このゲームを忘れるな!
師走--。
俺は、事務所に設えてあるコタツに首まで潜り込み、ちょっと遠い目で1年を振り返っていた。
「2020年も、もう終わりだなぁ~……。今年はコロナ禍にありながら良作・名作がたくさん発売されて、ゲームライフ的には満点だったなぁ^^」
すっかり1年を終えた気になり、12月の残りのプランに思いを馳せる。
「もういっそ、ゲームも仕事も畳んで、故郷の群馬に湯治にでもいくかねぇ^^」
年末進行真っただ中だというのに、完全なバカンスモードだ。じつは数日前に腰をいわしてしまい、ちょっと油断してクシャミを炸裂させようものなら上半身がモゲてしまうんじゃないか……というほど、俺は満身創痍になっていたのである。
「温泉だ温泉だ^^ 湯治でじっくりと身体を癒すで~~~^^」
腰をいわした……というわりには軽快にピョンと飛び起き、数日分の着替えと遊び道具を旅行カバンに詰め込む。じつは、早急に片付けなければいけない仕事が山ほどあるのだが、いまはそんなこと、一片たりとも脳ミソに入っていない。
「よーし、バイクで行っちゃうぞ~~~^^」
いままさにヘルメットを手に取り、外に出ようとしたその瞬間……俺は襟首を強引につかまれて事務所の中に背負い投げで戻された。「グギッ!」と、腰がイヤな音を立てて砕け散る。傷む患部をさすりながら見上げると……そこでは編集をやっている事務所のスタッフが仁王立ちしていたではないか。怒りの形相で、彼女は言う。
「おう。どこに行くんや? サイケなヘルメットを持って……もしかして、サイバーなパンクの世界に行く覚悟のコスプレか??」
俺、素っ頓狂な声で「へ??」と返す。それが、彼女の怒りにさらに燃料を投下したようだった。
「「へ??」じゃねええええ!!! オメー、今日が何の日か忘れたんか!? 「ボク、これのプレイ日記を書きたいんダ!」と調子こいて言ってたゲームの発売日やろ!!!」
なんだか最近、プレイ日記の開始のタイミングで同じやり取りをくり返している気がする。
俺が呆け、編集に釘を刺され、「はッ!!!」と覚醒して慌てて書き始めるというね……。
今回も、まったく同様の流れをたどった。
「そう言えば……大きな何かを忘れていた気がする。確か……ダ」
言いかけたところで、同僚の大外刈りが飛んできた。
「違う!! それじゃねえ!! ホラ、『ウィッチャー3』の!! スパイク・チュンソフトの!!!」
俺はようやく、すべてを思い出した。そして、パンパンに詰め込んだ旅行カバンをクローゼットに放り込み、喉も裂けよと絶叫したのである。
「『サイバーパンク2077』!!! 2020年は……まだ終わってくれない!!w このゲームをやり込むんじゃああああ!!!ww」
同僚は、呆れ顔でため息をついた。「ようやく思い出したか」。そして、つぎのようなトドメを刺すのである。
「ファミ通.comの担当さんが、キサマの原稿をお待ちかねや。いまから1歩も事務所から出ずに、1週間分の『サイバーパンク2077』のプレイ日記を書き続けろや!!!」
というわけで……おもしろいゲームが発売されたときの恒例になりつつある、大塚角満の短期集中連載、スタートです!!!w
今回のテーマは、全世界待望と言っても過言ではなかったオープンワールド超大作、スパイク・チュンソフトのプレイステーション4、Xbox One、PC用ソフト『サイバーパンク2077』じゃああああ!!!w
まずは自分の分身を
『サイバーパンク2077』は、プレイヤーの“選択と結末” に重きを置いた、一人称視点のオープンワールドアクションRPG。ナイトシティとして知られる荒廃した近未来の巨大都市を舞台に、キャラクター、武器、装備、プレイスタイルをカスタマイズしながら、自らの道を切り開いていこう--というゲームだ。……って、この一文、ファミ通.comの特設サイトに書かれていた説明をコピペしただけだけど^^;
じつは俺、この文章の“ある単語”を目にしたときに、
「『サイバーパンク2077』、遊びたいけど……無理かも」
と、半ばあきらめの境地に達していた。それはズバリ、
“一人称視点”
で、これが苦手のあまり、あまたの良ゲーをスルーせざるを得ないという憂き目を見続けてきた過去があるのである。
『サイバーパンク2077』は、思いっきり一人称視点にこだわっているゲームだ。それはもう、信念とか思想のレベルに達するほど頑なで、「どうしても無理な人には三人称視点も用意していますよ」なんていう生ぬるいことはいっさいしていない。
これには困った。
俺は極め付きの“3D酔い男”で、一人称視点のゲームを遊ぼうものならものの30秒で気持ち悪くなる自信がある。なので、本当はFPSだってプレイしたいのに涙を飲んで避けてきたわけだが……今回ばかりは……それを押してでも遊んでみたい!!!
『サイバーパンク2077』がここまで俺を惹きつけた理由は、映画『ブレードランナー』を髣髴とさせる世界観に魅了されたから……ということもあるんだけど、開発のCD PROJEKT REDが、あの『ウィッチャー3 ワイルドハント』も手掛けていた……という事実がなによりも大きかった。これ、おそらく世界中のゲームファンも俺と同じように考えていて、だからこそ『サイバーパンク2077』は予約だけで800万本販売(!!)という異次元の売れ行きを見せているのだろう。
「『ウィッチャー3』を作った会社の最新作となれば……万難を排してでも遊んでみるしかないではないか!!><」
悲痛なまでの気持ちで、俺は『サイバーパンク2077』のパッケージ版を購入してきたのであった。
そして……インストールするだけで日付が変わりそうになるほどの膨大なデータをプレイステーション4に読み込ませ、ようやくゲームがスタートした。
すると、冒頭でさっそく主人公“V”の容姿と“ライフパス”というものの選択画面になる。
正直……ここで小一時間ほど、「どどど、どれにしよう!? どれがいちばんいいんだろう!!?」と“ゲームのジョブ選択あるある”みたいなことをやってしまったのだが、調べてみると(ファミ通.comの記事を読んだだけだがw)ライフパスは、ゲーム本編に至るまでの展開(主人公の生い立ちや経歴)が違うだけで、あまり悩む必要はなかったみたい。ゲーム本編は共通なので、ここで3日も4日も立ち止まらなくてもいいみたいだよ優柔不断な諸君!(俺のことだけど)
おつぎは……キャラクリエイトだ。
サイバーでパンクな世界ということもあり、顔のパーツもペイントも、いかにもそれっぽいものがたくさん用意されている。
でも……あまりにも奇抜なものだと、ときたま鏡に映る自分の姿(基本的には一人称視点なので見えないけど)を見るたびに、
「ひぃ!! お、オバケ!!!」
と肝を潰すことになりかねないので、
↑こういうのはなるべく避ける(苦笑)。その結果、出来上がったのは、
おおおお……!!!w これぞまさしくサイバーでパンクなイケメン!! 俺の分身として相応しい!!!w
そして最後に、任意で能力値の割り振り。このへんの作りは、よくあるRPGな感じでわかりやすいな。
……脳筋好きなので、全ポイントを肉体に振ってやろうかと思ったんだけど……絶対にあとで後悔すると思ったので、なんとなくよさげな“知力”と“意志”にもポイントを分けておいた。この数値によりパーク(スキルみたいなもんか)が解放されていくようなので、ゲームを進めてプレイスタイルが見えてきてから、いろいろ考えることにしよう。
さあ、いよいよ本格的なスタートだ。
まずはプロローグともいえる序盤を、チュートリアルもからめながらプレイをしていってみよう。
こ、この、画面からすえた臭いが漂ってきそうな独特の雰囲気……! つねに銃口を突き付けられているかのようなヒリつく感覚……!! やっぱたまらねえな!! 本気で遊ぶぞぉぉおおおお!!!w
というわけで短期集中連載、よろしくお願いいたします!
次回(第2回)の日記はこちら
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元週刊ファミ通副編集長、ファミ通コンテンツ企画編集部編集長。2017年に独立。編集部時代から現在に至るまでゲームエッセイを精力的に執筆し、『逆鱗日和』シリーズ、『熱血パズドラ部』、『折れてたまるか!』など、多数の著作がある。