Twitterゲーム コンテンツパートナーシップ グローバル統括責任者 リシ・チャダ氏が、協賛しているEVO Japanの開催に合わせて来日。ファミ通.comのインタビューに応えてくれた。

 Twitterとゲーム、Twitterとeスポーツは親和性が高いというリシ・チャダ氏だが、Twitterとゲームの関係をどのように分析しているのか? なお、リシ・チャダ氏は、先日ファミ通.comでも紹介させていただいた、Twitterのゲームコンテンツにおけるデータを作成した方でもある。

Twitterゲームコンテンツの責任者リシ・チャダ氏に聞く。ゲーム・eスポーツとTwitterは相思相愛の関係にある_05

リシ・チャダ氏(Rishi Chadha)

Twitter ゲーム コンテンツパートナーシップ グローバル統括責任者
2017年にTwitter入社以降、Activision Blizzard、Riot Games、The Game Awardsなどの世界的に著名なゲームイベント、eスポーツの組織などの開発者と新しいコンテンツパートナーシップを立ち上げる。Twitter入社以前は、Mobcrush、Machinima、Gunnar Optiksでゲーム コミュニティの認知度を高めることに取り組んでいた。
@RdotChadha

Twitterの利用者は、瞬時につながりたくて、リアルタイムでフィードバックがほしい

――改めてのご質問となりますが、Twitterとゲーミング、Twitterとeスポーツは親和性が高いとのことですが、その理由を教えてください。

リシ一般的にゲームファンというのは、“ユーザーどうしで瞬時につながりたい”し、“リアルタイムでフィードバッグを得たい”という欲求を持っています。まさにそこが、Twitterがほかのプラットフォームよりも支持されている理由だと思います。ほかのSNS系のプラットフォームだと、ユーザー相互が瞬時にコミュニケーションを図るというのはなかなかに難しいです。Twitterであれば、直接的に瞬時につながれる。私が実際に目にした例で、「これはすごいな」と思ったものをご紹介しましょうか?
 あるeスポーツのトーナメントで、ひとりのファンが観客席に当てられているライトが眩しすぎると思ったようなんです。そこで、オペレーター側に「ちょっとまぶしいので、どうにかしてください」とツイートしたところ、オペレーター側から「はい、直しました!」という答えが瞬時に返ってきたんです。これはまさにTwitterというプラットフォームが提供できている瞬時性の一例でして、ゲームファンの皆さんのご期待にお応えできているところではないかなと。

――Twitterでコミュニケーションを取ることが、自然と成り立っているのですね。

リシTwitterというのは、ユーザーの皆さんが自然発生的に会話を行う場です。それがeスポーツのイベントであろうが、新作タイトルが発表されたタイミングであろうが、みんなTwitterに来て会話をするんです。そんな流れがゲームの世界では顕著に起きているようです。

――“瞬時につながりたい”、“リアルタイムでフィードバッグがある”、“自然発生的につながれる”といった特徴により、ここ数年、Twitterにおけるゲーム関連の会話が大きな盛り上がりを見せているようですね。

リシこれからもまだまだ成長する余地があると私は思っています。ここ数年、ゲーム関連の会話は対前年比20%ずつ増加しています。ゲーム関連のツイート件数で言うと、2019年は12億件という規模を誇っているんです。E3や東京ゲームショウ、The Game Awardsといったイベントごとに、ゲームユーザーが活気付きますね。

――何かのタイミングで一気にTwitterでのゲームが盛り上がってきたというわけではなくて、Twitterが普及していくにしたがって年々ゲーム関連の会話が多くなってきたのですね?

リシそう思います。じつは私がTwitterに入社したのは3年前で、その前は10年以上にわたってeスポーツやゲーム業界で働いてきました。Twitter内外でゲーム業界の変遷を見てきたのですが、この業界が成長するのと同時に、Twitterも成長してきたと思います。クルマの両輪のようなものかもしれません。そして、ゲーム関連の話題が盛り上がりを見せるにつけ、イベントなどでの会話が活性化するという好循環ができているんですね。さらに言えば、近年は『フォートナイト』や『FGO』といった注目タイトルも登場してきて、盛り上がりがさらに加速してきています。

――逆に言うと、そういったタイトルの盛り上がりに、Twitterが果たす役割は大きかったとも言えそうですね。

リシまあ、多少はあるかもしれません。ひとつ言えることは、どのようなゲームであろうが、コミュニティがお気にいりのタイトルを語る場は、Twitterであるということです。ゲーム内容が何であれ、ゲームがなんであれ、みんながTwitterにきて話をしているという意味では、両者にある程度の相関関係はあるのかなとは思います。

――そうすると、Twitterと相性がいいゲームコンテンツとよくないコンテンツがありそうですね。

リシいいご質問ですね(笑)。実際のところ、すべての種類のゲームが、Twitterとは相性がいいと思っています。家庭用ゲーム機向けやPC向け、モバイル向けを問わず、すべてのプラットフォームのタイトルがTwitterとの相性はいいです。ただ、唯一例外があるとすればソーシャルゲームでしょうか。“ゲームをプレイして終わり”ということで、ほかの人と語る内容があまりないようであれば、会話に発展することはないようです。

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ゲームには国境がない

――Twitterという視点で2019年のゲーム業界を振り返ると、ゲーム業界はどのような感じでしたか? 

リシTwitterとしては、2019年にゲーム業界はかなり成長したと思っています。顕著なのが、会話の数が非常に増えたことです。ゲーム業界に対する認知度が上昇し、可視性が上がってきたのかなと。ユーザーさんの目に届きやすいコンテンツになってきたんですね。

――なるほど。

リシあとひとつ明確に言えるのが、最近多くの人が気づき始めたことだと思うのですが、ゲームには国境がないんです。たとえば、2019年にTwitterでいちばん語られたゲームは日本のゲームの『FGO』です。世界各国のゲームユーザーが、日本のゲームコンテンツを楽しんで、称賛し合っているんですよ。

――“ゲームに国境がない”というのは素敵な言葉ですね。2019年に世界でもっともツイートされたゲームが『FGO』とのことですが、日本だけで話題にされたわけではないのですね?

リシ違いますよ。『FGO』はグローバルでポピュラーなゲームになっていて、2018年、2019年と2年連続で、Twitterでもっとも語られたゲームになっています。一方で、PCゲームが人気のある地域だと『フォートナイト』が注目を集めています。今後モバイルゲームが西洋でさらに受け入れられるようになると、『FGO』はまだまだ成長する余地があると個人的には考えています。

――ちなみに、今回発表された10タイトルで、伸びが印象的だったタイトルはありますか?

リシIdentityV 第五人格』ですね。『ファイナルファンタジー』も伸びています。じつのところ、2019年の上位10タイトル中、7タイトルは2018年から引き続きランクインしているんですよ。これら7タイトルは、よくぞ残っているなあと感心させられます。TOP10には入っていないのですが、『機動戦士ガンダム』も一貫して注目を集めています。2020年は新しい家庭用ゲーム機がローンチされ、新規ゲームがリリースされるかと思いますが、2019年のリストに入っていたタイトルが引き続き人気を集めるのか、それとも打って変わって新規IPが注目を集めるのか、非常に興味深いです。

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――家庭用ゲーム機だと、2019年はやはりNintendo Switchが話題にされることが多かったのですか?

リシ圧倒的にポピュラーなのはNintendo Switchですね。その点は、任天堂さんのやりかたがお上手だということはあるかもしれません。任天堂が何かを発信すると、ゲームファンはそれに耳を傾ける。そして、そのことについてTwitterで語るということがひとつの現象になっているんですよ。Nintendo Directがそのいい例です。任天堂さんは2019年にもNintendo Directを何回が実施したのですが、任天堂さんが新しいアナウンスをする度に、Twitterでの会話数がぐんと上がります。それは、とくに日本においては顕著ですね。日本で会話の数がポンと跳ね上がるのを見ていると、だいたいNintendo Directを放送しているときだったりします。そのへん任天堂さんはお上手です。
 ソニー・インタラクティブエンタテインメントさんに関していえば、そこが少し出遅れている印象がありますが、ここ数年新ハードがでてこなかったことも、その一因としてあるかと思います。今年プレイステーション5がリリースされれば、状況も変わってくるのではないでしょうか。

――ちなみに、Twitterの動向を分析していると、「このタイトルが来そうだな」とか、「このハードは人気がでそうだ」というのはだいたいわかるものなのですか?

リシそれは、多少は言えます。たとえば昨年のE3とかだと、任天堂の新しいタイトルや『サイバーパンク2077』が大きな盛り上がりを見せましたね。まあ、『サイバーパンク2077』の場合は、キアヌ・リーブスがステージに登壇した効果もあったかと思います。とはいえ、Twitterでのツイートということに関して言うと、最近はひとつの傾向が見えてきました。

――何です? それは。

リシゲームメーカーが何らかの発表をしたとして、たとえそれに対するユーザーのコメントや反応が否定的なものであろうと、それでよしとするという風潮が、多くの企業にあるということです。なぜかというと、それでもみんな製品について語ってくれるからです。企業側がそういったふうに姿勢を変えてきているんですね。以前だったら、せっかく自分たちがアナウンスしたのに、受けが悪かったりすると、心配して「大丈夫だろうか……」と不安になる傾向があったのですが、最近はそれがいい反応であろうが、悪い反応であろうが、何らかのリアクションがあるということは、人々が自分たちの製品について会話をしているということで、「それ自体がわくわくすることだ」というふうになってきています。その端緒となったのが、ニンテンドー・オブ・アメリカの元社長のレジー・フィザメイ氏だと思います。彼が、“たとえネガティブな発言であっても話題にしてくれるだけでありがたい”という姿勢を示したところ、それを多くの人が称賛して、いまの流れになったのです。英語には昔から、“いかなる報道内容であっても、それはよい報道だ”という言葉があるのですが、そういうものだと思います。

――ゲームに関しては、日本が世界でもっとも多くツイートされた国となったようですが、なぜ日本人はここまでTwitterが好きなのでしょうか?

リシどうやら日本人の皆さんは、ひとつの関心事を人々と分かち合うのがとくに好きなようです。シェアリングですね。自分のゲームスコアを人と分かち合ったり、自分がプレイしているゲームのことを分かち合ったり……。内容も、“誰といっしょにゲームをしているのか”とか、“どうやってゲームをしているのか”とか、“このゲームはどうやってプレイしているのか”と多岐にわたります。言ってみれば、ゲームに対する皆さんの愛が強いようです。

Twitterゲームコンテンツの責任者リシ・チャダ氏に聞く。ゲーム・eスポーツとTwitterは相思相愛の関係にある_01
E3 2019でも屈指の盛り上がりを見せたのではないかと思われるXboxブリーフィングでの『サイバーパンク2077』でのキアヌ・リーブス登壇。記者も興奮した!

eスポーツとTwitterは愛し合っている状態

――さて、eスポーツが世界中で盛り上がりを見せていますが、その中でTwitterはどのような役割を果たしているのでしょうか?

リシTwitterとeスポーツの関係をお話するには、ここ数年のeスポーツの動向をお話するのがいいかと思います。これまでeスポーツの分野ではコンテンツが分断されていました。これまでは、ある年にはeスポーツのタイトルを出したが、翌年にはリリースしない……ということがけっこう頻繁にありました。それが、ここ数年は、eスポーツに取り組んでいるパブリッシャーは少し方向性を変えてきています。eスポーツそのものを、もっと長期的で持続可能なコンテンツにしようという戦略に切り替えてきているんです。つまりeスポーツをひとつのエコシステムとして、安定化させようという動きですね。ひとつ大きかったのは『フォートナイト』かもしれません。『フォートナイト』はワールドカップでかなりの賞金などを出したりして、ゲームユーザーからの注目を集めました。それに付随する形で、eスポーツには5年前には存在もしなかったような、新たな職種が生まれてきているんですよ。とくにいまの若者は、従来のスポーツよりもeスポーツのほうを観戦する傾向がある。これはグローバルで顕著な傾向です。この波に乗るべきだと、多くのゲームメーカーが判断したんです。

――そんなeスポーツの流れにTwitterがマッチしたということですか?

リシその通りです。Twitterが果たした役割というのは、“ゲームユーザーがeスポーツを語る”という、その会話を維持していくことで、エコシステムを安定化させることです。そしてそこからさらにeスポーツをより活性化させるというのが、Twitterの役割となります。世界中の人々は、いま何が起きているのかと思ったときにTwitterに来て、それを探ろうとします。Twitterでeスポーツが語られることが、何よりも重要なのだと私個人は感じています。

――そういう意味でいうと、いま世界におけるeスポーツの盛り上がりに、Twitterが果たしている役割はかなり大きいと言えそうですね。

リシたしかに、eスポーツのエコシステムが成長して、可視性が上がってきたことに対して、Twitterはとても重要な役割を果たしたと言えると思います。ただ、お使いになっている方は、そこまで意識していないのではないかと。なぜかと言うに、Twitterとeスポーツのエコシステムは“ハンズ・イン・ハンズ(手を携えて)”成長してきたので、eスポーツのコミュニティにTwitterがあるというのは、当たり前過ぎて、あまり意識されていないからです。むしろ意識されていないことのほうがありがたくて、eスポーツとTwitterは、相互に補完し合っている関係で、お互いがお互いを愛し合っている状態ということは言えると思います。そして今後ともに成長していくことが重要なのです。

――言ってみれば、内助の功といったところなのかしら……。ところで、Twitterから見て、日本のeスポーツの現状をどのように分析していますか?

リシ確かに、日本のeスポーツ市場はまだ発展途上だと思っています。日本はいままでPCゲームがあまり強くなくて、どちらかというとモバイルゲームと家庭用ゲーム機が強い市場でした。PCゲームがなかなか育ってこなかったということも、日本でeスポーツが出遅れていた感がある一因だと思っています。ただ、これからはPCゲームも成長してくるでしょうし、eスポーツも成長していくのではないでしょうか。さらに日本の強みとして、格闘ゲームのコミュニティがあるので、格闘ゲームのエコシステムにより認知度が高まることで、認知度がさらに上がっていくことが期待できます。一方で、日本でのモバイルゲームやeスポーツのエコシステムの成長も期待されるところです。

――日本のさらなるeスポーツ市場の活性化という見地から、今後どのようなことを考えていますか?

リシそれは従来から取り組んでいるパートナーシップをさらに強化するということに尽きると思います。EVO Japanとの協業はそのひとつです。さまざまなイベントをサポートしていきたいですね。あとは、個々のeスポーツ選手のフィーチャーといったことも考えています。私たちがプラットフォーム上で選手たちのストーリーを語ることによって、ゲームファンの会話を喚起するという。どのようにツイートを促すのか、私たちはつねにいろいろなチャンスを見定めています。

――最後に、ゲーム全体における今後のTwitterの戦略や施策などを教えてください。

リシいくつかあります。eスポーツ同様、これまでお付き合いしていたパートナーさんとより一層深い協業をしていくことがそのひとつ。もうひとつはいままで以上に各地域のマーケットに注力していくということです。さきほど“ゲームには国境がない”とお話しましたが、一方で、各地域には各地域で独自に盛り上がっているトピックがあって、そこに対してどのような光を当てるのか……。たとえば、日本という地域ひとつとっても、日本に対して私たちがどういったことができるのかということを考えています。そういった意味でも、世界各地で開かれているゲームイベントには注目しています。

――いずれにせよ、新ハードが出る2020年は、Twitterもさらに活況を呈しそうですね。

リシまさにその通りです! 新しいハードのローンチがどうなるのか。ハードの登場にともなってゲームがどのようなパフォーマンスを見せるのか……本当にワクワクしています。あとは、個人的には『サイバーパンク2077』ですね。発売日は9月になってしまいましたが、発売日にどのような盛り上がりを見せるのか……楽しみです。

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