幻想的な地下空間で歌声を響かせた“今井麻美アコースティックライブ2013”

声優、歌手として活躍する今井麻美さんによるアコースティックライブが、2013年11月24日(日)・栃木県の大谷資料館にて開催された。

●極寒の地下空間で笑顔で作り上げたアコースティックライブ

 声優、歌手として活躍する今井麻美さんによるアコースティックライブが、2013年11月24日(日)・栃木県の大谷資料館にて開催された。地下30メートルにある大谷石地下採掘場跡には、2万平方メートルに及ぶ巨大地下空間が広がっており、大谷資料館ではその一角を使用してコンサートやイベントなどを開催。今井さんはこの地下空間をステージにライブを行ったのだ。

 気温7度という寒さの中で行われた今回のアコースティックライブ。ステージ上にすべて女性で構成されたバンドメンバーが登場すると、静かなメロディーを奏で始める。そしてゆっくりと姿を現した今井さんは、『満天星~金木犀の咲く頃~』を披露。会場にその歌声をゆったりと響かせると、続いて『Hasta La Vista』を歌唱。その情熱的なパフォーマンスに観客からは自然と手拍子が沸き起こり、今井さんも笑顔を浮かべた。

 「この景色、みんな順番にここ(ステージ上)から見せて上げたいぐらいですよ~♪」と地下採掘場跡という、ふだんあまり訪れることのないであろう空間に足を運んでくれた非常に多くのファンに感謝を伝えると、「想像していたもののスケール×10倍だなと感じました」と語った今井さん。「みんな凍えていない? 大丈夫?」と会場に詰めかけてくれたファンを気遣いつつも、女性ばかりで構成されたバンドメンバーに「見てー、女子ばっかり~♪」とウキウキ気分。そんなテンションのなかで歌い上げるのは、アコースティックアレンジされた『Day by Day』だ。途中、歌詞の一部である「Lovin' you」をコールするようにファンを促し、「照れるなよ~(笑)」と語りかけたり、歌詞の最後の「forever」をファンと何度もコールすると「みんなも声を出したらあったかくなってきたでしょー?」と笑顔を見せる。同曲を歌い終えた今井さんは「私もいまどういうノリが正しいのかわからなくなってる(苦笑)」と、地下空間でのライブ、気温7度という寒さの中でのライブをどうやって演出し、どうファンに楽しんでもらうか、手探り状態であるような苦笑を浮かべる。

 続いて、「こんな恋が10代の頃にしたかった」と曲紹介の振りをすると、ファンから「まだ間に合う!」という声が。これに「まだ間に合うってどういうことよ(笑)。でも、歌のなかでは表現できます」と語り、『Strawberry ~甘く切ない涙~』を披露。曲の世界の女の子を演じるように、やわらかい笑顔を浮かべながら同曲を歌うと、最後は照れたように顔を覆うシーンも。『Precious Sounds ~風が残していった~』では、強い想いを歌声に乗せていくと、最後はマイクを通さずにコーラスを歌い上げ、会場に生の歌声を響かせた。

 マイクなしで歌った今井さんは、MCで「ちょっとマイクなしでしゃべってみようかな」とコメントし、口パクでトーク。これに会場のファンから「いやいやいやいや!」とツッコミを受けつつ、「さっきの歌声は皆さんの心に直接届いたのかな?(笑)」とファンとのやりとりに笑顔を浮かべる。そして栃木でのライブは初ということで「ミンゴスが栃木に来たよー!」と笑顔で手を振るとファンも大歓声を上げた。また、栃木と言えば餃子ということで、昼食に餃子を食べたという今井さんは、宇都宮駅付近にある“来らっせ本店”にてAセットを食べたというトークで盛り上がり、「大谷資料館に圧倒されていたけど、だいぶ自分のペースをつかめてきた気がする」とトークで調子を取り戻してきた様子。

 つぎに披露するのは、「こんなに明確にいまの私を表現している曲はないと言える曲」という『この雲の果て』。キーボード担当の“たまちゃん”こと花岡環さんの演奏とともに、ふたりきりで歌う同曲は、今井さんの感情と想いとが歌声に乗り、会場を突き抜けるような力強さを帯び、地下採掘場跡に響き渡る。歌い終えた今井さんは、作詞をした当時を振り返り、歌詞はすんなり出て来たのだけれど、出来上がってから葛藤したことを語る。歌詞にいろんな意味を込めたという今井さんは、「“たとえ散ることがあっても”って書いたら私が辞めちゃうんじゃないかって思う人もいるんじゃないかと思って(笑)」とその葛藤の理由を語る。そして「いろんな自分に当てはめられるんじゃないかと思うので、歌詞を見ながら聴いてほしい」とアピールした。

 そして、ステージ上のメンバーに「ちょっとお休みしてて。私が歌う」と語った今井さんは、マイクがあったほうがいいか、ないほうがいいかをプロデューサーの濱田智之氏に何度も確認。「わー! マイクなしかー(苦笑)」と言いつつ、水をひと口。するとファンから「お水おいしいー?」という声優さんのライブなどでよく聞かれる声が飛び「私、それ(そのやりとり)嫌い。……嫌いってすごいよね(笑)。好きを語って生きていきたいな、私は。じゃあ私の好きなもの……、歌かな。それでは歌います」と微笑みを浮かべたかと思うと、両手で顔を覆い隠す。その両手をすっと下ろすと今度は真剣な表情を会場に向け、『花の咲く場所』をアカペラで、マイクを通さずに歌い始める今井さん。自然のリバーブにより、今井さんの歌声だけが木霊する地下空間で、今井さんは時折笑みを浮かべながら同曲の1番を歌い上げると2番からはバンドメンバーの演奏も加わり、今度はマイクを通して同曲を歌い続ける。静かな空間に歌声を響かせた1番から雰囲気をガラリと変え、バンドメンバーの演奏とともに力強い歌声を響かせると、幻想的な世界が地下空間に広がり、会場を圧倒する。

 「すごく不思議な光景でした。この空間がすごく歴史を刻んでいる場所だから、こういう歌はぐいぐい来る気がしますよね。とくに『コープス』の歌だから。大丈夫かな? 帰るころにひとり減り……ふたり減り……みたいなことのないように。運命共同体ですからね、今日は(笑)」と、同曲がオープニング曲として起用されているゲーム『コープスパーティー』に絡めて感想を述べた今井さん。しかし、ここでハプニングが発生。本来は、弦楽四重奏によるインストゥルメンタルへと行くところで、今井さんが『海月~Jellyfish~』と紹介してしまう痛恨のミス! 恥ずかしさのあまりスカートの裾をぎゅっとにぎりながら「恥ずかしくてもう歌えない! もう、今日のことは忘れたい!!」と駄々をこねてしまうシーンもあった。少しだけ気を取り直した今井さんは「恥ずかしいから、インストを聴いてね」と本来のセットリストへと戻し、一旦ステージを後にする。ステージ上では弦楽四重奏によるあたたかなメロディーが奏でられ、会場のファンの心に火を灯す。続いて、たまちゃんのキーボードのみによる『シャングリラ』のインストゥルメンタルが地下空間に響き渡った。

 インストゥルメンタルが終わると、再び今井さんが登場し、『海月~Jellyfish~』を披露。青い照明に照らされた空間で、キーボードとカルテットという構成に今井さんが歌声を乗せて幻想的な世界観を作り上げていく。そして、徐々に気温が下がっていくなか、「寒いからみんな何かしようか?」と手を閉じたり開いたりを促すと、テンションが上がり始めた今井さんは、ワッショイワッショイと全力で体を動かし始める。すると、ファンもいっしょに「ワッショイ、ワッショイ♪」と合いの手を入れて盛り上がり暖をとるという、過酷な環境下でもお互いに楽しむことを忘れない姿勢を見せた。

 続いては、キーボードのたまちゃんとふたりで奏でる『遠雷』。これまでにライブで何度も披露してきた構成での楽曲とあって、息ピッタリで奏でられるメロディーに会場のファンもうっとりと聴き入る。

 そしてステージではバンドメンバーを紹介。キーボードを担当する“たまちゃん”(花岡環さん)、ベースを担当する最年少の“あずさ”(長谷川 梓さん)、ギターを担当する“ゆえちゃん”(宮城由泳さん)、ヴィオラを担当する“yuan”ちゃん(清水 歩さん)、チェロを担当する“かおりちゃん”(片岡香織さん)、ヴァイオリンを担当する“はるちゃん”(池田晴子さん)を紹介。もうひとり“emyu:”さんが残っていたところ「というわけでこのメンバーで……」と今井さんが語ると「ホントに信じられない! ホントに信じられない! もう嫌!(笑)」とふたりで漫才をくり広げファンの笑いを誘うシーンも。そんな、信頼関係があるからこそできるやりとりのあと、ヴァイオリンを担当するemyu:さんを含めた、7人の演奏家を紹介すると、アコースティックアレンジされた『Dear Darling』へ。同曲では、ファンが「LOVEラブリーミンゴス! ○○(地名が入る)エンジェル プリティーミンゴス!」というコールを入れる箇所があるのだが、これをどうするかを即興で会議。ファンからの意見により、“餃子エンジェル”を入れて行うことになった『Dear Darling』はファンのコールもバッチリキマり、いつもよりも年齢の高い、大人っぽさを含んだ歌声で披露されていく。そして、最後には今井さんが「さぁ、隣の人のほっぺに……!」という無茶振りをすると、会場からは「ええええええええええええええええええええええ」という声が上がるひと幕も。そして、続けざまに今井さんが作詞・作曲を手掛けた『いっしょ。』へ。「歌える人は歌おうか!」という提案に、ファンも大合唱。自然とわき上がるハンドクラップに笑顔がこぼれる今井さん。最後は、マイクを通すことなく、ファンといっしょに同曲を歌い上げた。

 “いまだから明かす話”として今井さんは『シャングリラ』のPVを大谷資料館で撮影しようという話があったことを明らかにする。当時は、都合が悪く残念ながら撮影を行うことはできなかったのだが、「改めてここに来ることができたのは、何かしら縁があるんだろうなとすごくすごく思いました」と、その不思議な縁に想いを馳せた。続く『クレッシェンド』では情感を込めて歌を紡いだ今井さん。歌い終えると「歌っているときは震えないのに、歌い終わった途端に震え始めるなー」と語る。「また、こういう不思議なところでライブしたいですよね」とコメント。そしてポツリと「濱田さん………………寒いッス」と濱田プロデューサーに訴えかけると「あはははははははははははははは、言っちゃった(笑)。あはははははははははは」とあまりのぶっちゃけっぷりに自分自身も笑いを堪えきれず、爆笑し続ける今井さん。そして「私、このライブ絶対一生忘れない!」と宣言。「これからもまたいろいろな経験を積んで、新しい表現力を身につけて、歌を歌っていきたいと思いますので、これからもこの寒さに懲りずに(笑)、足を運んでくれたらうれしいです!」と語ると、最後は笑顔で『ガーベラ~今年の花』を披露。咲いていく花のように伸びやかに、全身で同曲を歌い上げると会場は温かい拍手に包まれる。「名残惜しいけど、またね」という今井さんの言葉に「ミンゴース!」という声が響く中、今井さんとバンドメンバーはステージを降りる。

 誰もいなくなったステージに向けて、会場ではアンコールならぬ、全力のミンゴスコールが沸き起こり地下の採掘場跡に「ミーンゴス!」という声が響き渡ると、その声に応えて今井さんが再登場。キーボードのたまちゃんの演奏とともに『想いの羽根~Angelic White~』をしっとりと歌う。地下空間に響き渡る自然のリバーブを楽しむように、マイクをはずして歌うシーンもあり、今井さん自身、この不思議な空間でのライブを楽しんでいる様子だった。バンドメンバーが勢揃いとなったところで、今回のライブの衣装を今井さんがすべて用意したことを明かすも、アンコールだったこともあり全員が上にライブTシャツを着ている状態に。なお、ライブTシャツを着ていない写真は、今井さんの5pb.オフィシャルサイトにて公開されているので、ぜひチェックしてほしい。

 「自然の中で歌うことを想定して作った曲ですが、この環境で歌うとは思わなかったです(笑)。またひとつ、新たな色が加わりました」と語った今井さんは、今回のライブを締めくくる曲として『COLOR SANCTUARY』を選択。寒さを吹き飛ばすように同曲を熱唱し歌声を響かせると、もう一度、これまでにない、地下空間という会場でのライブに想いを馳せ、会場を見渡す。最後は満面の笑みを浮かべた今井さんが曲の終わりに、「かーらーのー?」と煽り、完全なアドリブでファンとともにアカペラで同曲を大合唱。今井さんの1stライブの際に、ライブ終演後自然に発生した『COLOR SANCTUARY』の大合唱のように、温かい歌声が地下空間に響き渡ると、今井さんも幸せそうな表情を浮かべライブの幕を閉じた。

 「今日はホントに皆さん来てくれてありがとうございました! 自分が想像していた以上の空間だったから、最初は会場の雰囲気に飲まれちゃったかなと思うところもあったけど、でも、この経験をつぎのツアーに活かしていきたいので、どうかみんなつぎのツアーに遊びに来てね! 今日はホントにありがとうございましたー!!!」とマイクなしでファンに語りかけた今井さん。バンドメンバー全員で手をつなぎ、「ありがとうございましたーーーーー」と再びファンに伝える。そして「バンドメンバーに大きな拍手をーー」、「スタッフさんたちにも大きな拍手をーーー」、「大谷資料館の皆さんにも大きな拍手をーーーー」、「そして、今日来てくれたみんなに大きな拍手をあげます!」、「つぎはあったかい季節に来るぞーーーーーーーー!」と笑い、ダッシュで地下空間を駆け抜けステージを後にした。

 2012年には沖縄にある“ガンガラーの谷 サキタリ洞遺跡”でのアコースティックライブ、そして2013年は栃木の“大谷資料館”でのアコースティックライブと、さまざまな地域、空間でのライブを続けてきた今井さん。場所の特殊性だけではなく、その環境ならではの音響や照明で演出される空間は、通常のライブにはない感動が得られた。ライブ中に「またこういう不思議な場所でライブをしたい」と今井さんも語っていたので、今後どのような空間でライブが行われるのか、その動向にも注目だ。

▲開演前に行われた公開リハーサルの様子を特別に公開。

■今井麻美アコースティックライブ in 栃木・大谷資料館
セットリスト
01. 満天星~金木犀の咲く頃~
02. Hasta La Vista
03. Day by Day
04. Strawberry ~甘く切ない涙~
05. Precious Sounds ~風が残していった~
06. この雲の果て -Piano Arrange ver.-
07. 花の咲く場所
08. インストゥルメンタル
09. 海月~Jellyfish~
10. 遠雷
11. Dear Darling
12. いっしょ。
13. クレッシェンド
14. ガーベラ~今年の花
【アンコール】
En01. 想いの羽根~Angelic White~
En02. COLOR SANCTUARY