2022年4月2日に東京都・品川インターシティホールにて、声優・今井麻美さんのライブ“今井麻美Live 2022「Wonderful Journey」東京公演”が開催された。本記事では、その模様をお届けする。
開演時間になるとバンドメンバーに続いて、今井さんが登場。力強いメロディーと歌声が印象的な『ANTHEM of +A members』、昨年発売した自身初となる全曲新曲のフルアルバムの表題曲『Balancing Journey』の2曲を連続で披露し、今井さんにとって2022年最初のライブは幕を開けた。
MCに入り挨拶を終えた後は、初めて今井さんのライブに参加するマニピュレーターのぐっしーこと大串友紀さんとベースのわかちゃんことわかざえもんさんを紹介。大串友紀さんとは20年来の知り合いらしく、今井さんはゆきちゃんと呼んでいるそう。ちなみに本公演のバンドメンバーは以下の通り。
- ドラム:白川玄大さん(げんちゃん)※バンマス
- ヴァイオリン:Aiさん(あいちゃん)
- ギター:中村天佑さん(天ちゃん)
- キーボード:鈴木栄奈さん(えなっち)
- ベース:わかざえもんさん(わかちゃん)
- マニピュレーター:大串友紀さん(ぐっしー)
ライブパートに戻ると、今井さんの愛猫“グレミー”をテーマにした楽曲『かまってよファム・ファタール』を、歌詞に登場するグレミーの動きを再現しながら、キュートに歌い上げる。続いて、インタビューで「ライブで歌うことをめちゃくちゃ想像しながら収録しました」と語っていた『ほらね』では、観客もペンライトや手を掲げるなど、会場全体が一体となって盛り上がった。
本公演では、『Balancing Journey』に収録されている全12曲を披露することが事前にアナウンスされていたが、すでに3曲を歌唱したということで、「このままだとすぐ終わって、みんなはべつのライブの動画を見始めるんだろうね」と、同日行われていた某ライブに触れ、観客を笑わせつつ、「そんないろいろなものがある中で、この場所に来てくれて本当にうれしいです」と感謝の気持ちを伝えた。
また、本公演の会場が東京都の品川で比較的アクセスしやすいという話題から、これまでに栃木県の大谷資料館、沖縄県のガンガラーの谷など、ユニークな場所ではあるものの会場にたどり着くまでがたいへんだったライブを振り返るひと幕も。
「どのように私が歌うのか楽しんでいただければと思っております」と語った後はアレンジコーナーへ。まずは2020年発売の6thアルバムの表題曲『Gene of the earth』。オリジナル版は壮大なメロディーが印象的な同曲だが、幻想的な雰囲気が増したアレンジになっており、今井さんはしっとりと歌い上げた。
アレンジコーナーの2曲目は『シャングリラ』のジャズバージョン。同曲は、これまでCDやライブなどでも数多くのアレンジが行われてきたが、新たな魅力が溢れる仕上がりで、『Balancing Journey』発売時のインタビューで語っていた、「感性だけやってみるのではなく、こうしたいから、こう歌うんだということを明確にしたい」という目標を体現するようなパフォーマンスとなっていた。その流れから、最新アルバム収録のジャズ曲『新しい時計 ~Tick-Tack~』を大人の魅力全開で披露し、観客を魅了した。
MCでは『新しい時計 ~Tick-Tack~』を初めて聞いた際、難しくて絶望したことを明かしつつ、レコーディングを進めるうちに徐々に理解が深まったというエピソードを披露。また、『シャングリラ』のジャズアレンジについては、「ふだん歌い慣れた曲をあれだけ違うアレンジで歌うのは新鮮でした」とコメントしていた。なお、『シャングリラ』のアレンジはピアノの鈴木栄奈さんが行ったとのこと。
続いて、Twitterの今井麻美音楽STAFFアカウント(@imaiasami_info)で事前に募集していた楽曲リクエストの話題へ。今井さんの楽曲は100曲以上存在するが、集計してみたところ1票差が何十曲も並ぶほど接戦だったそう。そんな状況の中、もっともリクエストが多く披露されることになったのは『AQUAMARINE』。歌唱前に「この曲が選ばれたのは、いろいろなところで、思うところがあって……というような話をしていたからなのかな」と語っていた今井さんは、その歌詞や曲に込められた想いを歌に乗せて観客に届けた。ちなみに同曲は間奏中のセリフが特徴的だが、セリフの誕生秘話などは以下の記事で語られているので、知らないという人は、ぜひこちらもチェックしてほしい。
『AQUAMARINE』を歌い終えたところで、衣装チェンジのため、バンドメンバーが退場。その間、今井さんはライブの前日がエイプリルフールだったことに触れ、もし4月1日にライブを行っていた場合は、ステージで嘘を言ってそのままネタばらしせずに帰ってしまう可能性があったため、4月2日の開催でよかったとコメント。ちなみに4月1日は、ライブの準備のため休みにしてもらっていたそうだが、スマホゲームのエイプリルフールイベントを遊ぶのがたいへんだったという、あるあるエピソードも披露された。
バンドメンバーの着替えが終わると、順番に呼び込みながら改めてメンバーを紹介。その際、今井さんはわかざえもんさんがベースを始めた理由が「好きなベーシストに憧れて」というものだったことから、そのベーシストの名前を叫ばそうとしたり(※わかざえもんさんが恥ずかしがったため、あとでこっそり聞くことになった)、白川さんをまだ呼び込んでいないにも関わらず「以上のメンバーでお届けます」といじってみたり、恒例となっているバンドメンバーとのアットホームなやり取りも行われた。
その後、今井さんが衣装チェンジのためステージを降りると、バンドメンバーのインストを経て、朗読パートに突入。ふたりの男女の恋模様を四季の移り変わりとともに描いた、森由里子さん描き下ろしによる4篇の詩物語“四季物語”の朗読と3曲の楽曲が披露された(春の言葉(朗読)→『Rainbow Light』→夏の言葉(朗読)→『星月夜』→秋の言葉(朗読)→『永遠の歌』→冬の言葉(朗読)という構成)。なお、こちらのパートは通常ハンドマイクではなく、ヘッドマイクで行われ、今井さんはいつも以上に全身を使った大きな身振り手振りで楽曲の世界を表現していた。
朗読パートが終わり、「いかがでしたか?」と客席に問いかけると、大きな拍手が巻き起こり、「私もすごく楽しかった」と満面の笑みを見せた今井さん。MCでは、離れ離れになってしまったふたりが再会するという“四季物語”のストーリーについて、リハーサルで初めて読んだときに勘違いをしてしまったことを告白。というのも、春でいい感じの雰囲気だったふたりが、夏で離れ離れになってしまい、秋では少し不穏な空気が漂っているところに彼からのメールが届き、「私(彼女)は言葉を失った」という終わりかただったため、彼が亡くなってしまうものだと思い込んでしまったそう。しかし、冬に再会するという、予想に反してハッピーエンドな展開だったため、リハーサルでは思わず笑いが止まらなくなったとのこと。ちなみに公演後に公開された森由里子さんのブログによると「結末がわからないように第3話は意味ありげにした」と語られているので、今井さんの反応はある意味正しかったのかもしれない。
続いては、新しい試みとなるカバー&セルフカバーのコーナーへ。ここでは、今井さんが『グランブルーファンタジー』で演じるヴィーラ・リーリエのキャラクターソング『アナザースカイ』、牧瀬紅莉栖を演じる『シュタインズ・ゲート』のアニメオープニングテーマ『Hacking to the Gate』(オリジナルは、いとうかなこさん)、花園雪として出演している『ツキウタ。』の舞台“月花神楽”の主題歌『月花神楽』を立て続けに披露。『アナザースカイ』と『Hacking to the Gate』については、これまでにも何度か披露されたことがあったが、『月花神楽』はアニメイトガールズフェスティバル2019(AGF2019)でのステージイベント以来、2回目というレアな選曲となっており、今井さんは扇子を使って舞い踊りながら歌唱していた。
その後、2010年発売の4thシングルに収録された『ほんの少しの幸せ』の作曲以降、数多くの楽曲を提供してきた、桐岡麻季さんが今井さんの曲としては初めて作詞を担当した『タンジェリンの海』をパフォーマンス。今井さんのやさしい歌声とともに、歌詞に合わせて変化する色鮮やかなライトがステージを彩った。そして、今井さんが「ソロ活動を象徴する楽曲」と語る『風の音』では、真骨頂とも言える伸びやかな歌声を会場に響かせ、衣装チェンジのためステージを後に。
バンドメンバーの演奏に続いて、ライブTシャツに着替えた今井さんが登場。最新アルバムの中でもとくに激しい『Heart Fragment』を熱唱した後、MCを挟みつつ、『ハレオンナ』、『Believe in Sky』の2曲をラストスパートとして畳み掛ける。
MCでは、本公演の3週間ほど前にギックリ腰になってしまい、ライブを無事に終えられるか心配だったものの、いざ本番を迎えてみところ喉が絶好調だったことを明かしていた。あまりにも調子がよかったため、『永遠の歌』でハッスルし過ぎてヘッドマイクに雑音が入ってしまったことを反省しつつも、今井さんの2022年の目標が“自己肯定感を高める”であることから、「みんなはそれも(雑音)効果音だと思ったはず」とポジティブシンキング。その流れで「私のことが大好きになる1年にしていきたいと思っておりますし、みんなのことが大好きです。そして、みんなもきっと私のことが好きになってくれるんじゃないかと思います」と語り、最後の曲として『私が好きになる魔法』を歌い上げたところで、“今井麻美Live 2022「Wonderful Journey」東京公演”は幕を閉じた。
今回のライブは、今井さん自身もMCで語っていたが、今井さんのアーティスト活動の特徴でもある楽曲の多彩さを感じられるライブになっていたと思う。『Balancing Journey』に収録された12曲はもちろんのこと、アレンジで披露された『Gene of the earth』、『シャングリラ』など、さまざまな音楽を堪能することができた。個人的に「『シャングリラ』にはまだこんな表現も残されていたのか」と驚かされたし、リポート中にも触れた通り、それは感性だけではなく、こういう風に歌うということを明確にしたいと語っていた今井さんの目標が体現されているようにも感じた。
また、朗読パートでは、声優であり歌手であるという強みが遺憾なく発揮され、ヘッドマイクを使った全身で楽曲を表現するパフォーマンスも圧巻のひと言。さらに、これまで今井さんのライブではあまり行われていなかったカバー&セルフカバーコーナーは、レアな楽曲が聞けただけではなく、声優としての今井さんのことはよく知っているけれど、歌手活動についてはまだあまり詳しくないというファンにとってもうれしいコーナーになっていたのではないだろうか。
今回のライブでさらにパワーアップした歌声を聞かせてくれた今井さんが、本公演を経て、今後どんなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみにしたい。
“今井麻美Live 2022「Wonderful Journey」東京公演”セットリスト
- 01.ANTHEM of +A members
- 02.Balancing Journey
- 03.かまってよファム・ファタール
- 04.ほらね
- 05.Gene of the earth(アレンジ)
- 06.シャングリラ(アレンジ)
- 07.新しい時計 ~Tick-Tack~
- 08.AQUAMARINE
- インスト
- 春の言葉(朗読)
- 09.Rainbow Light
- 夏の言葉(朗読)
- 10.星月夜
- 秋の言葉(朗読)
- 11.永遠の歌
- 冬の言葉(朗読)
- 12.アナザースカイ
- 13.Hacking to the Gate
- 14.月花神楽
- 15.タンジェリンの海
- 16.風の音
- 17.Heart Fragment
- 18.ハレオンナ
- 19.Believe in Sky
- 20.私が好きになる魔法