時代も主人公も異なる7つ+αのオムニバスシナリオと、何度でも遊びたくなるゲーム性。小学館の有名漫画家7名がキャラクターデザインを手がけたことでも話題となり、知る人ぞ知る名作としていまでもファンのあいだで語り継がれている往年の名作RPG『ライブアライブ』(以下、LAL)。スーパーファミコン(以下、SFC)版の発売から約28年の時を経て、HD-2Dリメイク版がNintendo Switchにて2022年7月22日に発売される。

 SFC版のイメージを崩さずにUIやBGM、遊びやすさが大幅に向上した現代的な作品となって、令和の時代に伝説のRPGが帰ってきた。『オクトパストラベラー』や『トライアングルストラテジー』で採用されているドット絵と3DCGが融合した最新の技術“HD-2D”による美麗なグラフィックに加え、豪華声優陣によるボイスも収録。当時からリメイクを待ち続けたファンはもちろん、新しいRPGファンでも楽しめる作品として生まれ変わっている。

 本記事ではHD-2Dリメイク版の発表を記念して、SFC版では初ディレクター、リメイク版ではプロデューサーを務める時田貴司さんに、HD-2Dでリメイクするに至った経緯や新規要素、原作との変更点、SFC版当時の思い出などを伺った。

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『ライブアライブ』HD-2Dリメイクの新要素や変更点を時田貴司氏に訊く。何度も続編やリメイクにトライし断念、浅野チームに合流してついに実現

『ライブアライブ』発売発表トレーラー

時田貴司 氏(ときた たかし)

スクウェア・エニックス プロデューサー、ゲームしょくにん。SFC版『LAL』では初めてディレクターを担当。HD-2Dリメイク版ではプロデューサーを務める。(文中は時田)

旗を立て続けたからこそ28年目にして実現できたリメイク

――SFC版から約28年目にして、このたびファン待望のHD-2D版リメイクとして再始動した『LAL』ですが、まずはリメイク版の開発に至った経緯から教えてください。

時田これまでにも何回か社内で続編やリメイクにトライしてきたのですが、なかなか条件が合わずに断念してきました。今回、リメイク版を作れた大きなきっかけとしましては、4年前に僕がHD-2DのRPG『オクトパストラベラー』を作っている浅野チームに合流したことがきっかけです。そこで企画を立てるときに「HD-2Dを使って、『LAL』のリメイクを作ったらどうだろうか」という話が出て、「ぜひ、やりましょう!」と実現しました。

 僕自身も『オクトパストラベラー』を傍から見ていて、「こんなアプローチの仕方があったのか!」とすごくインパクトを受けていましたし、フル3Dでリメイクするにはイメージも変わり過ぎてしまうと思っていたんです。でも、HD-2Dでのリメイクならば、ドット絵の良さと3Dならではのエフェクトのおもしろさがいい感じで融合したリメイクにできるのではないかと。

 そもそも『LAL』自体、いろいろなシナリオ(編)がありますよね。たとえば、SF編なら3Dに寄ってもいいですし、もっと手描き感を重要視していい編もあります。バラエティを出しやすかったので「HD-2Dでリメイクをするなら、ぜひ!」というところから始まりました。

――具体的にリメイク版の企画がスタートしたのは、いつごろなのでしょうか?

時田2019年に入ってからです。ちょうど丸3年かかっています。

――丸3年とはいえ、開発のスピード感としては最近のゲームからすると短い方ですよね。元となる作品がすでにあって、そこに合わせて作ることで開発期間を短縮できたのでしょうか?

時田それもありますが、最初からHD-2Dでやることが決まっていたので、スタイルを模索する時間がなかったのが大きいですね。

 3Dにするか、2Dにするか。スタイルを考えるプリプロダクションだけでも、たぶん半年はかかってしまいます。その時間がいらなかったのは、結構大きかったです。HD-2DだからこそSFC版のリメイクにマッチしていて、迷いがなかったのも良かったのかな。

 とはいえ、いざ実装してみると『LAL』は編ごとに違うシステムが入っているわけじゃないですか。現場は思った以上に大変なことになりました。しかも、コロナ禍のど真ん中。プリプロダクションから本プロに入る段階で、ちょうどコロナが本格化してきたんです。コロナ禍のなかで仕上げてきたということもあり、それなりに時間はかかってしまいました。

――実際に開発で動きだしてみたら大変だったということですが、いちばん手間がかかった部分を教えてください。

時田幕末編の細かい部分や、原始編の動きを細かくつける部分などです。

 昔はパターンを組み合わせて動きを作っていたのですが、今回はドット絵を手がけたスタッフが『LAL』をすごく好きでいてくださって、想定の倍くらいのパターンをがんばって作っていただきました。開発期間よりも、そのなかでのみなさんのこだわり具合、ノリ具合が僕の想定の1.5倍以上はある感じです。最後まで熱く作っていただいていますし、本当に想定以上のものになっているので、その辺は皆さんも期待していただいていいと思います。

――開発が始まり、HD-2Dでリメイクされた『LAL』の画面を初めて見たとき、時田さんはどのように思われましたか?

時田最初はオリジナルと同じように中世編から入ったのですが、西部編だと砂煙が舞っているとか、SF編だと白くて冷たい宇宙船のなかにホログラムが浮かび上がるとか、そうした各編ごとの特色は、いまの3Dだからこそできるエフェクトや空気感でしたね。

 HD-2Dとは言いながらも、じつは3Dの技術をどう使うのかを各編ごとにこだわっています。そこは『オクトパストラベラー』のように、世界観がひとつではないからこそのおもしろさなのかなと。各編を作っていくごとに、現場からも「こういうアプローチはどうでしょう?」といろいろ提案してくれたので、おもしろい画面ができたと思います。

『ライブアライブ』HD-2Dリメイクの新要素や変更点を時田貴司氏に訊く。何度も続編やリメイクにトライし断念、浅野チームに合流してついに実現
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――実際に動いているところを見るのが、すごく楽しみです。25周年記念LIVE“新宿編”を行ったときは、まだ具体的な話は決まっていなかったのですか?

時田まだ何も決まっていませんでした。周年LIVEはみなさんへのお礼も込めてだったのですが、とにかく年に1回旗を立て続けていけば、いつかまた可能性が開けるんじゃないかと思って開催していました。結果的に周年LIVEがあったからHD-2Dリメイクが実現したと思うので、続けて良かったです。

 そこはやはり、みなさんの応援があってのことですからね。いまのIP(知的財産)はリメイクやリマスターがありますが、作りたい人や好きな人の思いが繋がっていたからこそ実現できました。僕は新作にこだわってきた時代があるのですが、いまはものが多すぎて、なかなかコンテンツが選びにくい時代になっています。だからこそ、昔から連綿と受け継がれるおもしろさ、みたいなところに本質があるのではないかと、コロナ禍でいろいろな作品を見ていて思いました。

 例えば『名探偵コナン』だったら、大人から子どもまでいっしょに楽しむようなものになっていますよね。それと同じように、もう30年以上も経っているので『ファイナルファンタジー』(以下、FF)も『ドラゴンクエスト』(以下、DQ)も、ほかのゲームもみんなそうなってきています。

 『LAL』も「昔、お父さんが遊んでいました」「お母さんが遊んでいたのでやってみたら、ひどい目にあいました(笑)」なんて感想をもらうのですが、少なくとも2代にわたって遊んでもらっているんです。だから、次は3代、4代を目指して、このHD-2Dリメイクを遊んでいただけるとうれしいですね。

――今回のHD-2Dリメイクは浅野チームに合流されたことがきっかけと伺いましたが、浅野チームのほうから提案されて動き出したということなのでしょうか?

時田浅野チームからの提案があったというよりも、自然とそうなった形です。3年前にも続編にトライしていたことがあり、そこでずっといっしょにやっていたメンバーと浅野チームへ来たときに「何をやりますか?」と聞かれて、それなら『LAL』のリメイクを作りたいという話に自然となりました。

 これまでは、縁やタイミングが合わなくてできなかったのですが、HD-2Dの浅野チームに合流したこと。25周年記念でファンの方たちとLIVEをやり、また盛り上げていただけたこともあり、すべてのタイミングがついに28年の時を越えて来た……という感じです。

――まさに最終編みたいですね。すべてのタイミングが、時代を越えて集まってきた!

時田本当にそうなんですよ。社内でいっしょに仕事をしているプロデューサーもそうですし、スタッフもそうです。声優さんや関係各社さんも、「このゲームのことがすごく好きです」「待っていました」と言ってくれる方たちが多くて、その方たちといっしょに作れたことが、すごく幸せなことでした。

 先ほどもお話しましたが、僕は続編やリメイクよりも新作を作るべきだ、と意固地になっていた部分があったんですよ。でも、『LAL』を好きだと言ってくれる方たちといっしょに新しいスタイルで作れるのが、こういう幸せもあるのだな……と。

 単純にリメイクやリブートをするのではなく、作品を好きだった方たちといっしょに大事なことをきちんと守って作るといった本当に素晴らしい形でリメイクができたと思っています。

 思い返せば20周年記念のタイミングに、任天堂さんから「『LAL』をバーチャルコンソールで出しませんか?」と言われたことが始まりです。

 そこから再び小学館さんとお話することができて、そのときにライブでグッズを出す許可もいただけました。バーチャルコンソールの移植がきっかけとなり、小学館さんとお話をさせていただけた経緯があって、今回のリメイクが実現しています。

――あの移植には、そんな重大な意味があったんですね。ところで、今回は生島直樹さんがイラストを描かれていますよね?

時田HD-2Dリメイクなので『LAL』を知らない若い人たちや、『オクトパストラベラー』を遊んだ最近の若いRPGファンにも遊んでほしいという想いを込めて、『オクトパストラベラー』の生島にイラストレーションを担当してもらいました。もちろん、キャラクターデザインは7人の漫画家先生方のオリジナルを尊重したうえで、生島が描き起こしました。

 HD-2Dシリーズは生島が看板となって描いているものですし、HD-2DのRPGファンに遊んでもらうなら、生島が良いだろうということでお願いしています。生島自身も「7名の先生方のイラストを自分が描けるなんて光栄です!」と喜んでいました。いつものファンタジー世界だと描けないようなウェスタンやSFなどのイラストも描けたので、彼もノリノリで熱く描いています。

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――7名の漫画家によるイラストはSFC版のウリでもありましたが、中世編のオルステッドだけは漫画家さんによるイラストが存在していませんよね? 

時田強いて言えば、攻略本に掲載していたデフォルメのキャラクターがオフィシャルのイラストになります。

 あれは、当時ゲーム内でドット絵を描いていた宮本由香(yuka)というスタッフが描いたものです。彼女は、最近だと『とーとつにエジプト神』でも人気がありますが、攻略本用に描き下ろしてくれました。ただ、オフィシャルのイラストではあるのですが、最初に描いたドット絵からイラストに描き起こしたもので。

――オルステッドのドット絵自体は、誰が描かれていたのでしょうか?

時田あれは加藤清文という『LAL』のスタッフが描きました。僕は、当時「もうドット絵は描かない。あとは、君たちに任せる」という感じでした。

――26周年記念生放送で、オルステッドのデザインをされたのは時田さんだったという話があったと思うのですが、それに関しては?

時田紙に「こういうイメージです」と、ラフを描いたのはそうですね。ドット絵のイメージとは、ファミコン時代の『FF』で主人公だった赤い戦士(※)です。

 いわゆる“ザ・RPG”な主人公だけど、派手ではなくて地味な中世の世界観にしたかったんですよ。そこでオルステッド、ストレイボウ、ウラヌス、ハッシュをラフに描いたものをドット絵にしてもらいました。だから、ラフ自体は僕ですが、キャラクターデザインというよりはイメージを作った形かな?

※ファミリーコンピュータ版『FF』シリーズでは、主人公的なイメージの戦士が赤いカラーのドット絵だった。

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――そういう経緯だったのですね。話を戻しますが今回リメイクができたいちばんの要因はなんでしょうか?

時田今回のリメイクでいちばん大きかったのは、社内の関係者のなかで「やりましょう」「やるべき作品です」と推してくれる人たちが多かったことです。

 とくに、うちの部門内。『オクトパストラベラー』のプロデューサーをしている髙橋真志も『LAL』が大好きということで、今回のプロジェクトも『オクトパストラベラー』のプロデューサーとして、1歩引いた形で協力してくれました。そうした方たちの協力がなければ実現できなかったですね。コンスタントにチャレンジし続けたからこそ、開発開始から数えて30周年に近い形でリメイクができました。

――ユーザーとしてもうれしいですが、今回のリメイクは時田さんとしても長年の念願が叶った形なのですね。

時田振り返って考えると、オリジナルの『LAL』は2年開発していたんですよ。オリジナルの開発をして、そこから遊んでいただいた方たちに語り継いでいただき、『LAL』を愛してくれている方たちといっしょに仕事ができて……。SFC版の開発期間の2年間を含め、じつに30年かけて作るリメイクなんです。

 僕が初めてディレクションをして、ゼロから企画を立ち上げたタイトルをこのような形で復活できたので、本当に「ああ、スクエニを辞めないでいてよかったな」と思っています(笑)。

――コンサートもそうですが、過去にも『FF レジェンズ 時空ノ水晶』でコラボをしていたり、時田さんご自身が話題を絶やさないようにしていたのは感じられました。

時田楔のように「忘れていないよ、僕の原点はここだよ!」という意識はありました。『半熟英雄』でもちょくちょくネタを挟んでいましたが、そのおかげでみなさん忘れないでいてくださいましたし、ネットの実況などを含めて、多くのみなさんに語り継いでいただけました。それがあったからこそのリメイクだと思っています。

オリジナルの良さを生かしつつ、現代に合わせた新規要素も

――リメイク版とSFC版との違いについてもお聞きしたいと思います。HD-2Dリメイク版は、オリジナル版になかった新規要素もあるのでしょうか?

時田基本的にはSFC版の良さを生かして、オリジナルの体験を味わえるように作っています。なので、まったく新しいものは入れていません。その代わり、現代にあった遊びやすさとテンポ感。それから、遊びやすい情報量にすることにこだわり、そこはすごく丁寧に制作しました。

 当時はインターネットもなく、とにかくやり込み要素や遊び応えのあるゲームが主流でしたが、いまになって遊び直すと「こんなのわからない!」となるところがあるんですよ。ほぼ28年前のゲームですし、自分で遊んでも「こりゃ、ちょっと幕末編は落とし穴に落ちすぎだろう!」と思っちゃいますから(笑)。

 そこは開発のヒストリアさんからも提案していただけましたし、本当に丁寧に制作してくださっているので、いまのユーザーも満足のいくものになっていると思います。社内のQA(品質保証)にプレイをしてもらったですが、9割から最高の評価をいただけました。自信をもって、お送りできる作品になっています。

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時田あとは、HD-2Dとしてグラフィックも素晴らしくなっていますし、音楽も下村陽子氏監修のもと編曲し、バンドやオーケストラで再録しました。中でも大きいのは、声優さんの演技が入ったことですね。賛否両論はあるかもしれないのですが、僕が当時からイメージしていた声優さんや、いままでいっしょにお仕事をさせていただいた方々、『LAL』をすごく好きだと言ってくれた方々にお声掛けして、僕なりのオールスターでお願いしています。

 本当に多くの方々にご協力いただけて、素晴らしいキャストのみなさんが集まり、素敵なお芝居をしていただけました。これなら、みなさんにも納得していただけるのではないでしょうか。

――声優さんはオーディションではなく、時田さんの指名で選ばれたということですか。

時田はい、僕が全部キャスティングをしました。唯一、とあるキャラだけはオーディションをしたのですが、それはこれから順を追って各編の情報を出していきますので、そのときにお話したいと考えています。とはいえ、基本的には僕が99.9%キャスティングをしています。

――ボイス入りということですが、シナリオだけではなく戦闘中にも声が入るのでしょうか。

時田入ります。ただ、僕は、戦闘中に声が入るのはあまり好きじゃないんですよ。アニメだといいのですが、ゲームで喋りすぎるとパターンが見えてしまいます。なので、無口なキャラはほとんど喋らずに息遣いだけだったり、技名を叫ぶキャラがいたり、メリハリをつけて収録しました。戦闘中も、いい感じのバランスになっていますのでご期待ください。やはり、技名を叫んでほしいシーンもあるじゃないですか。功夫編もそうですし、近未来編も叫んでほしいですよね?

――原始編は「あい~!」しか言いませんし、ウホウホといった効果音しかなく、セリフ自体がないのでどのように収録したのか気になりました。

時田吹き出しでは「あい~」しか喋りませんが、じつは「このシーンでは、ポゴがこういう気持ちでウホウホと言っています」といった注釈付きの台本を緒方恵美さん用に作成して、収録してもらっています。緒方さんならではの優しさもあるし、強さもあるし、愛もある素晴らしいポゴを熱く演じていただけました。

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――シナリオのほうはフルボイスなのでしょうか? それとも『オクトパストラベラー』のようなパートボイスですか?

時田その中間くらいです。NPCは喋らないのですが、メインキャラクターが喋って、ある程度の長さのものは全部喋る形になっています。基本となるイベントは、ほぼほぼフルに近い形でボイスが入っていますね。

――「心じゃよッ!」がボイス付きで聞けるのはうれしいです。

時田みなさんが語り継いできてくださったセリフですから。収録のとき、声優さんに演じていただいて僕がいちばん感動しました。

――ボイス付きということですが、もしかして劇中の『GO!GO!ブリキ大王!!』も、時田さんによる歌付きになるのでは?

時田僕がライブなどで歌っていたので、みなさん気になりますよね(笑)。そこは近未来編の詳細を公開するときまで、もう少しお待ちください。

――音楽もバンドやオーケストラによってリッチになっているということですが、オーケストラコンサートを開催する予定は?

時田その辺は抜かりなく、いろいろと考えて旗を立て続けますので、続報を楽しみにしてください。

――楽しみにしています。ちなみに、BGMだけではなく、効果音も変わっているのでしょうか。

時田いまのリッチな画面に対して、当時の矩形波の効果音だと「えっ?」となってしまうので新たに制作しています。ですが、たとえば近未来編の超能力を使用するときなどの印象的な効果音は、きちんと再現してもらっています。『FFIV』のリメイクをしたときも「バイオの効果音はこれじゃないとダメだ!」といったこだわりがあったのですが、ポジティブな効果音はその印象を残してもらいつつ、システム的な音は今風にしています。

――テンポ感も意識されているとのことですが、当時よりも早くクリアできる感覚でしょうか?

時田バトルのテンポ感はなるべく早くしていますが、いま遊んでも全体で30から40時間くらいはかかると思います。各編を知っていれば30時間以内でもいけると思いますが、初見だと30時間はかかるでしょう。

 トータルで考えるとそれくらいの長さですが、その代わりにリプレイバリューであったり、選択肢の多さであったりといった部分に凝ったゲームです。遊んだ人の数だけルートが違いますし、最終編で主人公を誰にするのかも選べますので、そこをぜひ楽しんで遊んでいただきたいですね。

敵の情報や技性能、細かい原作との違い

――ここからは、HD-2Dリメイク版とSFC版の細かい違いについてお聞きしたいと思います。まず、SFC版ではオープニングデモがありましたが、あれも再現されているのでしょうか?

時田入っています。昔は、ゲームを店頭に置いて画面を流していたので、そこでデモを眺めるから必ず入れていました。

 でも、最近のゲームはオープニングムービーがあっても、ループするデモは意外とありません。今回は開発陣がこだわってくれて、HD-2Dリメイク版なりの見せ場のシーンでデモを作ってもらいました。

――SFC版では、デモ映像のなかにちょっとした攻略のヒントもありましたね。

時田そこも踏襲しています。僕自身が忘れているような小ネタも、開発スタッフががんばってコンプリートする形で再現してくれています。

――幕末編ではものすごい量の隠し要素がありましたが、それらも見つけやすくなったのでしょうか?

時田幕末編は、もともと好きなようにプレイしてほしいのが前提でした。だから、コンプリートしやすいというよりも自由度の高さはそのままに、難易度を低くしています。

 とはいえ、100人斬りが容易くなったわけではありません。僕も普通にプレイしたら65人斬りくらい。まあまあなテストの点数ですよね。でも、やろうと思えば当時100人斬りを目指した人は、100人斬りができるようになっています。初めての人は、情報を集めて当時のように楽しんでもらえればと。

――ということは……あの完全な隠し要素だった「結婚おめでとり~」も!?

時田あれは、本当に内輪ネタなので……(笑)。もちろん入っていますが、見つけやすくしても「意味が分かりません」と言われるので、とくにフォローはしていません。そこはもう、開発スタッフがこだわりで入れてくれました。

『ライブアライブ』HD-2Dリメイクの新要素や変更点を時田貴司氏に訊く。何度も続編やリメイクにトライし断念、浅野チームに合流してついに実現

――細かい変更点と言えば、バトル時に敵のHPが見えるようになりましたね。SFC版では戦闘時にできるだけ数字を表示させないというコンセプトがあったとお聞きしました。

時田SFC版の開発当初は、HPを出さずにキャラクターのしゃがみ具合などでわかるようにしていました。アクションゲームに近い形で遊んでほしくて試作をしていたんですよ。ところが、いろいろと社内で言われて……。当時、開発統括だった坂口博信さんからも「やっぱり、数字を出さないとダメだろ。わかんねえよ」と言われて、チーム内でもいろいろと議論した結果、「数字を見たいという人がいるなら、見せなきゃだめだね」という結論になりました。

 RPGは、突き詰めると数字のマネジメントゲームじゃないですか。ギリギリまでどう効率よくマネジメントをやるかというゲームなので、確かにそうだなと。僕自身はHPやMPなどの細かいことは気にせず、いろいろなキャラクターや、いろいろなシーンを味わってほしいという気持ちで作っていたのですが、効率よく攻めるには数字が見たいと言われたら、それはそうだな……ということで数字を用意する形にしました。リメイク版は最初から敵のHPも数字で見えていますし、細かい属性などもわかるようになっています。

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――そうなると、キューブの“インフォリサーチ”(SFC版では敵のHPを確認できる技)はどうなるのでしょうか?

時田インフォリサーチは別の効果になりました。そこで、スキルの価値を見出しています。

 スキルに関しては、今回の調整に合わせてかなり微調整をしました。印象は変わらないのですが、使い心地が良くなっています。それから「アキラが弱すぎるッ!」と島本和彦先生からも言われましたので、ちゃんとヒーローらしく使い勝手が良くなりました。

――サンダウンの“ハリケンショット”のような強すぎる技も調整されていますか?

時田今回もバトルのバランスをチェックしているのですが、開発当初はハリケンショットが滅茶苦茶強かったですね。

 『LAL』は、連打系の技が強いんですよ。だから、その辺を強すぎないようにしつつ、でもやっぱり連打系で「決まった!」という気持ち良さもあるので、いい感じのバランスに調整しているところです。

――なるほど。技の効果が原作だとわかりにくい部分もありましたが、今回はそこもはっきりわかるのでしょうか?

時田スキルを選ぶときに、ウインドウで効果や属性が表示されるようになりました。初めての人でも、技の内容をわかったうえで使用できます。そこまで細かくは表示されないのですが、どの系統の技か、属性なのかはわかるようになりました。

――当たり判定はどうなるのでしょうか? SFC版では平面でしたが、今回は奥行きがありますよね。SFC版だと絵のある位置に技を出せば当たりましたが、今回は敵の背中にも空間があるので、当たり判定が気になっています。

時田SFC版は、四角のなかへギチギチに敵を描いていたのでわかりやすかったですね。

 今回は厳密にいうとパースが効いていますが、グリッドも表示されますし、効果範囲に色がついてオリジナルと比べてもわかりやすくなりました。スペックの進化で非常に便利になっています。

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――SFC版では、力やレベルのバフやデバフがかかると、頭の上にパネルがボッ、ボッと出てきましたよね。ただ、ハッキリとした効果はよくわからなかった記憶があります。

時田バフやデバフが効いているかどうかの情報も得られるようになりました。SFC版の『LAL』はレベルがすべて、みたいな部分があるゲームでもありましたが、そこも緩和しています。どのキャラでも遊びやすく、バランスをとっている形です。

――まずは通打で敵のレベルを下げて……といったSFC版時代の戦略やバランスとは違ってきそうですね。

時田そういった要素もありますが、あそこまで無敵ではないです。あびせ蹴りも調整したので、あびせ蹴りで延々とハメられることもないですね。

――お話を伺っていると、バトルのプレイ感は当時とかなり変わりそうですね。

時田昔は、本当に使える技と使えない技が極端でした。しかし、いまの時代で初めて遊ぶ方にとっては、スカが出過ぎるゲームは良くないですよね。そこは丹念に時間をかけて調整しています。

――ちなみに、倍速機能などは用意されていますか?

時田イベントはスキップとオートを用意しています。ただ、昔のゲームなので長いところは長いのですが、いまのゲームと比べるとイベントシーンが短いんですよ。だから、なるべく声優さんのお芝居を見てほしいという気持ちもありますね。

 スキップとオートを入れてはいますがテンポ良く見られると思うので、ぜひオンタイムで声優さんの芝居を味わっていただけたらと。

――テンポと言えば、西部編でバーを出入りすると扉がキィキィと長く動いていたのですが、何回も出入りすると少し気になってしまいました。あの演出も短くなっていたり?

時田あそこまでしつこくは見せないようにしました。イベントシーンでは見せていますが、ゲームに入ったらそこまで余韻は見せないようにしています。

 あの演出は当時自分でスクリプトを書いて、ウェイトのタイミングで何回余韻をもたせてフェードアウト……みたいなことをこだわってやっていました。タンブルウィードという丸い草が転がってくるところもそうですが、「ここまでやるのか!」という部分まできちんとやったからこそ、短いシナリオでも各編らしさが出たのだと思っています。SF編で、エアロックから出ると宇宙空間に出てしまう演出もそうですね。

『ライブアライブ』HD-2Dリメイクの新要素や変更点を時田貴司氏に訊く。何度も続編やリメイクにトライし断念、浅野チームに合流してついに実現

――当時といまで変えなければならない演出と言えば、原始編のざきのモザイクや、べるにとあるアイテムを渡したときの演出も修正されているのでしょうか。中世編などに出るセクシーな敵のドット絵も、いまだと危ないような……。

時田さすがに、いまだとコンプライアンス的に厳しいものはあります。とはいえ、限りなくオリジナルに近い形にしていますし、違った表現方法でうまくカバーしている部分もあります。その辺も違いを楽しんでいただけるとうれしいです。

――コンプライアンスを考えると、セリフなども一部修正されていそうですね。

時田「ジャッキーの力、モーガンのパワー」は、あえてそのまま残していますよ。

 あれは、僕もまったく無意識で書いたテキストなのですが、みなさんがネタにしていただいて「ああ、そういえばそうだ。被ってるわ」と気が付きました。でも、まあそれも味かな……? と思って残してあります。あそこにボイスが入って、ちゃんとセリフで言われることによって「なるほど!」みたいに楽しんでもらえるかなと(笑)。

――あのシーンはいいですよね。森部さんだけ「森部とかいうジジイ」と、年齢しか指摘されていなかったのも覚えています。

時田実際に、リアルな格闘技でも年齢には勝てないじゃないですか。だからこそ、高齢な森部のじーさんから受け継いだ技で、突破口を開くというバランスにしていました。

――それから気になった点としては、サンダウンがミルクを飲み続けるなどのループ選択肢がありますよね。今回は、ループを選び続けたあとどうなるのでしょうか?

時田そこもいろいろ議論しましたが、あれは昔のゲームのお約束じゃないですか。だから、そこも当時のままで変えていません。仮に変えるならば、100人斬りや0人斬りのようにどちらも自由にさせるべきですし、正解は正解であるべきなので、そのままで良いかなと思っています。

 それに、あの選択肢は選ばせるというよりも、主人公の気分を味わって欲しくて入れたものです。今回は選択肢を選んだあとにセリフがある場合、その選択肢を声優さんに喋ってもらっています。そうした意味でも主人公気分を味わうためのものですね。

――SFC版そのままということは、現代編の高原日勝の知力25も再現されているのですか? 各主人公の名称決定時に使用できる文字も増えていると思いますが……。

時田知力25に関しては、プレイしてのお楽しみです(笑)。

 漢字はもちろん増えました。当時使用できる漢字が少なかったのは、SFCのメモリが少なかったのが理由です。ゲーム中で使った漢字しか出せないんですよ。いまみたいにフォントを丸ごと持つことはできなかったので、シナリオを検索して使っている漢字でソートしていました。だから、選べる漢字が少なかったのですが、今回はつけたい漢字を使えるようになっています。原始編ではカタカナしか使えないのも変わっていません。

――再現できるところは再現しつつ、良くなっているのですね。再現といえば、現代編の対戦相手選択画面はSFC版のような某格闘ゲーム風とは違っているような?

時田今回はUI担当のデザイナーが、今風の格闘ゲームっぽいものを意識してゴージャスにしてくれました。結果的に変わっただけで、意識して変えたわけではありません。現場が、派手でカッコ良いエフェクトを入れたいと考えた結果、さまざまな格闘ゲームが混ざったようなUIになっています。

 HD-2Dリメイク版では、UIが単純な文字情報だけではなくて世界観を表していますので、そこら辺もぜひ楽しみにしていただければと思っています。そうそう、メニュー画面を開くとキャラクターがいろいろなアニメーションをするんですよ。いわゆるキャンプ画面のような形になっているので、そこも注目していただきたいですね。

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――SFC版では背景やアイコンのカーソルもキャラごとに違っていましたよね。キャンプ画面ということは、メニュー自体がまったく変わっているということですか?

時田はい。いまいる場所のロケーションで、彼らがそのとき何をしているのだろう……といった情景が見られる形になりました。

――実際に見るときが楽しみです。ところで、近未来編(2014年)の年代はそのままなのでしょうか? もう2014年は過ぎちゃいましたが……。

時田すでに、近過去編になってしまいましたね(笑)。ですが、年代をさらに未来にするとスマートフォンが出ていない、インターネットが存在しない、と言われてしまうのでそのままです。昭和も遥か昔になってしまいましたが、「昭和の男」というセリフもありますからね。

――エンカウントするシナリオだと、エンカウント率が高かったイメージがあるのですが、そこも修正されていますか?

時田ランダムエンカウントのシナリオは中世編などに限られていますが、同じマップを行ったり来たりするので、体感としては6割くらいに抑えたいと思っています。

 ただ、エンカウント率は下げつつも、1個1個の戦闘の重みを強くして調整しています。アキラを入れると“逃げる”の代わりに“テレポート”になるのも変わっていませんし、最終編で逃げ過ぎるとヤツが待っているのもいっしょです。

――エンカウント率が下がったということは、100回逃げた時のイベントも回数が変わったとか?

時田そこは変わっていません。キリのよい数字は大事ですから。ただ、SFC版に比べると、エンカウント率が下がったので発生しにくくなっているかもしれません。

――SFC版だと99回逃げた段階でセーブすると大変なことになりましたが、救済措置はありますか?

時田どこでもセーブができる仕様になっていますし、オートセーブも用意されています。昔はセーブデータ数が少なかったのですが、今回は24個セーブ可能です。また、各編ごとに複数セーブもできますので、そういう意味でも救済策になっていると思います。

――好きなシナリオを細かく保存できるのはうれしいですね。絶対、限定版を買いますよ! そういえば、限定版のコレクターズエディションもかなり豪華ですよね。

時田逆にお聞きしたいのですが、いかがです? この内容で満足できそうですか?

――個人的には、ブリキ大王のプラモデルがとてもうれしいです。

時田これは、2年前から準備してきたので気合が入っています。ブリキ大王のプラモデルの箱は、島本和彦先生に描きおろしていただきました。

――アートブックレットなどもありますが、そこに収録されている画像はどこまで収録されていますか?

時田当時、小学館さんの先生方に描きおろしてもらったものに関しては、なるべく掲載するようにしています。いまの時代だと難しいものや海外ではNGになる表現もあるので、すべて掲載できるかはお約束できないのですが、載せられるものはなるべく当時のイラストを収録して、今回の描きおろしも載せられる形で調整しています。

――オリジナルボードゲームに関してお聞きしたいのですが、どういったものなのでしょうか?

時田これは、ホビージャパンのボードゲームチームが制作してくださいました。メインのキャラクターのなかから4人ずつ選び、スキルを使って2人で対戦するゲームです。本編のチェッカーバトルと同じく、位置取りとスキルの効果範囲を考えながら、戦うゲームになっています。

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いまだから明かせるSFC版の制作秘話

――あらためてSFC版(当時)の開発経緯を教えてください。当時、どういう狙いで企画されたのでしょうか。

時田当時は、SFC版『半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!』の開発が終わった直後ですね。そこから、新しい開発チームを作ることになり、それなら自分のオリジナルタイトルを作りたいと考えていました。当時は『FFV』もあれば、『ロマンシング サ・ガ』シリーズに『聖剣伝説2』もあって、『DQV』も出ている時代です。それらの、どれとも違うRPGを作りたかったんです。

 ROMの容量が増えてくるに連れてプレイ時間も長くなっていきました。『サガ』シリーズや『クロノ・トリガー』でもそうだったのですが、プレイ時間が長くなると、オムニバス的な話やマルチキャラクターといったアプローチが増えていましたね。もっとわかりやすく「今日はこのシナリオを遊ぼう」と決めて、2時間遊んでもそれなりに満足感があるお話がたくさん入っているゲームを作りたい、というコンセプトで立ち上げました。オムニバスRPGありきで立ち上げたのが、最初のきっかけですね。

――最初から企画されていたのが中世編で、そのあとからほかの編を作っていく形だったのでしょうか?

時田いいえ。全体的なバランスで考えていました。中世ファンタジー物はすでにたくさんありましたし、あえてクリアしたら出てくるようにして、そこから全体が繋がるように構成しています。中世編ありきではないですね。逆に言うと、いろいろなシナリオをやるために中世編を作りました。

――HD-2Dリメイク版だと、当時は隠されていた中世編が最初から公開されていますね。

時田そこは、マーケティングのスタッフとも相談しました。もう28年前のゲームなのでネタバレしていますし、全部隠すこともないですから。ただし、肝心なことは言わないようにしようと。

 中世編の結末や最終編の詳細に関しては言いませんが、中世編の存在自体は最初から公開しておいたほうが『オクトパストラベラー』を遊んだ人も「あ、良かった。中世編もあるんだ」となりますし、逆に中世編があるからこそのビックリに繋がればいいかなと思っています。

 いまの時代だと、中世編がないと節操がない感じになってしまうという理由もありますね。存在は明らかにしますが、ここから先は、みなさんもネタバレをしないようにご協力よろしくお願いします。

――中世編は『FFIV』におけるセシルとカインの立場を逆にしたようなコンセプトだとお聞きしましたが、あのシナリオの狙いを教えてください。

時田RPGの勇者は約束された英雄じゃないですか。でも、それがもしも違ったらどうなんだろう。それによって、各編が繋がったらどうだろう。そこがおもしろいんじゃないかと考えて、逆転的に描きたかったのが理由です。

 これは、おそらく『DQIV』におけるデスピサロの影響があるのだと思います。『DQ』の主人公は喋らないので、むしろデスピサロのほうが人間らしい気がしてくるじゃないですか。僕は『DQII』と『DQIV』のストーリードリブンな偶数ナンバリングが好きなんですよ。その影響がすごく大きいですね。

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――キャラクターがプレイヤーの手を離れ、喋らなかった主人公が喋り出すシーンの演出も良かったです。

時田ほかのシナリオだと、キューブ以外はみんな喋るのがスクウェアスタイルでしたが、中世編はあえて『DQ』スタイルです。あのシーンのために、そうしているのもあります。今回、オルステッドが最初にボイス付きで喋るシーンは、『LAL』を愛してくださっている中村悠一さんならではのお芝居で、こうご期待ですよ。

――期待しています。2年かけて完成したSFC版『LAL』ですが、発売後に当時のスクウェアではどのような評価をされていたのでしょうか?

時田あのころは、『FFVI』と『クロノ・トリガー』のあいだに挟まれていたということもありますし、任天堂さんの『MOTHER2』と発売日が一週間しか変わっていません。だから、思ったほどは売れなくてIPとして成立するまでは行きませんでした。

 個人的に思ったのは、ROMのサイズが16メガビットだったんですよね。16メガビットのROMは『FFV』と同じなんです。本当は、24メガビットの『FFVI』より前に発売する予定だったのですが、あちらのほうが先に発売してしまった。24メガでキャラクターのサイズもデカくなった画面のあとに『LAL』を見たら、そりゃしょぼく見えるよな……と。32メガのROMだった『クロノ・トリガー』の半分ですから。

 あのころのROMの容量は日進月歩のスピード感ですごかったのですが、売るタイミングが不運だったのもあると思っています。逆に言えば、だからこそいままで語り継いでいただいている部分もあり、知る人ぞ知る作品で「これは語り継がねば!」という方々が熱く語っていただけたから、このような機会に恵まれたのかもしれません。

――『LAL』の内容自体は、当時のスクウェア作品と比べても全然負けていないですからね。

時田当時は、ほかのRPGでやっていないことを全部やろうと詰め込みました。『クロノ・トリガー』を仮想敵として作っていたのですが、まさか『LAL』が終わったあとに自分が『クロノ・トリガー』の手伝いに入れられるハメになるとは……。かなり辛い経験でした。

 でも、それはそれで楽しかったですね。いまこうして『LAL』が復活できたのは、当時の開発スタッフがいろいろなものをぶち込んでくれたおかげだと思っています。そこも含めて、長生きしてよかったです。

――『LAL』はひとつひとつのシナリオ自体はそこまで長くないのですが、セリフのひと言ひと言に決めのパワーがあり、すごく印象に残っています。あのセリフや、シナリオのパワーはどこから生まれたのでしょうか?

時田基本的には、シナリオの段階だと全部作っていません。最初にプロットだけ書いたら、あとはスクリプトで実装しつつ、キャラの動きをつけながらセリフや演出を追加していきました。

 僕が演劇をやっていたせいもあるのですが、エチュード的な作り方ですね。設定だけあって、シーンでディテールを作っていく。実際にシーンを作り、キャラクターを1回1回演じながら、音楽のタイミングを考えながら作っていたので、セリフ1個というよりは総合的な演出でセリフが際立ち、感動してもらえたのでしょう。

 『FFIV』のときからそうなのですが、僕は音楽を流すタイミングには異様にこだわっているんですよ。漫画でいえば、ページをめくるとカッコ良い見開きがきたり、コマ割りがおもしろさのテンポを作りますよね。ゲームの場合は、ボタンを押すときのセリフ送りや戦闘音楽が流れるタイミングが重要だと思っています。

 ほかの作品でもそうだったのですが、マンガのコマ割り的なテンポ感をゲームでどうするのかは、僕がずっとRPGとしてやるべき演出だと思っていて、プレイヤーのみなさんがボタンを良いところで押して気持ちが入ってくれるように調整しているつもりです。そこをちゃんと楽しんでいただけたのは、すごくうれしいですね。

 セリフ自体は、もうド直球なセリフなんですよ。でも「まだわからんか……心じゃよッ!」というセリフでもウインドウをふたつに分けて、そのあいだにボタンを押しているから気持ちの入り方が違うんです。今回は声優さんの素晴らしいお芝居が入っているので、そこもぜひ味わってもらえればと思います。

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――楽しみです。ちなみに、作っていていちばん思い入れがあるシナリオはどれですか?

時田よく聞かれるのですが、どのシナリオもそれぞれ違うので悩みますね。西部編だったら、決闘のところがカッコいい。近未来編だったら、ロボットものをやりたかった。SF編だったら、人間とロボットを描きたかった。どのシナリオもいろいろあるので一番は選べません。ただ、構成で中世編をどう位置づけるのかを考えていくと、やはり中世編の存在がこのゲームの核になるのかなと思っています。

――各シナリオを盛り上げた漫画家さんのイラストも印象的な作品でしたが、小学館の漫画家一同がキャラクターデザインを担うという座組はどのように設定されたのでしょう?

時田タイミング良く縁やおもしろい作家さんが集まっていたのが小学館さんだったんです。小学館さんは、コロコロコミックから始まってビッグコミックまで年齢層の幅が広く、作家さんのバラエティもすごかった。タイミング的にも、小学館さんが『ゲーム・オン!』というゲーム雑誌を創刊するので縁が重なり「ではぜひ、いっしょにやりましょう」と。もちろん、魅力的な作家さんが多かったことがいちばんの理由ではあります。

――キャラクターデザインは小学館さんと話し合って決められたそうですが、漫画家さんのチョイスは小学館さんサイドから提案されたのでしょうか? それとも、時田さんが決められたのですか?

時田小学館さんと話し合いもしましたが、基本的には開発スタッフとも相談してこちらのリクエストに応えていただいた形です。

――当時遊んだときも、近未来編が島本和彦先生の漫画っぽいノリだったり、どのシナリオもイラストを描かれた漫画家さんのイメージにあった内容になっているので驚きました。

時田SFC版の制作当時は、漫画家の先生方にキャラクターデザインを描いていただきつつ、そこから先の細かいシーンを作っていく流れでした。このキャラだったらこう喋るだろう。島本先生のキャラクターだったらこう動くだろう。世界観の中でキャラがどう動くのかという部分に関しては、すごく先生方に力をいただいたと思っています。

 島本先生が描く漫画のように、熱い中にもそれとなくギャグが入る近未来編もそうですね。原始編だったらウンコが出てきますし、そこはもう漫画家さんの個性と世界観が出ています。だからこそお願いしたところもあり、相乗効果で楽しくなったのではないでしょうか。

――いまでも、各先生方が現役でご活躍されていてすごいですよね。

時田それはもう、みなさん当時から独特な世界観を持っていましたし、個性的でしたから。たとえば、田村由美先生は当時『BASARA』を描いておられたのですが、女性の開発スタッフ陣から熱いプッシュがありました。

 当時からゲームがお好きな方で、開発現場にも何回か来ていただいて『FF』や『ロマサガ』を遊ばれていましたし、今回のリメイクもすごく楽しみにしてくださっています。みなさん、本当にますます活躍されているので、僕も負けずにがんばらないとな……とパワーをいただいています。

――漫画家さんの作品を意識したノリもそうですが、各編に名画へのオマージュやパロディも仕込まれていますよね。

時田僕に限らずスタッフもいろいろ考えたので、たくさんあるとは思います。でも、難しいですよね。『LAL』に限らず元ネタを意識しなくても、SFやウェスタンで「これがおもしろい」という要素はあると思うんですよ。世代を超えて受け入れられている作品がおもしろいのは、やはり「ここはこうあるべきだ」という部分を抑えているからだと思います。それはオマージュやパロディということではなくて、「おもしろいものはこうあるべきだ」という部分が普遍的だからです。

 だから、パロディやオマージュをしたというよりも、「このシナリオや世界観ではこれがおもしろい」とやっていった結果なので、僕自身はあまり小ネタを入れてやろうと思って入れてはいません。もちろん入れようと思って入れたものや、現場のスタッフが入れたものはあると思いますし、『半熟英雄』では意図的にやっていましたが(笑)。

 ただ『LAL』に関しては、元ネタではなくイメージですね。SF編であれば、いままで見てきたSF映画の「これは、ここがおもしろい」という部分を集めています。そこを自分のなかで再構成してゲームらしいシナリオにしたので、オマージュと言えばオマージュなのですが、これはほかのジャンルでもそうだと思いますよ。マンガやアニメや小説でも、いろいろあるおもしろさをマンガだったらこうする。小説だったらこうする。とメディアによって変えているので、そこはみなさんが元ネタを探してもらって、その元ネタを見て、どんどんおもしろいジャンルのルーツをさかのぼってもらえればいいかなと。

――元ネタというわけではないですが、キャラクターの名前もおもしろいですよね。

時田SF編はSFで著名なキャラクターの名前を集めたり、功夫編は3人の物語で中国なので、中国と言えば西遊記。そして、功夫といえばジャッキー・チェン、ユン・ピョウ、サモ・ハン・キンポーだろうと決めました。『ジョジョの奇妙な冒険』でミュージシャンの名前を使っていたり、手塚治虫先生もいろいろな俳優の名前を使っていたりですとか、お酒の名前で統一しようとかいろいろなやり方があると思いますが、あえてSF編や功夫編はそういった形にしています。

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――ちなみに、3人のなかでレイが孫悟空なのは、最終編でレイを選んでほしいという意図ですか?

時田それはないです。確かに、女性キャラが少ないとよく言われるんですよ。いまだったら、主人公の半分くらいが女性キャラになっていそうですよね。当時の僕はムキになっていたので、女性キャラが少ないのはそういう理由もあるかもしれません。

 だからレイを使ってほしいというより、3人の違うタイプのなかで女性も選べるから入れたという感じです。でも、みんな最終編まで考えると男だけになってしまうので、レイ一択だとは良く言われています(笑)。

――しかし、稽古を均等につけるとサモが選ばれやすいバランスになっていました。

時田選ばれやすいというよりも、功夫編で均等に稽古をつけた場合は体力的に強いやつが生き残るようにしてあるんですよ。だって、リアルに襲われたとしたら、あの3人のなかでいちばん生き残りやすいのは体力があるサモじゃないですか。だから、意地悪ではなくリアリティを追求した結果です。

――そうだったのですか! 元ネタのお話で思い出したのですが、各シナリオで出てくる“ワタナベ”とは何者なのでしょうか。

時田もともとは、バトルディレクターで近未来編のシナリオを担当していた井上信行のアイデアです。彼が弱い庶民の代表を出したい。「各編で、毎回犠牲になる一般の弱い市民の代表を作りたい」と言ってきたので、よし入れようと決めました。全国のワタナベ君たちには、本当に申し訳ないと思っています。

――ワタナベは、SF編だとアンテナになってましたね。

時田SF編は一般市民がいないので、じゃあアンテナが壊れるからワタナベ社製にしよう。親子アンテナにしたらおもしろいかなと思って、そのために設定を変えました。

――そういう理由だったのですか。SF編はベヒーモスも精神的に怖くて異質でした。あのアイデアは、どうやって生まれたのですか?

時田まだ『バイオハザード』もない時代でしたね。船のなかの人も少なくなっていきますし、ベヒーモスに触れたら即死。まさか、RPGを遊んでホラーゲームになるとは誰も思っていませんでした。

 元ネタといえば『エイリアン』なのですが、宇宙船のなかでどうやってサバイバルしていくかとなると、戦えるはずはないというところからきています。主人公が宇宙船のなかで生まれたばかりのキューブなので、その設定がゲームの世界に入るプレイヤーともリンクするじゃないですか。そう考えたら、やっぱり戦えないだろうなと。

 戦える人間がいるとしたらダース伍長くらいなのですが、伍長とは仲が悪い。それが逆に設定としておもしろいですし、だからこそ最後のラストバトルで「なるほど!」と思ってもらえるのかな、と考えていました。『LAL』のあとにホラーゲームの『ナナシノゲエム』を作りましたが、アレも触れたら即死のゲームでしたね。もうそうなったらおしまい、というのがいちばん怖いんですよ。終わりは終わりなんです。

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――今回のHD-2Dリメイクでも、そこの怖さは変わらずというところですか?

時田はい。じつは僕、お化け屋敷が大嫌いなんですよね。いつ、どこで、何が出てくるのかがわからないのがいちばん怖いからです。『ナナシノゲエム』のときに、富士急ハイランドの戦慄迷宮さんとタイアップしたのですが、僕は行きたくないのに「新しくなったので体験してください」と言われて「いやいや! いいです、いいです!」と断ろうとしたくらいなのですが、やっぱりお化け屋敷は怖い。

 とくに、戦慄迷宮さんは機械仕掛けがなく、全部レベルデザインと驚かす演者さんの怖さで、それは怖いに決まっているなと。「絶対に何かあるだろう」「向こうにいるだろう」と思わせる怖さが増幅されるので、そうした意味でもレベルデザインのおもしろさ=お化け屋敷のおもしろさだと、当時から思っていたことでもあります。

 だから『ナナシノゲエム』を作ったときも、わざとすごく長い通路にしていたり、曲がり角を曲がっていると思ったら後ろから来るパターンだったりしました。ホラーに限らず、レベルデザインやマップの作り方も、お化け屋敷から勉強させてもらいましたね。

――SF編では死角からベヒーモスが来て驚きますが、今回はHD-2Dということでうまく避けられるのかも気になっています。

時田ベヒーモスは大きくなりました。昔はキャラクターと同じサイズだったのですが、今回は大きくなったので、その辺も楽しみにしていただければ。

 マップ自体はSFC版よりゆったりと作られているので、横をすり抜けるのも大丈夫だと思いますが、初見の人はドキドキだと思います。とはいえ、ベヒーモスのスピードに関してはだいぶ調整しました。最初は、僕が遊んでも「いやいや、これは難し過ぎる!」という速さだったので、そこも含めてギリギリまでQAで調整を繰り返しています。

――HD-2Dはマップの奥行きがあって原作と違う感覚になると思いますが、そのあたりはどう解決されていますか?

時田SFC版は上から見下ろしたわかりやすいマップをチップで組んでいて、どこに行けばいいのかわかりやすかったですね。これは絵に凝れば凝るほど発生する悩みなのですが、どこが歩けるのか。どこが入口なのか。リアルに描けば描くほど、階段が見えない……みたいなことがよく起きていました。

 今回のHD-2Dリメイク版は上から見下ろした原作マップをベースにしているので、そんなにわかりにくくないと思います。とはいえ、リアルにこう来たか……と攻めているところもありますし、そこはレベルデザインも含めてQAを繰り返し、トライアル&エラーで調整を繰り返してわかるようにしています。ただ、魔王山だけは複雑で暗く、少しわかりづらいかもしれません。まあ、魔王山ですからね(笑)。

――QAによる調整といえば、最終編でとある主人公を選んだときに、それまでの遊び方によってはボスが強すぎた思い出があります。

時田そこも調整しています。開発は9割がた終わっていて、あとはQAをしながらどう落とすかという最終調整の段階ですが、理不尽なことはないようにしていますね。

 昔は理不尽もおもしろさだったのですが、いまは何かあるとコンテンツをやめちゃう時代じゃないですか。映像もわからなかったら続きを見てもらえないですし、ゲームもイヤな思いをしたらやめてしまう。このゲームは最後まで遊んでもらってこその「なるほど、こういうゲームなのか!」という流れなので、最後まで遊んでもらえる調整にしました。その代わり、やり込み要素はオリジナル同様に用意する、というスタンスで作っています。

――それでは、最後に発売を楽しみにしているファンやこれから遊ぶ新規のユーザーに向けて、ひと言お願いします。

時田みなさん、長く応援をしていただいている方には本当にお待たせしました。そして「なんだ、このゲーム!?」と思っている新規の方には、ぜひ実際に遊んでいただき、各編のおもしろさとゲームならではの構成のおもしろさを楽しんでいただけるとうれしいです。これから、各編のキャスティングやそれぞれの特徴、画面などをご紹介していきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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