FGO PROJECTが配信中の人気スマートフォン向けゲーム『Fate/Grand Order』(以下、『FGO』)。その中でもプレイヤーからの人気が高いエピソードとなる第1部 第六章“神聖円卓領域キャメロット”を抽出し、再構成した劇場用アニメ『劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 後編 Paladin; Agateram』(以下、『FGOキャメロット後編』)が、2021年5月15日(土)より全国の劇場で公開中だ。

映画『FGOキャメロット後編』声優インタビュー第4回。川澄綾子さんに獅子王の人物像や劇場版の魅力、円卓の騎士への想いを訊く
『劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 後編 Paladin; Agateram』メインビジュアル

 5回にわたってお届けする主要キャストインタビュー第4回となる今回は、円卓の騎士たちを従える特異点の支配者“獅子王”を演じる川澄綾子さんに、獅子王の人物像や劇場版の魅力をうかがった。

※インタビューは4月中旬に収録。

川澄綾子さん(かわすみ あやこ)

3月20日生まれ。東京都出身。『FGO』ではアルトリア・ペンドラゴンを複数と、アン・ボニー役を担当している。(文中は川澄)

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獅子王は、感情がなく冷酷で絶対的な存在に映るように演じた

映画『FGOキャメロット後編』声優インタビュー第4回。川澄綾子さんに獅子王の人物像や劇場版の魅力、円卓の騎士への想いを訊く

――『劇場版FGOキャメロット』で川澄さんが演じている“獅子王”というキャラクターは、『Fate』シリーズの顔とも言えるセイバー(アルトリア)と、大本を辿れば同じ人物ですよね。セイバーとの演技の差別化はどう意識されているのでしょう?

川澄『劇場版FGOキャメロット』での獅子王は、そもそもの成り立ちが違うということもあり、アルトリアとはまったく違うキャラクターだというくらいの意識で演じています。『FGO』には獅子王と外見がほぼ同じであるランサークラスのアルトリアも存在しますが、こちらとも違う存在ですので、冷酷で感情がなく見えるように意識して演じています。

――『劇場版FGOキャメロット』の獅子王は、川澄さんから見てどのような人物に写りますか?

川澄前編はカルデア側が第六特異点に来て、「この世界の特異点化を起こしたのは獅子王だ」となるところから始まるお話なのですが、獅子王に関しては多くは語られませんでした。本当に“恐怖の対象”という印象ですよね。実際に冷酷無比ということで、聖抜のシーンや円卓の騎士たちと接するシーンでは、冷酷さが際立つように意識して演じています。獅子王は、私が『Fate/stay night [Heaven's Feel]』で演じたセイバーオルタともまた違い、感情がなく絶対的な存在といった印象です。

映画『FGOキャメロット後編』声優インタビュー第4回。川澄綾子さんに獅子王の人物像や劇場版の魅力、円卓の騎士への想いを訊く
獅子王

――川澄さんはフォウくんの声も担当されていますが、演技にはご実家のネコを参考にされたそうですね。

川澄フォウくんを演じるのは今回が初めてではないのですが、特に多く描かれることになったのが『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』(以下、『バビロニア』)からです。

 映像化されたフォウくんは、とてもかわいらしく描かれていて、あくびをしたり、後脚で掻いたりと、イヌやネコを連想する仕草がありました。私はフォウくんのことを気高い存在だと思っていて、それが私のイメージするネコの姿と一致したんです。

 特にネコらしいなと思ったのはあくびをするところですね。ネコってあくびをするときに、つい声がでちゃうみたいなところがあって、そういう日ごろの仕草が参考になりました。とはいえ、フォウくんは架空の生き物ですし、人語を完璧に理解しているので、マスコットのようだけど知性が高いとか、ちょっとシニカルであるとか、そういった点も意識しています。

映画『FGOキャメロット後編』声優インタビュー第4回。川澄綾子さんに獅子王の人物像や劇場版の魅力、円卓の騎士への想いを訊く
フォウくん(画像中央)

――『FGOキャメロット後編』の見どころについて教えてください。

川澄ずばり円卓の騎士たちですね! 正直、最初はここまで彼らがしっかり描かれると思いませんでした。

 ゲームをプレイしていたときは、プレイヤーとしてもう少し違った目線で見ていたのですが、ベディヴィエールから見た王やほかの円卓の騎士たち、または円卓の騎士たちが見た獅子王というように、ここまで円卓の騎士たちを中心にフォーカスして描かれると、見え方って大きく変わるんだなと。

『FGOキャメロット前編』キャラクターPV 【獅子王・円卓の騎士】

――『FGOキャメロット後編』で、過酷な旅を続けてきたベディヴィエールといよいよ対面することになりますが、どのような気持ちでベディヴィエールとの収録に臨まれましたか?

川澄私個人としてはこういったお話が大好きですし、ベディヴィエールを労いたい気持ちがものすごくあって、最後にたどり着くシーンでは「ありがとう」や「よくやった」と言いたかったです。

 ……が、あくまで私が演じるのは獅子王なので、グッと堪えました(笑)。そこは『Fate/stay night』でセイバーを演じたときとは違うところでした。相手を認めはするけど、そこまで寄り添わないというか……。

――ティザービジュアルの獅子王と円卓の騎士たちが向かい合う絵は、原作者の奈須きのこさんが記した前日譚“六章/zero”を連想させます。このシーンのように、円卓の騎士たちと接するときの心情や演じ方で意識したことを教えてください。

川澄今回の劇場版では円卓の騎士たちを召喚したのは獅子王なのですが、劇中では円卓の騎士たちとほとんど言葉を交わしていないんです。前編でガウェインに容赦なく裁きを与えたシーン以外は、基本的にアグラヴェインとしか話していないと思います。ベディヴィエールは、獅子王によって召喚されたわけではないですし、獅子王はベディヴィエールの存在を忘れてしまっているので……。

 答えられるのはアグラヴェインとの話になってしまうのですが、多くを語らない2人だからこそ、そこには信頼があったのだろうと思います。両者とも冷酷な印象で、本当は何を考えているのかも伝わってこない。でも、今回の獅子王に限って言えば、アグラヴェインとは理解しあっていて目指す方向が同じだったのかなと思います。

映画『FGOキャメロット後編』声優インタビュー第4回。川澄綾子さんに獅子王の人物像や劇場版の魅力、円卓の騎士への想いを訊く
『劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 後編 Paladin; Agateram』ティザービジュアル

――ちなみに、円卓の騎士の中で一番推せるキャラクターは誰でしょうか?

川澄推せる……というならベディヴィエールでしょうか。アルトリアが獅子王になってしまった要因はべディヴィエールにあるのですが、それを自分の中で悔恨しながら、それでも「あなたの笑顔が見たかった」という想いだけであれだけの旅をしたということ。

 そして、ベディヴィエールがアルトリアを王ではなく“人間”として見てくれたということを感じました。彼は「アルトリアだって苦しいんだ」とか「アルトリアも悩んでいるんだ」ということを分かってくれようとしてくれたのかな、ということで推しています。

――『FGOキャメロット後編』の収録で印象的だったエピソードがあれば教えてください。

川澄劇中では何回かアルトリアがフラッシュバックするという形で、アルトリアと獅子王の両方が登場するシーンがあるのですが、その対比のせいで特異点にならなかった通常の円卓の関係がとても良いものだったのだと感じました。そして改めて「私はアルトリアが好きだな」と思いながら、アルトリアと獅子王が交互になるようなシーンを演じました。

映画『FGOキャメロット後編』声優インタビュー第4回。川澄綾子さんに獅子王の人物像や劇場版の魅力、円卓の騎士への想いを訊く

――藤丸立香役の島崎信長さん(※)にお話を伺った際に、アグラヴェイン役の安元洋貴さんが感情移入しすぎて非常にランスロットに当たりが強いとお聞きしました。川澄さんは獅子王を演じていて、円卓の騎士たちになにか思うところはありましたか?

川澄あまり多くの騎士と会話をしていないということもありますが、そもそも獅子王にとってはいろいろなことが些事なんですよね。ランスロットが裏切ったという報告を聞いても「そうか」くらいの感じでしょうか。比較的会話をしたのは、アグラヴェインとベディヴィエールの2人ですが、アグラヴェインに対しては、目的を同じくする故にいちいちお互いの気持ちを確認するまでもない、他の人間には理解されなくても構わないと思っていたのではないかなと。だからこそ、ランスロットはアグラヴェインに対して疑念を抱いてしまうのですが……。

 私にとっては安元さんがすごくランスロットに怒っているのが意外で、安元さんが仰っていたことでアグラヴェインという人物をより深く理解できたところはありました。正直、獅子王にとっては誰が抜けようが、誰が残ろうが関係なかったんです。アグラヴェインは残るだろうと感じていたとは思いますが。それが円卓の騎士たち同士が戦うシーンであっても“誰が残るか”は気にしていなかったんじゃないかな。

 私自身が客観的に見るなら、今回のガウェインがとても不憫で辛いなと思います。太陽の騎士と言われるくらい、本当はすごく光り輝いている存在のはずなのに、ずっと苦悩していて……。本来の明るく自信に満ちた彼が恋しくなりますね。ランスロットに関しては、アルトリアだったら、ランスロットに対して『Fate/Zero』で描かれた様な気持ちを抱くかと思いますが、獅子王はそういう感情はなかったと思います。最後には神に至る存在なので視点がまったく違うなと、後編の獅子王を演じてより思うようになりました。

※崎の正式表記は立つさき。