2022年7月24日、幕張メッセ(1~8ホール)で開催された“ワンダーフェスティバル2022[夏]”にて、『エルデンリング』(ELDEN RING)に登場する“魔女ラニ”のフィギュア(スタチュー)が展示された。展示を行ったのはTORCH TORCH。
展示物は制作中のフィギュアで、未着色の原型。価格も発売日も未定ながら、ブースの前にはつねに長蛇の列が形成。集まったファンは間近で造形美をチェックしたり撮影を楽しんでいた。
『ELDEN RING』(PS4)の購入はこちら (Amazon.co.jp)この『魔女ラニ スタチュー』、じつはワンフェスより数日早くアメリカで開催された“コミコン(サンディエゴ コミコン・インターナショナル2022。2022年7月21日~24日開催)”に展示されていた。しかしスタッフに話を伺うと、「両者は変更点が多く、コミコンの展示よりも今回ワンフェスに飾ったものの方が完成度が上がっている」とのこと。変更点はフィギュアのサイズと帽子のかぶり方、顔の造形、毛皮のマントなど、多岐にわたっている。
当然、どちらもフロム・ソフトウェアのチェックを受けてから展示されているが、ワンフェスの展示品はチェック時のフィードバックが反映されたバージョンとのこと。具体的には顔の表情を変更し、首の角度を少し傾けて、顎を引いたポーズになっていたり、毛皮のマントの両端をよりリアルに造形したそうだ。
造形にこだわったポイントや今後の予定など、詳しいお話をTORCH TORCHディレクターの原田隼氏に伺った。
2023年発売を目指して鋭意制作中
――朝から大勢のファンが訪れています。感想をお聞かせください。
原田隼氏(以下、原田) とてもうれしいですが、同時にプレッシャーも感じます。発表して以来、国内外のファンのみなさんから想像以上の反響をいただいているので多少は覚悟していましたが、『エルデンリング』の人気はすごいですね! 我々もファンのみなさんの期待に応えられるよう、ちゃんと自分でも納得ができるところまで作ろうと決めています。
――リリースの時期は未定ですが、今後の予定は?
原田 フロム・ソフトウェアさんの監修次第なのですが、スムーズに行けば2022年内に受注開始、2023年に発売できたらいいなと思っています。本格的な監修はこれからなので、もしかしたら今回展示したものと、ガラッと変わる可能性もゼロではありません。
――開発はいつから行っていますか?
原田 フィギュアの企画が始まったのは『エルデンリング』の発売前ですが、作り始めたのは僕と、原型制作を担当した造形作家の大畠雅人さんがゲームプレイを終えてからなんです。ゲームをクリアーして、“ラニ愛”がもっとも高まっている熱い状態の勢いで作っていただきました。
――コミコンの展示と、今回のワンフェスの展示でフィギュアの造形が違う理由は?
原田 顔の造形を、もっと人形らしくした方が「ラニらしくなる」と考えたからです。以前はもう少し生気がある感じだったんです。ふたつを並べて比較しないとわからないかもしれませんが、大畠さんには頑張っていただきました。
“魔女ラニ”の造形は、まずはコンセプトアートに準拠して制作
――制作で苦労されたことは?
原田 それはもう、たくさんあります(笑)。大畠さんとZoomで画面共有をしながら、ああでもないこうでもない……と、苦労しながら作りました。打ち合わせにZoomを活用するのは、いまだからこそできる造形方法ですね。
――造形業界でもリモート会議ですか!? 細かいのでカメラの映像で伝わるか心配です。
原田 デジタル造形なので、大畠さんの作業画面をそのまま共有してもらえます。僕の方から画面に直接描きこみもできるので便利ですよ。“魔女ラニ”の造形で難しいのは、ストーリートレーラーとインゲーム、そしてカットシーンとでそれぞれ違った印象や魅力があるところです。ですので、ファンのみなさんが持っているラニのイメージも、人それぞれだと思います。フィギュアが完成したら、「誰が見てもラニだね」と思ってもらえるようなものになればいいなと頑張っています。
――参考にした資料は?
原田 フィギュアを制作するにあたり、フロム・ソフトウェアさんからコンセプトアートをお借りできました。個人的に僕はその資料がとても魅力的に感じたので、まずはコンセプトアートに寄せる形で作りましたが、さらにここから変更になる可能性もあります。
――フィギュアの制作は、造形だけでなくサイズも重要だと思います。
原田 おっしゃる通りです。僕たちはこうやってワンフェスなどのイベントに展示して、直接お客さんたちのご意見を伺えるのがありがたいです。みなさんがどれくらいのサイズを想像していたのか、とても興味がありますからね。置きやすいサイズでありつつ、飾ったときに高い満足感を感じていただけるように気を付けて設計しています。
要注目ポイントは“二重に見える顔”と“毛皮のマント”
――注目してほしいポイントはどこですか?
原田 ひとつ目は“二重に見える顔”です。この顔の造形は、お面状のクリアパーツに一方向からブルーを混ぜたパールを吹いています。そして、ゲームでモヤのように見える“顔が重なり合っている部分”は、お面の内側にモヤの形のモールドを彫りました。こうすることで、みなさんがゲームの中で見たようなエフェクトを表現しています。
――工程を聞いているだけで苦労が伝わってきます。
原田 良し悪しではなくあくまで僕自身の好みなのですが、できれば印刷されたパーツを使いたくないんです。展示した状態が製品に反映されるかは未定ですが、今回はみなさんの反応を確かめるためにテストで作りました。
――毛皮の表現も見事だと思いました。
原田 そこがもっとも苦労した部分です。じつはこの毛皮、10個くらいのパーツを重ね合わせて表現しています。初めは1、2パーツで作ろうとしたのですが、それだと造形のおもしろさが出てこないんです。実作業を担当した大畠さんにはたいへんな苦労をかけてしまいましたが、現状の造形で落ち着きました。
――毛皮だけで10個のパーツ!? 作業がたいへんそうです!
原田 いろいろ試行錯誤したんです。それこそ、初期段階では本物の毛皮を使う検討もしました。ですが、毛皮を使うとラニの髪の毛と干渉してしまい、マントとの当たり方をうまくコントロールできなかった。雰囲気はとてもよかったのですが、プロダクトとして個体差が出てしまうのは好ましくないという理由で断念しました。
――最後にファンに向けてメッセージをお願いします。
原田 たくさんの反響をありがとうございます。今回は正面を向いた状態で展示させていただきましたが、椅子の裏側も見ていただきたいです。見ごたえがあるように、しっかり作ってあるんです。できれば360度どこからでも見られるように展示したかったですが、次は彩色状態でぐるりと見ていただける機会があれば、という感じでしょうか。
これだけ作り込んでしまいましたが、商品として発売するので、どこでどうやって工夫し高いクオリティでお求めやすいお値段にできるかは大きな課題です。完成までまだ時間はかかりますが、温かい目で見守ってくださるとうれしいです。