本日2022年9月11日、Netflix(ネットフリックス)とユービーアイソフトは提携することを発表。『バリアント ハート』、『マイティ・クエスト』、『アサシン クリード』の3つのゲームシリーズを、Netflix限定のモバイルゲームとして、2023年から配信を開始する計画であることを明らかにした。それぞれの世界をさらに拡げ、広告やアプリ内購入なしで、Netflixメンバー限定のモバイルゲームとして全世界に向けて配信される予定とのことだ。

 新生『バリアント ハート』は、数々の賞を受賞したユービーアイソフトのゲーム『バリアント ハート ザ グレイト ウォー』の続編として、オリジナルの制作チームが中心となって監督し、同じDNAを受け継ぎながら新たなストーリーを展開する新作ゲームとなるとのこと。2023年1月よりNetflixメンバーに向けて配信開始予定。

 モバイルゲームとして人気を獲得している『マイティ・クエスト』は、新バージョンになって登場。2023年にNetflixで配信予定だ。ローグライクのジャンルから着想を得てリプレイ性をさらに強化し、同ゲームシリーズの醍醐味であるハックアンドスラッシュなスタイルの戦闘アクションを飽きることなくとことん楽しめる作品となる予定とのこと。

 『アサシン クリード』に関しては、すでに制作が決定している実写ドラマシリーズに加えて、Netflixメンバー限定の完全新作モバイルゲームが現在開発中だという。

 各ゲームの詳細は後日発表される予定とのことだ。

Netflixがユービーアイソフトと提携。『アサシン クリード』や『バリアント ハート』などモバイル向け3タイトルを2023年より全世界配信

 今回の発表にあたって、Netflixとユービーアイソフトからそれぞれコメントが発信されている。

■Netflix ゲーム部門バイス・プレジデント マイク・ベルドゥ氏
 「ファンの記憶に残りつづける世界を創り出す、という意味でUbisoftは唯一無二の存在です。Ubisoftとの協業は非常に楽しみであり、このパートナーシップによって、世界有数の魅力的なゲームシリーズをNetflixメンバー限定で提供することができます。これからも世界中のメンバーのために、素晴らしいモバイルゲームのラインナップを構築していきます」

■ユービーアイソフト 最高モバイル責任者ジャン=ミシェル・デトック氏
 「あらゆるプラットフォームで素晴らしい体験を提供し続ける我々にとって、Netflixのような革新的でクリエイティブなパートナーと提携できることはとても喜ばしいことです。今回の提携は、Netflixのメンバーの皆様にとって、Ubisoftが創るモバイルゲームの世界をより深く知って楽しんでいただく良い機会になると信じています」

ユービーアイソフトとの提携を始めとして、今後さらなるユーザーの訴求に努めていく

 Netflixユービーアイソフトの提携にあたって、Netflix エクスターナル・ゲーム開発責任者のリアン・ルーム氏がスピーカーを務めての、世界の取材陣を対象にしたラウンドテーブルが実施された。以下、その内容をお届けする。

Netflixがユービーアイソフトと提携。『アサシン クリード』や『バリアント ハート』などモバイル向け3タイトルを2023年より全世界配信

リアン・ルーム氏

Netflix エクスターナル・ゲーム開発責任者
18年以上前に英国でゲーム制作を始め、「スクラブル」、「リスク」、「マジック:ザ・ギャザリング」などのタイトルに携わる。その後、日本にてサードパーティーのパブリッシング部門で数年間働いた後、英国に戻り、エレクトロニック・アーツにシニアプロデューサーとして入社。車とゲームへの情熱を結びつけ、「ニード・フォー・スピード」シリーズをプロデュースし、コミュニティが運営するライブサービスへの移行を指揮。その後、ライアットゲームズの外部パブリッシング部門であるライアットフォージの設立と責任者を務め、「リーグ・オブ・レジェンド」といった様々なストーリーゲームを制作。

 ラウンドテーブルでは、リアン氏はまずNetflixゲームの現状について説明した。リアン氏によるとNetflixゲームは開始から10ヵ月ほどでまだ初期段階にあるとのこと。現在25タイトルをサービスしており、2022年中に50タイトルにしたいと考えているという。Netflixの全メンバーにゲームを提供することが目標だが、メンバーにはいろいろなタイプの人がいるので、多種多様なゲームを全員に提供することが重要だという。“メンバーが望むさまざまなタイプのゲーミング体験をもたらす、複数のゲームを提供すること”がNetflixゲームの目標になるようだ。

 ゲームはNetflixのビジネスのコアのひとつであり、サービスに付加価値を与えるものだと考えているというリアン氏だが、Netflixゲームには広告もアプリ内購入もないことが大きな特徴だと言う。「Netflixゲームには広告もアプリ内購入もないので、継続してゲーム体験を楽しめます。プレイヤーがゲームでバリアのない体験ができるようにしたいのです。さらに、広告もアプリ内購入もないということは、デベロッパーには創造性の自由が与えられます。通常の無料モバイルゲームではアプリ内購入が必須なので、それを促すデザイン要素が求められます。Netflixにゲームを提供するデベロッパーに求められるのは創造性であり、コアの部分ですぐれたゲーム、さらには、メンバーを長期にわたって惹きつけることができるゲームであり、ゲーム体験の前にアプリ内購入のバリアが立ちはだかることはありません」と力説する。

 Netflixゲームはまだ初期段階にあるので、現在は多種多様なゲームの可能性を模索しつつ、実験したり学んだりしているという。Netflixの、メンバーがどんなゲームを好むのかを把握するために世界中のデベロッパーとパートナーシップを組み、世界中にあるクリエイティブな才能を発掘したいと思っているそうだ。

 また、今後はNetflixのIPをどのようにゲームに活用するかもひとつのテーマになるという。Netflixの人気ドラマ『クイーンズ・ギャンビット』がゲーム化されることはすでに発表されたが、将来的には映画やテレビ番組をゲームとリンクさせ、メンバーのために彼らが愛するIPのユニバース体験を提供したいとのことだ。

 リアン氏によると、現在のNetflixゲームのトップゲームには『ストレンジャー・シングス: 1984』、『アスファルト: Xtreme』、 『ニット&キャット』、『イントゥ・ザ・デッド 2: アンリーシュド』などがあり、「Netflixのメンバーは子猫からゾンビまで、多種多様なゲームを好んでいることがわかります(笑)。このようなデータから将来の方向性を探っているところです」という。

Netflixがユービーアイソフトと提携。『アサシン クリード』や『バリアント ハート』などモバイル向け3タイトルを2023年より全世界配信
『ストレンジャー・シングス: 1984』

 Netflixゲームの現状と今後の展望についての説明が終わると、今回の本題となるユービーアイソフトとの提携の話へ。『バリアント ハート』、『マイティ・クエスト』、『アサシン クリード』の3作が、Netflixモバイル独占タイトルとして、2023年に全世界に向けて配信されることが明らかにされた。「素晴らしいゲームを開発している世界のすぐれたデベロッパーと仕事をする機会を得ており、これからが非常に楽しみです」(リアン氏)。

 説明後の取材陣とのおもなやり取りは以下の通り。

――3つのタイトルでユービーアイソフトとと提携することにしたのは、どんな理由からですか?

リアンユービーアイソフトは世界的に知名度の高いすぐれたデベロッパーであり、フランチャイズの人気が高いことは、Netflixのメンバーが楽しめる体験をもたらすうえで大きなカギとなりました。とくに実写化もされる『アサシン クリード』は、ドラマを観てからゲームをプレイするという素晴らしい体験ができ、メンバーに大きなメリットがあります。同じエコシステムでユニバースをさまざまなメディアで提供することは、メンバーにとってアクセスしやすいということでもあり、とても重要です。

 ユービーアイソフトの幅広いポートフォリオも魅力的です。各フランチャイズに大きな違いがあり、対象も異なります。今回発表した3作についてもジャンルも体験も異なります。ひとつのデベロッパーとパートナーになることで、3つのゲームを幅広い嗜好のメンバーに提供できるというのは、とてもエキサイティングなことです。フランチャイズにはコミュニティとファンがついており、Netflixに呼び込んでゲームを祝福できるというのは素晴らしい機会だと思います。

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最新作となる『アサシン クリード ミラージュ』

――これらのタイトルを選んだ理由を教えてください。『アサシン クリード』に関しては、ドラマとの兼ね合いがあるかとは思いますが……。

リアン先ほどお話したように多種多様なタイトルを提供したいということ、そしてコミュニティ、ファンがついているということが大きいです。『バリアント ハート』も『マイティ・クエスト』もファンがたくさんいるので、続編としてこれまでのゲームを基礎に体験を構築していくことができます。ユービーアイソフトとともにプレイヤーに満足していただけるサービス提供が可能です。

 また新しいメンバーを獲得する機会でもあります。デベロッパーとともにゴールや戦略を立ててそれをどのように達成するかを考え、メンバーのために最適の決断をするわけですが、この3つのゲームは最大のインパクトを与え、楽しさを提供できると思いました。

Netflixがユービーアイソフトと提携。『アサシン クリード』や『バリアント ハート』などモバイル向け3タイトルを2023年より全世界配信
『バリアント ハート ザ グレイト ウォー』

――今後ユービーアイソフトとのパートナーシップで予定していることを教えてください。

リアンユービーアイソフトとは現在3つのゲームでパートナーを結んでいます。今後のゲームとパートナーシップについても、最初のゲームがローンチする2023年1月までに詳細を発表する予定です。

――ほかのデベロッパーとのパートナーシップは予定していますか?

リアンいま数多くのデベロッパーとパートナーを組んでいます。今年中に50ゲームの配信を目指していますが、これらのゲームはすべてデベロッパーが異なります。私は異なるタイプ、ジャンルのゲームに携わった経験があり、私のチームも同じです。デベロッパーについての専門知識と経験を生かして、メンバーがもっとも共感し、人気が出ると思われるもの、どのようなメンバーに受けるのかを検討しています。幅広いジャンルのゲームの中から、戦略的にどのゲームがメンバーに最大のインパクトを与えるかを考えています。それぞれのジャンルで学ぶことも多いです。

――将来的にはモバイル以外もPCやコンソールゲームを手掛ける予定はありますか?

リアン現在はモバイルにフォーカスしています。戦略的にもっともインパクトが大きいと考えています。ほかのプラットフォームについては、いま言えることはありません。

――この8月にはNetflixメンバーのほとんどがNetflixゲームをプレイしていないという報告がありましたが、これからどのようにNetflixゲームを訴求していくのですか?

リアンNetflixゲームは初期段階にあり、基礎を作ってより多くのメンバーがゲームをプレイしてくれるように動き始めているところです。実験と学習を続けてメンバーが求めるゲームを見つけていくつもりでいます。年内には50タイトルになるので、これだけでも幅が広がります。今後もさまざまなオプションを紹介していきます。

――Netflixの戦略として、とくにサブスクメンバー保持においてゲームの果たす役割を教えてください。また、将来提携したいと思っているゲームブランドは?

リアンエンターテインメントにはさまざまなものがあり、私たちは好きなものを選びます。ゲームの世界の大きさ、ゲーム人口を考えれば、Netflixのようなプラットフォームがゲームを提供するのは自然の成り行きだと言えるでしょう。Netflixでは、新しい体験とコンテンツタイプをメンバーに提供していると考えています。映画1本全部は見られなくても、ゲームなら5分で楽しめるので、ライフスタイルにもマッチしやすいです。通勤時間にもプレイできます。ゲーム、映画、テレビ番組など幅広い体験をライフスタイルに合う形で提供するということですね。友だちや家族ともいっしょに体験できるのです。

 ほかのパートナーシップについてはいまは何もお話しできませんが、今後共有していく予定です。