いよいよ2020年12月10日にプレイステーション4/Xbox One/PCで発売される、CD PROJEKT REDのオープンワールドアクションRPG『サイパーパンク2077』。本誌ではPC用のレビュー版プログラムをプレイする機会を得たので、洋ゲーライターのBRZRKによるレビューをお届けしよう。
『サイバーパンク2077』の発表から幾星霜、遂に発売を迎える期待の新作。ずーっとニュースを追いかけながら楽しみにしていたのだけど、レビュー依頼という名の先行プレイする権利を目の前にぶら下げられたことで編集部に見事一本釣りされたBRZRKです。ウヒョー!
本題の前に……配信や動画投稿をするならこの設定をやれ!
まずはいきなりだけど、本作を動画サイトとかで配信したい人は、プレイ前に設定でBGMの著作権周りの問題を回避する設定にしておこう(※)。あと、PC版の場合はオプションから裸体表現も必ずオフにしようね。絶対にオフだぞ絶対に。じゃないと“バナナ”とかが出ちゃったりして事故るからね? 約束だぞ!
(※編注:PS4/XB1版で本体機能を使って配信する場合は自動で設定が切り替わる。外部キャプチャーカードを使う場合はPC版同様に任意に設定する必要がある)
巨大で猥雑なサイバーパンク世界がオープンワールドで実現
読者は“サイバーパンク”といったらどんな情景を思い浮かべるだろうか。サイバネティックスによる人体の拡張や脳へのネットワークやデバイスの接続、どぎつい色のネオンで照らし出されるどこか薄暗くも魅力的な世界観……といったところだと思う。うん、そんな思い浮かべた景色をオープンワールドで楽しむことが出来るのが本作だ。
舞台となるナイトシティは、多国籍の言語と文化が入り乱れ、色とりどりなネオンが輝く、華やかでエキセントリックな魅力溢れる夢のような世界だ。
しかし、ひとたび角を曲がれば殺人や違法ドラッグ、裏物映像などの取引が横行するダークな顔が見えてくる。言わば人々の欲望が具現化し、誘蛾灯のような働きをしている街といったところだろうか。
というか、上記のような犯罪は本来アンダーグラウンドのカテゴリーに入るはずなのだが、隠す気もない露出具合で全然アンダーじゃないのがヤバいね。アンダーグラウンドと呼べるのはもっとヤバいやつ、それがナイトシティなのだ。
こうなってしまった原因は、戦争や企業による支配体制の確立などいろんな経緯があるとゲーム中で語られているのだけど、そんな所でも、この美しい掃き溜めの中で人々は逞しく、誠実に意地汚く生活を送っているのだ。
プレイヤーが操作する主人公V(ヴィー)は、この弱肉強食のナイトシティで"生き残るため"にさまざまな人からの依頼に応え、出会いや別れを経験しながら一寸先は闇の世界で戦うことになる。『ブレードランナー』、『JM』、『攻殻機動隊』といった作品が好きな人には割と刺さるデザインというか世界なんじゃないかな?
……とはいえゲーム的な書き割り部分もある
入れる建物とかは実はあまりない感じで、何かと利用する機会がある場所だけが立ち入り可能となっている。これが少々残念で、もうちっと色々なお店に入って見て回りたいなぁと思う次第だ。近付くと「ロック」とだけ表示される、どうやっても現状では開かない扉がいろいろあったりするんだけど、行ける場所増えないですかね。
あと、アーケードゲーム筐体やパチンコ台が設置されている場所が結構あるんだけど、デモ画面が流れているだけで実際にプレイできないのもゲーマーとしては残念かな。わりとしっかりとしたデモ画面だから尚更ね。
それとパチンコで思い出したけど、サイバーパンクらしい超ハイローラーなカジノ要素とかも欲しかった。依頼の報酬を元手にギャンブルに挑んだ結果すっからかんになり、路地裏に投げ捨てられては悪態をつく……みたいな映画によくあるムーブをしてみたかったな。
(※編注:ストリートボクシングで賭けている描写や、ギャングの裏カジノという設定の場所などは出てくる)
オープンワールドアクションアドベンチャーと一人称視点アクションRPGが融合
本作は前述したとおり、ナイトシティと周辺地域を自由に行き来できるオープンワールド形式にアクション・アドベンチャーとRPG要素を違和感なく混ぜ込んだ作品だ。
Vは街の色々な人から依頼を受注し、任務を完遂させることで報酬と経験値を獲得していく。この報酬は自分の武器や防具といった装備品だけでなく、広大なマップを移動するための乗り物を購入したりするために使うことになる。まぁ、金がないとなにもできないってのは当然だよね。
で、経験値は一定以上貯まるとVがレベルアップし、能力値ポイントとパークポイントを貰える。このポイントを割り振っていくことで、Vが取れる行動の幅が広がるといった感じだ。
まず能力値ポイントは、肉体・技術・知力...etcといったVのベースとなる能力を伸ばせる。それによって、“肉体”を伸ばした場合はヒットポイントやスタミナが増え、近接攻撃のダメージがアップするといった恩恵が得られるわけだ。
また各能力値は、装備可能なアイテムや取得可能なパークにも関わってくる。どれだけパークポイントが余っていても、欲しいパークが要求する能力値をクリアーしていなければ取得はできない。
同じように、能力値によって開けられる扉や会話の選択肢が増えたりもする。ミッションの難度にも影響してくることもあるので、かなり大事な要素と言えるだろう。
パークは能力に対してのパッシブスキルといった感じで、知力のカテゴリーで言えばハッキング時に得られる効果や影響を強くしたり、逆にハッキングを仕掛けてきた敵の居場所を察知できるようにするといったものがある。これらのポイントについてはどんなプレイを求めているかに合わせて割り振っていくといいんじゃないでしょうかね。
ビークルシステムやファストトラベルシステムも
この広いマップを移動するのに便利なのがバイクやクルマといった乗り物だ。幸いなことに、Vは最初からクルマを所持しているので序盤から移動に困るなんてことはない。また自分が所有する乗り物は簡単に呼び寄せることが可能で、ドライバーが居なくてもVの近くまで自立走行してやってくる。うーん、未来。
ただ個人的には、のろい運転のNPC車とかが邪魔なので、小回りが利いてすり抜け走行が可能なバイクの利用を推したい。バイクは街中で路駐されている物を拝借するか、高い金を出して買う必要があるのだが、某金田バイクを彷彿とさせるカッコいいデザインの車体もあるので、やっぱりオススメだ。
それでも移動はダルいなぁと思う人も安心してほしい。ナイトシティには多数のターミナルが存在し、アクセスすることでファストトラベルを利用することが可能だ。この機能を利用すれば、行きたい場所の最寄りのターミナルへ瞬時に移動でき、道中で犯罪に巻き込まれることなく安全に移動することが可能だ。
基本はFPSだが、ステルスやハッキングに振ったプレイスタイルも可能
基本的にFPS形式で進行していくので銃による脳筋ドンパチがメインかと思うかもしれないが、戦闘を極力避けるステルスなスタイルでプレイすることも可能だ。
肝心のシューター部分については、ヘッドショットならダメージ効率アップといったRPG要素を含むFPSの定番はしっかり抑えている。また武器はアタッチメントを装着したり改造することで強化可能だし、属性攻撃のようなサブ効果を持つものもある。
ぶっちゃけプレイする前はそこまでシューター部分に期待はしていなかったのだが、撃った時の射撃感や爽快感、武器の種類や機能などの不満はとくになし。上々な仕上がりなんじゃないかと思う。
マップの作りもさまざまな攻略方法が取れるように設計されていることが多く、ギャングが占拠している施設に侵入するようなミッションの場合、周辺をよく観察すると、暗に「ステルス用の侵入経路です」と言ってるかのような隠しルートがあったりする。
なので、手軽な脳筋スタイルでガンガン突っ込むのもアリだし、ハッキングやステルスを駆使した詰将棋のような感じのスタイルに興じるのもいいだろう。ちなみに俺はステルスメインでやってるけど、敵に見つかった場合は高火力の武器でゴリ押ししてます。
それでも上手く攻略できねぇなぁと思ったら街の中にある“リパードク”の所に行って、サイバーウェアのインプラントをしてみるといいだろう。前頭葉や神経系などVのいろんな部位をアップグレードすることが可能だ。ただ、良い品ほど値段が張るものなので、なんだかんだで金を稼いでコツコツと身支度を整えるようにしないといけない。
サイドジョブや街の仕置人業で稼いで名を上げろ!
何かと入用なナイトシティだけど、意外と金を稼ぎやすい街でもあると言えるだろう。というのも、根幹となるメインストーリーを進める以外に、サイドジョブやゴロツキ退治などでモリモリと収入を得られるからだ。
サイドジョブでは、知り合ってきたさまざまな人々がひっきりなしにキケンな仕事を依頼してくる。というか、銃撃戦の最中とかに問い合わせてきたり、深刻な状況でバカ明るい電話がくるのは苦笑い。
それはともかく、律儀にサイドジョブをこなしていくと、気付けばちょっとした小金持ちになっていることもザラだ。それにサイドジョブにも濃厚な物語が存在し、関係者との接し方によっては濃厚なロマンスへと発展しちゃうなんてことも。
あと、街中で発生しているギャングによる暴行事件などを解決すれば警察から報酬が得られ、ついでに無力化したギャングがたまに持っている高額アクセサリーなどの所持品も売り払えばそれなりの額になる。感謝されるし金も入るなんて素敵じゃない?
なおステータスにはストリートでの名声にあたる“クレド”というものもあり、さまざまな依頼をこなして「あいつはスゴいらしい」とクレドが上がっていくと、より高位のアイテムを売ってくれるようになったりもする。
ほかにも自販機なんかをハックしてマイニングしたり、人の部屋の物を勝手に売り払ったりなんて方法もあるんだけど、とにかく金は溜まりやすい。
40時間近くやっても終りが見えない、現時点でGOTY候補の充実した出来
といった感じで簡単ではあるが、38時間ほど実際にプレイしてみた雑感を書き連ねてみた。これだけ遊んでも全然終わりが見えず、ボリュームについては正直皆目見当が……というレベルである。
つーか、プレイした筆者の感覚だと「げぇ!もうそんなプレイしてたのかよ!」とガチで驚いた次第だ。だってさぁ、メインジョブのストーリーもサイドジョブのストーリーも面白いんだから入れ込んじゃうわけじゃん。そりゃ時間という概念を忘れて没頭しちゃうわけですよ。
ちなみに今回のレビューでストーリーについて触れていないのにも理由がある。というのも、事前に公開されていたシネマティックトレーラーと実際のゲームでは異なっている点が多いからだ。なので、あえて触れず読者が実際にプレイして楽しんで欲しいと思う。
夢に見て憧れたサイバーパンクの世界を体感できる本作。遊び倒すまで最終的な評価は当然できないのだが現段階で俺個人のゲーム・オブ・ザ・イヤー最有力候補になっている。