ファミ通.comの編集者&ライターが年末年始のおすすめゲームをひたすら紹介する連載企画。ライターのまさんがおすすめするタイトルは、Nintendo Switch版『ヒュプノノーツ』です。

【こういう人におすすめ】

  • ちょっと変わったRPGを遊んでみたい人
  • 物語が魅力的な作品を遊びたい人
  • スマートフォンの名作を遊びたい人

まさんのおすすめゲーム

『ヒュプノノーツ』

  • プラットフォーム:Nintendo Switch、PC(Steam)、iOS、Android
  • 発売日:Nintendo Switch版/2021年10月7日、PC(Steam)版/2022年3月2日、iOS、Android版/2015年2月25日
  • 発売元:アフィリティ
  • 価格:Nintendo Switch版/800円[税込]、PC(Steam)版/未定、iOS、Android版/無料(App内課金)

ヒュプノノーツ トレイラー

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人生はサバイバル。郷愁をくすぐる愛と約束の物語

 『ヒュプノノーツ』は、スマートフォン(iOS、Android)で配信されているRPG。夢の中で他人の半生を追体験していく感動的なストーリーと、物語と絶妙に絡みあうローグライクのプレイ感が魅力的なゲームです。

 スマートフォンの名作RPGと断言しても問題ないほどに素晴らしく、自分も思い入れがあります。本当に大好きな作品のひとつなので、もっと多くの人に遊んで欲しいと思っていたところ……なんと、今年になって追加イベントを加えたリメイク版がNintendo Switchで発売。さらに、2022年3月1日にはSteamでも配信されることが決まり、PCでも遊べるようになりました!

 これはぜひとも語らねば……ということで『ヒュプノノーツ』を全力でプッシュしたいと思います。今年のゲームなのかと言われると少し悩んだのですが、名作はいつ遊んでも問題ありません。それに、今回紹介するのはNintendo Switchのリメイク版なので問題ないでしょう。そんなわけで、私がぜひとも年末年始に遊んでほしいイチオシのタイトル。Nintendo Switch版『ヒュプノノーツ』をオススメしていきたいと思います。

 さて、まずは最初にゲームのジャンルを説明しましょう。本作は、ノンフィールド型のローグライクRPG。行動するごとに減る“時間”を消費してページをめくり、イベントを発生させながらゴールを目指して進むのが基本となります。ゲームブックのようでもあり、テキストアドベンチャーとRPGが混ざったような独得のプレイスタイルですが、間違いなくRPG。敵もいれば、乗り越えなければならない試練だってあります。

人は常に何かと戦い、誰かと出会って救われる。人生という名のRPG『ヒュプノノーツ』【年末年始おすすめゲームレビュー】
ステータス画面の上にあるアイコンが、画面右端の旗までたどり着くとゴール。1歩あるくごとに、何かしらのイベントが発生します。

 舞台となるのは、夢の世界。理想や想像するほうの夢ではありません。“夜、寝ているときに見るほうの夢”です。主人公は夢の中を体験できるという謎の装置を使って、リアルな夢の世界を冒険することになります。なぜ、自分の元に装置が送られてきたのか。“体験している夢”は、何を訴えているのか。夢を通してヒロインの半生を追体験することで、さまざまな謎が明らかになっていきます。

 自分が最初にこのゲームを遊んだときに思ったことなのですが、とにかく導入からプレイヤーを引き込むのがうまい! 大人のプレイヤーが共感しやすいゲームではあると思うのですが、シナリオとゲームシステムが絶妙に絡んで懐かしい気持ちにさせてくれます。

 本作は複数のチャプターに分かれているのですが、主人公の幼少期を追体験する“少年サバイバル”の時点ですごい。ゲームを始めてすぐに、誰もが体験したことのある幼少期から中学生の思春期に入るまでの流れをRPGとして体験できるのです。幼稚園時代は嫌いな食べ物のピーマンやニンジンが敵として立ちふさがり、小学校にあがると算数や国語といった勉強が敵になっていく。高学年になるとイヤな同級生が敵にまわって……。

 いくら夢の世界といっても、敵のバリエーションが自由過ぎませんか!? そうです。現代を生きる我々の敵は、乗り越えなければいけない社会の物事なのです。年齢や立場によって刻々と変わり、人生で立ちふさがっていく悩みや現象を、RPGの敵として表現しています。もう、第1章の時点でグッと引き込まれるんですよ。まったく知らないキャラクターの人生なのに、郷愁を感じてしまう……!

人は常に何かと戦い、誰かと出会って救われる。人生という名のRPG『ヒュプノノーツ』【年末年始おすすめゲームレビュー】
ニンジンや算数とひたすら戦うバトル。よく人生はゲームに例えられますが、本当に人生そのものがゲームとして成立しています。

 RPGのバランスとしてもおもしろく、チャプターごとに攻略するためのテクニックや必要なパラメータが変わってくるのも特徴的。第1章では、イヤな同級生や虫などの“力”で対抗できる敵もいれば、勉強のように“知恵”が必要な敵も出てきます。どこで逃げ出すか。何と戦うのか。最後に待つボス戦に向けて、どこまで強化していくか。仲間が加わったり、別れたり……とても異色ではあるのですが、これは間違いなくRPG!

モラトリアムの時代から、牙を剥く“社会”と戦う大人へ

 郷愁をくすぐる第1章から打って変わって、第2章からはヒロイン・茉理の記憶を体験していくことになります。多感な時期に深く傷つき、あてもなく街をさ迷う少女の敵は、自己嫌悪や不安。パラメータも、そうした気持ちと戦うために“意地”や“希望”の概念に変わっています。せ、切ない……。

人は常に何かと戦い、誰かと出会って救われる。人生という名のRPG『ヒュプノノーツ』【年末年始おすすめゲームレビュー】
明るかった第1章とは、全然違う雰囲気の第2章。襲ってくる敵への対処や攻略もまったく違います。なんと、独創的なゲームなんだ!

 パラメータを下げるアイテムの“甘えたい気持ち”が手に入ったら捨て続け、意地を張りながらも補導されないように逃げ回る。高校に入れば煩わしい人間関係が敵となり、大人になればお金や同僚との関係も悩みの種に……。年齢に応じて、戦うべき相手もゲーム性もコロコロ変わります。

 傷つき苦しむ女性の人生を体験しながら、大きな物語を読み解いていく。これは、紛れもなくゲームでしか描けない物語でしょう。

人は常に何かと戦い、誰かと出会って救われる。人生という名のRPG『ヒュプノノーツ』【年末年始おすすめゲームレビュー】
どんどん進むだけではなく、ときには下がって簡単な場所でレベルを上げたり、勝てる相手と戦うのも重要。人生には、引くことも意味があるのです。

 敵の攻撃やランダムイベントで、自分の状態が良い方向にも悪い方向にも変動する変わった仕組みも。ローグライクなのでランダムイベントが発生するのですが、このゲームでは状態変化が頻繁に発生します。しかも、自分の意志で状態を変えるアイテムは意外と貴重。だから、自分をマイナスな状態にする敵やイベントは、なるべく避けるのもポイントです。あくまでも“状態”が変わるのであって“状態異常”ではないんですよね。異常ではなく、変化することは誰にでもありますから。

他人の人生を追体験できる良質で切ないRPG

 システムの面からキャラクターの年齢や立場に合わせた生き様を表現している本作は、広い意味でのロールプレイングゲームであるとも言えます。もちろん、ローグライクとしても良い出来。どの章も最初は難しく感じるかもしれませんが、的確な対処法や攻略が存在しています。そこを考えて乗り越える楽しさは、ゲームでしか味わえないものですね。道中では、アイテムを買える“魔法少女マッチの店”があり、アイテムの引き次第で一気に良い方向へ転がる辺りもローグライク。

人は常に何かと戦い、誰かと出会って救われる。人生という名のRPG『ヒュプノノーツ』【年末年始おすすめゲームレビュー】
魔法少女マッチの店で買える“必殺技”は、ボス戦で必須。ヒントも役立つので、よく聞いておきましょう。

 メインとなるストーリーも心打たれる良い話。何よりも自分の手で実際に遊び、ランダムイベントや状態変化を経ながら最後まで進んでいくゲームプレイ自体が“人生の追体験”として完成しています。自分の手で遊ぶからこそ、登場人物に共感できるのです。

人は常に何かと戦い、誰かと出会って救われる。人生という名のRPG『ヒュプノノーツ』【年末年始おすすめゲームレビュー】
主人公、茉理、そして飼い猫のこげまる。夢を通して描かれていく絆と物語の結末を、実際に遊んで見届けてほしい! 自分で遊ぶことに大きな意義があります。

 これ以上語ると楽しみを奪いかねない(すでに、だいぶ説明しているので本当はレビューを読まずにすぐ遊んでほしい)のですが、あえて後半の話をすると大人になってからのシステムが本当に好きなんですよ。

 強い女性として自立した茉理。彼女が次々と襲ってくる仕事と戦いながら、使える男を取っ替え引っ替えしていく構造に、イヤなリアリティがあり過ぎる。こんなRPGは、いままで遊んだことがないですよ……! この章の難易度は結構ぬるいのですが、気持ち的にはなかなかシビアです。

人は常に何かと戦い、誰かと出会って救われる。人生という名のRPG『ヒュプノノーツ』【年末年始おすすめゲームレビュー】
“男”はアイテム扱いなのでバンバン捨てられます。頼りにならない男は捨てて、どんどん新しい男を手に入れましょう。こわいよ~。

 RPGのバトルというシステムを使って、ここまでひとりの半生や行動を表現できるのかと思わず感心してしまいました。

 第1章の時点でもよく出来ているのですが、年齢ごとに異なるゲームのルールが本当に秀逸。ゲームブックやアドベンチャーのようでもあり、でもしっかりとRPGになっているんですよ。発想としても発明だと思います。

人は常に何かと戦い、誰かと出会って救われる。人生という名のRPG『ヒュプノノーツ』【年末年始おすすめゲームレビュー】
自分は捨てられるほうの役に立たない男なので、ストレートな助言が刺さりました。そもそも、茉理に拾ってすらもらえませんが……!

 生きることは戦うこと。誰もが形を変えて何かと戦い、誰かに助けてもらいたいと願って、誰かを助けて生きている。優しさと残酷さのある物語を通して遊び終えたときに、きっと生きるうえでの勇気をもらえると思います。

 ゲームという媒体でしか表現できず、ゲームだから表現する意味がある物語。自分が遊んできたなかでも、まさに最高のRPGのひとつに挙げられるタイトルです。どうか、私を……いや、私は信じなくてもいいので、ゲームのおもしろさを信じて遊んでみてください。ほかにない体験を保証します。

まさん
 フリーランスで、インディ―ゲーム関連の記事を担当するライター。メジャーなゲームではアトラス作品を深く愛しており、『真・女神転生』シリーズの話をし始めると、延々と止まらなくなる。愛が深すぎて怖いと言われ、記事を担当していないときも多い。
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