『魔界塔士サ・ガ』から『サガ スカーレット グレイス』を網羅するオーケストラコンサート
2016年11月23日、東京・渋谷のBunkamura オーチャードホールにて、『サガ』シリーズ初のオーケストラコンサート“サガ オーケストラコンサート 2016”の東京公演が行われた。本記事では、夜公演の模様をリポートする。セットリストなどのネタバレを含むので、12月10日(土)に開催予定の大阪公演に参加予定の方はご注意を!
1989年12月15日に『魔界塔士サ・ガ』が発売され、『サガ』シリーズが誕生してからもうすぐ27年。来たる2016年12月15日には、シリーズ最新作となるPS Vita用ソフト『サガ スカーレット グレイス』の発売が控えている。
今回のコンサートでは、2016年3月に発売されたCD『サガオケ!』の収録曲を中心に、『魔界塔士サ・ガ』から『サガ スカーレット グレイス』までのシリーズ作品の楽曲が演奏された。
第1部は、約12分の大曲「魔界吟遊詩 -サガシリーズメドレー2016」からスタート。これはCD『サガオケ!』のトップを飾った曲でもあり、シリーズの歴史を振り返ることができるメドレーとなっている。『魔界塔士サ・ガ』の「プロローグ」から始まり、「ステスロス」、「オーバーチュア」、「涙を拭いて」、「旅の幕あけ」、「Roman」、「バトルテーマI」、「オープニングタイトル」と、歴代作品の旋律がつぎつぎと流れ、「もうクライマックスか?」と思わされる、豪華な構成だ。
そして、この「魔界吟遊詩」を最初に持ってきても、その後の演奏が霞むことがまったくないのが、今回のコンサートのすごいところ。続く楽曲は、ゲームボーイ3作品のメドレー「世界への帰還 -エピローグ from 魔界塔士サ・ガ」、「父の背中を追って -バトルメドレー from サ・ガ2 秘宝伝説」、「時空の旅人 -フィールドメドレー from 時空の覇者サ・ガ3」だ。このうち、「世界への帰還」と「時空の旅人」は、本コンサートのために新たにオーケストラアレンジされたもの。
演奏の合間には、スクウェア・エニックスの河津秋敏氏と作曲家陣が登場し、開発当時の思い出を語った。『魔界塔士サ・ガ』と『サ・ガ2 秘宝伝説』の楽曲を担当した植松伸夫氏は、20数年前の楽曲が演奏されることについて、“気恥ずかしい気もするが、素敵なアレンジと演奏で聴いてもらえることを誇りに思う”とコメント。また、開発秘話として、『魔界塔士サ・ガ』は8時間でクリアーできるが、それは成田からハワイまでの飛行機の中で終えられるようにという意図があるからという説がある、と述べた。この説が正しいのかどうか尋ねられた河津氏は、飛行機というよりは、博多までの新幹線の中でプレイすることを意図して作ったのだと回答した。植松氏は、成田-ハワイ説が正しいと長年思っていたため、少しショックだった模様!?
『サ・ガ3 時空の覇者 完結編』の楽曲を手掛けた藤岡千尋氏は、愛に溢れた編曲と素晴らしい演奏に対し、感謝と喜びの言葉を述べた。同じく『サ・ガ3』の楽曲を担当した笹井隆司氏は、「すごいでしょう!」とうれしそうにコメント。(『サ・ガ3』を)やっていてよかった、としみじみ語った。
当時の思い出に関するトークでは、藤岡氏は、自身と笹井氏は“見た目の通りロック野郎”であると述べ、ロックテイストで自由にやらせてもらったと振り返った。笹井氏は、オフィスのトイレに大きな蛾がいたという思い出を披露。当時のスクウェア大阪開発部には、いろいろな生物がいたらしい……。
そんな驚きのトークに続いて演奏されたのは、スーパーファミコンで展開された『ロマンシング サ・ガ』3作品の楽曲のメドレー。「試される決意 -最終試練 from ロマンシング サガ -ミンストレルソング~皇帝出陣 from ロマンシング サ・ガ2 メドレー」、「最強の栄光 -バトル2~七英雄~四魔貴族バトルメドレー from ロマンシング サ・ガ1~3」、伊藤賢治氏のトークを挟んで「戻れない道程 -ラストダンジョンメドレー from ロマンシング サ・ガ1~3」、「最終決戦! -ラストバトルメドレー from ロマンシング サ・ガ1~3」が披露された。
怒涛のバトルメドレーについて、「鬼畜」だとコメントしつつ、オーケストラの演奏を肌身で感じられることへの感動を語った伊藤氏。今後、オーケストラ化したいと思う楽曲は? という問いには「下水道」と回答し、ここで会場からは大きな拍手が巻き起こった。
『ロマンシング サ・ガ』シリーズの楽曲の演奏をもって、第1部は終了。休憩の後に始まった第2部では、『サガ フロンティア』以降の楽曲が奏でられた。伊藤氏が作曲した楽曲のメドレー「戦闘領域 -バトルメドレー from サガ フロンティア」、「妖魔の夢 -アセルスメドレー from サガ フロンティア」、そして浜渦正志氏が手掛けた楽曲のメドレー「時代の幕開け -オープニングメドレー from サガ フロンティア2」、「戦いの日々 -ノーマルバトルメドレー from サガ フロンティア2」、「限界の向こうに -アンリミテッド:サガメドレー」と続く。
浜渦氏は残念ながら会場には来られなかったが、代わりに浜渦氏からのメッセージが読み上げられた。浜渦氏は、(自分の曲が)このような形で披露されることをうれしく思っていると語ったほか、『サガ』の曲を担当することが、当時の自分にとって、とても大きなことだったとコメント。辛いこともあったが、作曲を通して自分のスタイルが見えてきたこと、ファンが背中をぐいぐい押してくれたことを振り返り、“『サガ』はいまの自分の立ち位置を作ってくれたシリーズ”だと述べた。
つぎに演奏されたのは、最新作『サガ スカーレット グレイス』の楽曲「緋色の邪星」と「胸に刻んで」。演奏前には、同作のプロデューサーを務める市川雅統氏、主題歌「胸に刻んで」を歌うソプラノ歌手の野々村彩乃さん、そして楽曲を担当した伊藤賢治氏が登場し、トークを行った。今回野々村さんを起用した理由については、市川Pと野々村さんが下関出身という点で共通しているから……というのは冗談で、「誰に歌ってもらおうか」といろいろと調査していた伊藤氏が野々村さんのことを知り、推薦したからだというエピソードが語られた。
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発売まであと3週間となった『サガ スカーレット グレイス』。今回のコンサートに参加した人は、後日ゲームをプレイして、今回演奏された楽曲の意味をじっくり考えてみてほしい。
さて、コンサートはいよいよフィナーレへ。最後を飾るのは、このコンサートのためにアレンジされた超大曲「これがいきもののサガか -サガバトルメドレー」。『魔界塔士サ・ガ』から『インペリアル サガ』、『サガ スカーレット グレイス』までのバトル曲が詰め込まれた、非常に豪華な内容になっていた。これはぜひとも……音源化をお願いします、スクウェア・エニックスさん!
そしてアンコールは、『ロマンシング サ・ガ2』より「オープニングタイトル」。「魔界吟遊詩」内の「オープニングタイトル」は壮大な演奏だったが、こちらはしっとりとした演奏で、約2時間半のコンサートは穏やかな余韻を残して締めくくられた。