2021年2月25日より配信中の、スマートフォン向けゲームアプリ『日向坂46とふしぎな図書室』。

 同作は、アイドルグループ“日向坂46”のメンバーたちが登場する、戦略バトルRPG。プレイヤーは彼女たちとともに物語が壊れかけた本を救っていく仲間となる。

 バトルパートは、タイミングよくメンバーを出撃させ、スキルを駆使して戦っていくタワーディフェンスバトルとなっており、縦画面で片手で遊べるのが特徴。また、鎧や甲冑、近未来のバトルスーツなどに身を包んだ、カッコいい日向坂46メンバーの姿を楽しめるのも魅力のひとつだ。

【ひな図書】2021/01/21 PV第2弾

 サービス開始からまもなく半年を迎える本作だが、タワーディフェンスというジャンルを筆頭に、アイドルを題材にしたゲームらしからぬ新機軸の内容になっている。また、前述の鎧を着た日向坂46メンバーの姿は実写とCGの融合で、3Dのゲームを作るような労力がかかっているという。

 今回、本作の制作を手掛けるフィラメントの西沢学氏、田邉木実子氏、星昌和氏と、パブリッシャーであるソニー・ミュージックソリューションズの小西彩加氏にインタビューを実施。制作秘話や、ストーリーとデザインにおけるこだわり、2021年7月20日から開催される新イベント“ヒナタザカ・サーガ”などについて伺った。

※日向坂46 丹生明里さん、松田好花さんインタビューはこちら

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西沢学氏(にしざわまなぶ)

株式会社フィラメント クリエイティブディレクター/取締役
(文中は西沢)

田邉木実子氏(たなべきみこ)

株式会社フィラメント ナラティブデザイナー
(文中は田邉)

星昌和氏(ほしまさかず)

株式会社フィラメント アートディレクター
(文中は星)

小西彩加氏(こにしあやか)

株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ 『日向坂46とふしぎな図書室』の運営を担当
(文中は小西)

日向坂46ファン以外のユーザーも楽しめる、ほかにはないアイドルゲームを目指して

――『日向坂46とふしぎな図書室』(以下、『ひな図書』)は、タワーディフェンスをベースにしたゲームになっています。これは、アイドルゲームとしては珍しいジャンルになると思うのですが、どのような経緯から制作がスタートしたのですか?

西沢もともとは、本作のパブリッシャーであるソニー・ミュージックソリューションズさんから、「アイドルゲームとしてオーソドックスなジャンルは避けつつ、IP(知的財産)の強さだけに頼らずに成立するような新しいゲームを考えてほしい」というお題をいただいて、それにお応えできるアイデアを提案させていただいたというのがきっかけですね。

――なるほど。ベタなものを避けるとしても、お題としては幅広いものですよね?

西沢そうですね。ですので、まず恋愛シミュレーションやパズルゲームといったアイドルゲームの王道ジャンルを除外したうえでどんなゲームができるかというところを考え抜いたものが、いまのゲームのシステムになっています。

――いくつか出した案の中のひとつが、タワーディフェンスだったのですか?

西沢はい。タワーディフェンスというと、一般的には横スクロールのものが多いと思いますが、その部分を変えることで、ゲームとしても操作感としても新しいものを生み出せるという想いがあり、提案させていただきました。提案したものにはほかにも3案くらいあったのですが、その中でタワーディフェンスの案を気に入ってくださって、制作がスタートしたんです。

――参考までに、ほかにはどのような案を出されたのですか?

西沢いろいろ出しましたね。“ベタは避けて”と言われながらも一応、恋愛シミュレーションも提案してみましたし(笑)。農場系なんかもありましたね。

――日向坂46で農場系……! それも気になりますね。ですが、その中でタワーディフェンスが選ばれたと。

西沢そうですね。ゲーム性以外にも、CGを使っていままでに見たことがない日向坂46をビジュアル化できるという、カード部分に対するアプローチも評価していただきました。

――ソニー・ミュージックソリューションズとしては、さまざまな案があった中からタワーディフェンスを選んだ理由は?

小西ゲーム性が高いものであり、もっともおもしろくなりそうなものであるということ、また、端末を横に向けなくても片手で遊ぶことのできるタワーディフェンスという部分も、評価が高かったと聞いています。

西沢本プロジェクトの責任者の方が、とてもゲームがお好きでいろいろなゲームに詳しい方なんですが、我々の出した案が非常に刺さったようで、ゲームとしての新しさと奥深さ、その先の展開があるところなど、さまざまな面で評価をいただきました。

『日向坂46とふしぎな図書室』開発者インタビュー。メンバーの衣装は家庭用ゲーム機を超えるレベルのCG!? 制作秘話とともに、新イベント“ヒナタザカ・サーガ”の詳細やメンバーカードも公開
縦画面での操作にあわせて、ステージは縦3段に分けられている。
『日向坂46とふしぎな図書室』開発者インタビュー。メンバーの衣装は家庭用ゲーム機を超えるレベルのCG!? 制作秘話とともに、新イベント“ヒナタザカ・サーガ”の詳細やメンバーカードも公開
キャラクターを出撃させるだけでなく、ビブリアアーツやレリックサインと呼ばれる必殺技を駆使して戦っていく。また、ひなタワーをステップアップさせ、キャラクターの出撃に必要なインクの補充速度と最大量を上げることも重要だ。

――リリースしてから間もなく半年になりますが、遊んでいるユーザーからの反応はいかがですか?

西沢最初はプレイヤーの方にとって異質なもので、驚かれたと思います。挑戦的ではありましたが、思った以上に受け入れられている実感もありますね。日向坂46のメンバーもゲーム好きな方が多いことから、“おひさま”(日向坂46のファンの総称)とシンクロしている部分があるのかなと思いました。

――『ひな図書』は敵との相性やカードの育成も大事なゲーム性になっていて、しっかりと遊ばせる作りになっていますよね。

西沢我々としては日向坂46の冠を抜きにしても成立するゲームを目指していましたので、ゲーム自体のおもしろさであったり、やりこみ度や達成感にはこだわって作っています。

――一方、“イージーモード”や“オートプレイ“など、ゲームが苦手な方へのアプローチも考えているようにも感じました。

西沢そうですね。日向坂46は好きだけれど、これまでにまったくゲームを遊ばれたことがない、という方もいらっしゃいますので、そういったユーザーさんにも快適に遊んでいただけるように、リリース後も難易度や育成素材の配布量などの調整は継続して行っています。サービス開始当初よりも敷居を下げていまして、半年近くの経過で少しずつ遊びやすくなっていったと思います。

――カードや撮り下ろしのムービーだけなく、育成マップにメンバーの好きなものや個性が入っていたりと、日向坂46ファン目線で作っているような部分があるように感じますが、開発チームにも“おひさま”がいたのでしょうか?

西沢正直に言いますと、当初は我々にアイドルに関する知識がほとんどなく、日向坂46のこともあまり詳しくなかったのですが、いざ開発するとなれば、ファンの気持ちを知り理解しなければならないと。それでまずは「握手会に行こう」と(笑)。それからファンクラブにも入りましたし、ブログも読んでメッセージアプリも利用して、ほかにもテレビや雑誌から手に入る情報も入手して、とにかく行けるものや手に入る情報はなんでも見るようにしました。

――それはすごい(笑)。

西沢実際に握手会やライブなどのイベントに行くと、日向坂46のことがわからなくても、心に刺さるものがあるんですよね。それを重ねて、ファンの方々の気持ちがわかるようになるころには、開発チーム全員が“おひさま”化している状態でした(笑)。

――勉強のはずが、いつの間にか趣味になっていたと(笑)。

西沢やっぱり、知っていくうちに好きになるものですね。

『日向坂46とふしぎな図書室』開発者インタビュー。メンバーの衣装は家庭用ゲーム機を超えるレベルのCG!? 制作秘話とともに、新イベント“ヒナタザカ・サーガ”の詳細やメンバーカードも公開

ファンでなくても日向坂46の魅力に触れられるストーリー

――本作では、『白雪姫』や『赤ずきん』など、さまざまな本の中に日向坂46メンバーが入っていくというストーリーになっていますが、これはどういった発想から生まれたのでしょうか?

西沢設定は架空のものではありますが、日向坂46のメンバーはほぼご本人に近いイメージで出演していただくことになります。また、ゲームの舞台はバトルをするファンタジー世界になりますので、その現実と空想の両軸を違和感なく融合させるために、“本の中に入って冒険をする”というテーマがいいのではないかと考えました。あとは、さまざまな衣装やビジュアルを提案したかったので、現代、未来、過去といろいろな世界を出せる点もよかったですね。

『日向坂46とふしぎな図書室』開発者インタビュー。メンバーの衣装は家庭用ゲーム機を超えるレベルのCG!? 制作秘話とともに、新イベント“ヒナタザカ・サーガ”の詳細やメンバーカードも公開
『日向坂46とふしぎな図書室』開発者インタビュー。メンバーの衣装は家庭用ゲーム機を超えるレベルのCG!? 制作秘話とともに、新イベント“ヒナタザカ・サーガ”の詳細やメンバーカードも公開
『赤ずきん』に挿入されるイラスト
『銀河鉄道の夜』に挿入されるイラスト

――『ひな図書』のストーリーはどのように作っているのでしょうか?

田邉本作にはメインストーリー、イベントストーリー、メンバーストーリーの3つがありますが、それぞれコンセプトも作りかたも異なります。

 メンバーストーリーは、できるだけリアルにメンバーと話している雰囲気を出すことを重視しています。また、とにかく爽やかな印象になるようにしています。

 イベントストーリーはフィーチャーするジョブやメンバーが一番活きる舞台として本や世界観を決め、登場メンバーが活躍できるストーリーや会話を作っていきます。

 メインストーリーは、かなり自由度高く書かせていただいていまして、日向坂46がいて、本の中のファンタジーだからこそできるドラマを描いています。ちなみに、9冊目以降はガラッと展開を変えてパンチのある内容になっていますので、今後も期待していてください。

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――メンバーどうしの掛け合いのセリフなどは、実際の会話がわからないと難しいと思うのですが……。

西沢そこはソニー・ミュージックソリューションズさんや、日向坂46に造詣の深いライターさんにもご協力いただいて、メンバーの関係性やどんな発言をされているのかを把握して、それもストーリーに取り入れています。

――人となりやメンバーの関係性がわからないと会話の掛け合いは書きづらいですもんね。

田邉そうですね。なので継続的に番組やライブ、雑誌などを見せていただいていますが、正直、日向坂46さんだったからこそ、これだけ話が広がるものが作れたと思っています。日向坂46は“絆感”が強いグループだと感じていて。メンバーの方々にインタビューをさせていただいたことがあったんですが、そのときにその印象を伝えたところ、「家族のような雰囲気があるんです。本当に仲が良くて」とおっしゃっていました。お話の中にこの絆感を入れてもそこがフィクションにはならないというのは、作り手としてもありがたいところです。

『日向坂46とふしぎな図書室』開発者インタビュー。メンバーの衣装は家庭用ゲーム機を超えるレベルのCG!? 制作秘話とともに、新イベント“ヒナタザカ・サーガ”の詳細やメンバーカードも公開
『日向坂46とふしぎな図書室』開発者インタビュー。メンバーの衣装は家庭用ゲーム機を超えるレベルのCG!? 制作秘話とともに、新イベント“ヒナタザカ・サーガ”の詳細やメンバーカードも公開

――田邉さんがシナリオを手掛ける際に、何か大事にされていることはありますか?

田邉日向坂46のゲームですが、“おひさま”はもちろん、ファン以外のプレイヤーの方でも楽しんでいただけるものにしたいという想いが開発当初からありました。それで、どちらの方でも楽しめるシナリオを手探りで作っていったのですが、できあがった分のメインストーリーをお見せしたところ、ゲームの世界観を含め、本プロジェクトの責任者の方にすごく気に入っていただけたんです。

 それと同時に「もっとゲームとしておもしろくなるように自由にやってください」と言ってくださったので、いまではかなり自由にやらせていただいて、その結果、ゲームオリジナルのストーリー要素が強くなっていきました。

 最初のイベントがその転換点で、これは活動を休止されていた影山優佳さんが復帰するストーリーだったのですが、メンバー皆さんの関係性や心情などかなり踏み込んだ内容になっています。当時は、どの程度まで踏み込んで書いていいのかもわからなかったですし、“おひさま”の方々がどう思われるかも気になってはいたんですけど、ソニー・ミュージックソリューションズさんやプロジェクト責任者の方がOKを出してくださったので、思い切ってやらせていただきました。結果的には、“おひさま”の皆さんが好意的に受け止めてくださって。そこから今に至るまで、自由度高く書かせてもらっています。

『日向坂46とふしぎな図書室』開発者インタビュー。メンバーの衣装は家庭用ゲーム機を超えるレベルのCG!? 制作秘話とともに、新イベント“ヒナタザカ・サーガ”の詳細やメンバーカードも公開
『日向坂46とふしぎな図書室』開発者インタビュー。メンバーの衣装は家庭用ゲーム機を超えるレベルのCG!? 制作秘話とともに、新イベント“ヒナタザカ・サーガ”の詳細やメンバーカードも公開
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影山優佳さんが復帰するストーリーを描いたイベントの一部。

小さなこだわりの積み重ねで作られているゲームのデザイン

――『ひな図書』は通常のゲームのイベントに比べるとグラフィックのボリュームがある気がしますが……。

イベントごとに背景を作っています。設定に合わせて絵柄を変えるので、デザイナーからすると新鮮な気持ちで制作できますし、ゲームとしての自由度はあるのではないかと思います。確かに用意するアセットの量は多いんですけど、制作する上でやりがいはありますね。

――キャラクターのモーションもすごくこだわっていますよね。ダンスの振付なども入っていますし。

モーションデザイナーが、PVなど、メンバーが動いているあらゆるものを観察しながら、癖やしぐさを注視して、いいところを抽出してモーションを作っています。画面が小さいのがもったいないですね。とてもいい動きをしているので。

西沢前回のイベントのときにもパワーローダーに乗っている状態で曲のダンスを踊っているモーションがありましたが、ダンスをさせるのにかなり苦労していました。SDキャラなので、頭以上に手が上がらないとかがあって……。

そういった縛りがある中でも、足のひねりとか、仕草もかわいらしくできたんじゃないかと思います。

『日向坂46とふしぎな図書室』開発者インタビュー。メンバーの衣装は家庭用ゲーム機を超えるレベルのCG!? 制作秘話とともに、新イベント“ヒナタザカ・サーガ”の詳細やメンバーカードも公開
『日向坂46とふしぎな図書室』開発者インタビュー。メンバーの衣装は家庭用ゲーム機を超えるレベルのCG!? 制作秘話とともに、新イベント“ヒナタザカ・サーガ”の詳細やメンバーカードも公開
パワーローダーに乗ったメンバー。ゲーム内ではこのままダンスをするときも!

――『ひな図書』で実装されている鎧姿などのメンバーたちのカードがファンのあいだで話題になっていますが、あのカードはどのように作られているんですか?

CGですね。資料を集めて衣装のデザインを作成しますが、通常の方法と異なるのは3Dのモデリングも用意する点です。

 メンバーの写真は、それぞれのジョブに合うポーズを取ってグリーンバックで撮影していただくんですが、そのメンバーの写真に、メンバーと同じポーズを取った3Dモデルを合わせていくイメージなんですね。鎧などのCGで作った衣装を着た3Dモデルと写真を合わせて1枚のカードにしています。実際にはもっと複雑な工程があるんですが(苦笑)。

 最初の段階のデザインやモデリングも重要なんですが、背景とCGの衣装に、メンバーの写真を自然になじませるための作業でクオリティーが大きく変わってくるので、その匙加減が難しく、何度もトライ&エラーをくり返して、現在の状態になっています。

――なるほど。改めて、カードができあがるまでの制作工程を教えていただいてもよろしいでしょうか?

まずはカードにする衣装を決めて、デザイナーさんに何パターンものデザインを描いていただきます。その際は、3Dのデザイナーが必ずしもその衣装の知識があるわけではないので、衣装の仕組みなどが細かく書かれた資料もいただいています。

西沢衣装のデザインをお願いしているデザイナーさんの中には、各衣装に詳しい現代アートの作家さんなどもいて、歴史的な背景や、衣装の構造の意図も教えていただいています。かなり細かい部分まで設定を作っているんですが、これはゲームを遊んでいるだけでは、伝わらない部分でもありますね。そのうえで、メンバーに合わせた衣装のアレンジなどもしていただいています。

『日向坂46とふしぎな図書室』開発者インタビュー。メンバーの衣装は家庭用ゲーム機を超えるレベルのCG!? 制作秘話とともに、新イベント“ヒナタザカ・サーガ”の詳細やメンバーカードも公開
『日向坂46とふしぎな図書室』開発者インタビュー。メンバーの衣装は家庭用ゲーム機を超えるレベルのCG!? 制作秘話とともに、新イベント“ヒナタザカ・サーガ”の詳細やメンバーカードも公開
写真は、戦国鎧シリーズ“弓将”のデザイン画
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衣装の題材となる武器や鎧の資料。武具の歴史的な特徴や素材などがこと細かにまとめられている。

※戦国鎧シリーズの原案デザイン設定を担当しているのは、鎧と人間をテーマにした現代アートを手掛ける野口哲哉氏。鎧に造詣が深いアーティストが関わることで、史実に基づいたリアリティーのある鎧に仕上がっているとのことだ。なお、“野口哲哉展 -THIS IS NOT A SAMURAI”が、2021年9月5日まで開催中。

――それは、どのようなアレンジなのでしょうか?

たとえば鎧ですと、身体のラインが出ずに、シルエットが太めに見えてしまうんですよね。そこで、メンバーのシルエットがきれいに見えるようにアレンジして、3Dモデルに落とし込めるようにしています。

 そして、デザイン画ができあがったら、3Dに落とし込んでいき、それからメンバーの3Dモデルにあわせて衣装を着せていきます。

『日向坂46とふしぎな図書室』開発者インタビュー。メンバーの衣装は家庭用ゲーム機を超えるレベルのCG!? 制作秘話とともに、新イベント“ヒナタザカ・サーガ”の詳細やメンバーカードも公開

――メンバーで共通のモデルがあるのですね。

メンバーごとにベースとなるモデルもありますが、それのもとになる共通のモデルを用意して衣装をモデリングで当て込んでいます。

――3Dで再現された衣装は、装飾や質感、しわのひとつひとつまで作り込みがすごいですね……。

ここまで細かいとアニメーションには不向きなんですが、このゲームではカードとして使っていてアニメーションはさせないので、静止画としての美しさのために作り込んでいます。

 つぎに、メンバーの写真撮影になります。撮影の際は、メンバーの方にグリーンバックに立ってもらって、ポージングしてもらうのですが、このグリーンバックに3D上でカメラを合わせる目印となるマーカーを付けたり、CG上で同じ空間を作ったり、スタジオのライティングをそのまま反映できたりするような機材を使っています。

 そして、撮影が終わったら、3D空間上であらかじめ作った3Dモデルを写真に合わせてポージングしていくんです。

――ああ、3Dモデルのポーズを写真に合わせるんですね。

そうです。あとは、3D空間上でカメラ位置などを決めて、メンバーのポージングと3Dモデルがきれいに合うように調整をして合成していきます。

――合成後の姿は、実際に衣装を着ているように見えますね……。

この段階まで行くにはかなり細かい調整が必要でした。とくに、指先などの細かい部分まで合わせていくのにはコツがいりますね。

 ポージングが終わったら、加工した背景にメンバーを配置して、光を足したり、色素を調整しながら馴染ませていく作業になります。あとは、各方面からフィードバックをもらって、何度かリテイクをして完成系に持っていきます。

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完成形のカードの画像がこちら(佐々木久美さんの弓将の姿)。CGの鎧や背景とのなじみ具合などを注視しても、違和感はないはずだ。

――完成までにかなりの工程を踏んでいますが、1枚作るのにだいたいどのくらいの時間がかかるものですか?

西沢3Dモデルは一度作ってしまえば、ある程度流用できるので期間は短縮できるようになるのですが、それでもモデルから作り始めるとすると約4、5ヵ月くらい掛かります。難しいものになると半年コースになりますね。

メンバーも22名と多いので調整が必要ですし、体形もそれぞれ違うのでそれに合わせて作るとなると、どうしても時間がかかってしまいますね。

――家庭用ゲーム機で言えば、PS4などと同じレベルの作り込みになるんでしょうか?

西沢いえ、PS4でも動かないレベルになっていますね。CG映画のようなプリレンダリングムービーくらいだと思います。何か映像にしたいですね(笑)。

かといって、逆に作り込みすぎると、静止画としてポージングするときに重くなったりするので、あとはPCのスペックで使えるか使えないかといったことも、じつは重要になってきます。

――なるほど。ここまでこだわって作っているというのは、初めて知りました。

西沢いまは制作工程としてCGのお話をしていますが、もともとCGか現実かわからない、これまでに見たことのない姿の日向坂46をカードにしたいと思っていましたので、CGを売りにして前面に出しているわけではないんです。

 ユーザーさんに、「これは実写なの? CGなの?」と思ってもらえるとうれしいですね。

CGのいいところは、非現実的なものが作れるというところです。実際に作る衣装の制限が取り払えるので、表現の幅が広がりますね。

西沢あとは実際に鎧などを着たらシルエットがきれいに出せないのと、つらい体勢のポーズもあるので、衣装によっては撮影でここまでのクオリティーは出せなかったと思います。

――ああ、なるほど。そのぶん作るのは大変だと思いますが……。

全体のシルエットを作っているので、3Dモデルはもちろん、CGの衣装も足先まで細かく作ってはいるのですが、カードには映らないんですよね。

西沢靴の裏まで作ってますからね(笑)。

――そこまで! 一般的なモバイルゲームに登場するカードでは、ここまで労力をかけないですよね……?

西沢やらないと思います(笑)。

スマホの画面で見るとわからないかもしれませんが、衣装の作り込みが細かいので、そのあたりまで見ていただけるとうれしいですね。

――ああ、ではデザイナーとしては大きい端末で見てほしいと。

うーん、そこはデザイナーとしてのジレンマがあります。あまりに細かい部分は見てほしくないときもありますし。基本的には見てほしいですけど(笑)。その場にいるような雰囲気を生み出すために、衣装もいろいろな加工が加えられているので、背景も含めてじっくり見ていただきたいです。

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――日向坂46のメンバーの方は、どういうカードになるかわからない状態で撮影をされているんですよね?

西沢はい。とくにゲームがリリースされる前は、ある程度説明をするものの、完成形のイメージが伝わっていませんので、武器のようなものを持っても「これは何に使うんですか?」と何のために撮られているのかもわからない状況でした。

 ですが、何回か撮影させていただくうちに、メンバーの皆さんの理解が深まっていきまして、表情にもよりこだわっていただけて、回を重ねることに、元の写真がすごくよくなっていきました。

小西カードの完成形の画像をメンバーが初めて見たときの反応がすごかったそうですね。制作スタッフは別の部屋にいたんですが、「こんな風になるの!?」っていう歓声のような声が聞こえるくらい喜んでいたと聞いています。

レトロゲームの世界を舞台にした新イベント“ヒナタザカ・サーガ”

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――新たなイベントとして、レトロゲームをテーマにした“ヒナタザカ・サーガ”が、まもなく登場しますが、どのような内容なのでしょうか?

西沢これまでに、さまざまな本を題材にしていますが、“ヒナタザカ・サーガ”は、ゲームの攻略本を舞台にしていまして、今回は一味違ったものになっています。

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――舞台となる攻略本ですが、これ、ファミコン初期のような攻略本ですね(笑)。

西沢設定としては30年前の攻略本になります(笑)。8ビット風のゲームということで、ステージやキャラクターも古きよきドットで描かれていたり、“ぶきみなクリスタル”という、どこかで聞いたことのあるようなアイテムが必要になったり、メッセージウインドウ風の演出を取り入れたりと、イベント全体をレトロゲームの雰囲気に仕上げました。

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“ヒナタザカ・サーガ”のゲーム画面。ドットの背景にも注目!
※画面は開発中のものです。

田邉ストーリーも、汚染されてしまった攻略本の中に飛び込んだメンバーたちが、そのゲーム世界の王様に魔物を倒してほしいと頼まれて旅立つという、王道ゲーム的なシナリオにしました。今回登場するメンバーの中では松田好花さん、山口陽世さん、渡邉美穂さんがゲーム好きということもあり、ゲーム世界に興味津々な様子や、「武器屋行かない?」、「宿屋行こうよ」といったゲーム好きだからこそしそうな会話なんかもあったりします。

――メタ世界ならではの会話ですね。そのほかに見どころは?

西沢イベントでは、ドラゾーマと呼ばれるボスと戦うことになるのですが、究極魔法を放ってきたり、形態変化もあったりするので、ぜひプレイして確かめてほしいですね。難易度的にも、ゲームが得意ではない方でも遊べるように、ノーマルだけプレイしても一通りイベントが楽しめる形にしています。

 また、ボスを倒してイベントアイテムを集めると、山口さんのランサーのカードをゲットできるのですが、これもイベントの目玉のひとつです。というのも、カードの絵柄がドットになっていまして……。

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ランサーとなった山口陽世さんのカード。

――ドット! あんなにすごいCGの話をうかがった後なのに!(笑)

西沢こだわってのこれです!

ドットの配置にこだわっています。

一同 (笑)

西沢このランサーの山口さん、ドット絵状態の初期ステータスはめちゃめちゃ弱いです。ですので、イベントアイテムを手に入れて覚醒させようという目的になっていまして、3段階目の覚醒で、ようやくCGのイラストに変わり、戦えるレベルの強さになります。

――ドットもかわいいですね。

西沢スキルを発動したときのカットインもドットのまま出ますし、覚醒後は、ドットとCGで好きなほうを選べます。

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こちらが3回目の覚醒でCGのイラストに切り替わった姿。

――これまでのイベントに比べると、かなり思い切った方向の内容になっていますね。

西沢題材となる本の幅がここまで広げられると、いろいろな遊びが作れるので、ゲームとしても楽しいものになりますし、メンバーのいろいろな姿が見られるので、“おひさま”にとっても喜んでいただけるのではないかと思います。

 今回はゲームの攻略本となっていますが、今後は夏祭りをテーマにしたものなども制作を進めています。花火の雑誌を舞台にしているんですが……、紙で綴じてあれば、なんでも入れるというイメージになってきましたね(笑)。

――図書館ではジャンル問わず、どんな本も入荷すると(笑)。では、漫画などもありえそうですね。

西沢ぜひ有名漫画とのコラボはやってみたいですね。この先もどんどん広げていきたいなと思います。

新イベント“ヒナタザカ・サーガ”に登場するメンバーのカードを公開!

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“ランサー”加藤史帆。
“ランサー”佐々木美玲。
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“ランサー”東村芽依。
“ランサー”金村美玖。
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“ランサー”松田好花。
“ランサー”渡邉美穂。

プレイヤーどうしでの楽しみかたが追加される今後の展開

――そのほかにも追加を予定している新要素はありますか?

西沢現在はひとりで強大な敵と戦うシングルレイドがありますが、ほかのプレイヤーといっしょに強敵に挑むマルチレイドという機能を近いうちに導入したいと思っています。

――現在のイベントでは、シングルレイドでボスに挑んでアイテムを集めていくものになっていますが、それが切り替わるということですか?

西沢イベントによって切り替わっていく予定です。これまではひとりで遊べる部分を重点的に取り組んでいましたが、現状、プレイヤーとフォロワーの関係が薄い部分がありまして。今後はこのマルチレイドを始め、フォロワーとの関係性を強めていくようなアップデートを予定しています。

――日向坂46のメンバーの方も『ひな図書』を遊んでいると言いますし、もしかしたらメンバーといっしょにマルチレイドに挑むということもあるかもしれませんね。

西沢そうなれば最高ですね。あとはプレイヤーの存在感をもっと感じられる要素として、称号やプロフィールのシンボル、フレンドを選ぶときの背景のカスタマイズといった機能を追加したいと思っていまして、これまで以上に、自分をアピールしたり、推しへの愛を表現できるようになるかと思います。

――イベントでは、サイン入りポスターなどのリアルアイテムがもらえることもあって、熱心な方が多いですからね。

西沢皆さん、相当遊んでくれていますね。サービス開始前に、ランキングのポイント上限を想定してはいたんですが、それを遥かに超えていくポイントを取得されていて、開発スタッフがザワつきました(笑)。

――(笑)。最後にゲームを楽しんでいる人や、これからプレイされる人たちへメッセージをお願いします。

西沢これから新機能や新イベントもどんどん追加していきますし、もうすぐ半年を迎えるので、ハーフアニバーサリーのようなキャンペーン施策も打っていこうと思っています。年末には、遊びかたが変わるような機能のアップデートも検討しているので、いま遊んで下さっている皆さんも、これからの『ひな図書』に期待していただければと思います。

 そして、これから始める方も、このゲームに早い遅いはないので、ぜひプレイしていただきたいです。日向坂46のファンではなくても楽しめるゲームになっていると思うので、この記事でゲームに興味を持った方もぜひよろしくお願いします!

素敵なビジュアルを皆さんにお届けするには、見えないところのこだわりの積み重ねだと思いますので、これからも力を入れていきたいですし、設定に合わせて幅の広げたデザインを手掛けていきたいです。デザイナー一同、がんばっていきますので、よろしくお願いします。

田邉これからも楽しんでいただけるストーリーを提供できるようにがんばっていきたいです。とくにメインストーリーでは、これまでのアイドルゲームにはないようなエンターテインメントをお届けしたいと思っていますので、このあともぜひ楽しみにしていただければと思います。

 そしてこのゲームをやって下さっている“おひさま”の方は、ぜひこのゲームを日向坂46の布教に使ってほしいです!(笑)。このゲームで推しメン以外のメンバーを好きになったという話も聞きますし、きっと日向坂46を知らない方でも、ゲームを楽しむ中でメンバーのみなさんを好きになってもらえるくらい、魅力を目いっぱいにお伝えしていけたらと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします!

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