コミュニケーションや情報収集の手段として、私たちの日々の生活に欠かせないものとなっているTwitter。ゲームコミュニティーにおけるその存在感は年々増しており、Twitterの発表によると、ゲームに関するツイート数は年間で20億(!)を超え、2019年から75%増加。ゲームについてツイートした利用者の数は49%増加し、過去最高を記録したという。ここ数年ゲーム関連のツイートは、前年比20%ずつ増加していたとは言うが、2020年の伸びは飛躍的だ。

 そんな気になるTwitterの動向について、ファミ通.comでは、昨年(2020年)に引き続き、今年はリモートという形ではあったが、Twitterゲーム コンテンツパートナーシップ グローバル統括責任者 リシ・チャダ氏にインタビューをする機会を得た。リシ氏に、2020年のTwitterのトレンドと、2021年の展望を伺った。

リシ・チャダ氏

@rdotchadha
Twitter ゲーム コンテンツパートナーシップ グローバル統括責任者

Twitterのゲーム コンテンツパートナーシップを率いており、グローバルなゲームリーグ、パブリッシャーと開発者、ゲーマーからのコンテンツをリアルタイムでファンに提供している。
2017年のTwitter入社以降、Activision Blizzard、Riot Games、The Game Awardsなどの世界的に著名なゲームイベント、eスポーツの組織などの開発者と新しいコンテンツパートナーシップを立ち上げる。Twitter入社以前は、Mobcrush、Machinima、Gunnar Optiksでゲーム コミュニティの認知度を高めることに従事。

とにかく『あつまれ どうぶつの森』の勢いがすごかった

――2020年を語るうえで新型コロナウイルスを外すことはできませんが、Twitterがコロナ禍で果たした役割を教えてください。コロナ以前とコロナ下では、ツイートの動向などに変化はありましたか?

リシ2020年は、Twitterのユーザー数が大きく伸びました。それというのも、新型コロナウイルスの情報を得るためにTwitterを使う方が増えたからです。さらには、皆さん自宅にいらっしゃるので、Twitterを使用する頻度も上がったようです。自宅にいるぶん、皆さんいままで以上にゲームに接する機会が増えて、いままで以上に自身がプレイするゲームに対してツイートをするようになりました。

――2019年に比べて、ゲーム関連のツイートが75%増加したそうですね。どのような動向が顕著だったのですか?

リシあつまれ どうぶつの森』の勢いがすごかったです。『あつまれ どうぶつの森』が発売されたのは2020年3月で、新型コロナウイルスの波が押し寄せてきたこともあり、皆さん家にいるタイミングで、新しいゲームを探していらっしゃったようで、大きな注目を集めました。日本においても、世界においても、2020年でもっとも(Twitterで)会話されたゲームは『あつまれ どうぶつの森』でした。

 もうひとつは、新しいコンソールの登場です。次世代機には皆さんとてもワクワクされたようで、プレイステーション5やXbox Series X|Sが大きな注目を集めました。

 さらに大きなトレンドとして言えるのが、デジタルイベントですね。従来であればリアルなイベントとして行っていたものが、状況が状況だけに、軒並みデジタルにシフトしました。東京ゲームショウやgamescom、The Game Awardsなどがデジタル化されたことも、2020年の大きなトレンドですね。

――ちなみに、『あつまれ どうぶつの森』では、どのような種類のツイートが多かったのですか?

リシじつは非常にバラエティーに富んだツイートが見受けられました。「そっちの島に遊びに行ってもいい?」といった、ゲーム内でのやりとりに関することから、遊びかたのアドバイス、さらには「『あつまれ どうぶつの森』はおもしろいよね!」といった、ゲームに対する感想まで、全体的に驚くほどポジティブなツイート内容で、こんなにゲームがユーザーに喜びを与えているんだ……と感動しました。みなさん、『あつまれ どうぶつの森』をプレイしての喜びを、Twitterで素直に表現されているのだと思いました。

――それは、とてもほっこりしますね。『あつまれ どうぶつの森』のコミュニケーションのひとつの手段として、Twitterが有効に機能したということですね。

リシはい。皆さんが前向きな形でゲームに対して会話をすることに対して、Twitterがは少しは貢献できたのではないかと思っています。

Twitter2020年のトレンドを担当者が紐解く。『あつ森』が圧倒的な人気、ツイートで見えたPS5とXbox Series X|Sの戦略の違い
“ゲーム”はTwitter上で6番目に多くフォローされたトピック。“ゲーム”のカテゴリーで、2020年にもっとも多くフォローされたトピックは、1.ゲーム、2.ゲームニュース、3.eスポーツ、4.ゲームインフルエンサー、5.プレイステーション、6.『フォートナイト』、7.『コール オブ デューティ』、8.『Minecraft』、9.『どうぶつの森』、10.Xbox。

――次世代ゲーム機の盛り上がりぶりはいかがでした?

リシ新しいコンソールが出てくるということで、皆さんのワクワクぶりは相当なものがありました。私が興味深かったのは、プレイステーション5とXbox Series X|Sで、どのように詳細を発表していくかで、取った戦略がまるで異なるということでした。

 プレイステーション5は、2020年にふたつの大きなイベントを行いました。6月と9月ですね。ですので、Twitterの会話のほうも、ふたつのイベントに合わせて大きな盛り上がりを見せました。一方のXbox Series X|Sのほうは、1年を通して、複数のイベントを継続的に展開しました。通年で盛り上がっていて、会話の頻度も多かったです。それぞれが取った戦略を反映して、ツイートの傾向も違いましたね。

 両社ともそれぞれ違う戦略を取って、お互いに“ファンの皆さんに盛り上がってもらう”という目標は満たしている。まったく異なる戦略で興味深いです。

――ツイートから、両陣営の戦略の違いも見えたということですね?

リシはい。Xboxの場合は、「楽しい」「いっしょに楽しもう!」というトーンで、ファンの人たちと積極的に会話を交わしたり、やり取りをしていて、意識的に楽しいアカウントにしています。一方のプレイステーションは、あまりみずからファンとやり取りをするといったアカウントではなくて、情報発信がメインになっています。任天堂はその中間ですね。楽しさを出しつつも、Xboxほどではない。それぞれTwitterに対するスタンスの違いがあって、興味深いですね。

 ああ、そうだ。新しいハードの発売ということでとても印象的だったのが、プレイステーション5とXbox Series X|Sがローンチするときに、お互いのアカウントで「Good Luck!」と健闘を称え合っていたんですね。とてもすばらしいことだと思いました。

――とてもいい話ですね。ちなみに、さきほど2020年のトレンドとして、デジタルイベントを挙げていましたが、デジタルイベントに対するツイート数はどうなのですか?

リシじつは、リアルイベント時に比べてツイート数は増えています。その理由としては、デジタルイベントが開催されているのをライブで見て、皆さんどんどんツイートするんですよ。ショウの進捗に合わせて、「いまこんな状況ですよ」と、逐一進捗をリポートする。クリップやハイライトを駆使する方も多かったです。

Twitter2020年のトレンドを担当者が紐解く。『あつ森』が圧倒的な人気、ツイートで見えたPS5とXbox Series X|Sの戦略の違い
ゲームに関してもっともツイートしている国は、1.日本、2.アメリカ、3.韓国、4.ブラジル、5.タイ、6.イギリス、7.フランス、8.インド、9.フィリピン、10.スペイン。タイもけっこうなゲーム大国なんだなあ。

『Fall Guys』と『Among Us』のアカウントには感心した

――オンラインイベントということで、Twitterなどで積極的に参加したといったところでしょうか。また、もっともツイートされたゲームに関して、2019年から半分の5タイトルが入れ替わっていますが、どのようなトレンドの変化があったのでしょうか?

【2020年世界でもっともツイートされたゲームTOP10】

※表記はTwitterの発表に準拠

【新】1.あつまれ どうぶつの森(@animalcrossing※日本版のTwitterはこちら
2.Fate/Grand Order (@fgoproject
【新】3.ディズニー ツイステッドワンダーランド (@twst_jp
4.ファイナルファンタジー(@FinalFantasy※日本版のTwitterはこちら
5.フォートナイト(@fortnitegame※日本版のTwitterはこちら
6.あんさんぶるスターズ!(@ensemble_stars
【新】7.荒野行動(@game_knives_out
【新】8.原神(@GenshinImpact※日本版のTwitterはこちら
【新】9.Apex Legends(@PlayApex
10.Identity V(第五人格)(@IdentityVJP

リシみなさんがプレイするゲームが少しずつ変わってきているということはあるかもしれません。『あつまれ どうぶつの森』や『ディズニー ツイステッドワンダーランド』、『原神』など、いままでになかった新しいゲームが世界的に大きな盛り上がりを見せたということは言えるでしょうね。

Twitter2020年のトレンドを担当者が紐解く。『あつ森』が圧倒的な人気、ツイートで見えたPS5とXbox Series X|Sの戦略の違い
ちなみに、日本でもっとも会話されているゲームは、1.『あつまれ どうぶつの森』、2.『ディズニー ツイステッドワンダーランド』、3.『Fate/Grand Order』、4.『荒野行動』、5.『モンスターストライク』、6.『Apex Legends』、7.『あんさんぶるスターズ!』、8.『Identity V(第五人格)』、9.『スプラトゥーン』、10.『ファイナルファンタジー』となる。

――では、10位以下でユニークな動向を見せているタイトルがあればお教えください。

リシ動向が印象的だったのは、『Among Us』と『Fall Guys』ですね。ご存じの通り、両作ともソーシャル要素の強いマルチプレイゲームなのですが、このような状況下で、みんながつながりたいと思っているときにすごく響いたタイトルなのかなと思います。あとは、『VALORANT』なども人気がありました。いずれも、コミュニティーの規模がここまで成長して、Twitter上で会話が盛り上がるということで、動きの目立ったタイトルですね。

――昨年のインタビューでは、期待するタイトルに『サイバーパンク2077』を挙げていましたが、同作はいかがですか?

リシローンチのあと問題が発生してしまったのですが、発売後も多くのファンが語り合っているゲームではあります。国によっては、会話がTOP10に入ってくるところもあります。スペインやインド、トルコ、フランスなどですね。ヨーロッパではパブリッシャーがマーケティングに相当力を入れているので、それも大きく寄与していると思います。

――ちなみにTwitter活用という意味において、とくにすぐれていると思われるメーカーはどこですか?

リシ昨年私がとても感心したふたつのアカウントは、『Fall Guys』と『Among Us』です。両者とも楽しい遊び感覚が溢れているアカウントで、しかもコンテンツをいっぱい提供しています。ふたつのアカウントともものすごく成長が早かったです。たぶん1年で、両者ともそれぞれフォロワーの数が100万を超えたのではないかと思います。1年以内でここまで成長するのはすごいことです。

――ゲームメーカーのTwitterの活用方法に変化はありますか?

リシそうですねえ……。各メーカーがどうこうというのではありませんが、ここ1年くらいで大きな傾向として言えるのが、さきほどもお話したデジタルイベントへの流れですね。通常の記者会見の代わりに、Webのプラットフォームでイベントを打つようになった。Webにおけるファンとの関わりで、いろいろとクリエイティブな手法を試しているとは言えるでしょうね。いま対面で何かをするということがしにくいので、WebのプラットフォームやTwitterなどを使って、情報発信をする。それも非常にイノベーティブなやりかたを模索していて、いろいろと取り組んでいるのが、大きな傾向だと思います。

――そういう意味では、2020年はプロモーションが大きく変わった年ということは言えるかもしれませんね。

リシそう思います。2020年はイノベーションの年だったと言えるでしょうね。こういった状況がゆえにどういったコミュニケーションを取るかということで、みんないろいろと模索したという意味では、そうだと思います。

――リツイートの動向から、ずばりいまもっとも注目しているタイトルを教えてください。

リシ注目しているタイトルは、まずは『Among Us』。Twitterでの動向を見ていると、今年も勢いは継続するだろうと判断しています。『コール オブ デューティ』の新作も、リリースされるとつねに話題になっているので、注目すべきでしょうね。『ホライゾン:禁じられた西部』や『バイオハザード ヴィレッジ』も大きく盛り上がりそうです。『サイバーパンク2077』も、多くの方がプレイできる状況になれば、もっと盛り上がってくると期待しています。あとはプレイステーション5やXbox Series X|Sといった新ハードで、どんなタイトルが出てくるかも気になりますね。

Twitter2020年のトレンドを担当者が紐解く。『あつ森』が圧倒的な人気、ツイートで見えたPS5とXbox Series X|Sの戦略の違い
もっとも多かったゲームのイベントに関するツイートは、1.The 2020 Game Awards、2.The Future of Gaming on PS5 Event、3.東京ゲームショウ2020、4.ニコニコネット超会議2020夏、5.Xbox Games Showcase。ちなみに日本だと、1.東京ゲームショウ 2020、2.ニコニコネット超会議2020夏、3.The Future of Gaming on PS5 Event、4.The 2020 Game Awards、5.Xbox Games Showcaseとなる。

イノベーションを喚起できるような手助けをしたい

――昨年のインタビューでは、Twitterとeスポーツは相思相愛とのことでしたが、その関係は2020年ではどのように深化しましたか?

リシコロナ禍の状況にあって、2020年はなお一層eスポーツに注目が集まったということはあるかと思います。それにともないTwitterでのeスポーツ関連の会話も増加しています。

 私たちもそう思っていますし、パートナーさんも同様の認識かと思うのですが、皆さん本来であれば対面で、いろいろな情報交換をしたりするところを、いまはそれがしにくいので、その代わりにTwitterなどを使ってコミュニケーションを図っています。Twitterとeスポーツの相思相愛の関係は、2020年より一層深まったと思います。

――これも昨年のインタビューで、日本のeスポーツは発展途上とのことでしたが、2020年のツイートから判断して、どの程度まで浸透したと言えるでしょうか?

リシまだまだ、日本のeスポーツシーンは発展途上だと思っています。そこをさらに打破していくために、私がさらに期待したいのが、日本でいままで以上に国際的なeスポーツのイベントを開催することです。実際のところ、EVO Japan 2020は、もっとも話題になったeスポーツイベントの2位に入っています。ああいったイベントがもっと増えてくるといいのではないかと。コロナ禍で、リアルなイベントが開催できなくなってしまったのは残念ですが、感染が収束したあとで、どれだけeスポーツが発展していくのか、予測できるのではないかと思っています。

――最後に、2021年のTwitter社の戦略をお教えください。また、2021年はどのような年になると想定していますか?

リシ2021年は、ここ数年で見られた動きがさらに進化していくと思っています。少なくも当面はデジタルイベントがメインになってくるでしょうから、ゲームイベントにしてもeスポーツイベントにしても、デジタルで行われるというなかで、Webプラットフォーム上で、ファンの人たちとどのようなやり取りをすることが有効なのか、送り手は創意工夫してくると思っています。

 そんな中、私たちTwitterの戦略としては、どう適切なパートナーを見つけて、協業しながら楽しい活動をTwitter上で喚起するか、ということになってくると思います。そうすることによって、いかにより一層の会話をうながすか。ゲーム業界のさらなる盛り上げの手助けをいかにするかが、私たちの戦略だと考えています。

 もうひとつは、「何をなすべきか」ということで、それぞれのマーケットごとに戦略を立てて、積極的に取り組んでいきたいと思っています。日本のマーケットなら、日本のマーケットの特徴を生かして、パートナーさんとコラボして、より一層盛り上がるように手助けしていく。欧州や中南米など、各マーケットごとに最適な戦略を最適なパートナーさんと組んで展開していきたいです。

 つまり、戦略としては、(1)全体的にイノベーションを喚起できるような手助けをする、(2)それぞれのローカルマーケットごとに取り組みを深堀りしていく、(3)コロナ禍で対面できないこの世の中において、デジタルに移行すべきところは注力していく、といったところでしょうか。

 2021年のTwitterも、2020年以上に皆さんに利用していただけるのではないかと期待しています。