インディーパブリッシャーのDevolver Digitalの新作『Cult of the Lamb』(カルト・オブ・ザ・ラム)を紹介しよう。
本作は、プレイステーション4/5、Xbox Series X|S/Xbox One、Nintendo Switch、およびPCで2022年8月12日より順次発売予定。日本語にも対応する。
すべては邪神様のために! ローグライトなアクションと村運営シムが融合
さて本作の主人公は、とある哀れな小羊。彼が何の因果か“旧き信仰の司教”なる禍々しい異形の者たちに処刑される……といういきなりダークな展開からゲームが始まります。
しかし、司教たちと相反しているらしい“待ち受けし者”の救済によって新たな生命を得た子羊は、それと引き換えに自身の教団を開くという使命を与えられます。信者を獲得して教団を拡大し、その祈りの力で自分自身を強化して司教たちを撃破していき、最終的に封印されている待ち受けし者の解放を目指すのです。
ゲームとしては、“司教たちを倒すためにダンジョンに潜っていくアクションパート”と“教団をより強固なものにしていく集落運営シムパート”の大きく分けて二部構成になっています。
もちろん両者は相互に関係していて、運営パートで信者たちの祈りが集まると自キャラを強化できてダンジョンで戦いやすくなり、一方ダンジョン探索が成功するとその戦利品によって運営パートに貢献できるという両輪体制です
というわけで見た目はめちゃくちゃカワイイ本作ですが、テーマがダークなだけでなく、ゲームの設計もちょっと複雑。実際どんな感じなのか、それぞれの要素をもうちょっと細かく見ていきましょう。
《建築・運営》教祖サマの道は楽じゃない? 炊き出し・ウンコ拾い・農作業から始まる日々
さて運営パートは、信者たちに寝床と食料を確保してやりつつ、建築や料理のための素材を確保して本拠地の改善を続けていきます。正直これだけでも十分ゲームになりそうなシミュレーションゲーム具合です。
教団には信仰度・満腹度・病気(衛生環境)の3つのパラメーターがあり、信者たちが空腹だったり寝床が足りなかったり衛生環境が酷かったりすると信仰度にも影響して教団運営に支障が出てきます。
なので施設が足りない序盤は教祖自ら、畑への作物の植え付けを行い、料理を用意してやり、トイレがないうちはウンコやゲロを片付け……と、八面六臂の活躍をしなければなりません。しっかり祈りと労働に専念できる環境を整えるのも教祖サマの仕事なのです。
またゲーム中には日数と昼夜の概念があり、信者たちは日中は祈祷や労働などの作業をオート進行し、夜になると割り当てられた寝床で休みます。
ここで言っておきたいのが、AIがなかなかいい感じに設計されていること。信者にはそれぞれ「木材を集めろ」とか「祈祷を行え」といった担当の割り当てができるのですが、建築などの急な人手が必要な仕事が発生するといい具合に中断して集まってきて作業してくれます。
逆に程よくサボって会話していることもあったりするのですが、それでキャラ同士が仲良くなったりするのも面白い部分。ただし信者たちが不満度を高めると、離反の動きが出てきたりしますが……まぁ捕らえて“再教育”してもいいし、生贄として殺っちゃってもいいよね。他の信者の忠誠度上がるし。
生贄もカニバリズムも強制断食もスカトロジーもアリアリの暗黒道
突然変なノリになっちゃいましたが、倫理的に振り切ろうと思えばかなり振り切れてしまうのが本作。黒いですよ、カワイイキャラで隠しきれてないぐらい。
信者は生贄にできるし、洗脳できるし、死亡した信者の肉を剥いで食料にすることもできるし、断食を制度化したり、特殊アイテムで睡眠を取らせずに労働させ続けたりもできます。
しかも教祖からの強制とは限らないというクレイジー具合。生贄志望者がいたり、ウンコ料理を所望する信者が出たりもする。断れますけど、断れば忠誠度下がりますからね。正直、この手の黒いノリが苦手な人はなかなか厳しいかと思います。
教団本拠地で行えるさまざまな強化方法
教団本拠地の中心となる施設では、さまざまな強化手段を利用できます。適切なスピードで自キャラと教団をアップグレードしていくには、こまめに立ち寄って実行していくのが大事です。序盤から重要な機能は以下の通り。
- 祭壇: 信者が祭壇で祈祷すると“祈念”が貯まり、レベルアップすると“神聖なる啓示”を得て新たな施設をアンロックできる
- 施設はスキルツリー方式でアンロックしていく。建設には本拠地内の資源生成施設やダンジョン探索で得られる素材が必要
- 講堂
- 説教: 講堂で1日1回実行可能。信者たちからパワーを受け取り、ポイントが貯まるとダンジョン探索時の能力を上げられる
- 武器の攻撃力や所持ライフや信力(MP)などのパラメーター強化や、ランダムに登場する武器や呪い(遠距離攻撃魔法)のバリエーション増加を行える
- 教条: ダンジョンなどで“戒律石のかけら”を集めて戒律石が完成すると、二者択一で教団の新たなルールを決められる
- 項目は多岐にわたり、新たな儀式をアンロックしたり、信者たちが新たな特性を得たりする
- たとえば食料に関する教条で“草食”を獲得すると、雑草で作った料理を食べさせた際のデメリットがなくなる
- 儀式: ダンジョン探索で敵を倒して得た“骨”を使い、さまざまな儀式を行って忠誠度などを高める
- 説教: 講堂で1日1回実行可能。信者たちからパワーを受け取り、ポイントが貯まるとダンジョン探索時の能力を上げられる
《アクション》タロット運に身を委ねながら、ランダムダンジョンの深奥を目指せ
ダンジョン探索部分のアクションゲームとしての作りは、比較的オーソドックスな2Dローグライトアクションといった感じ。操作は移動・近接攻撃・遠距離攻撃(呪い)・回避ぐらいなので、すぐに慣れるでしょう。
ダンジョンは小さな部屋で小分けに構成されていて、敵がいる場合はその部屋のすべての敵を倒すと次の部屋に進めるようになるという形式。そしてそのエリアの終点に着くと次にどのエリアにいくかのルート選択が可能になり、それを繰り返していくと最後にボスが待っています。
ちなみに途中で死んだら基本的にやり直しですが……司祭撃破で入手できるアイテムを使ってアンロックできる能力の中に、“選んだ信者の命を引き換えに復活する”というものがあります。
ポイントとなるのはやはりローグライトゲームとしてのランダム要素で、ダンジョンの構造もランダム生成だし、道中で手に入る強化(タロットカード)や上位武器などもランダムに登場。
装備やタロットの効果はその回の探索の間しか有効ではないので、「毒武器持ってるから攻撃速度上昇のタロットをつけよう」とか「装備は揃ってるけど残りライフが怪しいから回復マスに行こう」といったような、運をうまく乗りこなす選択ができるようになってくると楽しいです。
- タロットを引ける部屋や、武器や呪いをより強いものに交換できる部屋など、敵がいない部屋も存在する
- 特にタロットによる強化は生存のために欠かせないので、見落としがないようできるだけすべての部屋をチェックしたいところ
- 特定の素材をまとめて回収できるエリアや、新たな信者候補をゲットできるエリアなど、敵が出てこないエリアもある
- その代わり、タロットを引く機会や、本拠地での儀式に使う骨(敵を倒すと手に入る)の入手機会が減るのがデメリット
- 道中の背景オブジェクトを壊すと手に入る素材もある(見落としがち)
- 最終エリアの最奥にいるボスを倒すと一旦クリアー。さらに同じダンジョンを規定回数クリアーすると、そのダンジョンを支配する司祭と戦える
- 倒したボスは信者として加えられる。司祭は信者にできないが、代わりに特殊アイテムを入手できる
- 司祭を倒したダンジョンは敵が強化された上位ダンジョンに変貌し、さらにボスを倒してもどんどん奥に進めるようになる
- 新たなダンジョンは信者の数を増やすとアンロックできる
なおゲームの難度はイージー・ノーマル・ハード・エクストリームの4段階。開発が推奨するノーマル難度なら、各部屋のトラップにさえ気をつけていればそこまで難しくはなく、程よく遊びやすい手応えといったバランスです。
サイコロ勝負、釣りゲーなど、オマケ要素もいろいろ
というわけで2つの大きな要素を紹介してきましたが、それぞれ少しライト寄りな作りでありながらそれぞれの要素がしっかり噛み合っていて、またアート面やサウンドの質も高いです(レビュー版では微妙に一部クエストが完了されないバグがありましたが)。
そしてゲームを進めていくと本拠地とダンジョン以外にも行ける場所が増えていき、そこでタロットカードなどの買い物ができたり、オリジナルのサイコロ勝負や釣りなどのミニゲームを遊べたりもするので、密度はなかなか高いです。
またダンジョンやそういった土地で出会えるNPC連中も、奇妙でクレイジーながら妙な愛嬌のある連中ばかり。ものすごくピーキーな世界観のゲームですが、ノリが合う人にはオススメできます。
クリアーまでは公称で「15時間から20時間程度」。運営要素をどれだけ効率的にやれるどうかやダンジョンをどう踏破するかで当然時間は変わってきますので、あくまで目安として考えてください。