2021年7月27日発売予定のNintendo Switch、プレイステーション4、PC(Epic Games Storeでの発売は2021年夏予定)用ソフト『新すばらしきこのせかい』。発売が来週に迫った今回は、キャラクターデザインを担当した野村哲也氏、小林元氏、山下美樹氏にキャラクターのデザインコンセプトなどはもちろん、名前やキャスティングについても話しをうかがった。
※『新すばらしきこのせかい』の情報まとめなど、関連記事はこちら
『新すばらしきこのせかい』(Switch版)の購入はこちら (Amazon.co.jp) 『新すばらしきこのせかい』(PS4)購入ページ(Amazon.co.jp)野村哲也氏(のむら てつや)
クリエイティブプロデューサー&キャラクターデザインを担当。『FF』シリーズの多くでキャラクターデザインを手掛け、『キングダム ハーツ』シリーズ、『FFVII リメイク』などではディレクターも務める。そのほか、携わった作品は多岐にのぼる。
小林元氏(こばやし げん)
キャラクターデザインを担当。前作『すばらしきこのせかい』でも野村哲也氏とともにキャラクターデザインを手掛ける。携わったおもな作品は『スクールガールストライカーズ』や『サガ3時空の覇者 Shadow or Light』など。
山下美樹氏(やました みき)
キャラクターデザインを担当。携わったおもな作品は『キングダム ハーツ アンチェインドχ(キー)』や『キングダム ハーツ ユニオンクロス』など。
平野智彦氏(ひらの ともひこ)
プロデューサー。
『すばらしきこのせかい –Final Remix-』や『ファイナルファンタジーX/X-2 HD リマスター』、『ファイナルファンタジー デジタルカードゲーム』のプロデューサーなどを務める。
――『新すばらしきこのせかい』は、バトルがチーム戦になり、新キャラクターも多数おり、登場キャラクターが多い作品になっています。新たに山下さんがキャラクターデザインを担当されていますが、どのキャラクターを誰がデザインするか、というのはどのように決められたのでしょうか。
小林プロットをベースに、どういうキャラクターが必要かというのを考えていき、野村さんが担当するキャラクターは最初に決まっていたので、それ以外を私と山下のほうで、単純に描きたいキャラクターや得意そうなキャラクター、といった観点から決めていきました。前作にも登場したキャラクターは、別の人間がアレンジしたほうが違った味が出るだろうということで、山下に担当してもらったりだとか。その後は、私はゲーム内の2Dイベントのイラストの作画の作業などもありましたので、山下に多めにキャラクターデザインを担当してもらいました。
キャラクターデザイン担当一覧
野村哲也氏
- リンドウ
- クボウ
- ショウカ
- ツグミ
小林 元氏
- フレット
- シイバ
- モトイ
- ススキチ
- ヒシマ
山下 美樹氏
- ナギ
- ミナミモト(オリジナルデザイン:野村哲也氏)
- アヤノ
- カイエ
- カリヤ(オリジナルデザイン:野村哲也氏)
- ヤシロ(オリジナルデザイン:野村哲也氏)
- フウヤ
- カノン
- ココ(オリジナルデザイン:小林 元氏)
本作で新たに登場するキャラクターの名前にはルールが存在
――やはり野村さんが描くキャラクターは「重要キャラなのでは!?」と思ってしまうのですが(笑)。
野村そうなりますよね? でも、今回はどうでしょう。
――クボウが野村さん担当というのが意外でした。
野村クセが強いヤツを入れたくて、当初シナリオにはいなかったんですが、自分から提案したんです。
――前作もそうでしたが、どのキャラクターも多かれ少なかれクセは強い印象です。そして、ファイナルトレーラーの最後には、新キャラクターが出てきましたが、あのキャラのデザインは……?
野村自分です。
――ですよね(笑)。
野村彼に関しては何も語れないので、しばらく忘れてください(笑)。
――はい(笑)。また、これも詳しくはお答えできないと思いますが、発売日発表トレーラーの最後に登場した、ネクらしきキャラクターは……。
野村あのデザインは小林だよね?
小林はい。彼についてもいまは言えないことが多いので……。
――今回は謎キャラが多いですね(笑)。では、主人公リンドウたちが結成するチーム“ツイスターズ”のキャラクターデザインのコンセプトをおうかがいできれば。リンドウに関しては、以前のインタビューでおうかがいしたので(※)、フレットとナギについてお願いします。
※リンドウのデザインコンセプト
リンドウは当初、自分の言葉を直接口に出さず、SNSを通して発するタイプのキャラクターという設定。マスクはネクのヘッドホンと同じく、他者との距離感の表現で、その象徴になっている。ただ、実際のゲームではフレットの影響もあって、それほど無口ではないが、自分の意志ははっきりと言わないというか、決断は他人に委ねるようなところがある。
小林フレットは、リンドウの友だちで相棒的な立ち位置、ノリが軽いチャラめの性格、というイメージを膨らませてデザインしていきました。リンドウとの会話が多いため、並べて見られることも多いので、リンドウとの差を明確にする意味でもパーマを当てたウェーブの髪にしたり、派手な柄を採り入れた服装にしたりして、軽さが出るようにしています。
山下ナギは、“推しへの尊み”が強すぎる女子で(笑)、オタクという方向に振ったほうがいいだろうと思い、私の中のオタクのイメージを煮詰めた感じのデザインに着地しました。
――“推しが尊い”という文字がデカデカと入っているTシャツを着ていたり、推しのマスコットを持っていたり、たしかに、煮詰めたわかりやすいデザインになっていますよね(笑)。
山下背負っているリュックには、推しキャラの缶バッジがたくさんついているので、バトルでぜひ確認してほしいですね。
リンドウと同級生のお調子者で、ともに死神のゲームに参加する。人と楽しく会話することが好きで、誰とでも打ち解けられる特技を持つ。一方で重苦しい空気を嫌い、真面目な話し合いは無意識に避けている。適度にノリがよく、渋谷散策に付き合ってくれるリンドウとはいい友人関係。
死神のゲームの参加者。渋谷在住の女子大生だが、見た目からは中学生と間違われることもある。趣味への情熱に溢れ、趣味のために生きているといっても過言ではない日々を送っていた。他人の心の動きを見極めるのが得意で、真意のわからない上辺だけの対応をする者には冷やか。
――ミナミモトなど前作のキャラクターデザインも山下さんですが、前作キャラはどういった方向性でアレンジを?
山下ミナミモトは、私が『新すばらしきこのせかい』のキャラクターデザインに加わることになって最初に任されたキャラクターなのですが、ミナミモトっぽさ、渋谷っぽさを意識するなかで、どんどんわからなくなってしまって。最終的には野村さんから「今回のミナミモトはこんなイメージ」といった資料をいただいて、それを参考にさせてもらいました。
――今回、ミナミモトのコートの柄に爬虫類っぽい柄が入ってるのは、北虹 寵(キタニジ メグミ。前作で渋谷の死神たちを束ねていた)っぽいなと感じたのですが、何か意図はあるのでしょうか?
野村あれは自分の指定ですが、北虹のようなエグいインパクトがデザインに欲しかったからです。ただ、北虹はパイソン柄、今回のミナミモトはクロコダイル柄なので、ふたりに繋がりがあるわけではありませんが、北虹へのオマージュではあります。
死神のゲームの参加者。並外れたサイキック能力の持ち主で、ピンチに陥ったリンドウたちを助け、そのまま強引に仲間となる。あらゆる未来の可能性を独自の式で計算し、そこから導き出された数値に則って行動しているようだが、周囲の者にはまったく理解ができない。その鋭い視線は、リンドウたちとは違う場所を見ているようでもある。
――現在配信中の体験版ですが、その体験版などからリンドウは奏 竜胆(カナデ リンドウ)、フレットは觸澤桃斎(フレサワ トウサイ)、ショウカは桜音紫陽花(サクラネ ショウカ)と本名が明らかになりました。本作ではキャラクターの名前に(現在明らかになっている限りでは)共通して花の名前が入っていますが、これは花のイメージがキャラクターに反映されていたり?
野村じつは……こう見えて、自分は花が好きなんです。
――それは意外……ということもないですけれど(笑)。
野村当然、それが理由ではなく、キャラクターの名前には花の名前以外のルールもあり、リンドウなど自分が名前を考えたキャラクターもいますが、多くはそのルールに基づいてシナリオライターが名前を決めています。
――別のルールが……。渋谷死神には名前に十二支が入っていました。新宿死神にも何かルールが?
野村ゲームの参加者、新宿死神に限らず、本作で新たに登場するキャラクターはある共通のルールで名前がついています。
左からショウカ、クボウ、アヤノ、シイバ、ヒシマ、カイエ。シイバが新宿死神のトップに君臨している。
――ちなみに、花の名前はキャラクターデザインや性格などに反映されているのでしょうか?
野村とくに反映はされていないと思います。ただ、あまりにイメージとかけ離れているのも違和感があるので、花言葉などはいちおう調べました。
――野村さんがデザインを担当したショウカ(桜音 紫陽花)には、桜と紫陽花のふたつの花の名前が入っているのも気になります。
野村じつは、“桜音”という名字は、10年くらい前に自分が考えていた構想では『すばらしきこのせかい』の次回作……つまり本作の主人公につけようと思っていた名前だったんです。前作の主人公である桜庭ネクの“桜庭”と響きが近いからそうしようと思っていたのですが、リンドウには“カナデ リンドウ”という響きのほうがしっくりきたので、“桜音”という名字はショウカに譲った形になりました。
――新宿死神たちには渋谷死神たちと違って羽が生えていないのですが、この理由は?
左からココ、ヤシロ、カリヤ
小林前作でもあった設定なのですが、死神のレベルが上がるほど羽は小さくなるんです。
――新宿死神たちは総じてレベルが高いということですね? ショウカのフードや、ルーインの謎の少女ツグミが持っているぬいぐるみもそうですが、本作では“にゃんタン”モチーフのものがいろいろ登場しているのも大きな特徴ですが。
野村ツグミやにゃんタンに関しては、ゲームをプレイして確認していただければ。いまは何も言えないですね。
――『すばらしきこのせかい -Final Remix-』で追加された新シナリオ“A NEW DAY”に登場したココは、印象が大きく変わりました。どういったコンセプトでアレンジを?
山下ココは本作でデザインを一新してほしい、というオーダーがありました。前回は原宿系を全面に押し出したキャラクターだったんですけれど、本作では「いまのココがかわいいと思っているものを着せよう」ということをコンセプトにしました。ただ、どんな服装がいま風なのかがピンとこず、街でよく見かける服装も描いてみたのですが、インパクトも考慮してお姫様系にたどり着いたという感じですね。わかりにくいのですが、髪にインナーカラーを入れ、グラデーションもかかっています。
――おお、注目してみます。それ以外に伝わりづらいかもしれないデザイン面の設定やこだわりはありますか?
野村フレットとリンドウには似たようなスニーカーを履かせていて、仲良し感を演出しています(笑)。
小林体験版で気付かれた方もいると思うんですけど、バトル中などのフレットを見ると、パンツに帽子をひっかけていて、「ふだんはキャップをかぶっているのかも!?」と思わせる感じになっています。
――ファッションで気づいたのですが、ファイナルトレーラーで実際にあるアパレルブランド“BLACK HONEY CHILI COOKIE”のショップがさり気なく登場していましたが……。
野村“BLACK HONEY CHILI COOKIE”の高原さん(高原 啓氏)とは、Roenのデザイナーをしていたころから親しくさせていただき、『KINGDOM HEARTS PERFECT BOOK』などでグッズをデザインしていただいたりはしていたんですが、また機会があれば、という話はさせていただいていました。『新すばらしきこのせかい』はファッションとの親和性も高いので、今回、お願いしました。
――先ほど“いま風”という言葉も出ましたが、前作の渋谷といまの渋谷も大きく変わりましたが、ショップやファッションの流行などリサーチもたいへんだったのでは?
小林現地に何回かリサーチに行きました。
野村そもそも小林は、前作のときは大阪にいたんですよ。
――大阪開発の所属だったのですね?
小林はい。いまは東京なのでリサーチしたいときにすぐに渋谷に行けて便利だと思っていたんですよね。コロナ禍で外出しづらくなるとは思いませんでしたけど……。
山下私は、渋谷に行くのはちょっと恐怖心があったのですが(笑)、勇気を出していろいろと見て回ったり、インターネットで流行を調べたりもしました。
野村渋谷はつねに変貌を続けていて、完成形が見えづらいので難しいですね。
――『すばらしきこのせかい』はいまの時代の渋谷を切り取った作品、ということでもユニークですよね。前作をあらためてプレイしても、14年前当時の雰囲気などが感じられますし……。
実況動画を見て「ススキチはこの声だ!」と
――ボイスキャストでは、ススキチの声を少年役などを担当することが多い花江夏樹さんというキャスティングも意外に感じました。
野村それは花江さんご本人からも訊かれました(苦笑)。小林のススキチのデザインを見たとき、自分の中では声が超甲高いイメージだったんです。
――ああ、たしかに、見た目のイメージとギャップのある声の方ってときどきいますね。
野村はい。ススキチはそういうギャップのあるキャラクターというイメージを持っていて、あるとき花江さんのYouTubeチャンネルの実況動画で盛り上がっている場面を見て、「ススキチはこの声だ!」と。声優さんの実況動画を見て、「この声なら……」と考えることはよくありますね。また、声優さんに限らず、実況動画はよく見ます。
――昨年大ヒットしたアニメを観て、とかそういう理由ではなく、実況動画というのは時代を感じます(笑)。ススキチは独特の話しかたも特徴的ですが、そのあたりは収録時にいろいろ試行錯誤をしながら?
野村自分も現場で仕上げていく形になるのかと思っていたのですが、花江さんはしっかりと台本を読み込んで役作りをしてから収録に臨んでくださって、最初からあの感じで演じてくれましたので、すぐに「これだ!」と思いました。
――ツイスターズのキャスティングはどのように?
野村『すばらしきこのせかい』は基本的には、自分が関わった作品ではキャスティングしたことがない方で考えています。リンドウ役の内田雄馬さんは、以前から機会があればと考えていましたが、今回のリンドウ役は当然ながら、『すばらしきこのせかい』の主人公、という意味でハマリ役だと感じていました。その理由は、どことなくネクを感じる声なんです。その辺はぜひ本編で確認してください。フレット役の沢城千春さんは、以前、自分と小林が関わった『アイドルファンタジー』(スマホ向けゲームで現在はサービス終了)のころから「いいな」と気になっていたひとりで、出演されていた配信番組なども見て、何か機会があったらメインキャラで頼みたいと思っていました。ナギ役の片平美那さんは、自分の関連タイトルの音響監督をずっとやってくださっている清水さん(清水洋史氏。東北新社所属の音響監督)の推薦ですね。ナギのキャラクター性を話したら、片平さんを推されました。実際、ナギそのものでバッチリとハマりましたね。ミナミモト役の藤本隆行さんは前作、そしてアニメも含め、ミナミモトを愛してくださっているので、安心してお任せできしました。
――では、最後にいよいよ発売を迎える『新すばらしきこのせかい』について、プロデューサーの平野さんからまとめのコメントをいただければと。
平野本作にはユニークなキャラクターが多数登場します。現在配信中の体験版では登場しないキャラクターも多くいますので、製品版を買って確かめていただけたらと思います。