オーケストラと3名のゲストアーティストによる、圧巻のパフォーマンス

 スクウェア・エニックスのRPG『ロマンシング サガ』シリーズの楽曲を演奏するオーケストラコンサート“ロマンシング サガ オーケストラ祭”が、2022年6月4日に大阪で、2022年8月21日に東京にて開催された。

 有観客の『サガ』コンサートは、2020年2月開催の“ロマンシング サガ オーケストラ祭”以来で、約2年ぶり。『サガ』のコンサートと言えば、開催するたびに、ゲストを呼んだり、朗読を導入したりと、さまざまな挑戦が取り入れられているのが特徴だが、今回は3名のゲストアーティストが参加。オーケストラとゲストの歌声が、また新しい『サガ』の世界を生み出していた。

・ゲストアーティストと参加曲
KOCHOさん:『ポドールイ From ロマンシング サ・ガ3』、『女道化師イゴマール ~オリアクス-世界を穿ち、時を射る者- メドレー From ロマンシング サガ リ・ユニバース
岸川恭子さん:『最終試練 ~ 死への招待状 メドレー From ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』、『熱情の律動 From ロマンシング サガ -ミンストレルソング-
山崎まさよしさん:『メヌエット -オーケストラアレンジ Ver.- From ロマンシング サガ -ミンストレルソング-

『ロマサガ』コンサートが2年ぶりに有観客で開催! 山崎まさよしさんによる『メヌエット』生歌唱など充実したコンサートの様子をインタビューとともにリポート
『ロマンシング サガ リ・ユニバース』(以下、『ロマサガRS』)の楽曲の中でも人気が高い『女道化師イゴマール』と『オリアクス-世界を穿ち、時を射る者-』のメドレーは、演奏されるのは今回が初。かなり激しい曲だが、見事にやり切った皆さんはさすが。
『ロマサガ』コンサートが2年ぶりに有観客で開催! 山崎まさよしさんによる『メヌエット』生歌唱など充実したコンサートの様子をインタビューとともにリポート
来場者みんなで手拍子をしながら楽しんだ『熱情の律動』。歌唱前は「非常に緊張している」と語っていた岸川さんだが、いざ曲が始まると、そんな緊張を感じさせない堂々としたパフォーマンスを見せた。
『ロマサガ』コンサートが2年ぶりに有観客で開催! 山崎まさよしさんによる『メヌエット』生歌唱など充実したコンサートの様子をインタビューとともにリポート
『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』(以下、『ミンサガ』)のテーマソングである『メヌエット』。山崎さんとオーケストラメンバーが同じステージで、観客の前で披露するのは初のこと。『ミンサガ』発売から17年経ち、ついにこの豪華なセッションが実現した。

 ちなみに、今回のコンサートのMCを担当したのは、『ロマサガRS』や『インペリアル サガ エクリプス』の番組でおなじみの結さん。影ナレーションは、同じく『サガ』の番組でおなじみのペンギンズのノブオさんが担当した。これまでに番組を通じて、MC陣とユーザーたちがコミュニケーションしてきた経験が活かされており、コンサートが終始和やかな空気で進行したのが印象的だった。

『ロマサガ』コンサートが2年ぶりに有観客で開催! 山崎まさよしさんによる『メヌエット』生歌唱など充実したコンサートの様子をインタビューとともにリポート
『ロマサガ』コンサートが2年ぶりに有観客で開催! 山崎まさよしさんによる『メヌエット』生歌唱など充実したコンサートの様子をインタビューとともにリポート

 なお、大阪公演に関しては、アーカイブ視聴が可能。一度チケットを購入すれば、2022年8月28日(日)23:59まで何度でも視聴できる。チケット購入に関しては、公式サイトにて確認してほしい。

“ロマンシング サガ オーケストラ祭”公式サイト

東京公演後のクリエイター陣にインタビュー

河津秋敏氏(かわづ あきとし)

『サガ』シリーズ 総合ディレクター

市川雅統氏(いちかわ まさのり)

『サガ』シリーズ プロデューサー

伊藤賢治氏(いとう けんじ)

作曲家。『サガ』オフィシャルバンド“DESTINY 8”のメンバーとしても活動。

――大阪公演と東京公演の開催を無事に迎えることができましたが、いまのお気持ちを教えてください。

市川2020年2月に“ロマンシング サガ オーケストラ祭”を開催したときは、その後も定期的にコンサートなどをやりたいと思っていたんです。ファンの皆さんとコミュニケ―ションを取りたくて。ただ、コロナ禍でそれが難しくなってしまったので、YouTubeの公式チャンネルを充実させたりしてきたんですけど……前回の有観客コンサートから2年経って、ようやく、パワーアップしたオーケストラコンサートをお届けできたなと思います。

伊藤毎回、コンサートは開催するごとに盛り上がっていて、楽しませてもらっていて。それを受けて、「つぎはこういう曲を書いてみたいな、こういう演出をやってみたいな」という演出が固まるんですね。お互い、キャッチボールができるようになっていて。ただ届けるだけ、ただ聴かせるだけではなくて、こちらとしても「こういう風に聴いていただけるんだな」という受け止めかたができるようになって、だんだんとコンサートのクオリティーが高くなっていっていると思います。

河津音楽のイベントというのは、かつてはそのイベント単体で存在してたと思うんですが、いまは音楽だけではなくて、ゲームと周辺のいろいろなコンテンツを含めて、トータルで楽しんでもらえるものになりましたね。お客さんも含めてイベントが存在していて、それによってゲームも盛り上がるし、音楽も深く楽しんでいただける環境になったなと。ライブであることの価値がすごく上がっていて、それは10年前と比べるとかなり変わったなと思いますね。

――『ロマサガRS』を発表したころ、市川さんは、「『ロマサガRS』を、『サガ』に関するさまざまな挑戦のプラットフォームにしたい、『サガ』に関する施策の中心にしたい」とおっしゃっていましたが、そのお考えが、今回のコンサートにも反映されたのだなと思います。

市川でも、当時想像していたものとは、また違った形になってきているんですよね。いまはもっと、ごちゃごちゃしているというか……『サガ』で盛り上がってくれる仲間たちのコミュニティがたくさん増えているというか。今回、コンサートでノブオさんに影ナレを担当していただきましたけど、ノブオさんのナレーションでこんなに盛り上がっていただく未来は、当時考えてはいなくて。歩んできた時間や積み上げてみたものによって価値が生まれているなと。山崎まさよしさんも、最初2020年に『ロマサガRS』のCMに出ていただいたときは、オファーを受けるかどうか迷ったとおっしゃっていたんですよ。ファンの人に喜んでもらえるかわからないからって。それからCMが放映されて、皆さんからの反響があって、ライブにも出ていただいて……山崎さんにも「みんなが『メヌエット』を大事にしてくれているんだ」ということを伝えられて。クリエイターの皆さんに、そういったことを届けるコミュニティもできてきたなと感じます。

――これまでのテレビCMなどの施策がなかったら、今回のコンサートに、山崎さんは出ていなかったかもしれませんね。積み重ねと言えば、『サガ』のオーケストラコンサートも、2016年の初開催から約6年経つわけですが、この6年の経験を経て、演奏や演出に遊び心や新しい味を入れる余裕が出てきたんだなというのを今日感じました。

伊藤スクエニの皆さんも、楽しんでくれてるんですよね、コンサートを作るのを。最初のうちこそ、まずは自分のほうからアイデアを出していたんですが、いまは「こんなのはどうですか」と言ってきてくれて。若いスタッフだったり、中堅のスタッフだったりがそういう風に楽しんでくれていると、「こういう楽しみかたもあるんだな」と自分としても再発見することがあって。自分は年をとりましたが、「いままでの積み上げで、こういうものを出せますよ」と提案すると、「じゃあ伊藤さん、こういうことをやりましょう!」とキャッチボールができて、いまはすごく楽しいです。

――イゴマール戦の曲など、最近生まれた曲がオーケストラ化されたのも、うれしいポイントです。

市川指揮の松沼俊彦さんから、イゴマール戦はどういうものだったのか、かなりヒアリングを受けたんですよね。「2ヵ月半にわたって、みんなでボスを倒すってどういうことなの?」と。ゲームのよさを理解して指揮してくださろうとしてくれて。

『ロマサガ』コンサートが2年ぶりに有観客で開催! 山崎まさよしさんによる『メヌエット』生歌唱など充実したコンサートの様子をインタビューとともにリポート

――あの長い制圧戦の日々が思い出される演奏でした。

伊藤イゴマールの曲は、ファンの皆さんの投票によって選ばれたものなのですが、やっぱりみんな、バトル曲が好きなんだなと思いましたね(笑)。ユーザーの皆さんがどういったものが好きなのかがダイレクトに伝わるのが、こういったアンケートだったりするので、今後も大事にしていきたいですね。

――今後、「この『サガ』の曲をオーケストラで聴きたい!」というものはありますか?

市川オーケストラの譜面は、できるだけ作って残しておきたいと思っているんです。後年の人に引き継いでいただけるので。でも、『サガ』の曲は多すぎるので、全部は難しいかな……。

――今回、『ロマサガ3』から氷湖 の曲が演奏されていましたが、いままでにないチョイスでいいなと思いました。

河津「なんで氷湖なんだろう」と思いましたけどね(笑)。聴いてみると、アレンジがすごくおもしろくて。不協和音をあえて入れたりとか。

――今後も、そういった意外性のある曲やアレンジを聴きたいですね。今回は『ロマサガ』に限定したコンサートでしたが、また『サガ フロンティア』などの曲も聴きたいですし。

河津もっといろいろな形で開催できれば、と話はしているんですけどね。クラブのイベントとか、世代的にも行ったことがない人が多いでしょうけど。

市川『サガ』の可能性を広げられていくといいですよね。

伊藤ナイトプールでみんなで泳ぎながら聴くとか(笑)。

河津イトケンに夏フェスに出てもらおうなんて話もしてたんですけど(笑)。

市川DESTINY 8(伊藤氏がメンバーのひとりとして活動している『サガ』オフィシャルバンド)は、ぜったいに夏フェスが合いますよね。ゲームファンとロックフェスファンって、相性がいいとも思ってますし。ゲーム音楽の可能性は、もっと広がっていいと思っています。

――佐賀県でも、イトケンさんの曲が駅メロになりますしね。

伊藤10月、ぜひ佐賀まで聴きにいきたいですね。

――では最後に、『サガ』の今後の展開を教えてください。

市川佐賀県とのコラボ(「ロマンシング佐賀2022」)については、10月にスタートすると告知していますが、じつはもうラッピング列車は走り始めているんです。ロマ佐賀列車全16車両のラッピングが完了するのが10月なのですが、ラッピングは一度にできるわけではないから、少しずつラッピングが始まっていて。今回は、佐賀県の要素をデザインにかなり入れ込んでいるので、ロマ佐賀列車が走ることが、佐賀県の宣伝になってくれればいいなと思っています。

河津ミンサガ リマスター』については、東京ゲームショウでいろいろお伝えできればと思います。この冬には『ミンサガ リマスター』が出て、来年も何か新しいこともあって、さらに再来年も何かがある……といいですよね。

市川引き続き、『サガ』を盛り上げていければと思っていますので、よろしくお願いします。

『ロマサガ』コンサートが2年ぶりに有観客で開催! 山崎まさよしさんによる『メヌエット』生歌唱など充実したコンサートの様子をインタビューとともにリポート

ロマンシング サガ オーケストラ祭 2022セットリスト

  • オーバーチュア ~ オープニングタイトル From ロマンシング サ・ガ
  • 迷いの森 ~ 下水道 メドレー From ロマンシング サ・ガ
  • 帝都アバロン ~ 皇帝出陣 メドレー From ロマンシング サ・ガ2
  • 氷湖 ~ オーロラ メドレー From ロマンシング サ・ガ3
  • アビスゲート ~ 四魔貴族バトル1 ~四魔貴族バトル2 メドレー From ロマンシング サ・ガ3
  • ポドールイ From ロマンシング サ・ガ3
  • 最終決戦! -ラストバトルメドレー From ロマンシング サ・ガ1~3
  • 巨人の里 ~ 邪聖の旋律 メドレー From ロマンシング サガ -ミンストレルソング-
  • 最終試練 ~ 死への招待状 メドレー From ロマンシング サガ -ミンストレルソング-
  • 熱情の律動 From ロマンシング サガ -ミンストレルソング-
  • メヌエット -オーケストラアレンジ Ver.- From ロマンシング サガ -ミンストレルソング-
  • 聖王廟 ~ 魔王殿 メドレー From ロマンシング サ・ガ3
  • 女道化師イゴマール ~オリアクス-世界を穿ち、時を射る者- メドレー From ロマンシング サガ リ・ユニバース
  • エンドタイトル From ロマンシング サ・ガ3
  • エピローグ From ロマンシング サ・ガ2
『ロマサガ』コンサートが2年ぶりに有観客で開催! 山崎まさよしさんによる『メヌエット』生歌唱など充実したコンサートの様子をインタビューとともにリポート