Beyond The Music(販売:MAGES.)より、声優、歌手として活躍する今井麻美さんのオリジナルフルアルバム『Balancing Journey』が、2021年12月22日に発売される。同アルバムの収録楽曲はすべて新曲だ。こういったフルアルバムは今井さんとしては初めて。
そこで本記事では、完成したアルバムの印象や収録曲全12曲について、たっぷり語っていただいたインタビューの模様をお届けする。
※今井さんによる全曲紹介記事も公開中。
なお、『Balancing Journey』のデジタルブックレット(Blu-ray付き盤 /DVD付き盤 / 通常盤)がNFTで発売されることが決定。詳細は記事の最後に掲載しているので要チェック!
また、12月21日配信の『今井麻美のニコニコSSG』のチャンネル会員向けオマケ放送では、『Balancing Journey』の全曲紹介企画を実施予定なので、こちらもお楽しみに!
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5月16日生まれ。山口県出身。『アイドルマスター』シリーズ(如月千早役)を始め、『シュタインズ・ゲート』シリーズ(牧瀬紅莉栖役)、『グランブルーファンタジー』(ヴィーラ・リーリエ/フライデー役)など多数の作品に出演。2008年に歌手活動をスタートし、これまでにシングル21枚、ミニアルバム、コンプリートアルバム、アコースティックアルバムを含むアルバム9枚をリリース。
――『Balancing Journey』は収録される全12曲すべてが新曲ということで、最初に全曲新曲のフルアルバムを制作すると聞いたときの率直なお気持ちを聞かせてください。また、制作はいつごろ開始したのでしょうか?
今井最初にレコーディングしたのは『タンジェリンの海』で、当初は5月に開催予定だったバースデーライブで初披露の予定でした。しかし、日本政府からの緊急事態宣言発令の方針を受けて、ライブが8月に延期になってしまい発表の予定は少し変わったりしたのですが、『タンジェリンの海』は4月中旬に収録していました。
ちょうど1年ほど前に3ヵ月連続でライブを行ったのですが、それをすべて終えたくらいのタイミングに「アルバムを作ろうと思う」というお話を聞いた記憶があります。そのときはまだ全12曲が新曲ということは聞いていなくて、ファンクラブで作った楽曲などもあったので、これまでのように新曲数曲とそれらの曲を収録するのかなと漠然と思っていました。今回はその(ファンクラブで作った)曲を温存して、すべて新曲でいくと聞いたときは正直ピンときませんでした。
※2021年8月に開催されたバースデーライブのリポートはこちら
――現実のこととは捉えられないというか、少し夢のような感覚ですか?
今井そうですね。しかもそのうちの4曲は毎月1曲ずつ先行配信をすると聞いていて、新曲を月に1回レコーディングするという感じだったので、「12曲新曲を作るぞ!」という感覚ではなかったんです。すべて新曲のフルアルバムを作るというのはこういうことなのかと痛感したのは7曲目を録り終ったときで、「あと何曲あるの?」とプロデューサーに聞いたら、「やっと半分が終わったところだよ」と言われてゾクッとしました(笑)。
――録っても録っても終わらないと。やっぱり過去のアルバム制作とはまったく違いましたか?
今井違いましたね。とくに後半は週に1曲くらいのペースでレコーディングをしていましたし、週に2曲収録したこともありました。今回は楽曲のジャンルも多岐にわたっています。「この楽曲はどういう風にアプローチしようか」ということを、頭をフル回転させて取り掛かっていたので、ハラハラでした。1回でもレコーディングがうまくいかなかったり、何かでスケジュールが飛んでしまったりしたら、発売延期になるのではないかという恐怖みたいなものもありました。
本当はもう少し余裕があるスケジュールだったのですが、私が夏にちょっとお休みをいただいたので、その分、自分で自分の首を絞める結果になってしまいました(苦笑)。ただ、それも物作りをしている感があって、すごくおもしろかったです。やっぱり間が空くと、どうしてもアルバムを作っているという感覚が薄れがちになってしまいますが、この数ヵ月間はつねにアルバムのことを考えていて、そういった経験が人生で初めてだったことも相まって、楽しかったです。
――アーティストとして13年活動されていますが、まだ初めて体験することがあるというのはすごいですね。
今井私も「まだやってないことがあるんだ」と驚きました。
――では、ここからは楽曲について伺えればと。まず、表題曲『Balancing Journey』の作詞は今井さんが担当されていますが、曲が出来上がる前からコンセプトみたいなものがあったのか、それとも上がってきた曲を聞いて方向性を決めたのか、どちらでしょうか?
今井今回は作曲と編曲をしてくださったJohnny(Johnny.kさん)に「いちばん得意な分野で好きに曲を作ってください」とお願いしました。ただ、最初はこの曲が表題曲になる予定ではなかったのですが、仕上がっていく中でスタッフさんと話し合いをさせていただいて、「これでいこう!」と抜擢されて、その結果、私が作詞をすることになりました。
――そうだったのですね。
今井曲を聴いた瞬間に「あー、いい曲!」と思いました。そんな曲からインスピレーションを受けて、「テーマは何にしよう?」と考えたときに、最初はこれまでの人生を総括した歌になったらいいなと思ったんです。でも、ちょうどこの曲の歌詞を書くタイミングで、友人とダイエットにすごくハマっていたので、「そうだ、ダイエットの歌詞を書こう!」とひらめきました。ダイエットは3人の友人と毎日、朝昼晩に自分が作ったものや食べたものの写真を送って、意識を高め合いながら2ヵ月弱くらいやっていたのですが、その間に、「今度、歌詞を書くんだけど、ダイエットをテーマに書こうと思う」と報告したところ「どんな歌詞になるの?」と話したりして盛り上がりました。やっぱりダイエットというと食事制限をしたり、苦しいというイメージがあると思うんですよ。
――確かに、「たいへんそう」、「辛そう」というイメージが強い気がします。
今井そうですよね。でも、今回私が取り組んだダイエットが、とにかくしっかりバランスよく食べるということを主眼に置いた方法で、食事制限をしなくても痩せられるんです。それで、バランスをよく食事を取ることは本当に大事なんだということを噛み締めまくっているタイミングで作詞をすることになったので、どうしても“バランス”という言葉をタイトルに入れたかったんです(笑)。
――なるほど(笑)。
今井このダイエットで、「こんなに食べても、どんどん体の調子がよくなって痩せていくんだ」ということを体感して、新しい発見だと思ったのですが、よく考えてみると、子どものころに家庭科の授業で「バランスよく3食しっかり食べなさい」と教えてもらっていたはずなんですよね。自分はそのことをすっかり忘れて、ダイエット=食事制限みたいに思い込んでしまっていたんだなと。おそらく、いまダイエットで苦しんでいる方もきっといらっしゃると思います。
ただ、ダイエットという概念を“健康的になる”という言葉として変換すると、じつはそんなに苦しくなくできるということを身をもって体験して、その想いを歌詞に込めたので、すごくポジティブになれる曲だと自分でも思っています。英語の部分はすごく難しかったのですが、ひと通り書き終わった後に私のライブでも演奏してくださっている、ドラマーのまこっちゃん(大津惇さん)が帰国子女なので、添削していただきました。今回はこれまで私が作詞した曲の中でもとくに英語が多くてハラハラしましたが、いい仕上がりになって満足しています。
――先ほどポジティブになれる曲とお話しされていましたが、「間違いだらけの過去」など後ろ向きな言葉があるのは、ダイエットが裏テーマだったからなんですね。正直、裏テーマを聞くまで少し引っかかっていました。
今井やっぱりそうですよね。これは完全に糖質制限ダイエットのことを指しています(笑)。私はいま100グラムのお米を朝昼晩食べるようにしているのですが、それでも太らなくて。本当に不思議なんですけど。
――続いて、『かまってよファム・ファタール』は、今井さんの愛猫“グレミー”をテーマにした曲ですね。
今井この曲は構想を含めると1年以上掛かっています。じつは中山豪次郎先生に昨年発売したアルバムの収録曲である『宇宙の申し子』を依頼したときに本当はこういう雰囲気の曲を書きたかったみたいで。ただ、前回はバラードと指定させていただいていて、「いつか明るい雰囲気の曲も書きたい」ということで、私と飼い猫のグーちゃんとのエピソードを箇条書きで送っていたところ、この曲が完成しました。
うちの子はよくおトイレを失敗して私にお風呂で洗われるのですが、それがすごく嫌いなくせに私がお風呂に入っていると、「ひとりでずるい!」と言わんばかりに入って来たりして。そういうエピソードを本当に素敵で芸術的に仕上げてくださいました。猫は気まぐれなので、何を考えているのかわからないときもありますが、この曲の歌詞を見ると「この子はこういうことを考えているのかもしれない」と思えて、完全にグレミーの取り扱い説明書みたいな曲になりました(笑)。
――歌いかたもふだんとは少し違いますよね。いい意味でキャラクターソングっぽいというか、今井さんがグレミーとして歌っているような感じがしました。
今井やっぱりそこは意識しました。歌詞の内容が完全にグレミーの目線なので、本当にキャラソンになってもおかしくないだろうなと。声のトーンは私なのですが、感情の込めかたは完全にグレミーというキャラを演じているという気持ちで歌いました。
――先日のバースデーライブでは、すごいことがあったので早く話したいということを語っていましたが。
今井じつは、この曲のレコーディングをするときに、とてつもなく高いマイクが2本壊れました……(苦笑)。
――えー!?
今井だから、じつはレコーディングの日を改めています。1回目のレコーディングのときに、エンジニアさんの私物の希少価値のある真空管のマイクを使わせていただくことになったのですが、録り始める直前に「ボン、ボンボン」と音を立てていきなり壊れてしまったんです。
今井さんの音楽活動のプロデューサーの濱田智之さん(以下、濱田) そこまでだったら、業界的には珍しいことではないのですが、問題はその後なんです。
今井エンジニアさんのマイクが壊れてしまったので、スタジオにあったビンテージではない真空管のマイクに取り換えたのですが、それもいきなり壊れてしまって、「何かおかしい。今日はやめよう」と、1回目は中華を食べて帰りました。ただ、この曲もリズムのノリだったり、感情の乗せかただったりが、めちゃくちゃ難しい楽曲なのですが、日を改めて私の中で楽曲をより馴染ませる時間が生まれたことで、1回目のときにはできなかっただろうということが、2回目はできるようになっていたので、これもまた運命なのかなと思いました。
――不運なこともありましたが、結果的にはいい影響もあったのですね。続いての『新しい時計 ~Tick-Tack~』を作曲された白戸佑輔さんの楽曲は、作品絡みで歌われていますが、個人名義では初めてですね。
今井じつは初期のころから私のアーティスト活動に参加してくださっている牧戸太郎さんが白戸佑輔さんと昔からすごく仲がよくて、ずいぶん前から「いつかいっしょにやりましょう」という話をずっとしていて。ただ、なかなかタイミングなどが合わず、ようやく実現したのが今回のアルバムに収録されている『Heart Fragment』でした。そのレコーディングの際に、白戸さんにもう1曲お願いしたいということと、「つぎの楽曲は白戸さんがいちばん作りたいものを書いてください」とお伝えしたところ、めちゃくちゃカッコいいジャズがきました。
編曲は今回私の楽曲に初めて参加となる、椿山日南子さんという、とっても若くて綺麗な女性の方が担当してくださったのですが、私のことをずいぶんと前から知っていたみたいで、「いつか私も今井さんの楽曲を作りたいです」と言ってくださいました。それがすごくうれしくて、「私なんかでよければいくらでも。あっ……でも、今回のアルバムの曲は全部決まっちゃったんです」とお話して、またいつか椿山さんとごいっしょできる日が来るといいなと思っているのですが、こうやって人と人との縁が繋がっていくんだなと改めて感じた出来事でもありました。
――今井さんの数ある楽曲の中でも似た曲がないような曲調ですが、収録はいかがでしたか? 先ほどお話いただいた全曲コメントの際にはちょうどジャズの研究をしていたというお話もありましたが。
今井プロデューサーは、白戸さんが「得意分野がジャズなので、ジャズを書きたいです」と聞いていたみたいなのですが、私は白戸さんがジャズを書いているということを曲が届くまでまったく知らなかったんです。でも、自分でもなぜかわからないですが、本当に運がよくて収録の少し前のタイミングからジャズの曲をうまく歌いたいと思って練習をしていて、「以心伝心かな?」と思っちゃいました。
――今井さんはそういうことがけっこうありますよね?
今井自分でも「なんでなんだろう?」と思うくらいめちゃくちゃあります。いまでも、もっとうまく歌えるように練習をしているのですが、この収録の段階で私ができる最大限で取り組ませていただきました。曲の最初はJ-POPのような雰囲気で、2番以降からすごくジャズに変わるのですが、収録のときはそれをまったく意識できていなくて。でも、編曲にすごく引っ張ってもらえて、自然とできていたんですよね。本当に地引網のようにどんどんどんどん引き出しを開けていただいたので、曲の力ってすごいなと実感しました。「こういう風に歌いたいからこう歌おう」という感じではなく、自然とそうなっていったので、2番以降の曲のノリかたが、いままで自分でやったことのないようなノリかたをしていて、すごく楽しかったです。
――森由里子さん作詞の歌詞も印象的ですね。
今井「この曲を聴いたイメージで好きなように書いてください」とお願いしたら、この歌詞があがってきて、本当にメロディーを言葉にする神様だなと思いました。「この曲にはこの言葉しかない」という歌詞が本当に泉の如く溢れ出てきていて、本当にアートに触れている感じがします。
――つぎの『風の音』は、全曲紹介のコメントで「私のソロ活動を象徴するような楽曲」と話されていましたね。
今井作詞、作曲は私のプロデューサーである濱田さん、編曲は先ほども少しお話させていただいた牧戸太郎さんという、1stライブでキーボードを弾いてくださったり、私の歌手活動を初期から知っているおふたりが私のために作ってくれた曲です。私の声をいちばん活かすにはどういう音楽がいいのかということを知り尽くしたおふたりが作ってくださっていて、とくに“たろさ”(牧戸太郎さんの愛称)の編曲の天才感が遺憾なく発揮されていて、聴いていてめちゃくちゃ気持ちがいい曲ですし、私らしいと思える楽曲に仕上がっていると思います。
――まさに初めて聴いたときは「今井さんらしい楽曲だな」と感じました。
今井私はさまざまな曲調の楽曲を歌わせていただいていますが、過去に「私って、どんな曲がいちばん得意なんでしょう?」と聞いたことがあったんです。質問する人によっていろいろな答えが返ってくるのですが、濱田さんが「やっぱり言葉を届けるようなバラードがいちばん合うんじゃないかな」と言ってくれたことがあって、まさに私が得意なものを生み出してくれたなという印象です。
――濱田さんから見た今井さんはそういう印象なんですね。続いての『ほらね』は聴いていてテンションが上がる楽しい雰囲気の曲ですね。
今井『ほらね』の作編曲のTak Miyazawaさんは、過去に『朝焼けのスターマイン』や『Astral World』など、素敵な編曲をしてくださっています。楽曲の制作をお願いするときには、「こういう曲を作ってください」という場合と、「好きなように作ってください」という2種類があるのですが、Miyazawaさんはロックが得意だと伺ったので、「ロックな曲をお願いします」と依頼しました。
そして、曲があがってきたのですが、ときどきイメージを伝えるために仮の歌詞が付いた状態で曲をあげてくださる方もいらっしゃって、今回も1番の歌詞だけが付いた状態で。その歌詞があまりにもピッタリだったので、「この1番の歌詞を書いてくださっていた方に続きを書いていただきましょう」ということになったのですが、その歌詞を書いていたのがまさかの川田瑠夏さんだったんです。
――それは驚きですね。
今井本当に有名な方で、作品絡みではごいっしょさせていただいたことはありましたが、ソロ活動では初めてだったのでビックリしました。タイトルの『ほらね』もいくつか候補があったのですが、満場一致でこの曲の疾走感と相対的な感じでひらがなの“ほらね”がいちばん合うのではないかと、みんなの感性が一致しました。そこもまたいっしょに作っている感があって、うれしかったポイントですね。
――最初に曲名だけを見たときは「『ほらね』ってどんな曲なんだろう?」と思いましたが、曲を聴いてすぐに納得しました。
今井『ほらね』という言葉から、いろいろな表情が浮かんできますよね。
――そうですね。続いて、先ほど少しお話いただきましたが、『Heart Fragment』はいかがでしょうか?
今井『Heart Fragment』は、5月から8月に延期になったバースデーライブが終わった数日後にレコーディングさせていただいたのですが、とにかく8月のライブは調子がよくて。ちょうど歌に対する考えかたを1回壊して、またゼロから構築し直して取り組んでいた最中で、1回壊すというのはとても怖いことでもあったのですが、「こんなこともできるかもしれない」という可能性がどんどん広がって、8月のライブがとにかく楽しかったんです。
「私、少しは歌がうまくなっているかもしれない」と、自分のことをすごくポジティブに評価できた瞬間の数日後に収録だったので、そのチャレンジ精神みたいなものが遺憾なく発揮された楽曲になっていると思います。いままでとは違うアプローチとして、あえて言葉をふわふわさせて歌って浮遊感を出してみたり、いままでだったらそういう歌いかたはしなかっただろうというような歌いかたにもチャレンジできたので、とっても満足した1曲になりました。
――歌いかたについてももう少し具体的にお話しいただけますか?
今井テクニカルな面を言うと、いままでの私の歌いかたというのは、わりと母音をハッキリと歌うという声優ならではの歌いかたをしていました。その言葉がハッキリしているというのは特徴でもあり、弱点でもあると自分でも認識していたのですが、『Heart Fragment』ではあえてその歌いかたをやめました。発声の仕方からいままでとはまったく違うので、「こんなに発声しないままレコーディングしてもいいのだろうか?」と怖さもありましたし、「どういう仕上がりになるんだろうか?」という漠然とした不安もありました。でも、いままではやろうと思っていてもできなかったことに挑戦して、自分がなりたい自分になってきているというのがすごくうれしくて。そういった意味でもっと自分が変われるかもと思った瞬間でしたね。
――成長や進化を感じられる楽曲になったんですね。つぎの『ハレオンナ』は、声優の小岩井ことりさんが作曲を担当されていますが、先日のWinter Liveでは初披露も行われましたね。
※Winter Liveのリポートはこちら
今井そうなんです! ついに小岩井ことり先生に曲を書いていただくことができました。ずっと前から曲を書いてほしいということは本人にもお伝えしていたのですが、なかなかいい機会がなくて、ずっとタイミングを伺っていました。今回12曲の新曲を作ると決まったので真っ先にオファーをして、「ぜひ!」とふたつ返事をいただきました。
曲については、「バラード以外で、こっこちゃん(小岩井ことりさんの愛称)の好きに作っていただけたらうれしいです」とお願いしたところ、こういった明るい楽曲が届いて、すごく多彩な方なので楽曲のアプローチがいろいろあった中で、このアプローチを選んでくれているということがうれしくて。「こっこちゃんから見た私のイメージはこんな感じなのかな?」とか、いろいろと考えながら聞いて、ニヤニヤしちゃいました。
――先ほど『風の音』のときに話されていたように今井さんはバラードのイメージもありますが、その場をパッと明るくするという印象もあるので、すごくピッタリな曲だと思いました。
今井そういっていただけるのはうれしいです。曲によってはあるときにしか歌われなかったり、季節を問うものだったり、タイミングを選ぶものもありますが、『ハレオンナ』は、森さんが書いてくださった歌詞も相まって、春夏秋冬を問わず「あー、明日晴れてほしいな」と思ったときに聴きたくなる曲になったのではないかと。昨今は気軽に旅行ができない状況になってしまって、「また旅行に行きたいな」と思ったときにも聴きたくなる曲で、シチュエーションを選ばず歌い継いでいける楽曲に仕上がったと感じていて、本当にいいポジションをずっと担ってくれるような楽曲だと思います。ちなみに歌詞では、ふだん私と親友が旅行に行ったときに実際にやっていることが全部書かれていて驚きました(笑)。
――先日のライブのMCでも「森さんは私の生活を見ているのかな?」と思ったと話されていましたね。
今井最近はできていませんが、親友と旅行に行ったときにはまさにこんなことをずっとしゃべっています(笑)。私もそうですが、親友はフリーのアナウンサーをやっているので、24時間連絡が来るタイプのお仕事で。連絡が来たら旅行先でも出るということがお互いにあるというような感じなのですが、開放感がある海外とかに行ったときには「電話繋がらなくなっちゃうけど、しょうがないよね」とよく言っているので、本当に歌詞のままです。
――ちなみに小岩井ことりさんはコーラスにも参加されていますね。
今井最初は私ひとりでやるつもりでレコーディングをしていたのですが、実際に歌ってみたら、「べつの人が歌ったほうがいいよね?」という話になりまして。この曲でべつの人というとひとりしかいないじゃないですか(笑)。
――小岩井さんは歌とかも歌われていますからね(笑)。
今井それで、こっこちゃんにオファーするしかないと思って、レコーディングのスタジオから電話で、「歌っていただけませんか?」とオファーをしたところ、「ぜひ!」と言ってくださって、結果的に歌でもコラボできたので、本当に最高の楽曲です。
――先日のライブでもお話されていましたが、お客さんが声を出せるライブをできるようになったときは、お客さんに歌ってもらうのか、小岩井さんの声を聞いてもらうのか迷いますね。
今井確かに。でも、この間は初披露だったのでこっこちゃんの声を聴いてもらいたかったですが、今度は皆さんに歌ってほしいですね。こっこちゃんといっしょに歌えるというのもレアな経験だと思うので。
――続いて、『星月夜』。作編曲の濱田貴司さんは『永遠の歌』も担当されていますが、また違った方向性の曲ですね。
今井この曲は奇才・濱田貴司の世界を余すところなく表現し切った曲だと思います。音楽家の皆さんがすごいという意味で、「どういう脳をしていたら、この曲を書けるんだろう」と声を揃えておっしゃるのですが、ご本人は「ふつうやん。何がそんなに」とピンときていないみたいで(笑)。本当にどういう風に考えたら、こういう曲が思い付くのか気になります。私は音楽的なロジックのことは説明できないのですが、歌っていても浮遊感があるというか、不思議な感覚になるんですよね。「こんな風に歌いたい」というイメージはあるけれど、それを体現するにはすごく難しくて、イメージ通りに歌えるかレコーディングまで不安でした。いまは「もっと上の段階で表現したい」と思っていますが、この時点で自分のできることは注ぎ込めたのではないかと思います。
――本当に不思議な楽曲だなという印象です。
今井うれしかったのが『星月夜』をレコーディングしてくださったエンジニアさんが三上義英さんという方で、本当にたくさんの名曲を手掛けられているんです。無口ですごく職人気質な方なのですが、後日、スタッフの方から三上さんが「今井さんの歌、本当にすばらしいですね」という言葉をかけてくださったと聞きまして。スタッフの方が「今井さんは自分に自信がない方だから、ぜひ本人に直接言ってあげてください」と言ってくれたようなのですが、「僕なんかが、そんなことを言うのはおこがましいです。ただ、どうしてもお伝えしたくなって、つい言葉に出してしまいました」とおっしゃっていたそうで、そんな言葉をいただけたことがうれしくてうれしくて。いままで「もっとうまくなりたい」と思っていた気持ちが身になっているんだなと実感できた瞬間でした。
――それはうれしいですね。続いての『Rainbow Light』は語りたいことがたくさんあるようですが、まずは作編曲について聞かせてください。先ほど作編曲を担当された牧戸太郎さんとは長い付き合いだとお話しされていましたが、意外にも今井さんの楽曲を作曲するのはこの曲が初めてですね。
今井そうなんです。ちょうど今回のアルバム制作が始まったころに、「そういえば、たろさが作曲した曲って、これまでに1曲もないんじゃない?」とふと思って。たくさん名曲を作っていらっしゃるし、皆さんが知っているような作品のBGMを書いている方なので、実力はめちゃくちゃ知っていたのに「なんで、いままで頼んでなかったんだろう?」と(笑)。それで『風の音』のレコーディングやTDのときに、曲の方向性などはとくに指定せず、「たろさが好きに書いて。私に歌ってもらうならどんな曲がいいの?」という感じでお願いしたところ、書いてくださったのがボサノバだったんですよね。私はもっと情熱的な感じの曲を書いてくるのかなと勝手に思い込んでいたので、いい意味で裏切られたというか「ボサノバなの!?」と驚きました。
――なるほど。
今井そして、作詞はコンペで行うことになり、この曲にたくさんの方が歌詞を乗せてくださって、その中から私がひと目で「これがいいな」と思って選ばせていただいたのが、堀井亮佑さんの歌詞だったんです。そのときは何も知らなかったのですが、その後『Balancing Journey』の楽曲ラインアップを発表したところ、私がパーソナリティを務めているWeb番組『今井麻美のニコニコSSG』のスタッフの方から連絡がきまして。「『Rainbow Light』の作詞の方なんですけど、これは僕の知っている堀井さんでしょうか?」と。「僕が知っている堀井さんとは?」と思って返信したら、「『龍が如く』シリーズとかを担当されている堀井さんと同じお名前で検索もしても、あの堀井亮佑さんしか該当しないんです」と聞かれたのですが、コンペで選んだので私もご本人かどうかわからなかったんですよね。でも、ふつうに考えたら、コンペは作詞家さんが所属している会社の方々に「この曲に歌詞を書いてください」と連絡するので、その中にセガの堀井さんがいるわけがないと思うじゃないですか。
――セガという会社に所属されている方なので、作詞家の方が所属するような会社にはいないと思いますよね。
今井だから「何を言っているんだろう?」と思って「違うと思いますよ。同姓同名じゃないでしょうか?」とお返事したんです。そしたら、その数日後にご本人のTwitterで「今井麻美さんの曲を書かせていただきました」とツイートされていて、それを見たSSGのスタッフの方から「ご本人でした!」と連絡がきました。それで「えーーー!?」となって、濱田さんにもすぐに報告したのですが、「えっ、そんなことある?」って言われて(笑)。
――濱田さんもご存じなかったんですね。
濱田 まったく知らなかったです。コンペは作家さんのプロフィール付きで送られてくるわけではなく、本当に名前と歌詞だけなので。
今井改めて確認したところしっかり“堀井亮佑”とクレジットされていましたが、歌詞を選んだときはまさかセガの堀井さんがいるなんてまったく思っていないので、本当にビックリしました。そして、後日、Twitterで私のほうから「今回は本当にお世話になりました。素敵な楽曲をありがとうございます」とご挨拶させていただいたところ、ちょうど副業として作家活動を始められたタイミングで、その記念すべき1曲目だったみたいです。ほかにもたくさん素敵な歌詞を書いてくださった方がいたのですが、私はこの「古民家リノべートした あのカフェテラス」という言葉がビビビッとき過ぎて、この言葉を見た瞬間に「絶対にこれがいい!」と選ばせていただきました。
なので、先ほどもお話した通り歌詞を選ぶ時点では、堀井さんのことをまったく意識していなかったので、「知らなくて、たいへん失礼しました」とご本人にお伝えしたところ、「逆に先入観なく選んでいただいたということで、僕も本当にうれしいです」と言ってくださって、本当にご縁を感じましたし、素敵な曲に仕上がったなと思います。ボサノバの曲調も相まって、本当にずっと聴いていられるんですよね。日常の他愛のない風景を切り取っているのですが、それがいまの時代には必要なものというか、誰にでも当てはまる素敵な曲になったなと思います。
――自分も堀井さんのツイートを見て、すごくビックリして思わず記事にしてしまいました。堀井さんもRTしてくださっていましたし、『龍が如く』シリーズで錦山彰や春日一番を演じられている声優の中谷一博さんも引用RTで反応してくださっていて、『龍が如く』のファンの方にも届いたようでした。
今井それはすごくありがたいですし、うれしいです。本当に人と人との繋がりを感じました。でも、やっぱり「今後は作詞家としてもがんばるぞ!」という堀井さんの並々ならぬ決意みたいものが込められていたのかなと思いますね。歌詞は日常の1コマのような内容ですが、すごくパワーを感じたので。
――続いて、『タンジェリンの海』の作詞を担当された桐岡麻季さんとも長い付き合いかと思いますが、作詞は今回が初めてですね。
今井そうなんですよね。麻季ちゃんはたくさん曲を書いてくださっていたので、正直あまり意識していなかったです。麻季ちゃんにお願いすることになった経緯としましては、濱田さんが曲をあげてきてくださったときに、作詞を誰にしようかと相談を受けまして。今回のアルバムで最初に発表する曲でもあったので、「今井さんが書く?」と言われたりもしたのですが、「この曲は私じゃないかもしれない」と感じたんです。それで「この曲は誰の歌詞が合うかな?」と考えていたときに、ふと麻季ちゃんの顔が思い浮かんで。でも、「作詞だけって引き受けていたっけ?」と一瞬わからなくて確認してみたところ、「やりたいです!」と快諾してくださったのですが、そのときに「そういえば、私の楽曲で作詞はいままでなかったんだ」と気付きました。
――そういう経緯だったんですね。
今井曲を聴いた瞬間に顔が思い浮かんだくらい、麻季ちゃんっぽさを感じました。それで、いざ出来上がった曲を聴くと、本当に絵画みたいなんですよね。朝、昼、夕方、夜というように刻々と表情を変えていく海を1枚で表現した絵画を見ているような感覚で。麻季ちゃんは絵も描かれる方(※)なので、やっぱりそういう感性というものが作詞にも影響があるんだということを実感します。だから、麻季ちゃんの絵を言葉にして歌っているという感じがして、ライブで歌っているとすごく気持ちがいいんですよね。
※桐岡麻季さんは今井さんのファンクラブ限定シングル『虹』のジャケットの絵画も描いている。
――本当に景色が浮かんできますよね。
今井やっぱり絵を描く方が書く言葉というのは絵具なんだなと思いました。
――そして、濱田貴司さんのもうひとつの新曲『永遠の歌』はいかがでしょうか?
今井THE・濱田貴司節という感じで、私も大好きな曲調の曲です。しかも、この曲はずっと憧れだったスタジオで収録できたので思い出深くもあります。
――そうなんですね。
今井これも偶然で、以前イベントが終わった後、プロデューサーとスタッフさんに私の家まで送っていただいていたことがありまして。そのときに外を眺めていたら、ふと「こんな建物あったっけ?」と思ってしまったんです。いつもならそんなこと考えもしないのですが、なぜか気になって「あのビルってなんですかね?」と質問したところ誰もわからず、その場で調べてみたらレストランとレコーディングスタジオが入っていることがわかりました。
さらに詳しくホームページを見てみると、設備もすごくよかったのですが、立地的にもいい場所なので、いわゆるお高そうというか、「これは手が出ないぞ」という感じで(苦笑)。でも、やっぱり惹かれるものがあって、ふだんの私はあまりそういうことは言わないのですが、「いいなー、ここで録ってみたいな」と話していたんです。それから時が経って、スタジオにはエンジニアさんのサポートをするアシスタントさんがいらっしゃることがあるのですが、私がデビューした頃にお世話になったアシスタントさんが、スタジオを移られて、その憧れのスタジオでエンジニアとして働かれていることがわかったんです。
――それはすごく運命的ですね。
今井それで、「これは何かの縁だからお願いしよう」ということになりました。その方にひさしぶりに再開したら、知り合った当時はまだ20歳くらいの若い男の子だったのですが、立派なエンジニアさんになられていました。しかも、私が尊敬してやまないアーティストの方もそのスタジオを使っていらっしゃることがわかって、「ひぃ」ってなりました。憧れのスタジオでレコーディングができたので、とっても楽しくて録っている間もずっと浮かれていましたね(笑)。ちなみに『永遠の歌』はMVも撮らせていただいたのですが、こちらはめちゃくちゃたいへんでした。
――何かたいへんだったんですか?
今井いわゆる一発撮りだったのですが、それを私は当日まで知らなかったんです。当日スタジオに入ってメイクさんから「麻美ちゃん今日たいへんだね。一発撮りでしょ?」と言われて、「えっ、嘘!?」と。一発撮りでカンペを出す余裕がないということで、メイクをしてもらいながら、慌てて歌詞を覚え直しました。
濱田 俺も当日まで一発撮りって知らなかったから(笑)。
一同 (笑)。
今井そうだったんですね。監督が若い方だったのでチャレンジ精神に溢れていたんでしょうね。
――映像が縦長なのにも驚きました。データをいただいたときにPCでダウンロードして再生してみたところ縦長だったので、スマートフォンに転送して再生してみるとすごくピッタリで。
今井私は最初意味がわからなかったです。
濱田 最近流行りだしているスマホ向けのサイズなんです。動画サイトなどにこのサイズでアップすると、スマホで再生したときに縦長のフルサイズで自動的に表示されます。
今井一発撮りなので私は映像チェックができなかったんですよね。本当に全部撮り終ってから、「今更ですが、こんな感じで撮れています」と見せていただいたのですが、そのときから当然縦長だったので、「横って空白なんですか?」みたいな話をしたくらいだったので。
濱田 DVD付盤、BD付盤に入っているデータは、疑似的に横に黒い部分を追加しています。そうしないと表示がおかしくなってしまうので。
今井本当にチャレンジャブルで、めちゃくちゃおもしろかったです。あと、MV撮影でも運命的なことがありまして。
――ぜひ、教えてください。
今井いちばん最後の楽曲『私が好きになる魔法』は、私がこの2年くらいずっとハマっていたオーディション番組がテーマになっているんです。本当にいろいろなオーディション番組にハマっていて、どんどん自分をブラッシュアップしていく若者たちを見て、私も年甲斐もなく感化されて、「私ももっとうまくなりたい」と研究をするようになりました。昨日よりも今日、今日よりも明日というように自分でも少し満足ができるくらい、ちょっとずつではあるけれど成長できているなということを感じることができたのは、ここ2年近くずっと見ていたオーディション番組のおかげだと思っています。
オーディションを受けるというのは、きっと苦しいことでもあると思うんです。しかもその様子をカメラで撮影されて、全国の人に見られながらというのは。落ちるのが怖いという恐怖と戦いながら、もっと自分をブラッシュアップさせていった子たちがなんとか残っていけるという世界を見てきました。私もオーディションとかを受ける身なので、自分を重ね合わせながら歌詞を書かせていただいたのですが、本当に私が変われたきっかけはオーディション番組だったんですよね。
(自分もオーディションを受ける身だから)若いときはそういった番組を見るのが怖かったり、辛かったりして観ることができませんでした。でも、「いまなら大丈夫かも」と思って見始めて、すごく応援した気持ちとかを歌詞に込めたのですが、その中のでもとくにハマっていたオーディション番組の何次審査かの会場が『永遠の歌』のMVを撮影したスタジオだったんです。MVを撮っているときは一発撮りでそれどころではなく、ぜんぜん気付かなかったのですが、着いた瞬間に「あれ?」とデジャブを感じました。
――「来たことないはずなのに知っている」みたいな。
今井そうです。気にはなったのですが、一発撮りでそれどころではなくなったので一旦その意識を横に置いて撮影に集中しました。それで撮り終って、帰宅後、自宅のソファーに座った瞬間にいろいろな感情が一気に蘇ってきて、見ていたオーディション番組を再生したところ、どう考えても同じ場所で。
――ふだんオーディション番組を見ている状況になったことで一気に思い出したんでしょうね。
今井そうだと思います。それでめちゃくちゃうれしくなってしまって、夜中の1時30分ごろに、MVにも出演していたバイオリンのAiちゃんに連絡しました。Aiちゃんは、いっしょにオーディション番組を見ていたので、「気付いてた? あのときのあのスタジオだよ」とテンション高めに送ったら、「あー、気付かなかったです」と冷静に返されて(笑)、「ごめんね、興奮しちゃって」と謝っておきました。その後、いっしょにオーディション番組を見ていた親友にも「あのオーディション番組のスタジオに行ってきたんだよ」と送ったら、「よかったね」とこちらも冷静に言われました(笑)。でも、その一瞬を共有できた感じがうれしかったですし、その子たちは私なんかとはまったく違う次元で活躍されているけれど、同じ音楽に携わる人間として、一瞬でも同じ空気を吸えたということが誇らしく思えました。
――本当に持っていますね。では、少し語っていただいた部分もありますが、最後の『私が好きになる魔法』について、お話しいただけますか?
今井この“私が好きになる”という言葉は、ほかの人が私を好きになるという魔法と、私が私のことを好きになる魔法という両方の意味を込めています。私は努力は報われるだけのものではないと感じていて。たとえば、音楽や芸術というのは努力だけでは埋められない何かがきっとある世界だと思います。だからこそ不安なことが多かったり、苦しくて孤独になったりすることもあるけれど、人を魅了しなければいけない仕事をやっていくには、やっぱり自分を好きにならなければ、ほかの人がそんな自分をいいと思ってくれることはないというのがいままで活動してきて、いちばん思うことだったりもしています。だからと言って、手放しで自分のことはなかなか好きになれないですし、コンプレックスがあるからこそ人は努力をするんだと思います。そういったものが凝縮されたのがオーディション番組だなと。
オーディションでは自分が受かれば、代わりに誰かが落ちるかもしれない。その逆もあるけれど、誰かと協力し合うことによって、自分の力以上のものを出せる瞬間というのが必ずあると思うんです。そのことを私も作品作りをするうえで感じることが多いので、不安になることもあるけれど、きっと自分を好きになる努力さえ忘れずに続けていれば、どんな結果になろうとも、自分が好きになれていくんじゃないかなと思って、そういった想いを歌詞に込めました。また、そういったオーディションや芸術と関係がない人生を生きていたとしても、たとえば学生さんだったら部活動だったり、社会人の方だったら同僚だったり、そういった人たちも重なる部分もあるのではないかと。そういったものを感じていただけたらうれしいなと思って歌詞を書きました。私は自己評価が低いのでもっと自分が好きになるには、努力したいなといまも思っています。
――この曲を初めて聴いたときに込み上げてくるものがあったんですよね。うまく表現できないのですが、『風の音』が今井さんらしい楽曲というお話がありましたが、この曲もすごく今井さんらしいと感じました。歌詞もすごくまっすぐで、音の構成もシンプルで、いい意味で着飾っていないというか、すごく素直な曲だなと。
今井そう感じていただけたのはうれしいですね。確かにそういうところはあるかもしれないです。人は強欲なので足りないものを見がちになってしまうけれど、じつは幸せなものは近くにあったんだなということをオーディション番組で感じました。
――ありがとうございます。これで全12曲について語っていただきましたが、もう少しお話を聞かせてください。『Balancing Journey』と『タンジェリンの海』のMVも収録されるということで、こちらの2曲についてもお話しいただけますか?
今井今回は3つのMVをあえてこれまでお世話になった別々の制作会社さんにお願いしていて。細かい打ち合わせの内容については、私自身は知らないのですが、監督さんたちが曲を聴いたイメージで制作をしてくださっています。『永遠の歌』はかなり特殊な感じでしたが、『Balancing Journey』と『タンジェリンの海』は曲の雰囲気は違えど、海だったり同じキーワードがあったりして、少しリンクする部分があります。いまの時代を象徴とするようなMVになりました。ここ2年ほどは、みんながやりたいことを当たり前にできない状況が続いています。たとえば、「そうだ!」と思い立って、みんなでふらっと海に行ってみたり、そういうのができなくなっている状況で、映像だけでもそういうのを届けられたらという想いを私は感じ取りました。この2曲のMVは同じようなコンセプトだけれど、表情感もぜんぜん違いますし、撮っていた時期も違うので、そういった意味でもすごく作品のことがより一層鮮明に感じられて、私としてはすごくおもしろかったです。
具体的には、『タンジェリンの海』は先ほど絵画というお話をさせていただきましたが、撮影したのが夏ごろだったので、外での撮影はなかなか難しく、室内から海を撮るという形でした。その場所というのが鎌倉の海のベストポジションにあるお家だったので、真四角の窓から見える海が本当に絵画のようで。それはまさに私がイメージしていた『タンジェリンの海』でした。
一方で『Balancing Journey』は、人生を旅していくというイメージで作った楽曲でもあるので、日常の1コマだけど、いまとなってみればファンタジーにも似たような景色が溢れています。気軽に旅行することが難しくなったいまだからこそ、そういう日常だった風景が、逆にこういうのがキラキラして美しいというか。そういったものを表現していて、同じ海が題材でも「こんなに表情が違うんだ」と思って感動しましたし、いい作品ができたと満足しています。
――本当に違った景色で素敵でした。今回のアルバムはこれまで語っていただいた新曲12曲とDVD付盤、BD付盤には3曲のMVも収録されるという盛りだくさんな内容となっていますが、今井さんにとってどのようなアルバムになりましたか?
今井13年間も歌の活動を続けさせていただいていて、最近は「もう新しいことに出会うことはないだろう」というのをつねに思いながら活動していました。でも、「まだ自分はやっていないことがあったんだ」とか、「もっと歌がうまくなりたいとこんなに強く思うことがあるんだ」、「もっと歌いかたを研究したい」、「もっといろいろなジャンルを歌えるようになりたい」と強く思っているタイミングで制作に取り掛かれたので、本当にいい作品に仕上がって、今後の活動の礎になるようなアルバムになったと思います。
――先日、今井さんのライブにも出演されたことのあるベーシストの川村竜さんことミートたけしさんの配信でボリューム調整ができるようになったと話されていたり、朗読劇『Over The Galaxy 2 -Trilogy-』のイベントではロングトーンが得意になったというエピソードを披露されていたりしましたが、ご自身でも成長を感じられるくらい変化のあった1年だったんですね。
今井めちゃくちゃ感じましたね。ロングトーンは昨年末に発売した『Gene of the earth』に収録されている『宇宙の申し子』の影響ですね。ロングトーンが尋常じゃなくて、最初のころは歌えなかったです。レコーディングでもかつかつでライブで歌うなんてもってのほかみたいな状態だったので、いつもライブではハラハラしながら挑戦していたのですが、その時期がちょうど「歌をもっとうまくなりたい」と思っていたタイミングで、自分を御せるようになって、自分の中のスイッチの量が増えてきたところだったんです。
その増えた分でしっかりと自分で意識を持って歌を歌えるようになってきている最中でのアルバム作りだったので、「この間できなかったことが今日はできている」ということを感じることができて、「こんなに歌って楽しいんだ」と改めて実感しました。でも、まだまだ進化できると思っています。どうしても年齢が上がってくると、そこから先はだんだん落ちていくだけというイメージを勝手に持ってしまっていましたが、まだまだ声ももっと伸びるようになったり、もっと綺麗に歌えるようになったりすると思います。もちろん、若いころできなかったことができるようになった分、逆も然りだとは思いますが、なりたい自分になるためにまだ変われるということを、この年で感じられるというのはすごいことだなと思います。
――今井さんはあまり目標などは決めない方なのは理解していますが、2021年ももうすぐ終わりということで、2022年にやってみたいことなどはありますか?
今井これまでは、いろいろな楽曲に対して感性だけでぶつかってきたんですよね。もちろん、アドバイスを受けて変えることもありましたが、基本的にはいまの自分の中に持っている感性でどうやるかというような感じで。でも、これからはもっと方眼の目を細かくしたいなと思います。感性だけでやってみるのではなく、自分で「こうしたいから、こう歌うんだ」ということが明確にわかるようになれれば、もっと楽しくなるんじゃないのかなと思うので、2022年はそのことをメインに歌に対して向っていきたいと思います。
――進化した今井さんのパフォーマンスを楽しみにしています。では、最後にファンの皆さん向けてメッセージをお願いします。
今井今回のアルバムは、シングルカットされていない楽曲ばっかりなので、新鮮に感じていただけるものになったと思います。音楽という文化が変わってきている時代だとは思いますが、形に残るものというのが本当に素敵だなと思うので、ぜひ手に取っていただけるとうれしいです。どうしても忙しい毎日を過ごしていると、いろいろなことをすぐに忘れてしまいがちですが、形として手元に残っていれば、きっとそれが宝物になって、すぐにそのときのことを思い出せるはずです。もちろん、配信もあるので楽曲をひとりでも多くの方に聴いていただいて、「今井麻美ってこんな歌も歌うんだ」ということを知っていただきたいですし、自分のできる限りの活動をもうしばらく続けたいと思っているので、もしよかったら応援してくれたらうれしいなと思います。
以下、リリースを引用
商品情報
- アーティスト:今井麻美(読み:いまい あさみ)
- タイトル:「Balancing Journey」
- 発売日:2021年12月22日
- 発売元:Beyond The Music
- 販売元:MAGES.
- 価格/品番:
- 【Blu-ray付盤】5280円[税込]/BTMC-0002
- 【DVD付盤】4400円[税込]/BTMC-0003
- 【通常盤】3520円[税込]/BTMC-0004
【初回封入特典】
- 今井麻美プリントサイン入り生写真2枚(全6種類)ランダム封入(Blu-ray付盤、DVD付盤のみ)
【初回発注分対象メーカー店舗特典】
- B2ポスター
※店舗により特典がつかない店舗もございます。詳しくは店舗にご確認ください。
【Blu-ray付盤 仕様】(CD1枚+BD1枚組)
※【初回封入特典】 今井麻美プリントサイン入り生写真2枚(全6種類)ランダム封入
<CD収録内容>
- Balancing Journey(作詞:今井麻美、作編曲:Johnny.k)
- かまってよファム・ファタール(作詞作曲:中山豪次郎、編曲:成瀬裕介)
- 新しい時計 〜Tick-Tack〜(作詞:森由里子、作曲:白戸佑輔、編曲:椿山日南子)
- 風の音(作詞作曲:濱田智之、編曲:牧戸太郎)
- ほらね(作詞:川田瑠夏、作編曲:Tak Miyazawa)
- Heart Fragment(作詞:福本ゆう一、作編曲:白戸佑輔)
- ハレオンナ(作詞:森由里子、作曲:小岩井ことり、編曲:Tak Miyazawa)
- 星月夜(作詞:月丘りあ子、作編曲:濱田貴司)
- Rainbow Light(作詞:堀井亮佑、作編曲:牧戸太郎)
- タンジェリンの海(作詞:桐岡麻季、作編曲:濱田智之)
- 永遠の歌(作詞:花衣、作編曲:濱田貴司)
- 私が好きになる魔法(作詞:今井麻美、作編曲:濱田智之)
<BD収録内容>
- Balancing Journey Music Video
- タンジェリンの海 Music Video
- 永遠の歌 Music Video
- Balancing Journey Music Video - Making -
【DVD付盤 仕様】(CD1枚+DVD1枚組)
※【初回封入特典】 今井麻美プリントサイン入り生写真2枚(全6種類)ランダム封入
<CD収録内容>
- Balancing Journey
- かまってよファム・ファタール
- 新しい時計 〜Tick-Tack〜
- 風の音
- ほらね
- Heart Fragment
- ハレオンナ
- 星月夜
- Rainbow Light
- タンジェリンの海
- 永遠の歌
- 私が好きになる魔法
<DVD収録内容>
- Balancing Journey Music Video
- タンジェリンの海 Music Video
- 永遠の歌 Music Video
- Balancing Journey Music Video - Making -
【通常盤 仕様】
CD1枚組
<CD収録内容>
- Balancing Journey
- かまってよファム・ファタール
- 新しい時計 〜Tick-Tack〜
- 風の音
- ほらね
- Heart Fragment
- ハレオンナ
- 星月夜
- Rainbow Light
- タンジェリンの海
- 永遠の歌
- 私が好きになる魔法
初回封入特典の追加情報!
今井麻美『Balancing Journey』Blu-ray付盤に今井麻美直筆サイン入りCD(盤面に本人サイン) をランダム封入!
※ ランダム封入の対象は今井麻美『Balancing Journey』Blu-ray付盤(BTMC-0002-1)のみになりますので予めご了承下さい。
「Balancing Journey」CDデジタルブックレットNFT発売決定!
今井麻美ニューアルバム「Balancing Journey」のデジタルブックレット(Blu-ray付き盤 /DVD付き盤 / 通常盤)がNFTになって登場! NFTマーケットプレイス「Adam」にて2021年12月22日19時より販売されます。
※こちらの商品は、今井麻美フルアルバム「Balancing Journey」のブックレットをデジタルにて販売するもので、楽曲データは含まれておりません。
保有者限定コンテンツには未公開データ4種を封入しました。更に! 2022年1月6日12:00PM(JST)時点で、今井麻美ニューアルバム「Balancing Journey」のCDデジタルブックレットNFT(Blu-ray盤、DVD付き盤、通常盤)各100シリアルのうちそれぞれ特定の10シリアルを保有しているとランダムで各ブックレット使用写真のオリジナル高解像度データ2種(全4種)を送付させていただきます!
ブックレット使用写真のオリジナル高解像度データを送付するにあたり、GMOアダム株式会社より2022年1月6日12:00PM(JST)時点で対象のNFTを所有しているユーザーのメールアドレスの提供をうけた上で、株式会社メディバンから送付に関するご連絡をいたします。予めご了承ください。
なお、GMOアダム株式会社より提供されたメールアドレスは、株式会社メディバンのセキュリティポリシーに基づき適切に管理され、上記目的以外には一切使用致しません。
- 所有者限定コンテンツ
未公開写真データ(全4種からランダムで2枚)
- 抽選特典
ブックレット内使用写真の高解像度オリジナルデータ(Blu-ray付き盤、DVD付き盤、通常盤、それぞれ全4種からランダムで2枚)
※全てのデータはNFTにより著作権管理されたデータとなります。
発売日:2021年12月22日19時
- 「Balancing Journey」Blu-ray付き盤デジタルブックレット
価格:¥3,000-+税(数量限定)
- 「Balancing Journey」DVD付き盤デジタルブックレット
価格:¥3,000-+税(数量限定)
- 「Balancing Journey」通常盤デジタルブックレット
価格:¥3,000-+税(数量限定)