連載最終回で引用された過去コラムをご紹介!(その4)

 『大乱闘スマッシュブラザーズ』や『星のカービィ』など、数多くのヒット作を生み出してきた稀代のゲームデザイナー桜井政博氏が、週刊ファミ通にて連載を続けてきた人気コラム「桜井政博のゲームについて思うこと」。

 2003年以来、なんと18年7ヵ月にわたって綴られてきたこのコラムが、いよいよ本日(2021年11月4日)発売の週刊ファミ通2021年11月18日号に掲載される第640回にて、最終回を迎え、長い歴史に幕を下ろします。

 そこで、桜井さんへの限りない感謝を込めて、週刊ファミ通2021年11月18日号(2021年11月4日発売)は、特集も桜井さん、表紙も桜井さんの、桜井さん特大号としてお届け!

桜井さんコラム

 そして最終回に向けて2021年11月1日から掲載してきた本誌連動カウントダウン企画も、4回めの本稿で最終回。週刊ファミ通で過去に掲載されたコラムの中から、最終回のコラム内で引用されている回を公開します。2021年11月4日発売の週刊ファミ通に掲載されるコラム最終回と合わせてご覧ください。

 今回紹介したコラムは、単行本第7巻『桜井政博のゲームを遊んで思うこと2』、単行本第9巻『桜井政博のゲームについて思うこと2015-2019』に収録されています。単行本はKindleでいつでも購入できるので、もっと読みたいと思った方は、ぜひ購入をご検討ください。

桜井さんコラム
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※以下、単行本より引用して紹介します。

VOL.431 ゲームしながら運動のススメ

週刊ファミ通2013年7月25日号掲載
※単行本『桜井政博のゲームを遊んで思うこと2』収録。
※掲載当時の内容に、一部ファミ通編集部が編集を加えたうえで掲載しています。

 べつに『ファミリートレーナー』や『ダンスダンスレボリューション』をしようってわけではありません。じつはわたし、右腕の疾患がまだ治っていないのです……。すでに半年以上が経過しているけれど、よくなる気配もなく、横ばい状態。おもに前腕の鈍い痛みと、腕を上げたときの上腕の痛み。昔のように、ちょっと触れただけでビキッと痛むことはなくなったので、日常生活に差し支えはありません。が、毎日この仕事量をこなしている限り、またアクションゲームを作っている限り、ずっと治らないのかも……? そこで困ったことが。週一で通っていたジムになかなか行けなくなってしまいました。
 いや、行こうと思えば行けるのですが、第一に週一で鍼灸院などに通うことになったので、週二度の時間確保は仕事量的にキビしいこと。第二に腕の都合で大半のウエイトトレーニングができなくなったため、ジムに通う意義が薄れたこと。これらが足を遠のかせます。
 なお、プールはというと、通っていたジムのプールが臭すぎて、ちょっと耐えられませんでした。なにか、沼のようなニオイがするので……。そうでなくてもクロールや平泳ぎは手が動かないのでできません。しかし、せめて運動はしなければなりません。運動なくして健康でいられるほど、元気でも若くもありませんし。運動、大キライだけどがんばるわけです。
 そこで、家でエアロバイクを漕ぐことにしました。思いのほか、これが効く。下半身運動だけだと思い、また運動強度的には軽めに感じるのでいままで軽視していたのですが、ちゃんと動かせばしっかりとカラダが締まってくるし、何より“苦にならない”
 フツーにペダルを漕いでいるだけでは苦しいだけ。実際、ジムでも退屈そのものでした。しかしいまはある方法で、まったく自然な習慣として継続しています。それは単純に、ゲームをしながらエアロバイクすること。
 ソフトは『マインクラフト:Xbox 360 エディション』や『テラリア』などのエディット系が最適。ただでさえ時間ドロボーで、ひたすらハマってしまうタイプのゲーム。据え置き機でプレイすれば、運動で画面がブレることもありません。操作もあまり激しくないし。
 『マインクラフト』は、伐採や採掘で得た素材で道具や装備や家を作るゲーム。『テラリア』は、伐採や採掘で得た素材で道具や装備や家を作るゲームです。……。同じじゃないかって? まぁ、『テラリア』は『マインクラフト』を露骨に参考にしていますね。大きな違いは、横画面で遊びやすいことと、対モンスター戦なども主眼に置かれていること。
 が、どちらもとにかくおもしろい。肌に合うなら超オススメ。すんげえおもしろいです。時間が経つのを忘れてプレイしてしまう。
 で、没頭するということは、エアロバイクをどれだけ漕いでいたのかも忘れてしまうということで。仕事はやっぱり忙しく、だいたい帰宅が深夜12時前後。その後エアロバイクで2時間超。風呂に入って就寝が午前3時すぎ。翌日午前10時までに出社するなら、このあたりがギリギリの線です。運動する必要があり、ゲームもしたいと思い、重ねてしまった。そしたらうまくいった。たいへんよろしい結果になったので、皆さんにもオススメしておきます。
 ところで、腕についてはTwitter上に#YouCanDoItSakuraiというハッシュタグが出現し、海外の何百人もの方から励ましのメッセージをいただきました。この場を借りて、ありがとうございます! 

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『マインクラフト:Xbox 360 エディション』
言わずと知れた『マインクラフト』。わたしの家は、炎と小麦で囲まれています。
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『テラリア』
『マインクラフト』より目的意識が明確。横画面で遊びやすいです。

VOL.479 職人の競争

週刊ファミ通2015年6月11日号掲載
単行本『桜井政博のゲームについて思うこと2015-2019』収録。
※掲載当時の内容に、一部ファミ通編集部が編集を加えたうえで掲載しています。

 最近、アニメがすごく多いですね。2014年度における新作アニメ放映本数は、およそ190本!! 5分アニメなどもあるから規模はピンキリだけど、これはすさまじい数ですよ。1本作るのにも、相当な人数が動かなければならないのに。もっとも、ゲームのほうが本数多いですけれども。アニメ以上にピンキリと言えますけれどね。
 JAniCA(一般社団法人 日本アニメーター・演出協会)というところがありまして。そのWebサイトで、現場で働くアニメーターからのアンケートを集めた“アニメーション制作者実態調査”というレポートを公開しています。現場の方の生々しい声がそのまま掲載されています。興味がある方は“アニメーション制作者実態調査”で検索してぜひご覧いただければと。

桜井さんコラム
JAniCAのサイト。レポートはいちばん上にリンクされています。PDFです。(連載当時)

 ここで意見をまとめるのは無理ですが、やはり苦しいことが多いようです。何より、賃金が作業量の割にとても安い。中抜きもありそうだ。動画1枚200円程度では生活が立ち行かない。年間本数が増えすぎ、でも質はHD画質で劇場版クラスのクオリティーを求められる。単価が均一なので、クオリティーが高いものを作るほど、難しい仕事が舞い降りて来て結果的に損になってしまう。休日出勤当たり前。消費税をかけられるが、払われない。スケジュールが不安定。社会保険も生活保障もない。企画がありきたりで変化がない。それでもこの仕事を続けるのは「好きだから」。根性論に陥りがち。
 人によって考えかたはまちまちで、いろいろなことが書かれていました。なので上のまとめも適切なものではありません。直接お目通しいただくのがいちばんです。
 一部を除き、アニメーターの仕事が現状かなりきびしいのは、隠せない事実です。しかし、低収入、キツイ仕事だからと見下しているような風潮には、大いに、力強く異を唱えたいところです! 
 アニメーターは、職人です! ほかの人にはできないことをすることで、多くの人を喜ばせるための集団です。だから、健やかであってほしいと思うのです。
 競争があるのは、避けられないことでしょう。現在放映中のアニメは明らかに多すぎ。ということは、コンテンツ的にも制作者側にも競争相手が多いということ。ひとりの賃金面だけ見てみても、同業種はもちろん、海外に発注した場合のコストとの競争もあります。日本で海外基準の賃金になったら、そりゃあ太刀打ちできません。
 労力に見合わない仕事はやらなきゃいい、という考えかたもあるでしょう。が、やめた仕事はほかに取られていくので、競争は止まりません。引き続き仕事を続けられる者は、競争に勝ったからだと言えるのかもしれません。
 一般的な見解だと断りつつ書くと、最近のゲーム業界はこれほどまでにスタッフに無理がかかることは少ないです。多くの場合コンプライアンスは厳守するし、賃金が少なくとも給与は順当に支払われるし、競争に負けた場合会社が潰れるだけ。作り手にまだやさしいほうです。外注の一部など、例外はあるかもしれませんけどね。
 しかし、くり返しますと。“職人”が「好きだから」という理由で続けている仕事なのですよね。すべての職人がまんべんなく食べていけるような平和な世界を夢見ているわけではありません。しかし、いろいろな人が職人の存在を意識することで、ものの見かたが少し変わるのではないかと感じ、今回のコラムに起こした次第です。
 わたしも職人と言えます。いい仕事に恵まれているほうだとは思うのですが、つねに紙一重。彼らと何も変わらないと感じています。

桜井さんコラム
レポートの一部。中盤から年齢、性別、職業順にさまざまな声が入っています。
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