイデアが生まれたところから本作が誕生しました。
――その発想はいつくらいに思いついたものなのですか?
原だいたい4、5年前くらいですね。
――これも改めてのご質問になりますが、プロデューサーとして、本作で注目してほしいところを教えてください。
原『ドラゴンボール』だからこそ実現できた圧倒的な戦力差に注目していただければと思います。
非対称対戦のゲームはほかにもありますが、ここまでキャラクターどうしの強さが離れているものはほかにあまりないのではないかと。
レイダーはその戦力差を気持ちよく楽しんで、サバイバーはその戦力差を覆したときが非常に気持ちいいと思います。本作では、レイダーでつねに気持ちいい状態になるか、サバイバーで最後に非常に気持ちいい状態になるかを、自由に選んで楽しんでいただきたいです。
――本作の開発で苦労したところを教えてください。
原1対7の非対称対戦ということでゲームバランスの調整に苦労しました。非対称対戦自体、バランスの調整が難しいと言われているのですが、一般的な1対4ではなく、本作では1対7なので、たとえば、サバイバーが全員初心者と熟練者ではかなり大きな差ができてしまいます。そこを圧倒的戦力差という本作のテーマをぶらさずにバランス調整するのがすごく難しかったです。
2021年12月のクローズドベータテストから2022年8月に行われたクローズドネットワークテストまで、半年以上の期間が空きましたが、そういった調整をかなり細かく行いました。
――非対称対戦のバランス調整はそこまで難しいものなのですか?
原1対1のバトルでは、キャラクターの能力を均等に調整すればいいのですが、それが1対4や1対7になると、それぞれキャラクターの性能が違うので等しく調整ということはできません。
たとえば、サバイバーのキャラクター全員がレベル1の腕前を持っていると合計でレベル7になり、全員がレベル10の腕前を持っていると合計でレベル70になりますが、この差をいかに調整するかが非常に難しいです。
そのため、勝率やスキル使用率などのデータやクローズドベータテストなどをプレイしていただいたユーザーさんの意見も取り入れて調整しています。
――さまざまな手段で性能を調整しているのですね。苦労して調整されてきたと思うのですが、リリース後にキャラクターの調整を行う予定があったりするのでしょうか?
原そうですね。2021年12月のクローズドベータテストから、2022年8月に行われたクローズドネットワークテストまでに時間をかけてある程度調整されていますが、これだけでは足りないとも思っています。オープンベータテストやリリース後にユーザーさんからのご意見もうかがって、アップデートしながら調整していきたいと考えています。
――1対7での調整に苦労してきたということですが、サバイバーが7人というのは、最初からこの人数だったのでしょうか?
原最初から7人でした。理由として、非対称対戦は1対4が多いですが、圧倒的な戦力差をゲーム内で体験できるようにするには、サバイバーの数が多いほど戦力差をはっきり感じられると考えたからです。そして、7人にしたのは、『ドラゴンボール』では、7という数字が大きな意味を持つので、このふたつを組み合わせて1対7での非対称対戦にしました。
――本当にそれで1対7にしたんですか(笑)。
原本当にそれで1対7にしました(笑)。「非対称対戦なら1対4でしょ」というところから始まりましたが、圧倒的な戦力差というテーマがあったので、もっとサバイバーの数を増やしたいよねと。ですが、サバイバーができることは限られており、増やしすぎるとプレイの密度が薄くなってしまうので、そのあたりの調整もした結果、『ドラゴンボール』だから!ということもあり、最終的に1対7になりました。
シーズンごとに新たなレイダーやサバイバースキンを用意
――2022年8月6日、7日に行われたクローズドネットワークテストでは、レイダーにセルとフリーザが登場しましたが、製品版ではどれくらいのレイダーが登場するのでしょうか?
原東京ゲームショウ2022の配信番組で新レイダーとして魔人ブウが発表されました。ソフトのリリース時には、キービジュアルにも登場しているセル、フリーザ、魔神ブウの3体になります。
それ以降に関してですが、本作はシーズン制になっていまして、3、4ヵ月のスパンでアップデートをくり返していきます。そのアップデートごとにレイダーを1体ずつ追加していこうと考えています。
――レイダーは、セルの場合、進化レベルが高くなると幼虫から第1形態、第2形態など姿が変わっていきますが、レイダーに選定されるキャラクターの条件として姿が変わらないといけないということがあったりするのでしょうか?
原魔神ブウだと、レベル1がスポポビッチから始まり、魔人ブウ(無邪気)がレベル2から登場します。
原作だと魔人ブウは玉に封印されていて、そこにエネルギーを注入することで復活するようになっていますよね。本作では、レベル1のスポポビッチがエネルギーを集めて、玉に注入して魔人ブウを復活させて、そこからは魔人ブウを操作するといった、いわゆるキャラクター交代のような形になっています。
ですので、原作アニメなどで姿が変化しないキャラクターなども、レイダーとして登場する可能性はありますね。
――同じくクローズドネットワークテストでは、キャラクターになりきれるサバイバースキンとして、ブルマとウーロンが用意されていましたが、製品版ではどれくらいのサバイバースキンが登場するのでしょうか?
原こちらも東京ゲームショウ2022の配信番組で発表されましたが、戦闘力5の男、本作での正式名称は“農家のおじさん”と言いますが、彼が追加されます。リリース時には、ブルマとウーロン、農家のおじさんが実装されることになります。農家のおじさんに関してはゲーム内の条件を満たすことで、使用できるようになります。
具体的には、シーズン1の“ドラゴンティア”というバトルパスのようなものの報酬に農家のおじさんが入っています。この“ドラゴンティア”はバトルパスによくある有償枠がないので、ティアをあげればすべての報酬を獲得できるようになっています。
また、レイダーと同じくサバイバースキンもシーズンごとに追加していく予定です。
※農家のおじさんは、ラディッツが地球にやってきたときに最初に見つけた地球人。スカウターで戦闘力を測ったときに言われた「戦闘力…たったの5か…ゴミめ…」という言葉が有名。
――固有のキャラクターとかではなく、農家のおじさんが登場するのですね。農家のおじさんにはどういったところに魅力があると考えていますか。
原サバイバースキンですが、農家のおじさんというキャラクターが使用できるのは本作が初めてなので、ある意味、歴史的瞬間なのではと思っています。
ゲーム的には、“耕す”という固有スキルを持っていて、使用するとその場で地面を掘り起こせます。一定確率でアイテムを掘り当てることができるというものなので、隙あらば積極的に活用していってください。一定確率なので、もちろん掘っても何も起こらないこともあります...(笑)。
本作は発表当初“戦闘力5”をうたい続けていましたが、やはり“戦闘力5”と言えばこの男の存在は欠かせないだろうということで、実装することを決意しました。
ですので、それなりに『ドラゴンボール』が好きな人には、喜んでもらえるのではないかと思います。
――サバイバーとしてプレイする場合、見た目などをカスタマイズしたキャラクターでプレイできます。身長なども調整できますが、身長が低いとレイダーの攻撃が当たりにくいといった、見た目による性能の差はあるのでしょうか?
原見た目が違っても能力的に違いはありません。レイダーから攻撃されたときの当たり判定なども変わらないようになっています。
強いて言うならば、大柄のキャラクターとウーロンのような小柄なキャラクターでは、視認しやすさという点で多少の違いはあります。
勝利条件にレイダーの討伐を用意したのは、楽しみかたに幅を持たせるため
――非対称のゲームと言えば、サバイバーは脱出のために逃げるだけという印象がありますが、本作では、レイダーを倒すことでも勝利となります。珍しいと思うのですが、なぜこのような要素を導入したのでしょうか。
原サバイバーは、一般人ですが孫悟空やベジータなどの超戦士の魂が込められた“トランスボール”を使うと、その戦士のスキルを使って闘うことができます。
そういった闘うことができるという中で、レイダーを倒すことがあってもいいのではないかということで導入しました。ただ、レイダーを倒すのはとても難しく、サバイバーの協力が不可欠となるので、基本的には超タイムマシンの起動を目的にプレイしていただきたいと考えています。
――レイダーを倒しても勝利など、ほかの非対称対戦のゲームに比べてサバイバー側の勝利条件が複数用意されており、かなり有利だと思えるのですが、どのような意図があるのでしょうか。
原サバイバーの勝利条件は、レイダーの討伐と、超タイムマシンの起動のふたつ、加えて勝利にはなりませんが、緊急脱出用タイムマシンでの脱出というエンディングも用意されています。
クローズドネットワークテストでは、レイダーの勝率が6~7割で、サバイバーは勝率こそ高くはありませんが、レイダーの討伐や超タイムマシンの起動ができず、一部のサバイバーが緊急脱出用タイムマシンで脱出したときの生存率で考えると、過半数を超えるほど高くなってきます。
そういった楽しんでもらえる方法を考えた結果、楽しみかたの幅を持たせるために複数の勝利条件を用意しました。
――レイダーはエリアを破壊することができ、レイダーとサバイバーのどちらにも一長一短があると思うのですが、調整は大変だったのでしょうか。
原短期決戦を望むなら、起動キーが設置されていないエリアを破壊することができます。エリア破壊に関しては、試合を長引かせてサバイバーを倒したい人はあえて起動キーが設置された場所を狙って破壊するといったことができます。ほかにも、短期決戦を望むなら、起動キーが設置されていないエリアを破壊することもでき、プレイに幅を持たせられます。戦力差を示すひとつの手法ではあるので、調整は大変でした。
――いまのところ、クロスプラットフォームでのマッチングはないとのことですが、今後対応する予定があったりするのでしょうか。
原現状は対応する予定はありません。ただ、マッチングに関して、リリース以降も問題が発生したときの解消はもちろん、よりマッチングしやすくなるためのアップデートは続けていきます。
――『ドラゴンボール ゼノバース2』との連携が予定されていますが、具体的にどのようなことができるのでしょうか。
原現時点では、ざっくりとしたことしかお話しできませんが、それぞれのゲームをプレイしていると、何かしらの報酬やアイテムがもらえるといったことを検討しています。
先日のアップデートで、『ドラゴンボール ゼノバース2』にウーロンが登場して、『ドラゴンボール ザ ブレイカーズ』の世界観を楽しめるようなクエストが配信されました。クエストをクリアーすることで、『ドラゴンボール ゼノバース2』内でアクセサリーを入手できるのですが、それを持っておくと『ドラゴンボール ザ ブレイカーズ』でもいいことがあるといったことを予定しています。
――クローズドネットワークテストからここを調整したいという点はありますでしょうか。
原データだけを見るといい感じだとは思いますが、これからもバランス調整を行っていきます。それ以外にも細かいところで調整してほしいという意見もありましたので、リリース時に反映できるものは少なくなってしまいますが、アップデートを続けながら調整をしていきます。
――最後にユーザーに向けて一言お願いします。
原これまでの2回のテストを経て、多数の意見をいただいて、このゲームが非常にいい方向に向かっていると確信しています。
本作のリリースを楽しみにしていただきたいですし、今後のアップデートも含めて期待していただきたいので、これからも引き続きご協力のほど、よろしくお願いいたします。