Blizzard Entertainmentが開発中のアクションRPGシリーズ最新作『ディアブロIV』の開発者インタビューをお届けしよう。

 先週末に行われたBlizzardのファン向けイベント“BlizzConline”では、バーバリアン・ソーサレス・ドルイドに続く4番目のクラス(職)として、正式には初代『ディアブロ』以来となるローグが発表され、話題を呼んだ。

 発表内容については別の記事ですでにお届けしているのでそちらもチェックしてほしいが、今回の取材ではローグの詳細や、PvP(対人戦)コンテンツの細かい仕様、キャラクターの外見カスタマイズで調整できる項目など、発表ではわからなかった部分を細かく聞いたぞ。

ジョセフ・パイピオラ

『ディアブロIV』リードシステムデザイナー。

カリーナ・キングダム

『ディアブロIV』のリードアニメーター。

新クラス“ローグ”の装備や、固有特化、スキルの方向性

――ローグは遠距離用武器スロットが1つあり、近接用武器スロットが2つあります。Quiver(矢筒)はもうないのでしょうか? またシールド装備はできますか?

ジョセフローグはもうQuiverを使わなくて済むようになりました。ローグの設計は機敏な戦闘に特化していて、戦闘に飛び込んでいって罠などで周囲をコントロールし、必要とあれば急速に離脱する。なのでシールドも装備しません。そういうスタイルのクラスになっています。

カリーナ武器としては弓・クロスボウ・剣・ダガーを使えます。

――では武器をどう使い分けるのでしょうか? マニュアルで切り替える必要がありますか? スキルで切り替わる形ですか?

ジョセフローグのアビリティには近接用のものと遠距離用のものがあって、使ったアビリティによって自動的に武器が切り替えられます。彼女は“仕事”をするのに適切な道具を持っているプロフェッショナルですから、モードの切り替えは優美かつ高速に行われます。戦闘にダッシュで飛び込んで次々刺し、クロスボウで一気に攻撃して、踊るように離脱するといった感じです。

ディアブロIV
ローグの装備スロット。近距離系・遠距離系の武器の使い分けは使用するアビリティベースで切り替わるようだ。

――ローグ固有の要素である“スペシャライゼーション”と“インビュー”についても教えて下さい。これらはスキルツリーの中にあるのでしょうか? 切り替えはどうやるのでしょうか? スキルツリーを割り振り直す必要がありますか?

属性変化をつける“インビュー”

ジョセフまずインビューから説明しましょう。これは戦闘状況の中で対応能力を高めるための固有システムです。

 ここでは3種類を紹介します。まずはポイズンインビュー。これは武器に毒を塗って時間経過によるダメージを付与するものです。例えばこれを有効にしてからダッシュアビリティで敵の群れの中に突っ込むと、その通り道にいるすべての標的に毒を与えるようになるのでなかなか強力です。

 次はコールドインビュー。要は氷の魔法をかけるもので、彼女の攻撃でソーサレスのブリザードやフローズンオーブのようにChill状態を与え、しまいにはFreeze(凍結)効果に至らせるというものです。これは相棒のソーサレスとプレイしている時は2人でChill効果を重ねられるので特に楽しいですね。早く凍結へと持っていけます。

 最後にローグは影の魔法で武器に呪いをかけられます(シャドウインビュー)。こちらでは攻撃したりアビリティの有効範囲にいる敵に呪いを付与するわけです。その影響下にある敵を倒すと爆発して周囲にたくさんのダメージを与えます。うまく行けば連鎖反応を引き起こして一気に倒すこともできるでしょう。

 これらはスキルの扱いであり、スキルツリーの中にあって、複数のスキルで選ぶこともひとつだけで選ぶこともできます。

ディアブロIV
属性面でアビリティの方向性を変えるインビュー。毒・氷・影の他にもあることが海外公式Twitterアカウントで示唆されている。

スペシャライゼーション

ジョセフ次はスペシャライゼーションの説明をしましょう。これもまたローグ固有の要素です。

 ここで一般的なことを説明しておくと、各クラスはそれぞれ固有の特別な要素を持っています。だから例えばローグでプレイしてからバーバリアンやソーサレスやドルイドでプレイしてみると、最初にローグでプレイしている時には知らなかったクラス固有の要素に気づくと思います。ローグのスペシャライゼーションはそういった要素のひとつです。

 スペシャライゼーションは、“シスターズ・オブ・サイトレス・アイ”など世界のあちこちにいる盗賊の各勢力に会って入手しないといけません。彼らに接触し、クエストを完了して彼らから秘技を学ぶと使えるようになるんです。

 そうやっていって、3つあるスペシャライゼーションすべてを集めることもできます。勢力のもとに戻って再訓練をお願いすれば切り替えることもできます。

 ですので、キャラクターの能力の振り直しを全部やり直さなければいけないようなものではなく、オプションとしてゲームをプレイしながら性能を変えるために選んでいけるものになっています。

ディアブロIV
ローグ固有のミッションを通じて秘技を入手していき、ひとつを有効化できる模様。

ジョセフ3つあるスペシャライゼーションを紹介していきましょう。まずはコンボポイントで、コンセプト的には『World of Warcraft』や他のゲームでもあるものですが、『ディアブロ』にはハマっています。というのも、基本スキルなどでリソースを溜めていって消費スキルで使って、また溜めていくというような流れがありますよね。

 コンボポイントでは、一気にリソースを無駄にしてしまうのは避けたいでしょう。戦いながらレベル3までコンボポイントを得て、消費スキルでボーナスを乗せていけばさらにたくさんのダメージが入ります。これはプレイしていくとリズムゲームのような気持ちよさが出てきます。

 次のスペシャライゼーションはエクスポーズド・ウィークネスです。これを戦闘中に有効にすると、弱点のある攻撃を出している敵にアイコンが表示され、スペシャルアタックを決められるようになります。これをうまく使うには訪れたチャンスを確実に決めていく戦場での注意力が必要です。

 そしてシャドウレアルムです。これを使うとローグは周囲の敵を影の世界に引きずり込みます。元の世界の敵からの攻撃は当たらず、その空間の中にいる敵を攻撃できます。戻ってくる頃には相手にしなければいけない敵の数が減っているというわけです。

 これら3つのスペシャライゼーションによりローグのプレイスタイルは大きく変わります。近接・遠距離・トラップ系のスキルなどとの組み合わせでいろいろなことができます。

――シャドウレアルムに行っている間は周囲のプレイヤーからはどう見えるんですか?

ジョセフパーティーメンバーからは薄い影がそこに見えます。その中には干渉できないという形です。

PvPエリア(に入りたくない人のため)の仕様解説

――本当に“PvP要素をプレイしないといい装備が手に入らない”ということはないですか?

ジョセフ我々はオープンワールドのPvP要素であるフィールド・オブ・ヘイトリッドが、ゲームの進行に必要なアイテムや、他のエリアで手に入るのより強い装備を含まないように進めています。

 フィールド・オブ・ヘイトリッドで手に入るアイテムはそこに特化したものですが、多くは外見やトロフィー的な、プレイヤーが得た勝利を誇示するようなものとして設計されています。

 また対人戦だけでなく、モンスターと戦って倒すとか、宝箱を開けるとか、クエストを完了するといった要素もありますし、そこからレジェンダリー武器やその他の装備などが手に入る事もあって、それらはエリアの外で役立てることができます。しかし、それが他のエリアのコンテンツをプレイする事で手に入るものより特別に性能がいいということはないです。

 なので自分だけでプレイしたい人とか、PvPが好きではない人はそれらのエリアに行かなくても大丈夫です。

――フィールド・オブ・ヘイトリッドは固定のエリアなのでしょうか、それとも移動したりするのでしょうか?

ジョセフフィールド・オブ・ヘイトリッドは固定の場所です。というのは、普通に冒険していて予期せず足を踏み入れてしまって、いきなり他プレイヤーに攻撃されることになるのは避けたいですから。

 他にもフィールド・オブ・ヘイトリッドをそうしている理由はあって、固定のエリアにすることでプレイヤーが戦う周囲の環境やレベルデザインをしっかりやれますし、ちょっとした袋小路を作って戦いを誘発するなんていうこともあります。襲撃を警戒しながら歩くような空間、(集めることで報酬に繋がる)シャードを奪うためにプレイヤーが潜んでいるとも限らないという不安感を作り出そうとしています。

――ローグの発表トレイラーに出てきた“耳の壁”は作れますか?

ジョセフまず、PvPで他プレイヤーを倒すと耳を取れます。これは『ディアブロII』以来の復活です。1ゴールドで売ることもできましたが、そこに倒したプレイヤーの名前があって「こいつ倒してやったぜ」と保管しておくようなものでした。

 正直言うと多分、壁は持てませんが、『ディアブロII』のダークな雰囲気に『ディアブロIV』で帰る上でああいった要素を入れたいと思っていますし、扱いもああいったテイストにしたいです。つまり耳で何かを買うようなトークンにするのではなく、あくまでそれを誇りたい人のためのトロフィーといった感じですね。

カリーナでも耳の壁をゲームの中に持つアイデアについてはチームに持ち帰りますね(笑)。

新世代機対応はまだ未定。キャラクターカスタマイズはいろいろ用意

――新世代機へのプランはありますか? できればネイティブ対応してもらってDualSenseコントローラーで遊んでみたいんですが。

カリーナ現時点では以前のBlizzConで発表したプレイステーション4/Xbox One/PC対応ということ以上にお話できることはありません。

――キャラクターカスタマイズについて詳しく教えて下さい。体型や肌の色や髪型などは変えられますか? 性別は? それとも髪色やいわゆるボディーペイント的なものだけでしょうか?

カリーナすべてのクラスはふたつの性別を選ぶことができ、さらに目の色、髪の色とヘアスタイル、そしてペルソナ(ここでは恐らく顔のパターン)を選べて全体の顔の特徴が変わります。肌の色も変わります。体型は変えられませんが、タトゥーや装飾品などもオプションとして用意されています。

近接重視もアリ! 開発陣が好きなローグのプレイスタイル

――ローグの好きなプレイスタイルは?

ジョセフ映像で見せたのは弓系のスキルが多かったけど、自分が好きなのは近接系で動き回るプレイスタイルですね。遠距離系もカッコいいし遊んでいて楽しいんですけど、個人的には近接系で自分の好みのプレイスタイルとシナジーを発揮する面白いアビリティがいくつかあるんです。

 自分はポイズンインビューを取って、あとはブレイド・シフト(?)という通常攻撃から2秒間敵の中を突っ切って走れるというアビリティもですね。これは囲んでいる敵に止められる心配なしに突っ込んでいけます。

 そしてツイスティングブレーズというアビリティを取りますね。これは両手の武器で目の前の敵を攻撃すると、武器の影の分身が敵の中で回転して1秒後に戻ってくるというものです。この戻ってくる間にもダメージが入るので、経路上で巻き込むようにすると結構ダメージが入ります。うまく立ち回ればその間に毒ダメージもバラ撒けるわけですから、これはすごくいいです。

カリーナ私はピュアな遠距離系ですね。でもやっていると両方の組み合わせがやりやすいと感じました。遠距離でやっていて少しキツいボスがいたりすると近距離系に切り替えてカウンターするという感じです。

ディアブロIV
“バラージ”は分身とともに一斉射する技。ここでは氷が乗っている。

――では『ディアブロIV』全体で好きなキャラとプレイスタイルは?

ジョセフそれはローグ以外という意味? どうしようかな……。

カリーナいやそれはズルい! 私も今はローグなんですよね。最初はソーサレスだったんです。もちろんバーバリアンもドルイドもやりましたけど。『ディアブロIII』ではバーバリアンキャラを作りましたが、『ディアブロIV』ではソーサレスにしたんですよ。

 でもローグが来てからはずっとローグで、アニメーターのチームでプレイすると「もっと他のもやりなよ」って言われるんですけど……でも好きなんです。

ジョセフローグを気に入ってるんですが、自分はドルイドが次に好きですね。スキルの構成が気に入っています。

 ソーサレスは正確性も持っていて、魔法でコントロールするという感じの設計になっています。それは発動方法もそうですし、有効範囲なども比較的はっきりしている。

 それに対して、ドルイドはもっと荒々しい自然の力に繋がる野性的な設計になっているんです。トルネードとかはちょっと曲がって飛んでいくんですが、完全にコントロールできるものではありません。そこら辺の敵に大ダメージを与えてくれますが。

 変身系のスキルでも、熊や狼になって暴れられるのは一定時間ですし。でもそういう異なるプレイを切り替えていく所や、ドルイドの荒々しい力が魅力ですね。ボウルダーというスキルもそうですが、岩をぶっ放して敵を押して行って、壁に押し付ければさらにダメージが入ります。そういった力強さとプレイ感の違いは他のクラスにはないものです。でも、どのクラスも自分の子供のようなものなので愛しています。

コロナ禍での開発の進捗は「満足している」

――コロナ禍の開発はどうですか?

ジョセフオープニングセレモニーでも少し触れられていたかと思いますが、世界的なパンデミックの中でこういう大きなタイトルを開発していくのは大変でしたね。

 Blizzardは長いことあまり自宅作業にオープンではなかったんです。というのはオフィスで起こるコラボレーションが我々のゲームをよくする秘密のレシピでもあったんですね。でも新型コロナウィルスの影響を目の当たりにして、会社は非常に迅速に自宅作業に対する考えを改めました。スタッフの健康と安全は第一ですから。

 それで我々は自宅から作業する方法を急速に編み出していき、チームでそれに合わせていけるよう努力してきました。もともとチームとして協調的なのもあって、『ディアブロIV』チームではすごくうまくいったと思います。プレイテストをやってお互いフィードバックしながら普段の会話もして……というのも自分たちにとっては慣れていることだったので簡単でした。

 新型コロナウィルスの影響を矮小化するつもりはないのですが、開発チームはよくやっていると思いますし、進捗には満足しています。

カリーナそうですね。私はゲーマーであることで準備ができていたと言えるかもしれません。あと家から働くというのは実はまったくなかったわけではなくて、フリーランスで参加している人や契約アーティストなどはそうしていたわけです。

 物理的なコラボレーションがなくなってしまったというのは確かにありますね。でも変なことかもしれませんが、オフィスだったら会議に出て自分の机に戻ってこないといけないですけど、家からならヘッドセットをつけて会話しながらアニメーションをつけて作業できるので、これはちょっと新しい体験でした。なんとかうまくいっているのは、ある部分では効率化できたからかもしれませんね。

――これは質問ではないんですが、BlizzConline用の体験版が出るのを期待してました……。

ジョセフ気持ちはわかります。『ディアブロIV』の開発をずっとやってきて、この状況にも関わらず進捗はとてもよく、ゲームは毎日のように良くなっています。

 ……なんですが、これは初めてのオープンワールドの『ディアブロ』ですし、最高のものにできるまで時間をかけたいんです。ファンにふさわしいものにしたいですし、自分たちでもそういうゲームを遊びたい。なので準備ができてリリースできる日が待ち遠しいですが、まだ日付等については言えません。

Dia3のシーズン的な要素も予定

――『ディアブロ イモータル』ではバトルパスがあるそうですが、『ディアブロIV』ではどうですか? あるいは『ディアブロIII』のようなシーズン制はどうでしょう?

ジョセフ『ディアブロ イモータル』がそういったアイデアについて進めているのは非常に興奮しています。ゲームそのものについても期待しています。

 それで、バトルパスなどの『ディアブロIV』のローンチ後のコンテンツについては今日はまだお話できないのですが、シーズンについては『ディアブロIII』でうまくいったことを知っているので、そういう類のものは何かしら『ディアブロIV』でも続けていきたいと思います。

 どういった形態なのか、どれぐらいの長さなのか、そういったことはまだ開発チームで検討しているところですが、発表できるようになったらぜひ共有したいと思います。

――では最後に日本のディアブロプレイヤーに。

ジョセフ自分がティーンエイジャーの頃に両親の家でこっそり『ディアブロ』をやっていたように、世界中の人々が我々と同じように『ディアブロ』シリーズを楽しんできたという事に非常に興奮しています。ここでも日本でもその他の場所でも、ディアブロファンであるのが最高の時です。

カリーナ同じですね。私の家では世代を超えたものがありました。そういった懐かしさは世界で一緒です。自分たち自信もファンとして皆さんとこのゲームを早く遊びたいです。そのために本当に本当に懸命に開発しています。