FGO PROJECTが配信中の人気スマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』(以下、『FGO』)。その中でもプレイヤーからの人気が高いエピソードとなる第1部 第六章“神聖円卓領域キャメロット”を抽出し、再構成した劇場用アニメ『劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 後編 Paladin; Agateram』(以下、『FGOキャメロット後編』)が、2021年5月15日(土)より全国の劇場で公開中だ。
主要キャストインタビュー最終回となる今回は、特異点で藤丸立香たちが出会った隻腕の騎士・べディヴィエール役の宮野真守さんから、べディヴィエールの演じ方や『FGOキャメロット後編』の見どころ、そして宮野さん自身が歌う映画後編の主題歌『透明』のお話などをお聞きした。
※インタビューは4月下旬に収録。
宮野真守さん(みやの まもる)
1983年6月8日生まれ。埼玉県出身。代表作は『キングダム ハーツ』(リク役)、『DEATH NOTE』(夜神月役)など。『FGO』ではベディヴィエールの他、シャルル=アンリ・サンソン、ヘンリー・ジキル&ハイドの声を担当している。(文中は宮野)
“スイッチオン・アガートラム”の演技は命がけで
――『FGOキャメロット後編』でアニメの主役として、べディヴィエールというキャラクターを演じられてのご感想はいかがでしたか?
宮野『FGO』ファンの間でもキャメロットは人気のある章なので、そこで主人公として劇場版が作られるのは光栄に思いました。
劇場版はべディ(べディヴィエール)の物語を主軸に描かれており、僕としてもべディの心情をより深く掘り下げることができたので、集中してアフレコに臨んでいきましたね。べディの人となりを説明するのも難しい物語であることに加え、ネタばらしになってしまうのでお伝えできないところもありますが、僕自身は彼のことをしっかりと理解して演じていこうという気持ちでした。
――宮野さんご自身から見てべディヴィエールはどのような人物だと感じますか?
宮野温かい人だなと思います。温かいからこその罪もあるのですが……。
理想の世の中というのは人と人が笑顔でいられることで、そのためには戦う必要があるけど、何も戦闘だけが戦うということではない。世の中を作っていくということはそういうことだと知っている。でもべディ本人が意識してそう生きていたというよりも、それはアーサー王に見つけてもらったところで、そう言ってくれたアーサー王の笑顔が忘れられないんですよね。だから、純粋にアーサー王への想いが原因で起こってしまった……。
“人を想う”ことを当たり前のようにできるのがべディの魅力で、そんな人の想いをつぶさに感じ取れる優しい彼が、前編ではまったく周りが見えなくなり、困っている人に手を差し伸べることすらできないくらい追い詰められている状況が苦しいし、皮肉だなと思います。この物語の引き込まれるところは、彼という人物を知れば知るほど、「なんでこんなに苦しそうなんだ」と感じるだろうし、そこにグッと惹き込まれるところですよね。
――べディヴィエール演じる際に、どのようなことを心がけていましたか?
宮野彼は……とても人間らしい人物なんです。『FGOキャメロット前編』から垣間見えていたこの世界の問題点が後編では明らかになりますし、ひとつの終着点を迎えるので、いろいろな謎が解かれていきます。
前編を観た皆さんにとって謎になっているものは、彼という人物を捉える上で非常に重要なことなので、その想いとそこに関する情報、そこに至るまでの状況を自分の中で咀嚼して演じていきました。
――べディヴィエールを演じるにあたって、奈須きのこ氏たちからディレクションはありましたか?
宮野ゲームの『FGO』の収録の際もそうでしたが、最初にいろいろと情報を共有してくださるんです。分からない部分を先生が埋めてくれる。
そうやって常に情報をくださったうえで、今回の劇場版では、ある意味僕に任せていただいた部分も多かったです。世界観に関して言うと、僕らのマスターの信長くん(※)が頼りになりましたね(笑)。前編の収録はコロナの前だったので、いっしょに収録できたメンバーで情報共有をしたり、川澄さん(※)にもいろいろ教えてもらったりしながら収録していきました。
※信長くん……藤丸立香役の島崎信長さん。崎の正式表記は立つさき。
※川澄さん……獅子王役の川澄綾子さん。
――前編のほうも含め、収録に関しておもしろかったり印象的だったエピソードを教えてください。
宮野後編のとあるセリフでは、一度オーケーが出ていたものの、僕が「もう一度やってみたいな」と思った瞬間がありました。それで改めて録らせていただいたのですが、監督が「録り直したときの空気感が本当によかったです! あぁこれだって思いました」と言ってくれて、それがうれしかったですね。
――“スイッチオン・アガートラム(剣を摂れ、銀色の腕)”という宝具のセリフに対してこだわりや込めた気持ちなどはありますか?
宮野あまり言うとネタバレになっちゃうのですが、べディにとってこのセリフは、いわゆる通常の宝具の詠唱とは異なるため、命がけで言いました。これが何を意味するのかは、べディの場合はとても深い意味を持ちます。“スイッチオン・アガートラム”を使うということはどういうことなのか……それを前編ですぐに見抜くアーラシュは格好いいですよね(笑)。
――“スイッチオン・アガートラム”は、公開されているシーンだけでもひとつひとつ演じ方が異なると感じました。本予告映像最後の“スイッチオン・アガートラム”は特に重みがある言い方でしたね。
宮野詳しくは言えませんが、あれは相手と戦うための“スイッチオン・アガートラム”ではないということは確かですね。なので、あのシーンで込めた想いはまったく違うものです。
劇場版『FGOキャメロット後編』本予告
――ゲームでべディヴィエールのセリフを収録してから、劇場版の収録までは時間があいたと思いますが、ゲームから劇場版のべディヴィエールに至るまでに、考え方や向き合い方の変化はあったりしましたか?
宮野劇場版の物語はべディを中心に描かれているので、キャメロットの中で存在しているべディの想いは突き詰めたつもりです。これは、ちょっとネタバレなしで話すのは難しいです(笑)。
――『FGOキャメロット後編』の見どころについて教えてください。
宮野べディは物語の序盤あたりで口にするのですが、自分の旅に恐怖を感じているんです。それは目的というか、自分の罪だったり、それに対しての償いや自分の決意がある中、その先への恐怖感なのですが、そこで藤丸に光をもらうんですね。このシーンを経てまたひとつ覚悟を持って旅の終わりへと向かっていく流れが非常に感動的で。
ひとりの孤独な旅が、藤丸や仲間たちと出会えたことで希望の光をもらったというか。そういった、べディが自分の道をしっかり歩もうと決意する流れは、この物語の魅力でもあります。映画としては、前編と後編はまた味わいが変わっていて、前編で描かれた鬱屈としながらも神聖な世界観から、後編ではバトルものとしての盛り上がりもさらに加わるので、クライマックスにも注目してほしいです。