2021年3月26日(金)から、『映画 モンスターハンター』が全国公開。公開を記念して監督のポール・W・S・アンダーソン氏にインタビューを実施。

 本稿では、本作の監督であるポール・W・S・アンダーソン氏へのインタビューを掲載。撮影でのエピソードやこだわりなどを聴いた。

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ポール・W・S・アンダーソン

 1965年3月4日生まれ。イギリス出身。『ショッピング』(1994 年)で映画監督デビュー。『モータル・コンバット』(1995年)、『バ イオハザード』シリーズ(2002~2016年)といったゲームの映画 化作品を始め、『エイリアンVSプレデター』(2004年)など多彩な作品を手掛ける。

『モンハン』への溢れ出る情熱が映画化に繋がる

――『モンスターハンター』の映画化を企画された理由・経緯を教えてください。

ポール僕は日本が好きで、日本のゲームもよくプレイしているけど、10年前はまだ、『モンハン』は海外ではほとんど知られていなかったんだ。けれども、そのころから僕は『モンハン』で描かれる世界観や、根底に流れるテーマに惚れ込んでいて、登場するモンスターたちや美しい風景など、すべての要素に魅力を感じていた。これは何としても映画化したいと思い、カプコンと交渉しつつ、制作を進めていったんだ。

――よりよいものを目指した結果、10以上年の月日が掛かったということでしょうか?

ポール僕の情熱を塊にしたような作品だからね。時間をかけてでも納得のいくものを作りたかった。でも逆に、これだけ時間を掛けたことでよかった点もあるよ。『モンハン』がどんどん成長して、世界的に有名なタイトルになってくれたからね。

映画『モンスターハンター』ポール・W・S・アンダーソン監督インタビュー。「作中に登場するモンスターたちをリアルな存在として感じてほしい」

携帯電話やインターネットが繋がらない過酷な環境でのロケで得たものとは!

――撮影全体を振り返って、思い出深い出来事がありましたら教えてください。

ポール僕はこれまで25年間にわたって映画を作り続けてきたけど、本作はその中でも、いちばん撮影が楽しかった作品であり、いちばん難しかった作品とも言える。せっかくやるからには『モンハン』ならではのあの世界を忠実に描きたかったから、リアルなロケ地での撮影にこだわったんだ。その甲斐もあって、都市部から何100マイルも離れた広大な大自然の中での撮影が実現したのはよかったね。だけど、それはまた、これまでにないほど過酷な環境での撮影でもあった。

映画『モンスターハンター』ポール・W・S・アンダーソン監督インタビュー。「作中に登場するモンスターたちをリアルな存在として感じてほしい」

――大人数のロケ隊で撮影を行うとなると、トラブルも多発しそうですね。

ポール携帯電話もインターネットもつながらない環境で、みんなでテントを張って野宿をして、朝から晩まで撮影に取り組むというのは、本当に冒険のようだった。まるで僕たち自身も『モンハン』の世界にいるような楽しい時間を過ごすことができたよ。

――完成した映像からも、過酷なロケを実施した成果は感じ取れますか?

ポール実際のロケーションで撮影したメリットとしては、モンスターの描写にリアリティーを与えられた点が挙げられる。昨今の大作映画の多くは、スタジオのグリーンスクリーンで撮影されていて、そこに登場するクリーチャーや背景もすべてコンピューターで制作されているんだ。もちろんいまのCG技術はすごいんだけど、そうなると、実写映画なのにアニメーション映画を観ているような感覚になってしまう。

 本作ではそうしたイメージを払拭したいという思いもあって、リアルな環境での撮影にこだわったんだ。モンスターそのものはVFXで描くものの、そこにある木々や砂、髪をなびかせる風、レンズフレアなどはすべて現実のものになる。だからこそ、その風景の中にいるモンスターはリアルな存在として映るし、観客の皆さんにもより深く、作品の世界に没頭してもらえると思うんだ。

映画『モンスターハンター』ポール・W・S・アンダーソン監督インタビュー。「作中に登場するモンスターたちをリアルな存在として感じてほしい」

――ディアブロスの動きに合わせて砂塵が舞い散る描写など、すごくリアルでした。ところで、人気ゲームを映画化する場合、プレイした人とプレイしていない人、どちらにも受け入れられるように作るのはたいへんなのでは?

ポールどちらのお客さんにも楽しんでもらいたいので、そこはもっとも力を入れて取り組んだポイントだね。未プレイの人でも楽しんでもらえるし、コアな『モンハン』ファンなら、思わずニヤリとなるような造形や演出をたくさん仕込んでいるから、そちらにも期待してほしい。

 それこそ、『モンハン』シリーズを作り続けている辻本良三プロデューサーや藤岡要ディレクターと連携して、脚本から衣装・武器のデザイン、モンスターの造形、鳴き声、行動様式、さらには世界設定や環境設定まで、すべて細かく打ち合わせをして作り込んでいるので、きっと満足してもらえると思う。

――そうしたこだわりは、『モンハン』未プレイの人にも響きそうですね。

ポールゲーム作品を映像化することの醍醐味は「いかにしてバランスを保っていくか?」というところだと思う。『モンハン』の世界を知り尽くしているコアなファンに対しても、そうしたファンといっしょに観に来てくれた友だちに対しても、しっかりエンジョイしてもらえる映画に仕上げる。

 そのチャレンジこそがおもしろくて、さまざまな作品に取り組んでいるといっても過言ではないかな。映画がきっかけとなってゲームをプレイするようになる人も大勢いると思うので、作品の看板を傷つけないように……という気持ちはつねに持っているよ。

映画『モンスターハンター』ポール・W・S・アンダーソン監督インタビュー。「作中に登場するモンスターたちをリアルな存在として感じてほしい」

――そんなモンスターたちと戦う主人公・アルテミスも、非常に個性的なキャラクターですね。

ポールミラはアルテミスの人格を理解し、共感するために多くのリサーチを行ったんだ。アルテミスはファンタジー世界の住人ではなく、我々の世界の人間であり、兵士でもある。私生活では結婚もしていて、子どももいるんだ。そんなリアルな人物像をものにするために、米軍に依頼して、世界に18人しかいないという女性レンジャーのひとりを紹介してもらった。彼女とともに過ごし、そこから学んだ多くのことが、劇中で見せる所作にも反映されていると思う

――映画に登場するモンスターは、どういった基準で選ばれたのでしょう?過去の作品からもネルスキュラなどが登場しますね。

ポール『モンハン』ファンのあいだでの人気の高さを考慮しつつ、僕自身も気に入っているモンスターたちを選ばせてもらったんだ。最新作の『モンハンワールド:アイスボーン』だけでなく、初期作品からも引っ張ってきたので、最高の顔ぶれになっているんじゃないかな。

 こうして見てみると、改めて日本のクリエイティビティーのすばらしさには感心させられるね。どのモンスターのデザインも、ユニークで恐ろしくて、それでいて美しい。これらのモンスターを映画に登場させられて、本当にうれしいよ。

――モンスターに加え、作中に登場する武器に関しても、こだわったところはありますか?

ポールハンター役のトニー・ジャーにはゲームでも人気の高い大剣と大弓を持ってもらったんだけど、生身の人間がそれらを使って戦うとなると、ものすごい力と技術が必要になる。

 けれども彼は、大剣を手にした瞬間、まるでペンナイフを扱うかのようにクルクルと振り回して華麗なアクションを見せてくれたんだ。まるで「どうだい?」と言わんばかりの剣さばきに、その場にいた一同は圧倒されてしまったことをよく覚えているよ。

――ハンターのアクションは見ごたえがありました。

ポール大剣よりもさらに巨大な大弓すら、難なく使いこなしていたからね。彼のような世界的なウォーリアーと仕事ができて光栄だったよ。

映画『モンスターハンター』ポール・W・S・アンダーソン監督インタビュー。「作中に登場するモンスターたちをリアルな存在として感じてほしい」

――カプコンの開発陣との打ち合わせの中で飛び交った意見や要望で、印象的だったものはありますか?

ポールたとえば、ディアブロスが地中から出現するとき、ふつうなら「ミラが食べられてしまう!」といったところに気が向くと思うんだけど、藤岡さんからは「足の爪が尖りすぎている」という指摘が入ったんだ。

 「ディアブロスはふだん、地中に潜んでいて、ものすごい速さで土を掘りながら移動するので、きっと爪も摩滅しているはずだ」とね。これには、なるほどと思い、さっそくビジュアルを修正したよ。

映画『モンスターハンター』ポール・W・S・アンダーソン監督インタビュー。「作中に登場するモンスターたちをリアルな存在として感じてほしい」

――まさに開発陣ならではのこだわりですね

ポールそれと、登場するモンスターの鳴き声についても、いろいろとアドバイスをもらった。その中でも、アイルーの声にはかなりこだわられていたのが印象的だったね。ひたすら微調整をくり返して、納得いく形に仕上げてもらったので、そちらにも注目してほしい。ほんの一瞬だけ見えたり、聞こえたりするシーンに対しても、ものすごいこだわりがあって、そうしたところも『モンハン』シリーズが多くのファンから支持されている理由のひとつなんだなと、改めて実感させられたよ。

作品情報

  • タイトル:『映画 モンスターハンター』
  • 公開日:2021年3月26日(金)公開
  • 監督・脚本:ポール・W・S・アンダーソン
  • 出演: ミラ・ジョヴォヴィッチ、トニー・ジャー、山崎紘菜、ロン・パールマン ほか
  • 原作:『 モンスターハンター』(カプコン)
  • 製作: コンスタンティン・フィルム、テンセント・ピクチャーズ、東宝
  • 配給: 東宝=東和ピクチャーズ共同配給
映画『モンスターハンター』ポール・W・S・アンダーソン監督インタビュー。「作中に登場するモンスターたちをリアルな存在として感じてほしい」

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