Devolver Digitalが、アクションRPG『Weird West』を配信開始した。対応プラットフォームはプレイステーション4/Xbox One/PCで、Xbox/PCのGame Passにも対応している。本誌では日本語ローカライズされたPCレビュー版を先行してプレイしたので、その内容をお届けしよう。

オカルティックで命が安い“奇妙な西部”に5人の主人公が集う

 本作の舞台は、西部劇にオカルト要素が融合したような世界。ギャングがのさばり、食人セイレーンが彼らと結託し、豚頭の怪人“ピッグマン”が差別され、夢幻士たちが荒野で儀式を行い、ハゲタカが屍肉を喰らい、人狼が闇夜をうろつくという“奇妙な西部”だ。

 ゲームは複数主人公制を採用しており、5人がチャプターごとに登場。子供を殺され夫をさらわれた元賞金稼ぎのガンマンや、ピッグマンにされてしまった記憶のない男など、彼らはそれぞれ異なる目的をもって冒険するのだが、やがて彼らに押された謎の烙印がその運命を交錯させていくことになる。

Weird West
新たなチャプターが始まる前には、5つの肖像画がある部屋で意味深なシーンが展開される。どうも肖像画は各主人公に繋がってそうなのだが、では中央にいる人物は誰なのか?
Weird West
ギャングが根城とする廃墟で銃撃戦。ピンチにかつて助けた人物が助太刀にやってきたぜ。
Weird West
ピッグマンにされてしまったばかりの男に「なんとかして自分を殺してくれ」と頼む木。オカルトウェスタンのややこしい一幕。

思わぬ手段の発見が楽しい、ディープなイマーシブシム

 本作を開発したのは、ベセスダ・ソフトワークス傘下のArkane Studiosで『ディスオナード』などを手掛けたラファエル・コラントニオ氏が独立して立ち上げたWolfEye Studios。というわけで本作もまた『ディスオナード』などの流れを組む、いわゆる“イマーシブシム”系の内容だ。

 「イマーシブシムってなんだよ」という人もいると思うので要点をまとめると、要はクエストなどの目的に対してさまざまな問題解決が可能なのがポイント。探索を中心にして戦闘・情報収集・隠れたルート開拓などが融合しており、さまざまな試行錯誤や思わぬ手段の発見が楽しいゲームとなっている。

 実際どんな感じなのかといえば、たとえば「とある情報をこの農園の富豪から得なければいけない」というケースの場合、“全員倒すかステルスで昏倒させてから関連するメモなどがないか探す”という強引な選択肢も可能だが、“監視の目を縫って侵入した地下室で見つけた脅迫材料で富豪を脅す”といったルートもあるし、あるいは“実はその農園の別の人物からもっと本筋の情報を得られるので、富豪はほっといて先に行く”なんてこともある。

Weird West
檻に囚われてる人を助けるのと引き換えに、手がかりに繋がる暗証番号を教えてくれた。
Weird West
探索中に興味深いメモを発見。「トンネルへと向かう井戸にロープをつけっぱなしにしておいてはいけない」と厳命されているそうなのだが、ということは地下施設に行くには……。

 これはアクション面でも共通していて、単に戦うだけの場面でも、銃撃やキャラクターのアクションスキルを使って正面から倒す以外に、“火薬樽を蹴り飛ばしてから爆破する”とか、“水に濡れた敵に電撃を与える”とか、“松明に矢を近付けて火矢にしてから射る”といった戦術を取れる。敵に見つかる前に狙撃してしまってもいいし、敵が集会している外からダイナマイトを投げ込んで爆殺なんてことも可能だ。

 上の説明で『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』などをイメージする人もいると思うのだが、ああいった特定のシチュエーションや周囲の環境や性質をうまく使ったテクが可能なゲームなのは違いない(ただしこれはあくまでゲームの作りの傾向の話であって、オープンワールドゲームというわけではないので注意)。

Weird West
たとえば賞金稼ぎミッションなら、ボスがいる部屋の窓からダイナマイトを放り投げて爆殺するとか、ライフルで狙撃してしまうというのもアリ。もちろん正面から全員ぶっ倒したり、ひとりずつステルスで沈めていくんでもいいのだが、スマートな解決法を見つけた時が気持ちいい。
Weird West
もちろん、荒野でヒャッハーと襲ってくる普通のギャングもいる。丁度毒の樽がいい感じに転がってるんでうまく巻き込むかねぇ。
Weird West
「根を燃やせ」と言われましてもどう燃やしたら……と思ったら、手前の祭壇を壊してみたら火が燃え上がった。あれこれはもしかして矢を使えば……。

地図型のワールドマップとアクションが展開する各エリアのマップの二段構成

 ゲームは地図型のワールドマップと、実際のアクションが展開する各エリアのマップの二段構成。ワールドマップ上で行き先を指定して旅していき、到着するとそのエリアのマップでクエストなどに挑めるという形になっている。

 なお荒野の旅は必ずしも単独ではなく、直接操作はできないもののコンパニオンキャラが同行することもあるし、人助けをしておくと戦闘がおっぱじまった時に助太刀がやってくるなんてシステムも用意されている。

 ちなみにワールドマップを移動する際は時間が経過していくので、余裕こいて非効率に旅していると制限時間(日単位)が設定されている賞金稼ぎミッションなどが失敗してしまうことも。また移動中にランダムイベントがスタートして戦闘マップに切り替わることもある(特にギャングを撃ち漏らして復讐を誓って逃げたメンバーがいたりすると後で襲撃を食らう)。

Weird West
ワールドマップは地図上で移動していく。移動中に襲撃などのランダムイベントが発生することも。
Weird West
エリアマップでの出会いからサイドクエストに発展することも。
Weird West
金が足りない時は賞金稼ぎミッションを狙うとよし。ただし受注から制限時間があるのと、復讐を誓った手下に逃げられると後で厄介なことになるのは覚えておこう。

強化は探索が重要!

 アクションRPGとしての強化要素は、レベルの概念などはなくアビリティやパーク(能力ブースト)をアンロックしていく方式。そのアンロックには探索を通じて入手したアイテムを使用する形となる。

  • アビリティ
    • 主人公ごとに固有で、チャプターが変わるとリセットされる
    • キャラごとに専用のアクションアビリティ4種類と、共通アビリティで構成されている
    • “ニンプの骨”というアイテムでアンロックする
  • パーク
    • ゲームを通じて共有され、チャプターが変わっても引き継がれる
    • ジャンプの高さや敵に気づかれていない状態でのダメージボーナスなど各種能力をブーストする
    • “黄金のエース”というアイテムでアンロックする
  • チャプター間の引き継ぎ
    • ニンプの骨や黄金のエース、そして所持している各所の鍵などはそのキャラと出会った際に回収できる
Weird West
Weird West
アビリティはキャラごとに取るもので、探索中に見つかる“ニンプの骨”でアンロックしていく。アビリティにはキャラ固有のアクションアビリティと、共通アビリティがある。
Weird West
能力ブーストなどを得られるパークは一度アンロックすると主人公が変わっても引き継がれる。こちらは“黄金のエース”を使ってアンロックする。

 探索中のアイテム漁りがかなり重要な要素のひとつとなっていて、倒した強敵の死体やロックピックで開けた隠し金庫などから強力な武器や防具をゲットすることも。

 町などには各種商店もあり、アイテムを売買したり、夜に鍵を開けて侵入して盗んだり、あるいは強化アイテムでアップグレードするといったこともできる。

Weird West
装備のアップグレードなども存在。武器は各種金属、防具は革を使って強化する。

クイックセーブも駆使しながらいろいろ試せ!

 というわけで本作、カテゴライズとしてはアクションRPGなのだが、敵を倒しまくって最強ビルドを目指すようなハックアンドスラッシュ型のゲームなどとは異なり、探索しながらアイデアを試していくのが楽しいタイプの、アクションアドベンチャーゲーム的な性質が強いゲームとなっている。

 ひとつ注意しておきたいのは、『ディスオナード』のような一人称視点の3D空間をフルに動き回るゲームではなく、見下ろし型の引いた三人称視点となっていること。なので絵面だけ見るとちょっとショボく感じることもあるかもしれないが、核となる遊びの部分はしっかり凝縮したゲームになっていることは保証できる。

 なので、思わぬ方向にクエストが発展したり「こんな手段も可能なのか」と発見しているうちにディープでダークな魅力に惹き込まれていくはずだ。こまめにクイックセーブしていろいろ試していくのをオススメしたい(いや本当にクイックセーブをしっかり使うようチュートリアルに出てくるようなゲームなのだ)。

Weird West
「手がかりを知りたいならセイレーンに俺を食わせろ」と主張する老人。しかも名前は“スナック”。いやー黒いっす。
Weird West
さーて手紙を読んでやるか、それとも金を取るか……。
Weird West
娼婦の依頼で娼館の新オーナーをとっ捕まえて事故に見せかけてバルコニーからぶん投げる。どっせーい。